StudyMed医師国家試験

男の子にだけ現れる病気―X連鎖劣性遺伝を家系図と代表疾患で攻略する

第103回医師国家試験 I問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第19問

X連鎖劣性遺伝病はどれか。2つ選べ。

  1. a.Duchenne型進行性筋ジストロフィー
  2. b.Huntington病
  3. c.Hurler症候群
  4. d.Lesch-Nyhan症候群
  5. e.Marfan症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、遺伝形式から疾患を選ぶ問題だ。ポイントは、X連鎖劣性遺伝がどんな仕組みで、どんな家系パターンをとるかを理解したうえで、代表疾患の遺伝形式を正確に覚えているかどうか。まずは仕組みから確認しよう。X連鎖劣性遺伝病では、なぜ患者のほとんどが男性になるのかな。
医学生医学生
男性はX染色体が1本しかないので、そこに変異があると補ってくれる正常なXがないからです。
ドクタードクター
その通り。これをヘミ接合という。女性はもう1本の正常なX染色体が機能を補うので、多くは発症しない保因者になる。では家系図ではどんな特徴が出る?
医学生医学生
えっと、父親から息子には伝わらない、でしたっけ。遺伝医学の講義で家系図問題をたくさん解かされました。
ドクタードクター
正解。父は息子にY染色体を渡すから、父から息子への伝達は起こらない。逆に患者男性の娘は全員保因者になる。保因者女性の子どもでは、息子の2分の1が患者、娘の2分の1が保因者だ。この性質を踏まえて、選択肢を見ていこう。まずDuchenne型筋ジストロフィーは?
医学生医学生
男の子の病気の代表ですよね。小児科の実習で、床から立ち上がるときに膝に手をついてよじ登るGowers徴候の動画を見せてもらいました。
ドクタードクター
いい経験だね。Duchenne型はX染色体短腕にあるジストロフィン遺伝子の変異によるX連鎖劣性遺伝病だ。筋細胞膜を支えるジストロフィンがほぼ欠損するため、幼児期から近位筋優位の筋力低下が進み、腓腹筋の仮性肥大や血清CKの著明な上昇がみられる。ジストロフィンが一部残る軽症型のBecker型も、同じ遺伝子の異常でX連鎖劣性だ。
医学生医学生
Huntington病は舞踏運動の病気で、遺伝するのは覚えていますが、形式は…常染色体顕性でしたか。
ドクタードクター
合っているよ。第4染色体のHTT遺伝子でCAGリピートが異常に伸びるトリプレットリピート病で、常染色体顕性遺伝だ。舞踏運動、認知機能障害、精神症状を呈し、尾状核が萎縮する。父親から伝わるとリピートが伸びやすく、世代を追うごとに発症が早まる表現促進現象も特徴だね。
医学生医学生
Hurler症候群はムコ多糖症ですよね。ムコ多糖症にはX連鎖のものがあった気がして迷いました。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだ。ムコ多糖症は原則として常染色体劣性遺伝で、例外として唯一X連鎖劣性をとるのがII型のHunter症候群。Hurler症候群はI型の重症型で、α-L-イズロニダーゼ欠損による常染色体劣性遺伝だ。HurlerとHunter、名前が似ているから要注意。角膜混濁がHurlerではみられ、Hunterではみられないという違いも鑑別に役立つ。
医学生医学生
「Hunterだけ男の子」と覚えておきます。Lesch-Nyhan症候群は、自傷行為と高尿酸血症の病気でしたね。
ドクタードクター
そう。プリン体のサルベージ経路の酵素であるHGPRTが欠損するX連鎖劣性遺伝病だ。再利用されないプリン体が尿酸に代謝され、新生合成も亢進するので高尿酸血症になる。男児に、錐体外路症状や知的障害、唇や指を噛む自咬症がみられるのが特徴だ。
医学生医学生
生化学の講義で、プリン代謝の図と一緒に出てきました。代謝異常なのに常染色体劣性じゃないのが意外です。
ドクタードクター
良い気づきだね。先天代謝異常症の多くは常染色体劣性だから、Hunter症候群、Fabry病、Lesch-Nyhan症候群、副腎白質ジストロフィー、OTC欠損症といったX連鎖劣性の例外を個別に覚えておくと効率がいい。最後のMarfan症候群は?
医学生医学生
高身長、くも状指、水晶体偏位、大動脈解離ですよね。構造蛋白の異常なので常染色体顕性でしょうか。
ドクタードクター
その通り。第15染色体のFBN1遺伝子、つまりフィブリリン1の異常で常染色体顕性遺伝。男女とも同じ確率で発症する。構造蛋白の異常は顕性遺伝をとりやすい、という傾向も覚え方のヒントになる。
医学生医学生
まとめると、X連鎖劣性はDuchenne型筋ジストロフィーとLesch-Nyhan症候群の2つ。Huntington病とMarfan症候群は常染色体顕性、Hurler症候群は常染色体劣性ですね。
ドクタードクター
完璧だ。ほかのX連鎖劣性遺伝病として、血友病A・B、G6PD欠損症、赤緑色覚異常、X連鎖無ガンマグロブリン血症、Wiskott-Aldrich症候群などもセットで押さえておこう。そして臨床で知っておきたいのが、女性保因者でも症状が出ることがある点だ。
医学生医学生
保因者は発症しないと思っていました。
ドクタードクター
多くはそうだけれど、女性の細胞ではX染色体の片方がランダムに不活化される。その偏りによっては、正常なXが十分に働かず、Duchenne型の保因者で軽いCK上昇や心筋症がみられることがある。遺伝カウンセリングや保因者の健康管理では、この点も意識しておく必要があるんだ。

まとめ

X連鎖劣性遺伝病は、X染色体を1本しかもたない男性に主に発症し、父から息子への伝達がなく、保因者女性の息子の2分の1が発症するという家系上の特徴をもちます。代表例はジストロフィン遺伝子異常によるDuchenne型筋ジストロフィーと、HGPRT欠損によるLesch-Nyhan症候群で、ほかに血友病、Hunter症候群、Fabry病なども含まれます。Huntington病(CAGリピート伸長)とMarfan症候群(FBN1変異)は常染色体顕性、Hurler症候群は常染色体劣性であり、ムコ多糖症ではII型のHunter症候群のみがX連鎖劣性という例外に注意が必要です。先天代謝異常は常染色体劣性が原則でX連鎖の例外を覚える、構造蛋白異常は顕性が多いといった整理が有効です。X染色体不活化の偏りによって女性保因者にも症状が出うることを理解しておくと、遺伝カウンセリングや家族の診療にも役立ちます。

解答・解説

正解はa, dです

X連鎖劣性(潜性)遺伝病は、X染色体上の遺伝子の病的変異によって起こり、1本の正常なX染色体があれば発症しにくい疾患群である。男性(XY)はX染色体を1本しかもたないため、変異を受け継ぐと発症する(ヘミ接合)。女性(XX)はもう1本の正常なX染色体が機能を補うため、多くは発症しない保因者となる。 家系上の特徴は次のとおりである。 ・患者はほとんどが男性である。 ・父から息子への伝達はない(父は息子にY染色体を渡すため)。 ・患者男性の娘は全員保因者となる。 ・保因者女性の子では、息子の1/2が患者、娘の1/2が保因者となる。 本問では、各疾患の遺伝形式を覚えているかが問われる。Duchenne型筋ジストロフィーとLesch-Nyhan症候群はX連鎖劣性遺伝、Huntington病とMarfan症候群は常染色体顕性(優性)遺伝、Hurler症候群は常染色体劣性(潜性)遺伝である。「男児に限って発症する病気」の典型例として前二者を想起できるようにしておく。

選択肢考察

  1. ○a.  Duchenne型進行性筋ジストロフィー

    Duchenne(デュシェンヌ)型筋ジストロフィーは、X染色体短腕(Xp21)にあるジストロフィン遺伝子の変異(欠失が多く、ほかに重複・点変異)によるX連鎖劣性遺伝病である。筋細胞膜を支えるジストロフィンがほぼ完全に欠損するため、男児に幼児期から近位筋優位の筋力低下が進行し、登攀性起立(Gowers徴候)、腓腹筋の仮性肥大、血清CK(クレアチンキナーゼ)の著明な上昇がみられる。ジストロフィンが一部残存する軽症型のBecker型筋ジストロフィーも同じ遺伝子の異常で、同じくX連鎖劣性遺伝である。

  2. ×b.  Huntington病

    Huntington(ハンチントン)病は常染色体顕性(優性)遺伝の神経変性疾患である。第4染色体上のHTT(huntingtin)遺伝子のCAG反復配列が異常に伸長するトリプレットリピート病で、36回以上で発症しうる。舞踏運動、認知機能障害、精神症状を呈し、線条体(とくに尾状核)が萎縮する。父親から伝わるとリピートがより伸長しやすく、世代を経るごとに発症が早まり重症化する表現促進現象がみられる。

  3. ×c.  Hurler症候群

    Hurler(ハーラー)症候群はムコ多糖症I型の重症型で、ライソゾーム酵素α-L-イズロニダーゼの欠損により、デルマタン硫酸・ヘパラン硫酸が蓄積する。遺伝形式は常染色体劣性(潜性)である。粗な顔貌、骨変形、肝脾腫、角膜混濁、精神運動発達遅滞などがみられる。ムコ多糖症のなかで唯一X連鎖劣性遺伝をとるのはII型のHunter(ハンター)症候群であり、Hunter症候群では角膜混濁がみられない点も鑑別に役立つ。

  4. ○d.  Lesch-Nyhan症候群

    Lesch-Nyhan(レッシュ・ナイハン)症候群は、プリン体の再利用経路(サルベージ経路)の酵素であるヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)の欠損によるX連鎖劣性遺伝病である。サルベージされないプリン体が尿酸へ代謝され、さらにプリン体の新生合成も亢進するため、高尿酸血症(尿酸結石、痛風)をきたす。男児に、ジストニアや舞踏アテトーゼなどの錐体外路症状、知的障害、唇や指を噛みちぎる自傷行為(自咬症)がみられるのが特徴である。

  5. ×e.  Marfan症候群

    Marfan(マルファン)症候群は、第15染色体上の細胞外マトリックス蛋白フィブリリン1をコードするFBN1遺伝子の変異による常染色体顕性(優性)遺伝の結合組織疾患である。高身長・長い四肢とくも状指、水晶体偏位(亜脱臼)、大動脈基部拡張・大動脈解離、僧帽弁逸脱などを呈する。男女とも同じ確率で発症する。

遺伝形式ごとの代表的疾患

・X連鎖劣性(潜性): Duchenne型・Becker型筋ジストロフィー、血友病A・B、Lesch-Nyhan症候群、Hunter症候群(ムコ多糖症II型)、Fabry病、副腎白質ジストロフィー、G6PD欠損症、赤緑色覚異常、慢性肉芽腫症(多くはX連鎖)、Wiskott-Aldrich症候群、X連鎖無ガンマグロブリン血症(Bruton型)、Menkes病 など ・X連鎖顕性(優性): X連鎖低リン血症性くる病、Rett症候群(多くは女児に発症) など ・常染色体顕性(優性): Huntington病、Marfan症候群、筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症1型、家族性大腸腺腫症、多発性嚢胞腎(成人型)、遺伝性球状赤血球症、家族性高コレステロール血症 など ・常染色体劣性(潜性): 多くの先天代謝異常症(フェニルケトン尿症、Hurlerを含むHunter以外のムコ多糖症、Gaucher病、Tay-Sachs病、Wilson病など)、嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症 など

覚え方のヒント

・先天代謝異常症の多くは常染色体劣性であり、X連鎖劣性の例外(Hunter症候群、Fabry病、Lesch-Nyhan症候群、副腎白質ジストロフィー、OTC欠損症など)を個別に覚えるとよい。 ・構造蛋白の異常(Marfan症候群のフィブリリンなど)は常染色体顕性遺伝をとることが多い。

X連鎖劣性遺伝病の女性保因者

X染色体の不活化(ライオニゼーション)が偏ると、女性保因者でも軽い症状が出ることがある(Duchenne型の保因者における軽度のCK上昇や心筋症など)。

POINT

・X連鎖劣性遺伝: 患者はほぼ男性、父から息子への伝達なし、保因者女性の息子の1/2が発症。 ・Duchenne型筋ジストロフィー(ジストロフィン遺伝子)とLesch-Nyhan症候群(HGPRT欠損)はX連鎖劣性。 ・Huntington病(CAGリピート伸長)とMarfan症候群(FBN1)は常染色体顕性。 ・ムコ多糖症は常染色体劣性が原則で、II型Hunter症候群のみX連鎖劣性。Hurler症候群(I型)は常染色体劣性。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。