赤から白へ、免疫から栄養へ―産褥期の母体と初乳をまとめて整理する
第104回医師国家試験 E問題 第1問
国試問題にチャレンジ
産褥期・初乳について正しいのはどれか。
- a.産褥熱は増加傾向にある。
- b.褐色悪露から赤色悪露に変化する。
- c.産褥熱の主な起炎菌はB群レンサ球菌〈GBS〉である。
- d.初乳は成乳に比べてラクトアルブミンが多く含まれる。
- e.妊娠高血圧症候群の評価には産後8週間が必要である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
産褥期には、悪露が赤色、褐色、黄色、白色の順に変化し、4〜6週でほぼ消失します。産褥熱は衛生管理や抗菌薬の普及で減少しており、主な起炎菌は大腸菌などのグラム陰性桿菌と嫌気性菌の混合感染で、GBSはむしろ新生児感染症の原因菌として重要です。初乳は成乳に比べてラクトアルブミンなどの蛋白質と、分泌型IgAやラクトフェリンなどの免疫物質に富み、成乳では乳糖と脂肪が増えてエネルギー量が多くなります。妊娠高血圧症候群の病型は、産後12週までの血圧の経過を目安に判断します。母体の回復と新生児の栄養・免疫を一続きの流れとして理解しておくと、産後の異常に早く気づくための土台になります。
解答・解説
正解はdです
産褥期(分娩終了後、妊娠・分娩で生じた母体の変化が非妊時の状態に戻るまでの約6〜8週間)に起こる現象と、授乳にかかわる乳汁の性状をまとめて問う一般問題である。 押さえるべき論点は次の4つである。 1. 産褥熱の疫学と起炎菌: 衛生管理と抗菌薬の普及で頻度は下がっており、原因菌は腟・腸管由来の常在菌(大腸菌などのグラム陰性桿菌や嫌気性菌)が中心で、複数菌の混合感染が多い。 2. 悪露の色調の推移: 子宮内膜の創面の治癒が進むにつれて、血液成分の多い赤色から、褐色、黄色、白色へと変わっていく。 3. 乳汁の経時的変化: 分泌の早い時期ほど蛋白質と免疫物質が多く、時間がたつにつれて乳糖と脂肪が増え、エネルギー源としての性格が強まる。 4. 妊娠高血圧症候群(HDP)の病型確定: 分娩後の血圧の経過を産後12週まで追って判断する。 各選択肢の記述をこれらの知識と照らし合わせれば、初乳の成分に関する記述だけが正しいと分かる。
選択肢考察
- ×a. 産褥熱は増加傾向にある。
誤り。産褥熱は、かつては妊産婦死亡の主要な原因であった。その後、手指消毒・無菌操作の徹底、分娩環境の衛生改善、抗菌薬の普及によって大きく減り、現在も減少傾向にある。帝王切開後は経腟分娩後より感染のリスクが高いため注意は必要であるが、全体として増加しているわけではない。
- ×b. 褐色悪露から赤色悪露に変化する。
誤り。順序が逆である。悪露(子宮・腟から排出される分泌物)は、産褥2〜3日ごろまでは血液を多く含む赤色悪露である。その後、赤血球が減りヘモグロビンが変性して褐色悪露(おおむね産褥1週ごろまで)となり、白血球が主体の黄色悪露(2週前後)を経て、白色悪露(3週以降)となる。4〜6週でほぼ消失する。赤色悪露が長く続いたり、いったん褐色になってから再び赤色に戻ったりする場合は、子宮復古不全や胎盤・卵膜の遺残を疑う手がかりになる。
- ×c. 産褥熱の主な起炎菌はB群レンサ球菌〈GBS〉である。
誤り。産褥熱は、腟・会陰・腸管の常在菌が上行して分娩時の創面(胎盤剥離面、産道の裂傷、帝王切開創)に感染して起こる。主な起炎菌は大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌と、バクテロイデス属やペプトストレプトコッカス属などの嫌気性菌であり、複数の菌が混合感染することが多い。GBS(Streptococcus agalactiae)も原因菌の一つになりうるが、主要な起炎菌とはいえない。GBSは、臨床的にはむしろ新生児の敗血症・髄膜炎の原因菌として重要であり、そのために妊娠後期に腟・肛門周囲のスクリーニング培養を行い、陽性者には分娩時にペニシリン系抗菌薬を予防投与する。
- ○d. 初乳は成乳に比べてラクトアルブミンが多く含まれる。
正しい。初乳は産褥数日(おおむね5日ごろ)までに分泌される、やや黄色みを帯びた粘稠な乳汁である。成乳(産褥2週ごろ以降の乳汁)と比べて蛋白質の含有量がかなり多く、その中にはラクトアルブミン(α-ラクトアルブミン)やラクトグロブリンが含まれる。とくに分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチーム、白血球などの感染防御因子が豊富で、腸管の免疫がまだ未熟な新生児を守る役割を果たす。成乳に近づくにつれて蛋白質は減り、乳糖と脂肪が増えるので、エネルギー量は成乳の方が多くなる。
- ×e. 妊娠高血圧症候群の評価には産後8週間が必要である。
誤り。妊娠高血圧症候群の最終的な評価(病型の確定)は、産後12週までの経過をみて行う。妊娠20週以降に初めて発症した高血圧が産後12週までに正常化すれば、妊娠高血圧腎症や妊娠高血圧と確定する。産後12週を過ぎても高血圧が続く場合は、妊娠前から存在した高血圧(高血圧合併妊娠)や、その後の慢性高血圧への移行を考える。したがって8週ではなく12週が基準である。
産褥期の主な変化
・子宮復古: 子宮底は分娩直後には臍下2〜3横指にあるが、産褥12時間ごろにはいったん臍の高さまで上がり、その後は1日に約1横指ずつ下がる。産褥10〜14日ごろには腹壁の上から触れなくなり、6週ごろにほぼ非妊時の大きさに戻る。授乳による吸啜刺激で下垂体後葉からオキシトシンが放出されると子宮収縮が促され、復古が早まる。 ・悪露: 赤色(〜産褥3日ごろ)→ 褐色(〜1週ごろ)→ 黄色(2週前後)→ 白色(3週以降)。4〜6週でほぼ消失する。
産褥熱
・定義: 分娩後24時間以降、産褥10日以内に38℃以上の発熱が2日以上続くもの。 ・病態: 産道や子宮内の創面から上行性に感染する。子宮内膜炎が最も多く、進行すると子宮筋層炎、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎、敗血症へ波及する。 ・危険因子: 帝王切開、前期破水・長時間の破水、遷延分娩、頻回の内診、胎盤・卵膜の遺残、産道の損傷など。 ・起炎菌: 大腸菌などのグラム陰性桿菌、嫌気性菌(バクテロイデス属など)、腸球菌、レンサ球菌などによる混合感染が多い。まれではあるが、A群レンサ球菌による劇症型の感染は急速に重症化するので要注意である。
乳汁の分類
・初乳(〜産褥5日ごろ): 蛋白質(ラクトアルブミン、ラクトグロブリン)、分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチームなどが多い。黄色く粘稠で、量は少ない。 ・移行乳(産褥5日ごろ〜2週ごろ): 初乳から成乳へ移る途中の乳汁。 ・成乳(産褥2週ごろ以降): 蛋白質が減り、乳糖と脂肪が増える。白色で量が多く、エネルギー量も多い。 ・乳汁分泌の調節: プロラクチンが乳汁の産生を、オキシトシンが射乳を担う。妊娠中は胎盤由来の大量のエストロゲンとプロゲステロンが乳汁の産生を抑えている。胎盤が娩出されるとこの抑制が外れ、本格的な分泌が始まる。
妊娠高血圧症候群(HDP)
・病型: 妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧、加重型妊娠高血圧腎症、高血圧合併妊娠の4つに分けられる。 ・高血圧の基準: 収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上。 ・病型の確定: 分娩後12週までの血圧の経過を確認して行う。
POINT
・悪露は赤色 → 褐色 → 黄色 → 白色の順に変わる。 ・産褥熱は減少傾向にあり、主な起炎菌は大腸菌などのグラム陰性桿菌と嫌気性菌(混合感染が多い)である。GBSは新生児感染症の原因菌として重要である。 ・初乳は成乳より蛋白質(ラクトアルブミン、ラクトグロブリン)と免疫物質(分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチーム)が多い。成乳は乳糖と脂肪が多く、エネルギー量が多い。 ・妊娠高血圧症候群の病型は、産後12週までの経過で確定する。
