卵胞腔が語る成熟のしるし―原始卵胞からグラーフ卵胞までの道のり
第102回医師国家試験 B問題 第33問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。
- a.卵胞数は思春期に最大となる。
- b.原始卵胞は卵とそれを取り囲む多層の顆粒膜細胞とからなる。
- c.原始卵胞から1次卵胞への発育にFSHが必須である。
- d.成熟卵胞には卵胞腔が存在する。
- e.排卵直前には卵胞の直径は約5mmになる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
卵胞数は胎児期の妊娠20週前後に約600〜700万個で最大となり、以後は閉鎖によって減少する一方で、思春期には約20〜30万個まで減っています。原始卵胞は一次卵母細胞を1層の扁平な顆粒膜細胞が囲んだ構造で、一次卵胞・前胞状卵胞を経て、顆粒膜細胞の間に卵胞液がたまると卵胞腔をもつ胞状卵胞となり、成熟卵胞(グラーフ卵胞)では大きな卵胞腔に卵丘が突出します。前胞状期までの初期発育はゴナドトロピン非依存性で、胞状卵胞以降にFSH依存性が強まり、排卵直前の卵胞は直径約2cmに達してLHサージで排卵します。二細胞説によるエストロゲン産生やAMHによる卵巣予備能評価も含め、卵胞発育の理解は月経周期の生理、超音波での卵胞モニタリング、不妊治療の判断の土台となります。
解答・解説
正解はdです
本問は卵胞の数の推移と、原始卵胞から成熟卵胞に至る発育過程の形態・ホルモン依存性・大きさを問う問題である。 【卵胞の数】卵のもとになる卵祖細胞は胎児期にのみ増殖し、第1減数分裂を開始して一次卵母細胞となった後は新たに作られない。したがって卵胞数は胎児期(妊娠20週前後)に最大となり、その後は閉鎖(アポトーシスによる退縮)によって一方的に減少していく。
発育段階と形態
・原始卵胞:一次卵母細胞を1層の扁平な顆粒膜細胞(前顆粒膜細胞)が取り囲む。 ・一次卵胞:顆粒膜細胞が立方状〜円柱状となり、卵母細胞の周囲に透明帯が形成される。 ・二次卵胞(前胞状卵胞):顆粒膜細胞が多層化し、外側に莢膜細胞層が現れる。 ・胞状卵胞:顆粒膜細胞の間に卵胞液がたまり、卵胞腔(胞状腔)ができる。 ・成熟卵胞(グラーフ卵胞):大きな卵胞腔をもち、卵母細胞は卵丘に包まれて卵胞腔に突出する。排卵直前には直径約20mmに達する。 【ホルモン依存性】原始卵胞の発育開始から前胞状卵胞までの初期発育は、卵巣内の局所因子によって進み、ゴナドトロピン(FSH・LH)を必須としない。胞状卵胞の段階からFSHへの依存性が強まり、FSHなしでは主席卵胞の選択や成熟卵胞への発育が起こらない。最終的にLHサージが排卵を引き起こす。 これらを踏まえると、成熟卵胞に卵胞腔が存在するという記述が正しい。
選択肢考察
- ×a. 卵胞数は思春期に最大となる。
卵胞数が最大となるのは胎児期であり、妊娠20週前後(5〜6か月ころ)に約600〜700万個に達する。その後は閉鎖によって急速に減少し、出生時には約100〜200万個、思春期には約20〜30万個となる。卵母細胞は生後に新しく作られないため(生涯を通じて精祖細胞が増殖し続ける男性とは異なる)、卵胞数は一方向に減るだけである。生涯に排卵されるのはこのうち約400〜500個にすぎず、残りはすべて閉鎖する。卵胞がほぼ枯渇すると閉経を迎える。
- ×b. 原始卵胞は卵とそれを取り囲む多層の顆粒膜細胞とからなる。
原始卵胞は、第1減数分裂の前期(複糸期)で停止した一次卵母細胞を、1層の扁平な顆粒膜細胞が取り囲んだ構造である。胎児期(妊娠4か月ころ)から形成され、直径は約0.03〜0.06mmと非常に小さい。顆粒膜細胞が多層になるのは、原始卵胞から一次卵胞を経て二次卵胞(前胞状卵胞)へ発育した段階である。
- ×c. 原始卵胞から1次卵胞への発育にFSHが必須である。
原始卵胞から一次卵胞への発育(顆粒膜細胞が扁平から立方・円柱状へ変化し増殖し始める段階)は、卵巣内の局所因子によって進み、FSHなどのゴナドトロピンを必要としない。実際、この初期発育は下垂体からのゴナドトロピン分泌がほとんどない胎児期や小児期にも起こっている。FSHが必要になるのはそれより後の段階であり、特に胞状卵胞以降の発育・主席卵胞の選択・成熟卵胞への発育はFSH依存性である。
- ○d. 成熟卵胞には卵胞腔が存在する。
卵胞が発育すると顆粒膜細胞の間に卵胞液がたまって卵胞腔(胞状腔)が形成され、これ以降の卵胞を胞状卵胞と呼ぶ。成熟卵胞(グラーフ卵胞)では卵胞腔が大きく拡大し、卵母細胞は顆粒膜細胞の集まりである卵丘に包まれて卵胞腔の一隅に突き出している。卵胞液にはエストロゲンなどのステロイドホルモンや成長因子が含まれる。経腟超音波で卵胞を液体を含む円形の低エコー域として観察できるのは、この卵胞腔があるためである。
- ×e. 排卵直前には卵胞の直径は約5mmになる。
排卵直前の成熟卵胞の直径は約18〜25mm(約2cm)である。直径5mm程度は月経周期の初期にみられる胞状卵胞の大きさにあたる。周期の初めに発育を始めた複数の胞状卵胞のうち、通常1個が主席卵胞として選ばれ、1日あたり約1〜2mmずつ大きくなって約2cmに達したところで、LHサージを受けて排卵する。排卵誘発(ゴナドトロピン療法)では、超音波で主席卵胞の直径が約18mm以上になったことを確認してhCGを投与し排卵を起こさせる。
卵胞の大きさの目安
・原始卵胞:約0.03〜0.06mm ・一次卵胞:約0.1mm前後 ・二次卵胞(前胞状卵胞):約0.2mm前後 ・胞状卵胞:数mm(周期初期に数mmのものが複数認められる) ・成熟卵胞(排卵直前):約20mm なお、二次卵胞・三次卵胞の呼び方は教科書によって異なり、卵胞腔をもつ段階を二次卵胞とする記載や、胞状卵胞を三次卵胞とする記載もある。「卵胞腔の有無」「顆粒膜細胞の層数」といった形態的特徴で理解しておくと混乱しにくい。
卵母細胞の減数分裂の流れ
卵祖細胞(46,XX、DNA量2n)は胎児期に体細胞分裂で増殖した後、DNAを複製して一次卵母細胞(DNA量4n)となり、第1減数分裂を開始するが、前期の複糸期で停止する。この停止状態は思春期以降に排卵されるまで、長い場合は数十年続く。排卵直前のLHサージを受けて第1減数分裂が再開・完了し、第1極体を放出して二次卵母細胞(23,X、DNA量2n)となる。続いて第2減数分裂が始まるが中期で再び停止し、この状態で排卵される。精子が進入するとその刺激で第2減数分裂が完了し、第2極体を放出して雌性前核(DNA量1n)が形成される。
二細胞説(two-cell, two-gonadotropin theory)
莢膜細胞はLHの刺激でコレステロールからアンドロゲンを合成し、顆粒膜細胞はFSHの刺激で誘導されるアロマターゼによりアンドロゲンをエストロゲンに変換する。発育中の卵胞から分泌されるエストロゲンが増加し、一定以上の濃度が持続すると正のフィードバックによりLHサージが起こり排卵に至る。
卵巣予備能の評価
卵胞数の減少は加齢とともに進むため、残存する卵胞の量を反映する指標として、前胞状卵胞や小さな胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌される抗ミュラー管ホルモン(AMH)や、超音波で数える胞状卵胞数(AFC)が用いられる。
POINT
・卵胞数は胎児期(妊娠20週ころ、約700万個)が最大で、以後は減少のみ(出生時約200万個、思春期約20〜30万個)。 ・原始卵胞=一次卵母細胞+1層の扁平な顆粒膜細胞。 ・原始卵胞から前胞状卵胞までの初期発育はゴナドトロピン非依存性、胞状卵胞以降はFSH依存性。 ・胞状卵胞・成熟卵胞(グラーフ卵胞)には卵胞腔があり、卵母細胞は卵丘に包まれる。 ・排卵直前の成熟卵胞の直径は約2cm。
