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手洗いは「手首」で締めくくる―写真で覚える衛生的手洗いの順番

第102回医師国家試験 B問題 第46問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第46問

ある病院において院内感染対策を強化することとした。院内感染症対策委員会〈ICC〉の下に感染制御チーム〈ICT〉を立ち上げた。ICTは病院職員の手洗いを標準予防策に則ったものとする教育をまず行うこととした。手洗いの手順(①~⑤)を別に示す。  手洗いの手順で最後に行うのはどれか。

第102回 B問題 第46問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は院内感染対策の基本中の基本、手指衛生の手順を写真で問う問題だ。5枚の写真がそれぞれ手のどの部位を洗っているのかを見極め、それを正しい順番に並べられるかがポイントになる。まずは、それぞれの写真が何をしている場面か整理してみよう。
医学生医学生
手首を握ってねじっている写真、手の甲に手のひらを重ねている写真、指先を手のひらに立てている写真、指を組んでいる写真、親指を握っている写真、ですね。
ドクタードクター
その通り。順に手首、手背、指先・爪、指間、母指を洗っている場面だね。では、手洗いはどこから始めて、どこで終わると思う?
医学生医学生
OSCEの前に練習したときは、たしか手のひら同士をこすり合わせるところから始めました。最後は…指先が一番汚れているので、指先でしょうか。
ドクタードクター
指先が汚れやすいという感覚は正しいけれど、日本の病院で広く教育されている衛生的手洗いでは、手掌、手背、指先・爪、指間、母指と進めて、最後に手首を洗って終える。だから正解は手首を洗っている写真だ。
医学生医学生
手首が最後なのはどうしてですか。手首はあまり汚れていない気がしますが。
ドクタードクター
理由は「洗い終わった手指に汚れを戻さないため」だよ。手指から前腕のほうへ、つまり中心から外側へ一方向に洗い進めれば、手首や前腕の汚れが指先に逆戻りしにくい。手術時手洗いで指先から肘へ向かって洗うのと同じ発想なんだ。
医学生医学生
なるほど、清潔な部分から不潔な部分へ、という一方通行なんですね。では手の甲を洗う写真は前半の動作ですか。
ドクタードクター
そう。手のひら同士をこすった直後、2番目くらいに行う動作だ。左右を入れ替えて両手の甲を洗う。続く指先・爪は細菌が残りやすい部位なので、手のひらに指先を立てて爪の間まで丁寧にこする。
医学生医学生
指を組む動作と親指をねじる動作も、途中の手順ということですね。親指だけ独立しているのが少し不思議でした。
ドクタードクター
親指は他の指と向きが違うので、手のひらをこすり合わせても洗い残しやすいんだ。だから握ってねじる独立した手順があって、手首の直前に行うことが多い。ちなみに指先・指間・母指の順番は指針によって多少違い、WHOの手順では指先をこする動作を最後に置いている。それでも手首を手指より後に洗う点は変わらない、と理解しておこう。
医学生医学生
洗い残しが多いのは、指先・爪、指間、母指、手首あたりでしょうか。公衆衛生の実習で、蛍光ローションを塗ってブラックライトで洗い残しを見たときも、そのあたりが光っていました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。まさにその部位が要注意だ。爪は短く切り、指輪や腕時計は外して手洗いするのが原則になる。では、石けんと流水の手洗いと擦式アルコール製剤はどう使い分けるか知っているかな。
医学生医学生
病棟では入退室のたびにアルコールを使っていました。目に見える汚れがあるときは流水で洗う、と教わった気がします。
ドクタードクター
その通り。目に見える汚れがなければ擦式アルコール製剤が第一選択。ただし血液・体液などで目に見えて汚れているときや、芽胞をつくるクロストリディオイデス・ディフィシル、アルコールが効きにくいノロウイルスが関わる場合は、石けんと流水で物理的に洗い流す。
医学生医学生
タイミングも大事ですよね。WHOの「5つのタイミング」は、患者に触れる前、清潔・無菌操作の前、体液曝露の可能性があった後、患者に触れた後、患者周辺の環境に触れた後、でしたか。
ドクタードクター
完璧だ。最後に問題文の組織についても触れておこう。院内感染対策委員会は病院全体の方針を決める組織で、感染制御チームは医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などで構成され、院内巡回やサーベイランス、職員教育といった実働を担う。今回のような手洗い教育はまさに感染制御チームの仕事だね。
医学生医学生
手洗いは簡単なようで、順番と理由まで説明できるようにしておく必要がありますね。実習でも意識してみます。
ドクタードクター
そうしてほしい。手指衛生はすべての患者に適用する標準予防策の中核で、どんな高度な医療よりも多くの院内感染を防いでくれる。手を動かしながら順番を体で覚えるのが一番だよ。

まとめ

衛生的手洗いは、手掌から始めて手背、指先・爪、指間、母指と洗い進め、最後に手首を洗って終えるのが国内で広く教育される手順です。手首を最後にするのは、手指から前腕側へ一方向に洗うことで、洗い終えた手指に汚れを戻さないためです。指先・爪、指間、母指、手首は洗い残しが多い部位であり、爪を短く切り、指輪や時計を外すことも基本です。目に見える汚れがなければ擦式アルコール製剤が第一選択ですが、汚れがある場合やC. difficile・ノロウイルスでは石けんと流水を用います。手指衛生は標準予防策の中核であり、手順と理由を理解して実践できることが院内感染対策の第一歩となります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

院内感染対策の基本である標準予防策(スタンダードプリコーション:感染症の有無にかかわらず、すべての患者の血液・体液・分泌物・排泄物・傷のある皮膚・粘膜を感染の可能性があるものとして扱う考え方)の中核をなす手指衛生について、衛生的手洗いの手順を写真で問う問題である。

写真の読み取り

①:一方の手で反対側の手首を握り、ねじるようにこすっている(手首)。 ②:手掌を反対側の手背(手の甲)に重ね、指を組み合わせてこすっている(手背)。 ③:一方の手の指先を反対側の手掌に立てて、指先・爪の部分をこすっている(指先・爪)。 ④:両手の指を互い違いに組み合わせてこすっている(指の間)。 ⑤:一方の手で反対側の母指を握り、ねじるようにこすっている(母指)。

考え方

手洗いは、洗い残しの少ない中心部(手掌)から始め、手背、指先・爪、指間、母指と、汚れが残りやすい部位を順に洗い、最後に手首を洗って終える。手首を最後にするのは、手指を洗い終えてから前腕側へ洗い進めることで、手首や前腕の汚れを洗い終わった手指に戻さないためである。写真のうち手首を洗っているのは①であり、これが最後の手順となる。 指先・爪、指間、母指の順序は指針によって多少異なる(例えばWHOの手指衛生の手順では、指先を手掌でこする動作を最後に置いている)が、日本の病院で広く教育される衛生的手洗いでは「手掌→手背→指先・爪→指間→母指→手首」の流れが一般的であり、いずれにしても手首は手指の後に洗う。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    ①は手首を反対側の手で握り、回すようにこすっている写真である。手首は手指をすべて洗い終えた後に洗う部位であり、手洗い手順の最後にあたる。手指から前腕側へ向かって洗い進めることで、手首の汚れを洗い終えた指先へ戻さずにすむ。

  2. ×b.  ②

    ②は手掌を手背に重ねて指を組み、手の甲をこすっている写真である。手掌をこすり合わせた直後、手洗いの前半(2番目)に行う動作であり、最後ではない。左右を入れ替えて両手の手背を洗う。

  3. ×c.  ③

    ③は指先を反対側の手掌に立てて、指先と爪の部分をこすっている写真である。指先・爪の周囲は細菌が残りやすく洗い残しの多い部位であるため丁寧に洗うが、手首より前に行う動作であり、最後ではない。

  4. ×d.  ④

    ④は両手の指を互い違いに組んで、指の間をこすっている写真である。指間は洗い残しが生じやすい部位の一つであるが、手指を洗う途中の手順であり、最後ではない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は反対側の手で母指(親指)を握り、ねじるように洗っている写真である。母指は他の指と向きが異なるため洗い残しが多く、独立した手順として洗う。手首を洗う直前に行うことが多いが、最後ではない。

手指衛生の種類

・日常的手洗い:石けんと流水で汚れを落とす。食事前・トイレ後など。 ・衛生的手洗い:石けんと流水、または擦式アルコール製剤(速乾性手指消毒薬)を用い、通過菌(手に一時的に付着した菌)を除去する。医療行為の前後に行う。 ・手術時手洗い:手術前に行い、通過菌に加えて常在菌も可能な限り減らす。手指から肘まで洗い、持続効果のある消毒薬を用いる。

手洗いの手順(衛生的手洗いの一例)

1. 流水で手を濡らし、石けんを取る(擦式アルコール製剤の場合は適量を手掌に取る) 2. 手掌同士をこすり合わせる 3. 手掌で反対側の手背をこする(左右とも) 4. 指先・爪を反対側の手掌でこする 5. 指を組んで指の間を洗う 6. 母指を反対の手で握りねじり洗う 7. 手首を洗う 8. 流水で十分にすすぎ、ペーパータオルで拭く。蛇口は拭いたペーパータオルで閉める(手で直接触れない) 石けんと流水による手洗いは全体で40〜60秒程度、擦式アルコール製剤では乾くまで20〜30秒程度かけてすり込むのが目安とされる。

洗い残しの多い部位

指先・爪、指間、母指、手首、手のしわは洗い残しが起こりやすい。爪は短く切り、指輪や腕時計は外して手洗いする。

手指衛生のタイミング(WHOの5つのタイミング)

①患者に触れる前、②清潔・無菌操作の前、③体液に曝露された可能性のある場合、④患者に触れた後、⑤患者周辺の環境や物品に触れた後。

擦式アルコール製剤と流水手洗いの使い分け

目に見える汚れがない場合は擦式アルコール製剤が第一選択である。目に見える汚れや血液・体液が付着している場合、またクロストリディオイデス・ディフィシル(芽胞を形成しアルコールが効きにくい)やノロウイルスなどアルコール抵抗性の病原体が関与する場合は、石けんと流水による手洗いを行う。

ICCとICT

院内感染対策委員会(ICC:infection control committee)は病院の感染対策の方針を決定する組織であり、感染制御チーム(ICT:infection control team)は医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などで構成され、院内巡回、サーベイランス、職員教育などの実働を担う。

POINT

・手洗いは手掌から始め、手背→指先・爪→指間→母指と進め、最後に手首を洗う。 ・洗い残しが多いのは指先・爪、指間、母指、手首である。 ・手指衛生は標準予防策の基本であり、目に見える汚れがなければ擦式アルコール製剤が第一選択、汚れがあるときやC. difficile・ノロウイルスでは石けんと流水を用いる。 ・写真で手技の手順を問う出題があるため、実習で実際に手を動かして覚えておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。