番号は大きさの順―遺伝子を最も多く載せる1番染色体と、トリソミーが教えるもの
第119回医師国家試験 E問題 第17問
国試問題にチャレンジ
最も多くの遺伝子を含む染色体はどれか。
- a.1番染色体
- b.16番染色体
- c.18番染色体
- d.21番染色体
- e.X染色体
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ヒトの常染色体は顕微鏡で見た大きさの順に番号が付けられており、最大の1番染色体は約2億5,000万塩基対、蛋白質をコードする遺伝子も約2,000個と全染色体で最多です。大きさと遺伝子数はおおむね比例しますが、19番のように小型でも遺伝子密度が高い染色体や、13番・18番・21番のように遺伝子密度が低い染色体があり、さらに21番は実際には22番より小さい最小の染色体です。出生に至る常染色体トリソミーが13・18・21番にほぼ限られるのは、これらの遺伝子数が少ないためと考えられており、性染色体の数的異常が比較的軽いのはX染色体不活化によるものです。染色体の大きさや遺伝子数を臨床像と結びつけて理解することは、染色体異常症や遺伝性疾患の病態を考えるうえでの基礎になります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
ヒトの染色体のうち、どれが最も多くの遺伝子を持つかを問う問題である。
考え方
ヒトの体細胞には22対の常染色体と1対の性染色体(XとY)がある。常染色体の番号は、顕微鏡で観察したときの大きさの順に、大きいものから1番、2番…と付けられた。そのため、番号が小さい染色体ほど一般にDNA量(塩基対数)が多く、そこに載っている遺伝子の数も多くなる傾向がある。 1番染色体はヒトで最大の染色体で、約2億5,000万塩基対(ゲノム全体の約8%)を含み、蛋白質をコードする遺伝子だけでも約2,000個と、全染色体の中で最多である。
注意点
大きさと遺伝子数は「おおむね」比例するが、厳密には一致しない。染色体の領域ごとに遺伝子の密度(一定の長さあたりの遺伝子数)が異なるためである。例えば19番染色体は小型だが遺伝子密度が非常に高く、反対に13番・18番・21番染色体は遺伝子密度が低い。それでも1番染色体は大きさ・遺伝子数ともに最大であり、本問の答えは迷わず決まる。
選択肢考察
- ○a. 1番染色体
ヒトで最も大きい染色体で、約2億5,000万塩基対、ゲノムDNAの約8%を占める。蛋白質をコードする遺伝子は約2,000個(非コードRNA遺伝子などを含めると約3,000個との推定もある)で、全染色体中最多である。唾液アミラーゼの遺伝子(AMY1A)やレプチン受容体の遺伝子(LEPR)などがここに位置する。
- ×b. 16番染色体
約9,000万塩基対(ゲノムの約3%)の中型の染色体で、蛋白質をコードする遺伝子は約800〜900個と推定される。αグロビン遺伝子群(α サラセミアに関与)や、常染色体優性多発性嚢胞腎の原因遺伝子PKD1などが存在する。遺伝子数は1番染色体の半分にも満たない。
- ×c. 18番染色体
約8,000万塩基対(ゲノムの約2.5%)の染色体で、遺伝子密度が低く、蛋白質をコードする遺伝子は約200〜300個にとどまる。遺伝子が少ないことが、18トリソミー(Edwards症候群)が出生まで至りうる理由の一つと考えられている。
- ×d. 21番染色体
実際の大きさはヒトの染色体で最小(約4,700万塩基対、ゲノムの約1.5%)である。番号付けの当時、22番より大きいと誤って判定されたため21番の名が付いたまま残っている。蛋白質をコードする遺伝子は約200〜300個と少ない。遺伝子が少ないため、21トリソミー(Down症候群)は常染色体トリソミーの中で最も長期生存が可能である。ヒトゲノム計画では、22番に次いで2番目に全塩基配列が決定された染色体(2000年)でもある。
- ×e. X染色体
約1億5,600万塩基対(ゲノムの約5%)の比較的大きな染色体で、蛋白質をコードする遺伝子は約800〜900個(推定法により1,000個を超えるとの報告もある)である。1番染色体の半分程度にとどまる。Duchenne型筋ジストロフィーのジストロフィン遺伝子や血友病の凝固因子遺伝子など、X連鎖遺伝病の原因遺伝子が多数存在する。
ヒトゲノムの基本
・ヒトの一倍体ゲノムは約30億塩基対で、蛋白質をコードする遺伝子は約2万個と推定されている。ゲノム全体のうち、蛋白質をコードする部分はわずか1〜2%程度である。 ・常染色体は1〜22番、性染色体はXとYである。Y染色体は小さく遺伝子も少ない(蛋白質コード遺伝子は数十個程度)が、精巣の分化を決めるSRY遺伝子を持つ。
染色体番号と大きさ
・番号はおおむね大きい順だが例外がある。21番は22番より小さい(実際の最小染色体は21番)。 ・遺伝子密度が高い染色体:19番、17番、22番など。 ・遺伝子密度が低い染色体:13番、18番、21番、4番など。
トリソミーと遺伝子数の関係
出生に至る常染色体トリソミーは13番(Patau症候群)、18番(Edwards症候群)、21番(Down症候群)にほぼ限られる。いずれも遺伝子数の少ない染色体であり、過剰になる遺伝子の量が比較的少ないため致死的になりにくいと考えられている。1番染色体のような遺伝子の多い染色体の完全トリソミーは、胎生早期に致死となる。
X染色体と遺伝子量補正
女性はX染色体を2本持つが、一方は不活化される(ライオニゼーション、X染色体不活化)。そのため、性染色体の数的異常(Klinefelter症候群やTurner症候群など)は常染色体の数的異常に比べて症状が軽く、生存しやすい。
POINT
・1番染色体は最大の染色体で、遺伝子数も最多(蛋白質コード遺伝子約2,000個)。 ・常染色体の番号は大きい順に付けられたが、21番は22番より小さく、実際の最小は21番。 ・13・18・21番は遺伝子が少ないため、これらのトリソミーは出生に至りうる。 ・染色体の大きさと遺伝子数はおおむね比例するが、19番のように小型でも遺伝子密度の高い染色体がある。
