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血小板はどこで失われる?―「つくれない」と「壊される」を見分ける思考法

第103回医師国家試験 D問題 第13問

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第103回 D問題 第13問

破壊の亢進によって血小板数が減少するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.急性白血病
  2. b.再生不良性貧血
  3. c.von Willebrand病
  4. d.溶血性尿毒症症候群
  5. e.免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血小板減少の機序を問う問題だ。血小板が減る理由は、大きく分けて「骨髄でつくれない(産生低下)」「末梢で壊される・使われる(破壊・消費亢進)」「脾臓にたまる(分布異常)」の3つ。各疾患がどこに入るかを整理していこう。
医学生医学生
血液内科の講義で、この3分類は図で出てきました。でも疾患ごとに振り分けるとなると自信がないです。
ドクタードクター
大丈夫、一つずつ見ればいい。まず急性白血病から。血小板が減るのはなぜだろう。
医学生医学生
白血病細胞が骨髄を埋め尽くして、正常な造血ができなくなるからですよね。だから産生低下だと思います。
ドクタードクター
その通り。分化できない芽球が骨髄を占拠して、巨核球も減ってしまう。ひとつ注意点として、急性前骨髄球性白血病ではDICを高頻度に合併するから、消費による血小板減少が上乗せされることがある。でも急性白血病の基本的な機序はあくまで産生低下だ。
医学生医学生
再生不良性貧血も骨髄の病気なので、同じく産生低下ですね。
ドクタードクター
そう。造血幹細胞が免疫学的な攻撃などで減って、骨髄は脂肪に置き換わった低形成髄になる。汎血球減少を呈し、巨核球も著減している。病理実習で脂肪だらけの骨髄標本を見たことがあるかもしれないね。
医学生医学生
はい、細胞がほとんどなくて、白い空間ばかりの標本でした。では逆に、破壊されるタイプの代表がITPですか。
ドクタードクター
正解。ITPは血小板膜の糖蛋白、たとえばGPIIb/IIIaに対する自己抗体ができて、抗体のついた血小板が主に脾臓のマクロファージに捕まって壊される。骨髄の巨核球は正常からむしろ増えていて、血小板以外の血球は正常というのが特徴だ。最近では自己抗体が巨核球にも作用して産生も抑えることがわかっているけれど、主たる機序は末梢での破壊だよ。
医学生医学生
骨髄では頑張ってつくっているのに、外で壊されているから追いつかない、というイメージですね。
ドクタードクター
いい表現だ。その「巨核球が正常〜増加か、減少か」が、破壊亢進型と産生低下型を分ける大事な手がかりになる。次は溶血性尿毒症症候群、HUSだ。
医学生医学生
O157の感染症のところで習いました。でも、血小板が減るのは破壊というより何かに使われているような…。
ドクタードクター
鋭いね。HUSでは志賀毒素が腎臓などの微小血管の内皮を傷つけ、そこに血小板が次々と粘着・凝集して微小血栓をつくる。厳密には「消費」だけれど、骨髄でつくれないのではなく末梢で失われる機序だから、広い意味での破壊・消費の亢進に分類されるんだ。狭くなった血管を赤血球が通るときに機械的に壊されるので、末梢血には破砕赤血球が出る。
医学生医学生
微小血管症性溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害が3主徴でしたね。残るvon Willebrand病は出血しやすい病気なので、血小板も減っているのかと思いました。
ドクタードクター
そこが引っかけポイント。von Willebrand因子は、血管が傷ついたときに血小板を内皮下組織に粘着させる橋渡し役だ。この病気で障害されるのは血小板の「数」ではなく「働き」。だから血小板数は通常正常で、出血時間が延びる。第VIII因子の運び役でもあるから、APTTが延長することもあるよ。
医学生医学生
数が正常でも出血する、というのは盲点でした。例外はないんですか。
ドクタードクター
2B型では異常なVWFが血小板に結合しやすくなって、軽い血小板減少を伴うことがある。ただ頻度は低く、本症の本質は機能障害だ。というわけで、破壊の亢進によるものは溶血性尿毒症症候群とITPの2つになる。
医学生医学生
産生低下が急性白血病と再生不良性貧血、機能異常がvon Willebrand病、破壊・消費がHUSとITP。きれいに分かれました。
ドクタードクター
完璧だ。発展としてHUSとTTPの比較も押さえておこう。どちらも血栓性微小血管症に属するけれど、HUSは小児に多く腎障害が前面に出る。TTPは成人に多く、VWFを切断する酵素ADAMTS13の活性著減が原因で、発熱や動揺性の精神神経症状が加わる。TTPの治療は血漿交換が中心だ。
医学生医学生
DICも血小板が消費されますよね。TMAとはどう区別すればいいですか。
ドクタードクター
DICでは凝固因子も消費されるから、PT延長、フィブリノゲン低下、FDPやDダイマー上昇といった凝固検査の異常が目立つ。TMAでは凝固検査はほぼ正常なのが違いだ。それからITPについては、成人でHelicobacter pylori陽性なら除菌で血小板が改善することがあるので、まず感染の有無を確認する。治療はステロイド、トロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブ、脾摘などを出血症状や重症度に応じて選ぶよ。
医学生医学生
血小板減少を見たら、まず骨髄でつくれているかを考えて、次に末梢で何が起きているかを探す、という順番で考えます。
ドクタードクター
その思考の流れがあれば、臨床でも迷わないはずだ。

まとめ

血小板減少は、産生低下(急性白血病、再生不良性貧血など)、破壊・消費の亢進(ITP、HUS、TTP、DICなど)、分布異常(脾機能亢進)の3つの機序に分けて整理します。ITPは血小板膜糖蛋白に対する自己抗体が結合した血小板が脾臓で破壊される疾患で、HUSは志賀毒素などによる内皮障害部位で微小血栓が形成され血小板が消費され、破砕赤血球を伴います。破壊亢進型では骨髄の巨核球が正常〜増加し、産生低下型では減少することが鑑別の手がかりになります。von Willebrand病は血小板の粘着機能の障害であり、通常は血小板数が正常で出血時間が延長する点に注意が必要です。機序に基づいて分類する習慣は、TMAとDICの鑑別や治療選択など、実臨床での血小板減少の評価にそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はd, eです

血小板減少の機序による分類

血小板数の基準値はおおむね15万〜35万/μLであり、これを下回る状態を血小板減少という。血小板減少はその機序から大きく次の3つに分けて考えると整理しやすい。 ① 産生の低下:骨髄で血小板をつくる巨核球が減る、あるいは正常に成熟できない。例:再生不良性貧血、急性白血病、骨髄異形成症候群、がんの骨髄転移、抗癌薬や放射線による骨髄抑制、ビタミンB12・葉酸欠乏(無効造血)など。 ② 末梢での破壊・消費の亢進:骨髄では正常かむしろ盛んに産生されているが、血中に出た血小板が早く失われる。免疫学的な破壊(ITP、薬剤性血小板減少、ヘパリン起因性血小板減少症など)と、微小血栓の形成による消費(播種性血管内凝固〈DIC〉、血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉など)がある。 ③ 分布の異常:脾腫(肝硬変による門脈圧亢進など)により血小板が脾臓に多くとどまる(脾機能亢進症)。

解き方

各選択肢を①〜③のどこに当てはまるかで分類する。骨髄の病気(急性白血病、再生不良性貧血)は①、ITPとHUSは②に入る。von Willebrand病は血小板の「数」ではなく「働き」(粘着)の異常であり、代表的な病型では血小板数は減少しない。 破壊亢進による血小板減少では、骨髄の巨核球は代償的に正常〜増加しているのが特徴であり、骨髄検査で巨核球が減少している産生低下型との鑑別に役立つ。

選択肢考察

  1. ×a.  急性白血病

    急性白血病では、分化・成熟能力を失った幼若な白血病細胞(芽球)が骨髄で異常に増殖し、骨髄を占拠する。その結果、正常な造血幹細胞からの造血が抑えられ、赤血球・白血球・血小板のいずれもつくられにくくなる。血小板減少は巨核球の減少、すなわち産生の低下によるものであり、破壊の亢進によるものではない。なお急性前骨髄球性白血病(APL)ではDICを高頻度に合併し、消費による血小板減少が加わることがあるが、急性白血病の血小板減少の基本的な機序は産生低下である。

  2. ×b.  再生不良性貧血

    再生不良性貧血は、主に造血幹細胞に対する免疫学的な攻撃などにより造血幹細胞が減少し、骨髄が低形成(脂肪髄)となる疾患である。赤血球・白血球・血小板がそろって減る汎血球減少を呈し、骨髄では巨核球が著減している。血小板減少は産生の低下によるものであり、破壊亢進によるものではない。

  3. ×c.  von Willebrand病

    von Willebrand病は、von Willebrand因子(VWF)の量的な不足または質的な異常による先天性の出血性疾患で、多くは常染色体顕性(優性)遺伝である。VWFは血管が傷ついたときに血小板を血管内皮下組織に粘着させる橋渡し役であり、同時に第VIII因子を運搬・安定化させる働きももつ。そのため本症では血小板の粘着能が低下し、出血時間が延長し、第VIII因子活性の低下によりAPTTが延長することがある。一方、血小板数は通常正常である。最も多い病型である1型(VWFの部分的な量的欠乏)では血小板減少をきたさない。例外として2B型は、異常なVWFが血小板に結合しやすくなって血小板凝集塊が除去されるため、軽度の血小板減少を伴うことがあるが頻度は低く、本症の本質は血小板の数ではなく機能の障害である。

  4. ○d.  溶血性尿毒症症候群

    溶血性尿毒症症候群(HUS)は、微小血管症性溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害を3主徴とする血栓性微小血管症(TMA)の一つである。典型例は腸管出血性大腸菌(O157など)が産生する志賀毒素(ベロ毒素)によって腎臓などの微小血管内皮が障害されることで起こり、小児に多い。障害された内皮上に血小板が次々と粘着・凝集して微小血栓が形成されるため、血小板が末梢で大量に使われて減少する。厳密には「消費」による減少であるが、骨髄での産生低下ではなく末梢で血小板が失われる機序であり、広い意味での破壊・消費の亢進に分類される。また、狭くなった微小血管を赤血球が通過する際に機械的に壊され、末梢血に破砕赤血球が出現する。以上より本症は破壊(消費)の亢進によって血小板数が減少する疾患に該当する。

  5. ○e.  免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉

    ITPは、血小板膜糖蛋白(GPIIb/IIIaなど)に対する自己抗体が血小板に結合し、この抗体が付着した血小板が主に脾臓のマクロファージ(網内系)に捕捉・貪食されて破壊される自己免疫疾患である。血小板以外の血球には異常がなく、骨髄の巨核球数は正常〜増加しており、血小板関連IgG(PAIgG)の上昇がみられることが多い。自己抗体は巨核球にも作用して血小板の産生も抑えることが現在では知られているが、主たる機序は末梢での血小板破壊の亢進である。したがって本症は破壊の亢進によって血小板数が減少する代表的疾患である。

ITPの概要

小児では急性型が多く、ウイルス感染などの後に発症して多くは数か月以内に自然軽快する。成人では慢性型が多い。診断は他の血小板減少をきたす疾患を除外することが基本である。成人ではHelicobacter pylori陽性例で除菌療法により血小板数が改善することがあり、まず感染の有無を確認する。治療は副腎皮質ステロイド、トロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブ、脾臓摘出などを重症度や出血症状に応じて選択する。

HUSとTTPの比較

両者とも血栓性微小血管症(TMA)に属し、微小血管症性溶血性貧血と消費性の血小板減少を共通にもつ。 ・HUS:小児に多く、腸管出血性大腸菌感染による志賀毒素が主な原因。腎障害が前面に出る。補体制御異常による非典型HUS(aHUS)もある。 ・TTP:成人に多く、VWFを切断する酵素ADAMTS13の活性著減(多くは自己抗体による後天性)が原因。発熱、動揺性の精神神経症状、腎障害が加わる(古典的5徴)。治療は血漿交換が中心である。 DICも凝固因子と血小板の消費によって血小板が減少するが、凝固系の検査(PT延長、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマー上昇)が異常となる点で、凝固検査がほぼ正常のTMAと異なる。

von Willebrand病の検査所見

血小板数正常、出血時間延長、APTT延長(第VIII因子低下のため)、PT正常、VWF活性・抗原量の低下、リストセチン惹起血小板凝集の低下が特徴である。

POINT

・血小板減少の機序は、産生低下(急性白血病、再生不良性貧血など)、破壊・消費亢進(ITP、HUS、TTP、DICなど)、分布異常(脾機能亢進)の3つに分ける。 ・破壊亢進型では骨髄の巨核球は正常〜増加、産生低下型では巨核球は減少する。 ・ITPは自己抗体が付着した血小板が脾臓で破壊される。 ・HUSは微小血栓の形成による血小板の消費で減少し、破砕赤血球を伴う。 ・von Willebrand病は血小板の粘着機能の障害であり、通常血小板数は正常(2B型は例外的に減少しうる)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。