StudyMed医師国家試験

腎臓は血圧の番人―「下がったら出す」で解くレニン分泌の調節

第103回医師国家試験 B問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第14問

レニン分泌を促進するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.コルチゾールの増加
  2. b.輸入細動脈圧の上昇
  3. c.交感神経β受容体遮断
  4. d.マクラデンサへの低クロール刺激
  5. e.レニン・アンジオテンシン系の阻害

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はレニン分泌を促進する因子を2つ選ぶ問題だ。暗記で挑むと混乱しやすいけれど、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、つまりRAA系が「何のための仕組みか」を押さえれば理屈で解ける。まずはレニンがどこから出て、何をする酵素なのかを確認しよう。
医学生医学生
レニンは腎臓の傍糸球体細胞から出て、アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変える酵素ですよね。生理学の講義で、そこからACEでアンジオテンシンⅡになると習いました。
ドクタードクター
その通り。傍糸球体細胞は輸入細動脈の壁にある、平滑筋が変化した細胞だ。アンジオテンシンⅡは血管を収縮させ、副腎皮質からアルドステロンを出させてNaと水を体に保持させる。そしてこの一連の流れの律速段階がレニン分泌なんだ。では、RAA系はどんなときに働く必要があると思う?
医学生医学生
血圧が下がったときや、脱水で体液量が減ったときです。
ドクタードクター
そう。だからレニン分泌を促す刺激は、どれも「血圧や体液量が下がっている」というシグナルだと考えればいい。主なセンサーは3つ。輸入細動脈の圧受容体、緻密斑つまりマクラデンサ、そして交感神経のβ1受容体だ。
医学生医学生
そうすると、輸入細動脈圧の上昇は逆ですね。圧が上がっているならレニンを出す必要はないので、抑制になると思います。
ドクタードクター
正解。傍糸球体細胞自体が圧受容体として働いていて、灌流圧が上がり血管壁が伸展するとレニン分泌は抑えられる。出血や脱水、腎動脈狭窄で圧が下がると逆に増えるんだ。
医学生医学生
マクラデンサへの低クロール刺激は……マクラデンサがNaClを感知するのは覚えているんですが、少ないと促進なのか多いと促進なのか、いつもこんがらがります。
ドクタードクター
そこも理屈で考えよう。体液量が減ると近位尿細管での再吸収が増え、糸球体濾過量も下がるから、遠位尿細管の入口にあるマクラデンサに届くNaClは減る。つまり「届くNaClが少ない」=「体液が足りない」というサインなんだ。マクラデンサはNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を介して主にCl⁻濃度を感知していて、低クロールを感じるとプロスタグランジンE2などを介して傍糸球体細胞にレニン分泌を促す。だから低クロール刺激は促進で、これが正解の1つ目だ。
医学生医学生
なるほど、少ない=足りない、と覚えれば迷わないですね。交感神経β受容体遮断はどうでしょう。
ドクタードクター
傍糸球体細胞には交感神経が分布していて、β1受容体の刺激でレニン分泌が増える。立ち上がったときや出血時にレニンが上がるのはこのためだ。だから遮断すればレニン分泌は下がる。β遮断薬が降圧作用を示す機序の一つでもあるね。
医学生医学生
薬理で習ったβ遮断薬の降圧機序に、心拍出量低下とレニン分泌抑制がありました。つながりました。コルチゾールの増加は、ストレスホルモンだから血圧を上げる方向に働く気がして迷いました。
ドクタードクター
血圧を上げる方向、という読みはいいんだ。ただ、そこからレニンがどうなるかを考えてみて。コルチゾールが大量になるとミネラルコルチコイド受容体にも結合して、アルドステロンのようにNaと水を貯める。体液量と血圧が上がるわけだから……。
医学生医学生
レニンを出す必要がなくなって、むしろ抑制されるんですね。クッシング症候群で高血圧になる機序の一つでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。直接レニンを刺激するホルモンではないので誤りだ。最後に、RAA系の阻害が促進になる理由はわかるかな。
医学生医学生
阻害しているのにレニンが増えるのは、ちょっと不思議です。フィードバックが関係していますか。
ドクタードクター
まさにそう。アンジオテンシンⅡは傍糸球体細胞のAT1受容体に作用してレニン分泌を抑える負のフィードバックをもっている。さらにアルドステロンで体液量が戻ることもレニンを抑える。ACE阻害薬やARBでこの系を途中で止めると、抑制が外れてレニン分泌が増え、血漿レニン活性は上がる。だからこれが2つ目の正解だ。
医学生医学生
循環器内科の実習で、ARBを飲んでいる患者さんのレニン活性が高めに出ていたのはそういうことだったんですね。
ドクタードクター
よく観察していたね。注意点として、レニンそのものを阻害する直接的レニン阻害薬のアリスキレンでは、レニン濃度は上がっても酵素活性が抑えられるので、血漿レニン活性は低下する。測っているのが濃度か活性かを意識しておこう。
医学生医学生
臨床でレニンを測るのは、高血圧の原因検索のときでしょうか。
ドクタードクター
そう、二次性高血圧の鑑別でとても重要だ。腎動脈狭窄による腎血管性高血圧では、狭窄側の灌流圧が下がってレニンが上がる高レニン性高血圧になる。原発性アルドステロン症では、アルドステロン過剰でNaと水が貯まるからレニンは強く抑制される。だからアルドステロン/レニン比がスクリーニングに使われるんだ。降圧薬がレニンに影響するから、採血時の内服薬の確認が欠かせない。
医学生医学生
バーター症候群も高レニンでしたよね。CBTの勉強で、血圧は高くないのにレニンとアルドステロンが高いのが印象的でした。
ドクタードクター
いいね。バーター症候群やギッテルマン症候群は尿細管でのNaCl再吸収の障害で体液量が減るから、高レニン・高アルドステロンになるけれど血圧は正常から低め。どれも「血圧・体液量を元に戻す系」という原理で説明できるんだ。

まとめ

レニンは輸入細動脈壁の傍糸球体細胞から分泌されるRAA系の律速酵素で、血圧・体液量の低下を補正するために分泌が高まります。主な促進因子は、輸入細動脈の灌流圧低下、マクラデンサに届くNaCl(主にCl⁻)の減少、交感神経β1受容体刺激であり、アンジオテンシンⅡによる負のフィードバックがあるためACE阻害薬やARBでRAA系を阻害してもレニン分泌は増加します。逆に灌流圧上昇、β遮断薬、コルチゾール過剰などによる体液量増加はレニン分泌を抑えます。この原理は、腎血管性高血圧(高レニン)、原発性アルドステロン症(低レニン)、バーター症候群などの病態理解や、降圧薬内服中のレニン測定値の解釈に直結するため、暗記ではなく「下がったら出す」という理屈で押さえておくことが大切です。

解答・解説

正解はd, eです

本問は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)の出発点であるレニン分泌が、どのような刺激で調節されているかを問うものである。 レニンは、腎臓の糸球体に血液を送り込む輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞(顆粒細胞)から分泌されるタンパク分解酵素である。肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンを切断してアンジオテンシンⅠを生じ、これがアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンⅡとなる。アンジオテンシンⅡは血管を収縮させ、副腎皮質からのアルドステロン分泌を促してNaと水を体内に保持させる。この一連の反応の速さを決める段階(律速段階)がレニン分泌である。 RAA系は「血圧や循環血液量が下がったときに、それを元に戻す」ための仕組みである。したがって、レニン分泌を促進する刺激は、いずれも血圧・体液量の低下を知らせるシグナルと考えればよい。主な調節因子は次の3つである。 ・腎血管の圧受容体:輸入細動脈の灌流圧が低下すると、血管壁の伸展が減ってレニン分泌が増える。 ・緻密斑(マクラデンサ):遠位尿細管に届くNaCl(とくにCl⁻)の量が減ると、それを感知してレニン分泌を促す。 ・交感神経:傍糸球体細胞のβ1受容体が刺激されるとレニン分泌が増える。 さらに、アンジオテンシンⅡ自体がレニン分泌を抑える負のフィードバックがあるため、RAA系を途中で阻害するとこの抑制が外れ、レニン分泌は増加する。 以上から、マクラデンサへの低クロール刺激とRAA系の阻害の2つがレニン分泌を促進する。

選択肢考察

  1. ×a.  コルチゾールの増加

    コルチゾールはレニン分泌を直接刺激するホルモンではない。コルチゾールが大量になると、ミネラルコルチコイド受容体にも結合してアルドステロンに似た作用(Naと水の貯留)を示す。その結果、循環血液量が増えて血圧が上がるため、レニン分泌はむしろ抑えられる方向に働く。クッシング症候群で高血圧を来す機序の一つである。促進因子ではないため誤りである。

  2. ×b.  輸入細動脈圧の上昇

    傍糸球体細胞は輸入細動脈の壁にあり、それ自体が圧受容体として働く。灌流圧が上がって血管壁が伸展するとレニン分泌は抑制され、逆に圧が下がる(出血、脱水、腎動脈狭窄など)とレニン分泌は増加する。圧の上昇は抑制因子であり、誤りである。

  3. ×c.  交感神経β受容体遮断

    傍糸球体細胞には交感神経が分布しており、β1受容体を介した刺激でレニン分泌が促進される。起立や出血などで交感神経が興奮するとレニン分泌が増えるのはこのためである。β受容体を遮断するとこの経路が働かなくなり、レニン分泌は低下する。β遮断薬が降圧作用を示す機序の一つでもある。遮断は抑制に働くため誤りである。

  4. ○d.  マクラデンサへの低クロール刺激

    マクラデンサ(緻密斑)は、ヘンレ係蹄の太い上行脚から遠位尿細管に移る部分で、自らの糸球体の輸入・輸出細動脈に接する特殊な尿細管上皮細胞の集まりであり、傍糸球体細胞とともに傍糸球体装置を構成する。体液量が減ると近位尿細管での再吸収が増え、さらに糸球体濾過量も下がるため、マクラデンサに届くNaClが減少する。マクラデンサはNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体(NKCC2)を介して主にCl⁻濃度を感知しており、低クロールを感知するとプロスタグランジンE2などを介して傍糸球体細胞にレニン分泌を促す。したがって低クロール刺激はレニン分泌を促進し、正しい。

  5. ○e.  レニン・アンジオテンシン系の阻害

    アンジオテンシンⅡは傍糸球体細胞のAT1受容体に作用し、レニン分泌を抑える(短い負のフィードバック)。さらにアルドステロンによるNa・水の保持で血圧と体液量が戻ることも、レニン分泌を抑える方向に働く。ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)でRAA系を阻害すると、これらの抑制が外れてレニン分泌が増加し、血漿レニン活性は上昇する。アルドステロン拮抗薬でも同様に反応性にレニンが上がる。したがって正しい。なお、レニンそのものを阻害する直接的レニン阻害薬(アリスキレン)では、レニン濃度は上昇するが酵素活性が抑えられるため血漿レニン活性は低下する。

傍糸球体装置の構成

・傍糸球体細胞(顆粒細胞):輸入細動脈の平滑筋が変化した細胞で、レニンを貯蔵・分泌する。 ・緻密斑(マクラデンサ):遠位尿細管起始部の上皮で、尿細管内のNaCl(主にCl⁻)濃度を感知する。 ・糸球体外メサンギウム細胞:両者の間をつなぐ。

レニン分泌の調節因子

促進:輸入細動脈圧の低下、マクラデンサに届くNaCl(Cl⁻)の減少、交感神経β1受容体刺激、プロスタグランジン(PGE2、PGI2)、RAA系阻害(アンジオテンシンⅡによる負のフィードバックの解除)、ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬による体液量減少 抑制:輸入細動脈圧の上昇、マクラデンサに届くNaClの増加、β遮断薬、アンジオテンシンⅡ、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:プロスタグランジン産生を抑える)、ミネラルコルチコイド過剰による体液量増加

臨床との関連

・腎血管性高血圧(腎動脈狭窄):狭窄側の灌流圧が下がりレニンが増える(高レニン性高血圧)。 ・原発性アルドステロン症:アルドステロン過剰でNa・水が貯留し、レニンは強く抑制される(低レニン性)。アルドステロン/レニン比がスクリーニングに使われる。 ・バーター症候群・ギッテルマン症候群:尿細管でのNaCl再吸収障害により体液量が減り、高レニン・高アルドステロンとなるが血圧は正常~低めとなる。

POINT

・レニン分泌の三大調節:腎灌流圧(低下で促進)、マクラデンサへのNaCl量(低下で促進)、交感神経β1刺激(刺激で促進)。 ・アンジオテンシンⅡはレニン分泌を抑える負のフィードバックをもつため、ACE阻害薬・ARBでレニン活性は上昇する。 ・β遮断薬はレニン分泌を抑える。 ・RAA系は「血圧・体液量を元に戻す系」と考えると、促進因子と抑制因子を理屈で判断できる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。