「おしるし」は分娩開始ではない―正常分娩の3つの時期を正しく区切る
第102回医師国家試験 E問題 第15問
国試問題にチャレンジ
正常分娩で正しいのはどれか。
- a.分娩第1期は産徴がみられてから外子宮口全開大までの期間である。
- b.分娩第1期では陣痛発作と間欠は2分ごとに起こる。
- c.分娩第2期で児は発露後排臨となる。
- d.分娩第2期に矢状縫合は骨盤横径に一致する。
- e.分娩第3期は児娩出後から始まる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
正常分娩は、規則的な陣痛(周期10分以内)の発来を分娩開始とし、第1期(開口期)は分娩開始から子宮口全開大まで、第2期(娩出期)は全開大から胎児娩出まで、第3期(後産期)は胎児娩出から胎盤娩出までと区切られます。産徴(おしるし)は分娩が近いサインにすぎず開始の基準ではなく、陣痛は進行とともに間欠が短く発作が長くなるため一律の間隔では表せません。児頭は排臨(発作時のみ見える)の後に発露(常に見える)となり、骨盤内で内回旋して出口部では矢状縫合が縦径に一致します。第3期から胎盤娩出後2時間は弛緩出血などの異常出血が起こりやすい時期であり、各期の定義を正確に理解することは、分娩進行の評価と異常の早期発見の基本となります。
解答・解説
正解はeです
正常分娩の経過は、分娩第1期から第3期(施設によっては胎盤娩出後2時間の観察期を第4期と呼ぶ)に分けて理解する。本問は、各期の定義・陣痛の性状・児頭の娩出過程・胎児の回旋という基本事項を問う一般問題である。
分娩各期の定義
・分娩開始:規則的な陣痛の周期が10分以内(または1時間に6回以上)になった時点。 ・分娩第1期(開口期):分娩開始から子宮口全開大(約10 cm)まで。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大から胎児娩出まで。 ・分娩第3期(後産期):胎児娩出から胎盤(および卵膜)娩出まで。 判断のポイントは、(1)分娩開始は産徴(血性の粘液分泌、いわゆる「おしるし」)ではなく規則的な陣痛の発来で決まる、(2)陣痛は分娩の進行とともに間欠が短く発作が長くなるため、一律の間隔では表せない、(3)児頭は「排臨」の後に「発露」となる、(4)児頭は骨盤内で回旋し、骨盤出口部では矢状縫合が縦径(前後径)に一致する、という点である。これらを押さえると、第3期が児娩出後から始まるという記述だけが正しい。
選択肢考察
- ×a. 分娩第1期は産徴がみられてから外子宮口全開大までの期間である。
誤り。分娩第1期の起点は分娩開始、すなわち陣痛周期が10分以内の規則的な陣痛が始まった時点であり、産徴の出現ではない。産徴は子宮頸管の開大に伴い卵膜が子宮壁からはがれて生じる少量の出血が粘液に混じったもので、分娩が近いことを示す徴候ではあるが、陣痛開始の数日前にみられることも、陣痛開始後にみられることもある。したがって産徴だけで分娩開始とは判定しない。終点が子宮口全開大である点は正しい。
- ×b. 分娩第1期では陣痛発作と間欠は2分ごとに起こる。
誤り。分娩第1期の陣痛は、分娩開始時には間欠が約10分と長く、子宮口の開大が進むにつれて間欠が短く、発作(収縮の持続)が長く強くなっていく。第1期全体としては発作がおおむね30秒〜1分程度、間欠が2〜5分程度で推移し、一律に「2分ごと」ではない。間欠が2分前後、発作が1分前後となるのは子宮口が全開大に近づいた時期から分娩第2期にかけてである。分娩の進行は子宮口開大度に応じて評価されるため、陣痛の間欠・発作の正常範囲も開大度ごとに示されている。
- ×c. 分娩第2期で児は発露後排臨となる。
誤り。順序が逆であり、排臨の後に発露となる。排臨とは、陣痛発作時に児頭が陰裂間に見え、間欠時には腟内に後退して見えなくなる状態をいう。分娩がさらに進むと、間欠時にも児頭が後退せず常に陰裂間に見える状態となり、これを発露という。発露の頃には会陰が強く伸展されるため、会陰裂傷の予防のための会陰保護や、必要に応じた会陰切開が行われる。
- ×d. 分娩第2期に矢状縫合は骨盤横径に一致する。
誤り。骨盤入口部は横径が長い横楕円形であるため、児頭は入口部では矢状縫合を骨盤横径(または斜径)に一致させて進入する。その後、骨盤内を下降しながら第2回旋(内回旋)を行い、縦径(前後径)が長い骨盤出口部では矢状縫合が骨盤縦径に一致し、小泉門が母体の前方(恥骨側)に向く。分娩第2期に児頭が骨盤底近くまで下降しても矢状縫合が横径に一致したままの場合は、第2回旋が起こらない回旋異常であり、低在横定位と呼ばれる。
- ○e. 分娩第3期は児娩出後から始まる。
正しい。分娩第3期(後産期)は胎児が娩出された直後から、胎盤および卵膜が娩出されるまでの期間である。胎児娩出後、子宮は急速に収縮して胎盤付着面が縮小し、胎盤が子宮壁からはく離して娩出される。所要時間は通常15〜30分程度で、30分以上経過しても胎盤が娩出されない場合は胎盤遺残・癒着胎盤などを疑う。第3期は弛緩出血などによる分娩時異常出血が起こりやすい時期であり、子宮収縮の確認と出血量の観察が重要である。
分娩各期の平均所要時間(目安)
・分娩第1期:初産婦 約10〜12時間、経産婦 約4〜6時間 ・分娩第2期:初産婦 約1〜2時間、経産婦 約30分〜1時間 ・分娩第3期:初産婦・経産婦とも 約15〜30分
胎児の回旋(第1頭位・後頭位の正常経過)
・第1回旋:児頭が屈曲し、小泉門が先進部となる(屈曲)。 ・第2回旋:骨盤内で児頭が内回旋し、矢状縫合が横径(斜径)から縦径へ移り、小泉門が恥骨側を向く(内回旋)。 ・第3回旋:項部を恥骨結合下縁に支点として児頭が伸展し、前頭・顔面が会陰から娩出される(伸展)。 ・第4回旋:娩出された児頭が外回旋し、顔が母体の大腿側を向く。肩甲が縦径に一致するための回旋である(外回旋)。
陣痛の性状
陣痛は、収縮している時期(発作)と休んでいる時期(間欠)の繰り返しからなる。分娩の進行とともに間欠は短く、発作は長く強くなる。分娩第2期には陣痛に合わせて腹圧(いきみ)が加わり、娩出力が増す。陣痛が弱く分娩が進まない状態を微弱陣痛、強すぎる状態を過強陣痛という。
胎盤はく離徴候
胎盤がはく離したかどうかは、臍帯の下降(アールフェルド徴候)、恥骨上部を圧迫しても臍帯が引き込まれない(キュストナー徴候)、子宮底の上昇と右方偏位(シュレーダー徴候)などで判断する。
分娩第4期
胎盤娩出後の2時間は、弛緩出血・産道裂傷からの出血などの異常が起こりやすいため、分娩第4期として母体の観察を継続することが多い。
POINT
・分娩開始=陣痛周期10分以内(1時間に6回以上)の規則的陣痛。産徴は分娩開始の基準ではない。 ・第1期:分娩開始〜子宮口全開大/第2期:全開大〜胎児娩出/第3期:胎児娩出〜胎盤娩出。 ・陣痛は分娩進行とともに間欠が短縮、発作が延長する。 ・児頭は「排臨→発露」の順。 ・骨盤出口部で矢状縫合は縦径に一致。第2期に横径のまま停滞すれば低在横定位(第2回旋の異常)。
