減ったのはどのベッド?―一般病床の削減から読み解く日本の医療政策
第102回医師国家試験 B問題 第6問
国試問題にチャレンジ
10年前に比べて減少しているのはどれか。
- a.精神科病院数
- b.歯科診療所数
- c.一般診療所数
- d.病院の一般病床数
- e.病院の療養病床数
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
わが国の病院数は1990年ごろをピークに減少しており、病床も医療計画による基準病床数の設定や平均在院日数の短縮、機能分化の推進によって削減の方向にあります。とくに急性期を担う一般病床は、2001年の第4次医療法改正で療養病床と区分されたことも影響し、減少が続いてきました。一方、一般診療所は無床診療所の開業により増加しており(有床診療所は減少)、歯科診療所も長く増加したのち近年は横ばいです。療養病床は出題当時は増加していましたが、その後は社会的入院の解消を目指す政策で減少に転じ、介護療養病床は2024年3月末で廃止されました。統計の増減は年次で変わるため、地域医療構想などの政策の流れと結びつけて理解することが、公衆衛生の出題にも実際の地域医療の理解にも役立ちます。
解答・解説
正解はdです
テーマ
厚生労働省の医療施設調査(医療施設の数や病床数を毎年把握する統計)に基づき、わが国の医療資源がどのように推移してきたかを問う問題である。本問は第102回(2008年実施)の出題であり、「10年前」とはおおむね1990年代後半から2000年代半ばにかけての変化を指す。
考え方
細かい数字を暗記していなくても、当時の医療政策の流れを理解していれば解ける。 ・病院数は1990年ごろをピークに減少が続いている。 ・急性期医療を担う一般病床は、平均在院日数の短縮や、長期入院患者を療養病床や介護施設へ移す政策により、削減の方向にあった。 ・一方、高齢化に伴い長期療養の需要が増え、療養病床は(出題当時まで)増加していた。 ・診療所は、特に無床診療所(入院用のベッドを持たない診療所)の開業が続き、一般診療所・歯科診療所ともに増加していた。 したがって、出題当時に減少していたものとして選ぶべきは病院の一般病床数である。
注意
本問は出題当時の統計に基づく設問であり、その後の推移によって各選択肢の増減は変わっている(後述)。現在の国試対策としては、個々の増減よりも「病院・病床は減少、無床診療所は増加」という大きな流れと、その背景にある政策を理解しておけば十分である。
選択肢考察
- ×a. 精神科病院数
出題当時、精神科病院(精神病床のみを有する病院)の数はおおむね1,000施設余りで推移しており、10年前と比べて減少してはいなかった(横ばいからわずかに増加)。ただし、わが国では入院医療中心から地域生活中心へという精神保健医療福祉の改革が進められており、精神病床数自体は長期的に減少している。近年は精神科病院数もわずかに減少傾向にある。なお、精神科を標榜する診療所(メンタルクリニック)は増加している。
- ×b. 歯科診療所数
歯科診療所数は出題当時まで一貫して増加しており、6万施設台後半に達していた。歯科医師数の増加に伴い開業が増えたことが背景にあり、コンビニエンスストアの店舗数を上回ると言われるほどであった。その後は2010年代後半をピークに横ばいからわずかな減少に転じている。いずれにしても、出題時点で10年前より減少していたわけではない。
- ×c. 一般診療所数
一般診療所数は増加を続けており、出題当時は約10万施設に近づいていた(現在は10万施設を超えている)。内訳をみると、無床診療所が増える一方、有床診療所(19床以下の入院用ベッドを持つ診療所)は減少し続けている。問題文の「一般診療所数」は両者の合計であり、全体としては増加している。
- ○d. 病院の一般病床数
病院の一般病床数は減少しており、これが正解である。背景には、①医療費の抑制と医療の効率化を目的とした病床数の適正化(医療計画による基準病床数の設定)、②平均在院日数の短縮、③長期入院が必要な患者を一般病床から療養病床や介護施設へ移す機能分化の推進がある。2001年施行の第4次医療法改正で、それまでの「その他の病床」が「一般病床」と「療養病床」に区分され、多くの病院が長期療養向けの病床を療養病床として届け出たことも、統計上の一般病床の減少につながった。一般病床はその後も減少傾向が続いている。
- ×e. 病院の療養病床数
出題当時、病院の療養病床数は増加していた。高齢化に伴う長期療養の需要増加と、一般病床からの転換が理由である。ただし、療養病床の前身である療養型病床群は1992年の第2次医療法改正で創設され、「療養病床」という区分は2001年の第4次医療法改正で設けられ、届出期限が2003年であった。したがって、厳密には10年前との単純比較が難しい指標である。その後、療養病床は医療の必要性の低い入院(いわゆる社会的入院)を減らす政策により削減が進められ、介護療養病床は2024年3月末で廃止されて介護医療院などへ転換した。現在では療養病床数は減少している。
医療法上の病床区分
・一般病床:精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床以外の病床。主に急性期医療を担う。 ・療養病床:主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させる病床。医療保険適用の医療療養病床と、介護保険適用の介護療養病床があった(後者は2024年3月末で廃止)。 ・精神病床、感染症病床、結核病床:それぞれの疾患の患者を入院させる病床。
医療施設の定義
・病院:20床以上の入院施設を有するもの。 ・診療所:入院施設がないか、19床以下のもの(有床診療所と無床診療所)。
長期的な傾向(大まかな流れ)
・病院数:1990年ごろ(約1万施設)をピークに減少が続き、現在は約8,000施設程度。 ・病床数:全体として減少。一般病床・療養病床・精神病床いずれも減少傾向。 ・一般診療所数:増加(無床診療所は増加、有床診療所は減少)。 ・歯科診療所数:長く増加したのち、近年は横ばい〜微減。
関連する政策
・医療計画(1985年の第1次医療法改正で導入):都道府県ごとに基準病床数を定め、病床の過剰な増加を抑える。 ・地域医療構想(2014年の医療介護総合確保推進法で制度化):2025年の医療需要を見据え、病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能ごとに再編する。 ・わが国の人口当たり病床数は国際的に多く、平均在院日数も長いことが課題とされてきた。
POINT
・病院数・病床数は長期的に減少傾向である。 ・一般病床は在院日数短縮や機能分化の推進により減少している。 ・一般診療所は増加しているが、内訳では有床診療所が減少し無床診療所が増加している。 ・療養病床は出題当時は増加していたが、その後は削減政策により減少に転じている。 ・統計の増減を問う問題は年次によって正解が変わりうるため、背景にある政策の流れで理解する。
