StudyMed医師国家試験

名前で見抜く卵巣腫瘍―「漿液性」「明細胞」は上皮性のサイン

第103回医師国家試験 I問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第33問

卵巣腫瘍で表層上皮性・間質性腫瘍はどれか。2つ選べ。

  1. a.線維腫
  2. b.明細胞腺癌
  3. c.漿液性嚢胞腺腫
  4. d.未分化胚細胞腫
  5. e.成熟嚢胞性奇形腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は卵巣腫瘍の組織分類の問題だ。卵巣腫瘍は種類が多くて混乱しやすいけれど、「どの細胞から発生したか」で3つのグループに分けると一気に整理できる。選択肢の腫瘍をそのグループに振り分けられるかがポイントだよ。
医学生医学生
3つというと、上皮性、性索間質性、胚細胞性でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。1つ目の表層上皮性・間質性腫瘍は、卵巣の表面を覆う体腔上皮や、そこからできた封入嚢胞、子宮内膜症性病変などから発生する。2つ目の性索間質性腫瘍は、卵胞をつくる顆粒膜細胞や莢膜細胞、卵巣間質の線維芽細胞から。3つ目の胚細胞腫瘍は、卵子のもとになる原始胚細胞から発生するんだ。
医学生医学生
病理学の講義では名前だけ覚えようとして、どれがどこに入るか混乱していました。
ドクタードクター
実は上皮性腫瘍は名前で見分けやすいんだ。「漿液性」「粘液性」「類内膜」「明細胞」「ブレンナー」といった語が付いて、「腺腫」「腺癌」のように腺上皮を示す語で終わっていれば、まず上皮性と考えていい。
医学生医学生
それなら明細胞腺癌と漿液性嚢胞腺腫が上皮性ですね。
ドクタードクター
正解。漿液性嚢胞腺腫は卵管上皮に似た線毛上皮に覆われ、さらさらした漿液をためる良性の嚢胞性腫瘍で、良性卵巣腫瘍の中でも頻度が高い。同じ漿液性の系列には境界悪性腫瘍と悪性の漿液性癌があって、上皮性腫瘍では組織型ごとに良性・境界悪性・悪性の3段階があるのが特徴だ。
医学生医学生
明細胞腺癌は、細胞質が明るく抜けて見えるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。グリコーゲンが多いため細胞質が淡明に見える細胞や、核が内腔側へ飛び出す鋲釘状(hobnail)の細胞が特徴だ。子宮内膜症性嚢胞、いわゆるチョコレート嚢胞を母地に発生することが多く、日本では欧米より頻度が高い。抗癌薬が効きにくい傾向がある点も覚えておこう。
医学生医学生
婦人科の実習で、チョコレート嚢胞の患者さんを定期的に画像でフォローしている理由を教わりました。癌化のリスクがあるからなんですね。
ドクタードクター
その通り。では残りを見ていこう。線維腫はどうかな。
医学生医学生
「腫」で終わっているので上皮性かと一瞬思いましたが、線維芽細胞由来なら性索間質性ですね。
ドクタードクター
そう。卵巣間質の線維芽細胞に由来する良性の充実性腫瘍で、硬い腫瘤をつくる。腹水や胸水を伴い、腫瘍を切除すると胸腹水が消えるものをMeigs症候群と呼ぶ。CBTでもよく問われるね。
医学生医学生
未分化胚細胞腫と成熟嚢胞性奇形腫は、名前の通り胚細胞腫瘍ですか。
ドクタードクター
そうだね。未分化胚細胞腫は精巣のセミノーマに相当する悪性胚細胞腫瘍で、10〜20歳代に多く、血清LDHが上がりやすい。放射線や化学療法がよく効くのが特徴だ。成熟嚢胞性奇形腫、いわゆる皮様嚢腫は3胚葉成分を含み、嚢胞内に皮脂・毛髪・歯などがみられる良性腫瘍で、若い女性に多く茎捻転を起こしやすい。
医学生医学生
奇形腫も悪性化することはあるんですか。
ドクタードクター
まれに扁平上皮癌への悪性転化があり、閉経後の高齢者に多い。年齢の傾向として、上皮性の悪性腫瘍は中高年、胚細胞腫瘍は若年者に多いと覚えておくと、症例問題で役に立つよ。
医学生医学生
性索間質性腫瘍には、ホルモンを出すものもありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。莢膜細胞腫や顆粒膜細胞腫はエストロゲンを産生し、セルトリ・ライディッヒ細胞腫はアンドロゲンを産生して男性化をきたす。胚細胞腫瘍では卵黄嚢腫瘍でAFP、非妊娠性絨毛癌でhCGが上がる。腫瘍マーカーやホルモン症状も分類と結びつけておこう。最後に用語の補足だ。「表層上皮性・間質性腫瘍」は旧分類の呼び方で、現在の取扱い規約では「上皮性腫瘍」、「明細胞腺癌」も「明細胞癌」と表記するのが一般的だよ。
医学生医学生
上皮性腫瘍が卵巣腫瘍の大半を占めるなら、まずこのグループをしっかり押さえるのが大事ですね。
ドクタードクター
その通り。上皮性腫瘍は卵巣腫瘍全体の約3分の2を占め、卵巣癌の大部分もこの群から生じる。分類を軸にして、年齢・マーカー・合併症を肉付けしていけば、卵巣腫瘍は怖くないよ。

まとめ

卵巣腫瘍は、発生母地によって表層上皮性・間質性腫瘍(現行分類では上皮性腫瘍)、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3群に分けて整理します。漿液性・粘液性・類内膜・明細胞・ブレンナーといった名前が付くものは上皮性腫瘍で、本問では漿液性嚢胞腺腫と明細胞腺癌が該当し、明細胞癌は子宮内膜症性嚢胞を母地としやすい点が重要です。線維腫はMeigs症候群を伴いうる性索間質性腫瘍、未分化胚細胞腫と成熟嚢胞性奇形腫は若年者に多い胚細胞腫瘍です。上皮性腫瘍は卵巣腫瘍の約3分の2を占め、卵巣癌の大部分を含みます。分類を軸に、好発年齢・腫瘍マーカー・産生ホルモン・合併症を結びつけて覚えることが、卵巣腫瘍の診断問題を解く力につながります。

解答・解説

正解はb, cです

卵巣腫瘍は、どの組織を起源とするかによって大きく3群に分けて整理する。 ①表層上皮性・間質性腫瘍(現行分類では「上皮性腫瘍」):卵巣表面を覆う上皮(体腔上皮)や、それに由来する封入嚢胞、子宮内膜症性病変などから発生する。 ②性索間質性腫瘍:卵胞を構成する顆粒膜細胞・莢膜細胞や、卵巣間質の線維芽細胞などから発生する。 ③胚細胞腫瘍:卵子のもとになる原始胚細胞から発生する。 本問は、選択肢の腫瘍を上の3群に振り分けられるかを問うている。上皮性腫瘍は組織型の名前で見分けやすい。「漿液性」「粘液性」「類内膜」「明細胞」「移行上皮(ブレンナー)」といった語が付き、「腺腫」「腺癌」など腺上皮を示す語で終わるものはこの群に属する。一方、「線維腫」「莢膜細胞腫」「顆粒膜細胞腫」は性索間質性、「奇形腫」「未分化胚細胞腫」「卵黄嚢腫瘍」などは胚細胞腫瘍である。 この考え方で振り分けると、表層上皮性・間質性腫瘍に当たるのは明細胞腺癌と漿液性嚢胞腺腫の2つである。

選択肢考察

  1. ×a.  線維腫

    線維腫は卵巣間質の線維芽細胞に由来する良性腫瘍で、性索間質性腫瘍に分類される。膠原線維に富む充実性の硬い腫瘤をつくり、閉経前後の女性に多い。腹水や胸水を伴うことがあり、腫瘍の切除によって胸腹水が消えるものをMeigs症候群という。表層上皮性・間質性腫瘍ではない。

  2. ○b.  明細胞腺癌

    明細胞癌はグリコーゲンを多く含むため細胞質が明るく抜けて見える腫瘍細胞や、核が内腔側へ突出する鋲釘(hobnail)状の細胞からなる悪性上皮性腫瘍で、表層上皮性・間質性腫瘍に属する。子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)を母地として発生することが多い。日本では欧米より頻度が高く、卵巣癌の中で漿液性癌に次いで多い。抗癌薬が効きにくい傾向がある。

  3. ○c.  漿液性嚢胞腺腫

    漿液性嚢胞腺腫は卵管上皮に似た線毛をもつ上皮に覆われ、内部にさらさらした漿液性の液体をためる嚢胞性の良性腫瘍である。表層上皮性・間質性腫瘍に属し、良性卵巣腫瘍の中でも頻度が高い。同じ漿液性の系列には、境界悪性腫瘍と悪性の漿液性癌がある。

  4. ×d.  未分化胚細胞腫

    未分化胚細胞腫(ディスジャーミノーマ)は原始胚細胞に由来する悪性胚細胞腫瘍で、精巣のセミノーマに相当する。10〜20歳代の若年女性に多い。血清LDH(乳酸脱水素酵素)が上昇しやすく、放射線や化学療法がよく効く。表層上皮性・間質性腫瘍ではない。

  5. ×e.  成熟嚢胞性奇形腫

    成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)は胚細胞に由来する良性の胚細胞腫瘍である。外胚葉・中胚葉・内胚葉の成分を含み、嚢胞内に皮脂・毛髪・歯・骨などがみられる。若年女性に多く、卵巣腫瘍の中で頻度が最も高いものの一つである。茎捻転を起こしやすい。まれに扁平上皮癌への悪性転化を起こし、閉経後の高齢者に多い。表層上皮性・間質性腫瘍ではない。

卵巣腫瘍の組織分類と代表例

①表層上皮性・間質性腫瘍(上皮性腫瘍):卵巣腫瘍全体の約2/3を占める最大の群で、卵巣癌の大部分(70〜80%以上)もこの群から生じる。組織型ごとに良性・境界悪性・悪性の3段階がある。 ・漿液性:漿液性嚢胞腺腫/漿液性境界悪性腫瘍/漿液性癌(高異型度と低異型度に分けられる) ・粘液性:粘液性嚢胞腺腫/粘液性境界悪性腫瘍/粘液性癌 ・類内膜:類内膜癌など(子宮内膜症との関連がある) ・明細胞:明細胞癌(子宮内膜症との関連が強い) ・ブレンナー腫瘍(移行上皮に似た腫瘍) ②性索間質性腫瘍:線維腫、莢膜細胞腫(エストロゲンを産生する)、成人型・若年型顆粒膜細胞腫(エストロゲンを産生する)、セルトリ・ライディッヒ細胞腫(アンドロゲンを産生し、男性化をきたす)など。 ③胚細胞腫瘍:成熟嚢胞性奇形腫、未熟奇形腫、未分化胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍(AFP高値)、胎芽性癌、非妊娠性絨毛癌(hCG高値)、卵巣甲状腺腫など。若年者に多い。

発生年齢の目安

上皮性の悪性腫瘍は中高年に多く、胚細胞腫瘍は10〜20歳代の若年者に多い。

用語の変遷

「表層上皮性・間質性腫瘍」は旧WHO分類・旧取扱い規約の呼び方で、現行のWHO分類および卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約(2016年〜)では「上皮性腫瘍」と呼ぶ。また「明細胞腺癌」も現在は「明細胞癌」と表記するのが一般的である。

POINT

・卵巣腫瘍は、表層上皮性・間質性(上皮性)、性索間質性、胚細胞性の3群に分けて覚える。 ・漿液性・粘液性・類内膜・明細胞・ブレンナーという名前が付けば上皮性腫瘍である。 ・線維腫・莢膜細胞腫・顆粒膜細胞腫は性索間質性腫瘍である。 ・奇形腫・未分化胚細胞腫・卵黄嚢腫瘍は胚細胞腫瘍である。 ・上皮性腫瘍は卵巣腫瘍の約2/3を占め、卵巣癌の大部分がこの群に含まれる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。