バナナで口がピリピリ―即時型食物アレルギーを見抜く皮膚検査はどれか
第104回医師国家試験 D問題 第45問
国試問題にチャレンジ
24歳の男性。皮疹と口腔内の違和感とを主訴に来院した。2か月前からバナナやメロンを摂取後10分位で口腔内に違和感が生じ,時々息苦しくなっていた。昨日,バナナを摂取後,同様の症状に加えて体幹と四肢とに多数の膨疹が生じた。検査手技と関連した写真(①~⑤)を別に示す。 診断に有用なのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
特定の果物を食べて数分〜数十分で口腔の違和感、膨疹、呼吸困難が生じる場合は、IgEを介したI型(即時型)の食物アレルギーを考えます。バナナやメロンはブタクサ花粉やラテックスとの交差反応で口腔アレルギー症候群を起こすことが知られ、本例のように全身症状を伴うこともあります。即時型アレルギーを確かめる皮膚検査はプリックテストで、抗原液の上から表皮を浅く刺し、15〜20分後に膨疹と紅斑を対照と比べて判定します。一方、パッチテストはIV型(遅延型)を調べる検査、KOH法は真菌検査、光線療法装置は乾癬や白斑の治療機器であり、本例の診断には用いません。アレルギーの型と検査法を対応させて理解し、感作と発症を区別して問診と合わせて解釈する姿勢は、安全な食物アレルギー診療の基盤となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・24歳男性。2か月前から、バナナやメロンを食べて約10分後に口の中の違和感が出ており、ときに息苦しさも伴っていた。 ・昨日はバナナを食べた後、同じ症状に加えて体幹と四肢に多数の膨疹(蕁麻疹)が出た。
診断へのプロセス
特定の食物を食べてから数分〜数十分で症状が出ていること、口腔粘膜の症状から始まっていることから、IgEを介したI型(即時型)アレルギーと考えられる。果物で口腔の違和感が生じる病態は口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)と呼ばれる。花粉症に合併するものは花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)ともいう。バナナとメロンはブタクサなどの花粉と交差反応を示すことが知られ、ラテックス(天然ゴム)アレルギーと交差反応するラテックス-フルーツ症候群の原因食物でもある。本例は口腔症状にとどまらず、全身の蕁麻疹や呼吸困難も伴っているため、アナフィラキシーに進むおそれのある食物アレルギーとして評価する必要がある。
設問の考え方
即時型アレルギーの原因を確かめる皮膚検査はプリックテストである。皮膚に抗原液を1滴たらし、その上から専用の針(またはランセット)で表皮を浅く刺して、15〜20分後に膨疹と紅斑の大きさを判定する。果物では、市販の抗原液に加えて、生の果物を刺した針でそのまま皮膚を刺すprick-to-prick testも使われる。写真のうち、このプリックテストの手技を示しているのは④である。ほかの写真は、光線治療器、神経診察用具、真菌検査(KOH法)、パッチテストに関するもので、即時型の食物アレルギーの診断には使わない。
選択肢考察
- ×a. ①
①は紫外線を照射する機器(ナローバンドUVBやUVAを出す光線療法装置)である。乾癬、尋常性白斑、アトピー性皮膚炎などの治療に使う。光線過敏症を調べるときに最小紅斑量(minimal erythema dose:MED、紅斑を生じる最小の紫外線量)を測る光線テストにも使えるが、IgEを介した食物アレルギーの診断には役立たない。
- ×b. ②
②は握力計、打腱器(腱反射を調べるハンマー)、触覚を調べる道具など、神経学的診察で使う器具である。筋力、反射、感覚の評価に使うもので、アレルギーの原因を調べる検査ではない。
- ×c. ③
③は水酸化カリウム(KOH)直接鏡検法に使う器具である。鱗屑や爪をスライドガラスにのせ、KOH溶液で角質を溶かしてから顕微鏡で観察し、白癬菌やカンジダなどの真菌の菌糸・胞子を探す。皮膚真菌症の診断に使う検査で、本例とは関係しない。
- ○d. ④
④はプリックテストの手技で、あらかじめ皮膚に抗原液を1滴たらし、その上から針で表皮を浅く刺しているところである。抗原が皮膚の肥満細胞上のIgEに結合すると、ヒスタミンなどが放出され、15〜20分ほどで膨疹と紅斑が現れる。陽性コントロール(ヒスタミン)と陰性コントロール(生理食塩水)を一緒に置いて比べて判定する。I型アレルギーを直接確かめる方法であり、バナナやメロンによる即時型の食物アレルギーが疑われる本例の診断に適している。真皮に抗原を注射する皮内テストより全身反応が起こりにくく、安全性が高い点も利点である。
- ×e. ⑤
⑤はパッチテストで、被検物質を入れたチャンバー(絆創膏状の貼付材)を剥がしているところである。被検物質を背部などに48時間貼り、剥がした後の48時間後、72時間後(施設によっては1週間後まで)に紅斑、丘疹、小水疱の有無を判定する。T細胞が関与するIV型(遅延型)アレルギーを調べる検査で、アレルギー性接触皮膚炎や薬疹の原因検索に使う。即時型の食物アレルギーの診断には向かない。
アレルギーの皮膚検査の使い分け
・プリックテスト:I型(即時型、IgE依存性)を調べる。15〜20分後に判定する。食物アレルギー、花粉症、ラテックスアレルギー、薬物の即時型アレルギーに使う。 ・スクラッチテスト:皮膚を浅くひっかいて抗原を置く方法で、プリックテストと同じくI型を調べる。 ・皮内テスト:抗原を真皮に注射する。感度は高いが、全身反応(アナフィラキシー)の危険がプリックテストより大きい。 ・パッチテスト:IV型(遅延型、T細胞依存性)を調べる。48時間貼付し、48〜72時間後などに判定する。接触皮膚炎や薬疹に使う。
食物アレルギーの診断の流れ
1. 詳しい問診:原因と考えられる食物、摂取から症状が出るまでの時間、症状の内容、運動や薬剤(非ステロイド性抗炎症薬など)が関係したかどうか。 2. 血液検査(抗原特異的IgE抗体)と皮膚検査(プリックテスト):原因抗原に感作されているか(IgEがあるか)を調べる。ただし感作されていても症状が出ないこともあるため、結果は問診と合わせて解釈する。 3. 食物経口負荷試験:確定診断の基準となる検査である。アナフィラキシーの危険があるため、救急対応ができる体制で行う。
口腔アレルギー症候群(OAS)と花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)
・果物や野菜を食べた直後に、口唇、口腔、咽頭のかゆみ、ピリピリ感、腫れが出る。 ・花粉のアレルゲンと構造がよく似た食物中のタンパク質にIgEが交差反応して起こる。代表例は、シラカンバ(ハンノキ)花粉とバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)、ブタクサ花粉とウリ科(メロン、スイカ)・バナナ、イネ科花粉とメロン・トマトなど。 ・原因となるタンパク質の多くは熱や消化酵素で壊れやすいため、口腔症状にとどまることが多く、加熱した食品では症状が出にくい。ただし、本例のように全身症状が出ることもある。 ・ラテックス-フルーツ症候群:天然ゴム(ラテックス)アレルギーの人が、バナナ、アボカド、キウイ、クリなどに交差反応を示す。 ・プリックテストでは、生の果物を使うprick-to-prick testが有用である。市販の抗原液では、壊れやすいアレルゲンが失活していることがあるためである。
POINT
・食物を食べてから数分〜数十分で口腔症状、蕁麻疹、呼吸困難が出る → I型(即時型)食物アレルギーを考える。 ・即時型アレルギーの皮膚検査はプリックテスト(15〜20分後に判定)である。 ・パッチテストはIV型(遅延型)を調べる検査で、接触皮膚炎や薬疹に使う(48時間貼付)。 ・KOH法は真菌検査、光線療法器は乾癬・白斑などの治療に使う。 ・バナナ・メロンの口腔アレルギー症候群では、ブタクサ花粉やラテックスとの交差反応を思い出す。 ・食物アレルギーの確定診断は食物経口負荷試験で行う。
