子どもを守るネットワークに「入っていない」のは誰?―虐待対応の担当機関を法律から整理する
第103回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
被虐待児の対応に関与しないのはどれか。
- a.警察
- b.保健所
- c.児童相談所
- d.福祉事務所
- e.地域包括支援センター
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
児童虐待への対応は児童虐待防止法と児童福祉法に基づき、虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所のいずれかに通告する義務があります。中核となる児童相談所は安全確認や一時保護、立入調査を行い、必要に応じて警察に援助を求め、保健所・市町村保健センターは乳幼児健診や家庭訪問を通じて虐待の予防と早期発見を担います。一方、地域包括支援センターは介護保険法に基づく高齢者支援の機関であり、高齢者虐待には関わりますが児童虐待の担当機関ではありません。児童・高齢者・障害者・配偶者と、虐待の対象ごとに根拠法と窓口が異なることを整理しておくと、試験だけでなく臨床で虐待を疑ったときに迷わず適切な機関へつなぐ力になります。
解答・解説
正解はeです
本問は、児童虐待への対応にどの機関が関わるのかを問う一般問題である。「関与しない」ものを選ぶ形式であることに注意する。 児童虐待への対応は、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」と児童福祉法に基づいて行われる。虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所のいずれかに速やかに通告しなければならない。通告を受けた児童相談所は、安全確認、一時保護、立入調査などを行う中心的な機関であり、立入調査などの際に必要があれば警察に援助を求めることができる。また、母子保健を担う保健所・市町村保健センターは、乳幼児健診や家庭訪問などを通じて虐待の予防と早期発見に関わる。これらの関係機関は、市町村に設置される要保護児童対策地域協議会などで情報を共有し連携して対応する。 一方、地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置する、高齢者の地域生活を支える機関である。虐待のうち高齢者虐待への対応には関わるが、児童虐待への対応を担う機関ではない。虐待の対象(児童・高齢者・障害者・配偶者)ごとに根拠となる法律と担当機関が異なることを整理しておけば、正解を選べる。
選択肢考察
- ×a. 警察
警察は児童虐待への対応に関与する。児童虐待防止法では、児童相談所長などが安全確認や一時保護、立入調査、裁判所の許可状に基づく臨検・捜索を行う際に、必要に応じて警察署長に援助を求めることができると定められている。さらに、警察は110番通報や事件の捜査を通じて虐待を把握することがあり、その場合は児童相談所へ通告する。重大な身体的虐待や性的虐待は刑事事件として捜査の対象にもなる。
- ×b. 保健所
保健所は児童虐待への対応に関与する。保健所や市町村保健センターは、母子健康手帳の交付、妊婦・乳幼児健康診査、新生児・乳児の家庭訪問などの母子保健活動を担っており、望まない妊娠、育児不安、産後うつなど虐待のリスクがある家庭を早期に把握し支援する立場にある。児童相談所や市町村と連携して、虐待の予防・早期発見に取り組んでいる。
- ×c. 児童相談所
児童相談所は児童虐待への対応の中核を担う機関である。児童福祉法に基づき都道府県・指定都市などに設置され、虐待の通告先となるほか、通告を受けた児童の安全確認、一時保護、立入調査、保護者への指導、児童養護施設への入所措置、親権停止の申立てなどを行う。市町村、学校、保育所、医療機関、警察などと連携して対応する。全国共通の児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」も設けられている。
- ×d. 福祉事務所
福祉事務所は児童虐待への対応に関与する。児童虐待防止法では、市町村、児童相談所と並んで、都道府県の設置する福祉事務所が虐待の通告先として定められている。福祉事務所は社会福祉法に基づき生活保護や児童・母子福祉などを担う機関であり、多くの市町村では家庭児童相談室を置いて子どもと家庭の相談に応じている。
- ○e. 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、2006年施行の改正介護保険法に基づき市町村が設置する機関で、保健師(または経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置される。業務は、介護予防ケアマネジメント、高齢者やその家族からの総合相談支援、高齢者虐待の防止・早期発見などの権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援である。高齢者虐待防止法に基づく高齢者虐待の相談・通報への対応には関わるが、児童虐待への対応を担う機関ではない。したがって本問の正解である。
児童虐待防止法の要点
・児童虐待の定義は、保護者(親権を行う者、未成年後見人など、児童を現に監護する者)による身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄・監護の怠慢)、心理的虐待の4種類である。児童の目の前で配偶者などに暴力をふるう、いわゆる面前DVも心理的虐待に含まれる。 ・通告義務:虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所に通告しなければならない。虐待が確実でなくても「思われる」段階で通告する義務がある。 ・医師、保健師、教職員、児童福祉施設職員などは、職務上虐待を発見しやすい立場にあるとして、早期発見に努めることが求められている。通告は守秘義務違反にはあたらないとされる。 ・児童相談所は必要に応じて警察に援助を求めることができる。 ・2019年の法改正により、親権者などによる体罰の禁止が明文化された(2020年施行)。
虐待の種類と根拠法・主な通報先
・児童虐待:児童虐待防止法。市町村、福祉事務所、児童相談所 ・高齢者虐待:高齢者虐待防止法。市町村(地域包括支援センターが相談・通報の窓口を担うことが多い) ・障害者虐待:障害者虐待防止法。市町村(市町村障害者虐待防止センター)、使用者による虐待は都道府県も ・配偶者からの暴力(DV):配偶者暴力防止法。配偶者暴力相談支援センター、警察
要保護児童対策地域協議会
2004年の児童福祉法改正で制度化された、市町村が設置する関係機関のネットワークである。児童相談所、福祉事務所、保健所・保健センター、医療機関、学校、保育所、警察などが参加し、虐待を受けている児童などの情報共有と支援方針の協議を行う。
POINT
・児童虐待の通告先:市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所。 ・児童相談所が中核となり、警察(援助要請)、保健所・保健センター(母子保健による予防・早期発見)などが連携する。 ・地域包括支援センターは介護保険法に基づく高齢者支援の機関で、高齢者虐待には関わるが児童虐待には関与しない。 ・虐待の対象ごとに根拠法と担当機関が異なる点を整理しておく。
