ヒスタミンを放つのは誰か―IgEを「身にまとう」マスト細胞と好塩基球
第104回医師国家試験 E問題 第8問
国試問題にチャレンジ
IgEと抗原との反応によってヒスタミンを遊離する細胞はどれか。2つ選べ。
- a.B細胞
- b.好酸球
- c.好中球
- d.好塩基球
- e.マスト細胞
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Ⅰ型アレルギーでは、Th2が出すIL-4・IL-13によってB細胞がIgEを産生し、そのIgEが高親和性IgE受容体(FcεRI)を介して組織のマスト細胞と血中の好塩基球の表面に結合します。再び侵入した抗原がIgEを架橋すると、これらの細胞は数分以内に脱顆粒してヒスタミンを放出し、血管透過性亢進、気管支収縮、かゆみといった即時相反応を起こします。B細胞はIgEを作る側、好酸球は寄生虫防御や遅発相反応の担い手、好中球は細菌を貪食する細胞であり、IgEと抗原の反応でヒスタミンを放出する主体ではありません。抗ヒスタミン薬、抗IgE抗体、マスト細胞安定化薬がそれぞれ反応のどこを抑えるかと結びつけて理解すると、アレルギー疾患の病態と治療を一貫して整理できます。
解答・解説
正解はd, eです
IgEと抗原の反応でヒスタミンが放出される現象は、Ⅰ型アレルギー(即時型過敏症、アナフィラキシー型)の中心となる反応である。
感作
アレルゲン(花粉、ダニ、食物など)に初めてさらされると、ヘルパーT細胞のうち2型ヘルパーT細胞(Th2)が活性化する。Th2が出すインターロイキン4(IL-4)やIL-13の働きで、B細胞はIgEを産生するように抗体の種類を切り替える(クラススイッチ)。産生されたIgEは、高親和性IgE受容体(FcεRI)をもつ細胞の表面に、Fc部分で結合して待機する。FcεRIをたくさんもつのは、組織にいるマスト細胞(肥満細胞)と血液中の好塩基球である。
再曝露
同じ抗原が再び入ってくると、細胞表面の隣り合うIgE同士を抗原が橋渡しする(架橋)。これが細胞内の信号となり、数分以内に顆粒の中身が細胞外へ放出される(脱顆粒)。顆粒に蓄えられたヒスタミンは、血管拡張と血管透過性の亢進(膨疹、浮腫、血圧低下)、気管支平滑筋の収縮、粘液分泌の亢進、かゆみを引き起こす。 したがって、「IgEと抗原の反応でヒスタミンを遊離する細胞」は、FcεRIを介して脱顆粒するマスト細胞と好塩基球の2つである。
選択肢考察
- ×a. B細胞
B細胞は抗原刺激を受けると形質細胞へ分化し、抗体を産生する。Ⅰ型アレルギーでは、Th2の助けを受けてIgEを作る「上流」の役割を担う。B細胞の表面には低親和性IgE受容体(FcεRII、CD23)があり、IgE産生の調節や抗原の取り込みに関わる。しかし、ヒスタミンを蓄えた顆粒はもたず、IgEと抗原の反応でヒスタミンを放出することはない。
- ×b. 好酸球
好酸球は、寄生虫(特に蠕虫)への防御や、アレルギー性炎症の遅れて起こる反応(遅発相反応)で中心的に働く細胞である。マスト細胞が出すIL-5や、好酸球を呼び寄せる因子(エオタキシンなど)によって局所に集まる。顆粒には主要塩基性タンパク(MBP)、好酸球陽イオンタンパク(ECP)、好酸球ペルオキシダーゼなどの組織傷害性のタンパクが含まれ、組織の損傷や気道の過敏性に関わる。一方で、ヒスタミンを分解するヒスタミナーゼなどを出して即時型反応を抑える方向にも働くとされてきた。IgEと抗原の反応でヒスタミンを放出する主な細胞ではない。
- ×c. 好中球
好中球は白血球の中で最も多く、細菌や真菌の感染に対して最初に駆けつける食細胞である。IgGや補体で目印を付けられた(オプソニン化された)微生物を貪食し、活性酸素やリソソーム酵素(ミエロペルオキシダーゼなど)で殺菌する。好中球細胞外トラップ(NETs)で微生物を捕らえる働きもある。FcεRIをもたず、ヒスタミンを蓄えた顆粒もないため、IgEと抗原の反応でヒスタミンを放出することはない。
- ○d. 好塩基球
好塩基球は、血液中の白血球の約1%以下を占める顆粒球である。好塩基性に濃く染まる顆粒にヒスタミンなどを蓄えている。細胞表面に高親和性IgE受容体(FcεRI)をもち、IgEを結合している。そこに抗原が結合してIgEが架橋されると脱顆粒し、ヒスタミンを放出する。さらに、ロイコトリエンを新たに合成して放出するほか、IL-4やIL-13を大量に産生してTh2型の免疫応答を強める。血中の細胞であるため、アナフィラキシーのような全身性の反応に関与し、アレルギー検査のヒスタミン遊離試験(HRT)や好塩基球活性化試験(BAT)にも利用される。
- ○e. マスト細胞
マスト細胞(肥満細胞)は、皮膚や気道・消化管の粘膜など、外界と接する組織の血管周囲に分布する細胞である。骨髄由来の前駆細胞が組織に移って成熟する。大量のFcεRIを発現しており、IgEが架橋されると数分以内に脱顆粒する。これにより、蓄えておいたヒスタミン、トリプターゼ、ヘパリンなどを放出する。続いて、ロイコトリエンC4、プロスタグランジンD2、血小板活性化因子(PAF)などの脂質メディエーターを新たに合成して放出する。蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の即時型反応、アナフィラキシーの主役となる細胞である。アナフィラキシー後に血清トリプターゼが上昇することは、マスト細胞の活性化を示す指標となる。
Ⅰ型アレルギーの反応の流れ
・即時相反応(数分〜30分): マスト細胞・好塩基球の脱顆粒によるもの。ヒスタミンによる血管透過性の亢進、平滑筋の収縮、かゆみが起こる。くしゃみ・鼻汁、膨疹、喘鳴、アナフィラキシーショックがこれにあたる。 ・遅発相反応(数時間後、6〜12時間頃): 新たに合成された脂質メディエーターやサイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)に呼び寄せられた好酸球やTh2細胞などが浸潤して起こる、持続的な炎症である。喘息の遷延や気道の過敏性に関わる。
マスト細胞・好塩基球が放出する主なメディエーター
・あらかじめ顆粒に蓄えられているもの: ヒスタミン、トリプターゼ(主にマスト細胞)、ヘパリン、好酸球遊走因子 ・刺激後に新たに合成されるもの: ロイコトリエンC4/D4/E4(強い気管支収縮作用)、プロスタグランジンD2、血小板活性化因子(PAF) ・サイトカイン: IL-4、IL-5、IL-13、TNF-αなど
ヒスタミン受容体
・H1受容体: 血管透過性亢進、気管支収縮、かゆみ。抗アレルギー薬の多くはH1受容体拮抗薬である。 ・H2受容体: 胃酸分泌の促進。胃潰瘍の治療にH2受容体拮抗薬が用いられる。
アレルギーの分類(Coombs & Gell)
・Ⅰ型: IgE、マスト細胞・好塩基球が関与する(例: 花粉症、アナフィラキシー) ・Ⅱ型: IgG・IgMが細胞表面の抗原に結合して起こる細胞傷害型(例: 自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血) ・Ⅲ型: 免疫複合体型(例: 血清病、ループス腎炎) ・Ⅳ型: T細胞が関与する遅延型(例: ツベルクリン反応、接触皮膚炎)
治療との関連
抗IgE抗体(オマリズマブ)は、IgEがFcεRIに結合するのを妨げ、重症喘息や慢性蕁麻疹などに用いられる。マスト細胞安定化薬(クロモグリク酸ナトリウム)は、脱顆粒を抑える薬である。
POINT
・IgEの高親和性受容体(FcεRI)をもち、IgEと抗原の架橋でヒスタミンを放出するのは、マスト細胞(組織)と好塩基球(血液)である。 ・B細胞はIgEを作る側(Th2のIL-4・IL-13でクラススイッチする)であり、ヒスタミンは放出しない。 ・好酸球は寄生虫防御と遅発相反応の担い手で、MBPなどで組織を傷害する。 ・好中球は細菌を貪食する細胞で、IgEとは関わらない。 ・Ⅰ型アレルギーは即時相(ヒスタミンなど)と遅発相(好酸球浸潤)に分けて理解する。
