StudyMed医師国家試験

声門上の細菌、声門下のウイルス―喉の感染症を病原体で仕分ける

第104回医師国家試験 A問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第104回 A問題 第19問

細菌感染が原因となる疾患はどれか。

  1. a.ヘルパンギーナ
  2. b.クループ症候群
  3. c.急性喉頭蓋炎
  4. d.手足口病
  5. e.鵞口瘡

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、子どもによくみられる口・喉の感染症を、ウイルス・細菌・真菌のどれが原因かで分類できるかを問う問題だ。病名を見て、すぐに病原体が思い浮かぶかどうかがポイントだよ。
医学生医学生
夏かぜ系の病気がいくつか並んでいるので、ウイルスが多そうな印象です。
ドクタードクター
いい第一印象だね。まずヘルパンギーナと手足口病。どちらもエンテロウイルス属、主にコクサッキーウイルスによる感染症で、夏に乳幼児の間で流行する。
医学生医学生
小児科の実習で、ヘルパンギーナの子の口の中を見せてもらいました。のどの奥、軟口蓋のあたりに小さな水疱が並んでいました。
ドクタードクター
まさにそれが特徴だ。突然の高熱と、軟口蓋から口蓋弓にかけての小水疱やアフタ。のどが痛くて飲めなくなるから、脱水に注意が必要だ。手足口病は口の中に加えて、手のひら、足の裏、おしりなどに水疱性の発疹が出る。多くは数日で治るけれど、エンテロウイルスA71では無菌性髄膜炎や脳幹脳炎といった中枢神経合併症に気をつける必要がある。
医学生医学生
鵞口瘡は、名前からするとウイルスか細菌かよくわかりません。
ドクタードクター
鵞口瘡は口腔カンジダ症、つまり真菌感染なんだ。舌や頬の粘膜に、ミルクかすのような白い苔状の付着物がつく。ミルクかすなら簡単にぬぐえるけど、鵞口瘡の白苔は剥がれにくく、無理に剥がすと出血しやすい点で区別するよ。
医学生医学生
新生児以外でも見ることはありますか。
ドクタードクター
あるよ。成人では免疫不全、広域抗菌薬の長期使用、糖尿病、義歯、それに吸入ステロイドの使用が誘因になる。喘息の患者さんに吸入後のうがいを指導するのは、これを防ぐためでもあるんだ。
医学生医学生
残るのはクループ症候群と急性喉頭蓋炎ですね。どちらも喉が狭くなる病気なので、正直どちらが細菌か迷います。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だ。クループ症候群は声門下を中心とした喉頭の炎症性浮腫で、大部分はウイルス性。パラインフルエンザウイルスが約75%を占め、ほかにRSウイルスやインフルエンザウイルスなども原因になる。犬が吠えるような咳、嗄声、吸気性喘鳴が特徴だね。
医学生医学生
ということは、細菌が原因なのは急性喉頭蓋炎ですね。
ドクタードクター
正解。急性喉頭蓋炎は喉頭蓋とその周囲、つまり声門上の細菌感染症で、代表的な起炎菌はインフルエンザ菌b型、Hibだ。Hibワクチンが普及してから小児例は激減して、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、A群溶血性レンサ球菌なども原因となり、相対的に成人例の割合が増えている。
医学生医学生
CBTの勉強で、喉頭蓋炎はthumb sign、クループはsteeple signと覚えました。
ドクタードクター
いい整理だ。頸部側面X線で喉頭蓋が親指のように腫れるのがthumb sign、正面像で声門下が鉛筆の先のように細くなるのがsteeple signだね。症状も対照的で、喉頭蓋炎は高熱、強い咽頭痛、嚥下困難、よだれ、こもった含み声が中心で、咳はあまり目立たない。前かがみで顎を突き出す姿勢をとることも特徴だ。
医学生医学生
喉頭蓋炎のほうが危ない、と聞いたことがあります。
ドクタードクター
その通り。急性喉頭蓋炎は急速に気道閉塞が進み、窒息しうる緊急疾患だ。だから診察で子どもを泣かせたり、仰向けに寝かせたり、舌圧子で無理にのどを見たりしてはいけない。それが引き金になって完全閉塞を起こすおそれがあるからね。まず気道確保の準備を整え、そのうえで抗菌薬、たとえば第3世代セフェム系の静注で治療する。
医学生医学生
クループのほうは、アドレナリン吸入とステロイドが治療でしたよね。
ドクタードクター
そう、クループは多くが軽症から中等症で経過し、夜間に悪化しやすい。同じ「喉が狭くなる病気」でも、細菌性で声門上の喉頭蓋炎は一刻を争う、ウイルス性で声門下のクループは多くが外来で対応できる、という対比で覚えておくと臨床でも役立つよ。

まとめ

小児の口腔・咽頭・喉頭の感染症は、病原体で整理すると理解しやすくなります。ヘルパンギーナと手足口病はコクサッキーウイルスなどエンテロウイルス属による夏かぜ、クループ症候群は主にパラインフルエンザウイルスによるウイルス性疾患、鵞口瘡はカンジダによる真菌感染症であり、細菌感染が原因となるのは急性喉頭蓋炎です。急性喉頭蓋炎はインフルエンザ菌b型が代表的な起炎菌で、高熱、流涎、含み声、前傾姿勢、頸部側面X線のthumb signを特徴とし、急速に窒息に至りうるため、診察時に刺激を避けて気道確保を最優先します。犬吠様咳嗽とsteeple signを示すウイルス性のクループとの対比は、上気道狭窄をきたす子どもを前にしたときの緊急度の判断に直結する重要な知識です。

解答・解説

正解はcです

小児によくみられる口腔・咽頭・喉頭の感染症を、病原体の種類(ウイルス・細菌・真菌)で分類できるかを問う問題である。 選択肢を病原体で並べると次のようになる。 ・ウイルス: ヘルパンギーナ、手足口病(いずれもエンテロウイルス属)、クループ症候群(主にパラインフルエンザウイルス) ・細菌: 急性喉頭蓋炎(代表はインフルエンザ菌b型) ・真菌: 鵞口瘡(カンジダ) したがって細菌感染が原因となるのは急性喉頭蓋炎である。上気道の狭窄症状をきたす疾患として急性喉頭蓋炎とクループ症候群はよく比較されるが、前者は細菌性で急速に進行して窒息しうるのに対し、後者はウイルス性で多くは軽症〜中等症で経過する、という対比で整理しておくとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ヘルパンギーナ

    誤り。ヘルパンギーナはエンテロウイルス属、主にA群コクサッキーウイルスによるウイルス感染症である。夏季に乳幼児の間で流行する「夏かぜ」の代表で、突然の高熱と、軟口蓋から口蓋弓にかけての小水疱・アフタ(浅い潰瘍)を特徴とする。咽頭痛のため哺乳・摂食不良となり、脱水に注意する。

  2. ×b.  クループ症候群

    誤り。クループ症候群は声門下を中心とした喉頭の炎症性浮腫により、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴をきたす病態の総称である。感染性のものの大部分はウイルス性で、パラインフルエンザウイルス(1〜3型)が約75%を占め、ほかにインフルエンザウイルス、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、アデノウイルス、麻疹ウイルスなども原因となる。なお、細菌性気管炎のように細菌が関与する病態もクループ様症状を示すが、クループ症候群の主因はウイルスである。

  3. ○c.  急性喉頭蓋炎

    正解。急性喉頭蓋炎は喉頭蓋とその周囲(声門上部)の細菌感染症で、起炎菌の代表はインフルエンザ菌b型(Hib: Haemophilus influenzae type b)である。Hibワクチンの普及後は小児例が激減し、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、A群溶血性レンサ球菌なども原因となり、成人例の割合が相対的に増えている。高熱、強い咽頭痛、嚥下困難、流涎、こもった声(含み声)、前かがみで顎を突き出す姿勢(sniffing position / tripod position)が特徴で、急速に気道閉塞が進み窒息しうる。頸部側面X線での喉頭蓋腫大(thumb sign)が知られる。診察時に患児を泣かせたり仰臥位にしたり、舌圧子で咽頭を無理に観察したりすると気道閉塞を誘発するおそれがあるため避け、気道確保の準備を優先する。治療は第3世代セフェム系抗菌薬の静注などである。

  4. ×d.  手足口病

    誤り。手足口病はエンテロウイルス属のウイルス感染症で、コクサッキーウイルスA16、A6、エンテロウイルスA71などが主な原因である。夏季に乳幼児で流行し、口腔粘膜の水疱・アフタと、手掌・足底・殿部などの水疱性発疹を特徴とする。多くは数日で自然軽快するが、エンテロウイルスA71では無菌性髄膜炎や脳幹脳炎などの中枢神経合併症に注意する。

  5. ×e.  鵞口瘡

    誤り。鵞口瘡は口腔カンジダ症(偽膜性カンジダ症)であり、真菌であるカンジダ(主にCandida albicans)による感染症である。舌や頬粘膜に、ミルクかすに似た白色の苔状・偽膜状の付着物がみられ、周囲の炎症所見に乏しい。ミルクかすと異なり容易にはぬぐい取れない点で区別する。新生児・乳児では基礎疾患がなくてもよくみられる。成人では免疫不全(HIV感染症など)、副腎皮質ステロイド(吸入薬を含む)の使用、広域抗菌薬の長期投与、糖尿病、義歯などが誘因となる。

エンテロウイルス属の概要

エンテロウイルスは腸管で増殖するRNAウイルスの一群で、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群・B群、エコーウイルス、エンテロウイルス(68〜71型など)が含まれる。糞口感染や飛沫感染でうつり、夏季を中心に流行する。代表的な疾患は、ヘルパンギーナ、手足口病、無菌性髄膜炎、心筋炎・心膜炎(コクサッキーB群)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70など)、流行性筋痛症(コクサッキーB群)などである。

急性喉頭蓋炎とクループ症候群の比較

・病原体: 急性喉頭蓋炎は細菌(Hibなど)、クループ症候群は主にウイルス(パラインフルエンザウイルス)。 ・好発: 急性喉頭蓋炎は(Hibワクチン導入前は)2〜7歳頃の小児、近年は成人例も多い。クループは生後6か月〜3歳頃に多い。 ・症状: 急性喉頭蓋炎は高熱、流涎、嚥下困難、含み声で、咳は目立たない。クループは犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴が中心で、夜間に悪化しやすい。 ・画像: 急性喉頭蓋炎は頸部側面X線で thumb sign、クループは頸部正面X線で声門下狭窄による steeple sign(ペンシルサイン)。 ・治療: 急性喉頭蓋炎は気道確保と抗菌薬、クループはアドレナリン吸入と副腎皮質ステロイド(デキサメタゾンなど)。

口腔の白色病変

鵞口瘡(カンジダ)の白苔はぬぐうと剥がれにくく、無理に剥がすと出血しやすい。一方、ミルクかすは容易に取れる。

POINT

・急性喉頭蓋炎は細菌感染(代表はインフルエンザ菌b型)で、窒息の危険がある緊急疾患。流涎、含み声、sniffing position、thumb sign。 ・クループ症候群はウイルス性(パラインフルエンザウイルスが約75%)。犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴、steeple sign。 ・ヘルパンギーナ・手足口病はエンテロウイルス属(コクサッキーウイルスなど)による夏かぜ。 ・鵞口瘡は真菌(カンジダ)感染症。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。