StudyMed医師国家試験

腎臓は「尿をつくるだけ」じゃない―産生臓器で整理するレニンとエリスロポエチン

第104回医師国家試験 E問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第27問

主に腎で産生される液性因子はどれか。2つ選べ。

  1. a.レニン
  2. b.カルシトニン
  3. c.アルドステロン
  4. d.エリスロポエチン
  5. e.アンジオテンシノゲン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、腎臓の「内分泌臓器」としての顔を問う問題だ。選択肢にはどれも腎臓と関係が深そうな物質が並んでいるけれど、問われているのは「どこで作られるか」。作用する場所と作られる場所を混同しないことが最大のポイントだよ。
医学生医学生
アルドステロンは腎臓に効くホルモンなので、つい選びたくなりますね。
ドクタードクター
まさにそこが落とし穴。アルドステロンは副腎皮質の球状層で作られる鉱質コルチコイドで、腎臓は「標的臓器」なんだ。集合管の主細胞に働いて、Naの再吸収とKの排泄を促す。作るのは副腎、働くのが腎、と分けて覚えよう。
医学生医学生
生理学の講義でRAA系の図を描かされましたが、それぞれの物質がどこから出ているかまでは意識していませんでした。
ドクタードクター
じゃあ一緒に整理しよう。出発点のアンジオテンシノゲンは主に肝臓で作られる蛋白で、レニンの基質だ。それを腎のレニンが切ってアンジオテンシンⅠにし、主に肺の血管内皮にあるACEがアンジオテンシンⅡに変える。アンジオテンシンⅡが副腎皮質を刺激してアルドステロンが出る。肝、腎、肺、副腎と、臓器がリレーしていくイメージだね。
医学生医学生
そうすると、この系で腎臓が作っているのはレニンだけなんですね。
ドクタードクター
その通り。レニンは傍糸球体装置の傍糸球体細胞、つまり輸入細動脈の壁の平滑筋が分化した顆粒細胞から分泌される蛋白分解酵素だ。分泌を増やす刺激は覚えているかな。
医学生医学生
腎灌流圧の低下と、緻密斑に届くNaClの減少と……あと交感神経でしょうか。
ドクタードクター
完璧だ。交感神経はβ1受容体を介して分泌を促す。腎動脈狭窄で高レニン性の高血圧になるのも、腎臓が「血圧が低い」と誤解してレニンを出し続けるからなんだ。では、もう一つの正解はどれだと思う?
医学生医学生
エリスロポエチンです。腎臓内科の実習で、透析患者さんがESAの注射を受けているのを見ました。
ドクタードクター
いい経験だね。エリスロポエチンは成人では約9割が腎で作られる糖蛋白ホルモンで、腎皮質から髄質外層の尿細管周囲にある間質細胞が主な産生細胞だ。組織の酸素分圧が下がるとHIF、つまり低酸素誘導因子がそれを感知して産生が増え、骨髄の赤芽球系前駆細胞の分化・増殖を促す。
医学生医学生
糸球体や尿細管の上皮細胞が作っているわけではないんですね。てっきり尿細管細胞だと思っていました。
ドクタードクター
間違えやすいところだね。ちなみに残りは肝臓で作られ、胎児期には肝が主な産生臓器なんだ。最後にカルシトニンはどうかな。
医学生医学生
甲状腺のC細胞ですよね。病理の講義で、甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーとして出てきました。
ドクタードクター
正解。カルシトニンは破骨細胞の骨吸収を抑えて血清Caを下げる方向に働く。腎も作用部位の一つだけど、産生臓器ではない。だから答えはレニンとエリスロポエチンの2つだ。
医学生医学生
産生臓器と作用臓器を分けて考えれば、迷う選択肢はなくなりますね。腎臓で作られるもので、ほかに覚えておくべきものはありますか。
ドクタードクター
絶対に外せないのが活性型ビタミンDだ。肝で25位、腎の近位尿細管で1α位が水酸化されて1,25-(OH)2D3になり、腸管からのCaとPの吸収を促す。ほかにもプロスタグランジンやカリクレイン-キニン系も腎で作られていて、腎血流の維持などに関わっている。
医学生医学生
慢性腎臓病になると、その内分泌機能も落ちるということですか。
ドクタードクター
そう、それが臨床で大事なところだ。エリスロポエチンが減れば正球性正色素性の腎性貧血になり、ESAやHIF-PH阻害薬で治療する。活性型ビタミンDが減れば低Ca血症から二次性副甲状腺機能亢進症、骨病変へとつながるCKD-MBDが起こる。CKDの患者さんを診るときは、腎機能の数字だけでなく、こうした「ホルモン不足」の合併症も一緒に見ていく必要があるんだ。
医学生医学生
腎臓を内分泌臓器として見ると、CKDの合併症がすっきりつながりますね。

まとめ

腎臓は排泄臓器であると同時に内分泌臓器でもあり、主に産生する液性因子として、傍糸球体細胞のレニン、尿細管周囲間質細胞のエリスロポエチン、近位尿細管で1α水酸化される活性型ビタミンDが挙げられます。RAA系では、アンジオテンシノゲンは肝、ACEは主に肺血管内皮、アルドステロンは副腎皮質球状層で作られ、腎で作られるのはレニンだけです。カルシトニンは甲状腺C細胞由来で、アルドステロンと同様に腎は作用部位であって産生臓器ではありません。慢性腎臓病ではエリスロポエチン低下による腎性貧血や、活性型ビタミンD低下によるCKD-MBDが生じるため、腎の内分泌機能の理解は臨床にも直結します。「どこで作られ、どこに働くか」を分けて整理することが、ホルモンの問題を確実に解く基本です。

解答・解説

正解はa, dです

テーマ

腎臓は尿を作る排泄臓器であると同時に、内分泌臓器としても働いている。本問は、選択肢に挙げられた液性因子それぞれの「主な産生臓器・産生細胞」を正確に覚えているかを問う。 液性因子(humoral factor)とは、血液などの体液を介して離れた部位に運ばれて作用する物質の総称で、ホルモンのほか、サイトカインなどの免疫関連物質も含む。

考え方

腎臓で主に産生される代表的な液性因子は、レニン(傍糸球体細胞)、エリスロポエチン(腎皮質の尿細管周囲間質細胞)、活性型ビタミンD〔1,25-(OH)2D3、近位尿細管で1α位が水酸化される〕の3つである。このほかプロスタグランジンやカリクレイン(キニン系)なども腎で作られる。 一方、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)に登場する物質は、レニンが腎、アンジオテンシノゲンが肝、アンジオテンシン変換酵素(ACE)が主に肺の血管内皮、アルドステロンが副腎皮質と、産生臓器がそれぞれ異なる。この系の流れを産生臓器とセットで整理しておけば、レニンとエリスロポエチンの2つを選べる。

選択肢考察

  1. ○a.  レニン

    レニンは、傍糸球体装置を構成する傍糸球体細胞(輸入細動脈壁の平滑筋が分化した顆粒細胞)から分泌される蛋白分解酵素である。腎灌流圧の低下(輸入細動脈の圧受容)、緻密斑でのNaCl到達量の減少、交感神経β1刺激によって分泌が増える。血中でアンジオテンシノゲンを切断してアンジオテンシンⅠを生成し、最終的にアンジオテンシンⅡやアルドステロンを介して血圧・循環血液量を上昇させる。主に腎で産生されるので正しい。

  2. ×b.  カルシトニン

    カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されるペプチドホルモンである。破骨細胞の骨吸収を抑えて、骨から血中へのCaの移行を減らし、血清Ca濃度を低下させる方向に働く。腎は作用部位の一つではあるが産生臓器ではない。なお、甲状腺髄様癌(C細胞由来)では腫瘍マーカーとなる。

  3. ×c.  アルドステロン

    アルドステロンは副腎皮質の球状層で産生される鉱質コルチコイドである。主に集合管(遠位尿細管後半〜集合管)の主細胞に作用し、Na+の再吸収(それに伴う水の再吸収)とK+の排泄を促す。また間在細胞からのH+分泌も促進する。分泌の主な刺激はアンジオテンシンⅡと血清K+の上昇である。腎は標的臓器であって産生臓器ではない。

  4. ○d.  エリスロポエチン

    エリスロポエチン(EPO)は成人では約90%が腎で産生される糖蛋白ホルモンで、腎皮質〜髄質外層の尿細管周囲の間質細胞(線維芽細胞様細胞)が主な産生細胞である。組織の酸素分圧低下を低酸素誘導因子(HIF)が感知して産生が増える。骨髄の赤芽球系前駆細胞に作用して分化・増殖を促し、赤血球産生を高める。残りの一部は肝で作られ、胎児期は肝が主な産生臓器である。慢性腎臓病で腎性貧血が起こるのはこの産生低下による。

  5. ×e.  アンジオテンシノゲン

    アンジオテンシノゲンは主に肝臓で合成され血中に分泌される蛋白質で、レニンの基質である。レニンによってアンジオテンシンⅠとなり、さらにACEによってアンジオテンシンⅡに変換される。腎局所でもわずかに作られるが、主な産生臓器は肝であり誤り。

腎臓の内分泌機能

・レニン:傍糸球体細胞。RAA系を起動し血圧・体液量を維持する。 ・エリスロポエチン:尿細管周囲間質細胞。赤血球産生を促進。低下すると腎性貧血(正球性正色素性貧血)。治療には赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬が用いられる。 ・活性型ビタミンD:肝で25位、腎の近位尿細管で1α位が水酸化されて1,25-(OH)2D3となる。腸管からのCa・P吸収を促す。低下すると低Ca血症、二次性副甲状腺機能亢進症、骨病変(CKD-MBD)につながる。 ・その他:プロスタグランジン(腎血流維持)、カリクレイン-キニン系など。

RAA系の流れと産生部位

アンジオテンシノゲン(肝)→〔レニン(腎)〕→アンジオテンシンⅠ→〔ACE(主に肺血管内皮)〕→アンジオテンシンⅡ→血管収縮、副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌(Na再吸収・K排泄)、口渇・ADH分泌促進など。

腎が標的となる主なホルモン

アルドステロン(集合管)、ADH(バソプレシン、集合管の水再吸収)、PTH(近位尿細管でのP排泄と1α水酸化促進、遠位尿細管でのCa再吸収)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)など。産生臓器と作用臓器を混同しないことが大切である。

POINT

・腎で産生される主な液性因子:レニン、エリスロポエチン、活性型ビタミンD。 ・レニン=傍糸球体細胞、EPO=尿細管周囲間質細胞。 ・アンジオテンシノゲン=肝、ACE=主に肺、アルドステロン=副腎皮質球状層、カルシトニン=甲状腺C細胞。 ・CKDでは腎性貧血(EPO低下)と活性型ビタミンD低下が起こる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。