StudyMed医師国家試験

「医師の指示があればOK」ではない―採血できる職種を分けるのは根拠法

第118回医師国家試験 B問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第118回 B問題 第1問

医師の指示があっても採血できない職種はどれか。

  1. a.看護師
  2. b.助産師
  3. c.保健師
  4. d.薬剤師
  5. e.臨床検査技師

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、採血という行為を誰が行えるのかを問う医事法規の問題だ。着眼点は「医師の指示があるかどうか」ではなく、「その職種の法律に、採血が業務として書かれているかどうか」。まず、採血は法的にどういう行為に当たるか考えてみよう。
医学生医学生
針を刺して血を採るので、身体に危険を及ぼしうる医行為ですよね。公衆衛生の講義で、医師法17条で医業は医師にしか許されていないと習いました。
ドクタードクター
その通り。医行為は原則として医師だけが行える。ただし例外があって、法律で「診療の補助」として認められた職種は、医師の指示のもとで一部の医行為を行えるんだ。
医学生医学生
じゃあ、医療職なら医師が指示すれば誰でも採血できるわけではないんですね。てっきり指示があれば大丈夫だと思っていました。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。医師の指示は必要条件であって、十分条件ではない。各職種の根拠法に、その行為が業務として定められていることが前提になる。では看護師から見ていこう。
医学生医学生
臨床実習の病棟では、朝の採血を看護師さんがしていました。
ドクタードクター
看護師の業務は保健師助産師看護師法、いわゆる保助看法で「療養上の世話」と「診療の補助」と定められている。採血は診療の補助に含まれるから、医師の指示があれば行える。静脈注射や点滴の管理もこの枠組みだ。
医学生医学生
助産師と保健師はどうでしょう。お産や地域保健のイメージが強くて、採血とは結びつきにくいです。
ドクタードクター
イメージに引っ張られやすいところだね。保助看法では、保健師と助産師は看護師業務を行うことを制限されないとされている。さらに現行制度では、保健師・助産師になるには看護師国家試験の合格も必要だから、看護師資格も併せ持っている。だから医師の指示があれば採血できる。
医学生医学生
臨床検査技師は、外来の採血室で採血しているのを見ました。
ドクタードクター
臨床検査技師等に関する法律で、保助看法の規定にかかわらず、診療の補助として医師の具体的な指示を受けて採血を行えると明記されている。検体検査と生理学的検査が業務の柱で、2015年の法改正では鼻腔・咽頭拭い液の採取など一部の検体採取も加わった。
医学生医学生
残るのは薬剤師ですね。病院薬剤部の見学では、調剤や病棟での服薬指導をしていました。
ドクタードクター
薬剤師法に定める業務は調剤、服薬指導、医薬品の供給・管理などで、採血や診療の補助を認める規定はない。だから医師の指示があっても患者から採血することはできない。これが正解だ。
医学生医学生
薬局で簡易血液検査をしているのを見たことがありますが、あれは薬剤師が刺しているわけではないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。薬局などの検体測定室では、指先の穿刺は利用者自身が行うこととされていて、薬剤師が穿刺することは認められていない。この点からも、薬剤師には採血の権限がないとわかる。
医学生医学生
つまり「誰の指示か」ではなく「その職種の法律に何が書いてあるか」で判断する、ということですね。
ドクタードクター
そう。他職種も同じ考え方で整理できる。診療放射線技師は放射線照射と、造影剤注入のための静脈路確保など画像検査に関連する一部の行為、臨床工学技士は生命維持管理装置の操作とそれに付随する範囲、救急救命士は医師の指示による静脈路確保などの救急救命処置。どれも個別の法律で範囲が決まっているんだ。
医学生医学生
チーム医療では、それぞれの職種ができることを正しく知っておかないと、知らずに違法な指示を出してしまいそうです。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での注意点だ。医師はチームに指示を出す立場だからこそ、各職種の業務範囲を把握しておく責任がある。タスク・シフトが進む今、なおさら大事な知識だよ。

まとめ

採血は身体に危害を及ぼしうる医行為であり、医師法により原則として医師のみが行えますが、法律で「診療の補助」として認められた職種は医師の指示のもとで実施できます。看護師は保助看法に基づき診療の補助として採血でき、保健師・助産師も看護師業務を行えるため採血が可能です。臨床検査技師は臨床検査技師等に関する法律で、医師の具体的な指示による採血が明記されています。一方、薬剤師法には採血や診療の補助の規定がなく、薬剤師は医師の指示があっても採血できません。「医師の指示があるか」ではなく「根拠法に業務として規定されているか」で判断する視点は、チーム医療で適切な指示を出すうえでも欠かせない知識です。

解答・解説

正解はdです

テーマ

採血は針を刺して血液を採取する行為であり、身体に危害を及ぼしうる「医行為」にあたる。医行為は原則として医師(歯科領域では歯科医師)しか行えないが、法律で「診療の補助」として認められた職種に限り、医師の指示のもとで行うことができる。

考え方

・看護職(看護師・助産師・保健師):保健師助産師看護師法(保助看法)で看護師の業務として「診療の補助」が定められており、採血・静脈注射などを医師の指示のもとに行える。保健師・助産師も同法により看護師業務(診療の補助)を行うことが認められている。 ・臨床検査技師:臨床検査技師等に関する法律で、診療の補助として医師の具体的な指示を受けて採血を行うことが明記されている。 ・薬剤師:薬剤師法に定める業務は調剤や医薬品の供給などであり、採血を認める規定はない。医師の指示があっても採血はできない。 したがって、医師の指示があっても採血できない職種は薬剤師である。「誰の指示があればよいか」ではなく、「その職種の根拠法に採血(診療の補助)が業務として規定されているか」で判断するのがポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  看護師

    看護師の業務は、保助看法第5条で「療養上の世話」と「診療の補助」と定められている。採血は診療の補助に含まれ、医師の指示があれば実施できる。採血のほか静脈注射や点滴の管理なども診療の補助として行える。採血できる職種であるため、本問の答えではない。

  2. ×b.  助産師

    助産師は、保助看法により看護師の業務(療養上の世話・診療の補助)を行うことが認められている。また現行制度では、助産師になるには看護師国家試験にも合格している必要があり、看護師としての資格も併せ持つ。したがって医師の指示のもとで採血を行うことができる。

  3. ×c.  保健師

    保健師も保助看法により看護師の業務を行うことが認められており、現行制度では看護師国家試験の合格も要件となっているため、看護師としての資格も有する。地域保健活動が主な業務であるが、診療の補助として医師の指示のもとで採血を行うことができる。

  4. ○d.  薬剤師

    薬剤師の業務は薬剤師法に基づき、処方箋の監査・調剤、服薬指導、医薬品の供給・管理などである。薬剤師法には診療の補助や採血を業務とする規定がなく、医師の指示があっても患者から採血することはできない。なお、薬局などの検体測定室で行われる簡易血液検査では、穿刺は利用者自身が行うこととされており、薬剤師が穿刺を行うことは認められていない。

  5. ×e.  臨床検査技師

    臨床検査技師は、臨床検査技師等に関する法律により、保助看法の規定にかかわらず、診療の補助として医師(または歯科医師)の具体的な指示を受けて採血を行うことができる。業務は検体検査(血液・尿・微生物など)と生理学的検査(心電図、呼吸機能、脳波、超音波など)に大別され、検査に必要な採血を多くの医療機関で担当している。2015年施行の法改正により、鼻腔・咽頭拭い液の採取など一部の検体採取も業務に加えられた。

医行為と診療の補助

・医師法第17条により、医業(医行為を反復継続して行うこと)は医師以外は行えない。 ・保助看法第31条・第32条により、看護師・准看護師以外の者は看護師業務(療養上の世話・診療の補助)を行ってはならないが、保健師・助産師はこの制限を受けない。准看護師は医師・歯科医師・看護師の指示を受けて同様の業務を行う。 ・その他の医療職は、それぞれの根拠法で「保助看法の規定にかかわらず、診療の補助として〇〇を行うことができる」と個別に定められた範囲の行為のみ行える。

主な職種と業務の例

・臨床検査技師:採血、検体採取(鼻咽頭拭い液など)、生理学的検査。 ・診療放射線技師:放射線の照射、画像検査に関連する一部の行為(造影剤注入のための静脈路確保など)。 ・臨床工学技士:生命維持管理装置の操作。装置の回路からの採血など装置操作に付随する範囲に限られる。 ・救急救命士:救急救命処置(医師の指示による静脈路確保・輸液など)。 ・薬剤師:調剤・服薬指導など。採血や注射は業務に含まれない。

POINT

・採血は医行為であり、法律で「診療の補助」として認められた職種のみ医師の指示下で実施できる。 ・採血できる:看護師・助産師・保健師・准看護師(保助看法)、臨床検査技師(臨床検査技師等に関する法律)。 ・薬剤師は医師の指示があっても採血できない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。