「MSW」は資格名じゃない?―名前の付いた法律で見分ける医療・福祉の国家資格
第102回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
国家資格でないのはどれか。
- a.介護福祉士
- b.言語聴覚士
- c.臨床工学技士
- d.精神保健福祉士
- e.医療ソーシャルワーカー
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
医療・福祉職が国家資格かどうかは、その職種名を冠した身分法があるかで判断でき、介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)、言語聴覚士、臨床工学技士、精神保健福祉士はいずれも法律に基づく国家資格です。医療ソーシャルワーカーは病院で患者の経済的・社会的問題を支援する職務名であり、根拠となる身分法がないため国家資格ではなく、実際には社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者が多く従事しています。同様に、ケアマネジャー(都道府県の公的資格)、ホームヘルパー、臨床心理士(民間資格)も国家資格ではなく、心理職の国家資格は公認心理師です。業務独占資格と名称独占資格の違いも含めて各職種の役割を理解しておくことは、チーム医療で適切に連携するための基礎となります。
解答・解説
正解はeです
テーマ
医療・福祉の現場では多くの職種がチームとして働いている。そのうち、法律(いわゆる身分法)に基づいて国が試験を行い、合格者に免許や登録を与えるものを国家資格という。本問は、選択肢の職種のうちどれが国家資格ではないかを問うている。
考え方
国家資格かどうかは、「その職種の名前を冠した法律があるか」で判断するとよい。介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)、言語聴覚士(言語聴覚士法)、臨床工学技士(臨床工学技士法)、精神保健福祉士(精神保健福祉士法)は、いずれもその資格を定める法律がある。一方、医療ソーシャルワーカー(MSW: medical social worker)は職務の名称であり、それを定める身分法は存在しない。したがって国家資格ではないのは医療ソーシャルワーカーである。
選択肢考察
- ×a. 介護福祉士
国家資格である。1987年制定の社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、身体上または精神上の障害によって日常生活に支障がある人に対して、専門的知識と技術をもって入浴・排泄・食事などの介護を行い、本人や介護者に介護の指導を行う。2011年の法改正により、医師の指示の下で喀痰吸引や経管栄養(一定の条件の下)も行えるようになった。なお、訪問介護員(ホームヘルパー)は研修修了によって従事する職であり、国家資格ではない。
- ×b. 言語聴覚士
国家資格である。1997年制定の言語聴覚士法に基づく。英語名のspeech-language-hearing therapistからSTと略される。失語症、構音障害、音声障害、言語発達遅滞、聴覚障害などの言語・聴覚の障害や、摂食嚥下障害のある人に対し、検査・訓練・指導・助言を行う。医師または歯科医師の指示の下で、嚥下訓練や人工内耳の調整なども行える。
- ×c. 臨床工学技士
国家資格である。1987年制定の臨床工学技士法に基づく。CE(clinical engineer)またはME(medical engineer)と呼ばれる。医師の指示の下で、人工呼吸器、人工心肺装置、血液透析装置など生命維持管理装置の操作と保守点検を行う。
- ×d. 精神保健福祉士
国家資格である。1997年制定の精神保健福祉士法に基づく。PSW(psychiatric social worker)と呼ばれてきた。精神科病院などで精神障害者の社会復帰に関する相談に応じ、助言・指導や日常生活への適応のための訓練などを行う、精神保健福祉領域のソーシャルワーカーである。
- ○e. 医療ソーシャルワーカー
国家資格ではない。これが正解である。医療ソーシャルワーカーは、病院などの保健医療機関で、患者や家族が抱える経済的・心理的・社会的な問題(医療費の支払い、退院後の生活や療養先の調整、社会保障制度の利用、社会復帰など)について相談に応じ、解決を支援する職種である。業務の指針(医療ソーシャルワーカー業務指針)は国が示しているが、医療ソーシャルワーカーという名称の資格を定めた法律はない。実際には、国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持つ人がこの業務に就いていることが多い。
国家資格ではない主な医療・福祉関係の職種
・医療ソーシャルワーカー(MSW):職務名。社会福祉士などの有資格者が多い。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー):介護保険法に基づき、都道府県が実施する試験と研修を経て登録される公的資格であり、国家資格ではない。 ・訪問介護員(ホームヘルパー):研修(介護職員初任者研修など)の修了者が従事する。 ・臨床心理士:民間団体(日本臨床心理士資格認定協会)の認定資格である。なお、心理職の国家資格として、公認心理師法(2015年制定、2017年施行)に基づく公認心理師が創設されている。
主な医療関係の国家資格と根拠法
・医師(医師法)、歯科医師(歯科医師法)、薬剤師(薬剤師法) ・保健師・助産師・看護師(保健師助産師看護師法)。准看護師は同法に基づく都道府県知事の免許である。 ・診療放射線技師(診療放射線技師法)、臨床検査技師(臨床検査技師等に関する法律) ・理学療法士・作業療法士(理学療法士及び作業療法士法)、視能訓練士(視能訓練士法) ・言語聴覚士(言語聴覚士法)、臨床工学技士(臨床工学技士法)、義肢装具士(義肢装具士法) ・救急救命士(救急救命士法)、管理栄養士(栄養士法。栄養士は都道府県知事の免許) ・社会福祉士・介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)、精神保健福祉士(精神保健福祉士法) ・公認心理師(公認心理師法)
業務独占と名称独占
・業務独占資格:資格を持たない者がその業務を行うことが禁じられている(例:医師、看護師、薬剤師)。 ・名称独占資格:資格を持たない者がその名称を名乗ることが禁じられている(例:社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、理学療法士)。
POINT
・医療ソーシャルワーカーは国家資格ではない(社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者が多く従事する)。 ・介護福祉士、言語聴覚士、臨床工学技士、精神保健福祉士はいずれも身分法に基づく国家資格である。 ・ケアマネジャー(都道府県の公的資格)、ホームヘルパー、臨床心理士(民間資格)も国家資格ではない。 ・心理職の国家資格は公認心理師である。
