StudyMed医師国家試験

視交叉の「すぐ上」を探せ―大脳脚に寄り添う視索をMRI水平断で見つける

第102回医師国家試験 B問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第34問

頭部単純MRI(①~⑤)を別に示す。  視索がみられるのはどれか。

第102回 B問題 第34問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、頭部MRIの水平断を何枚か並べて、その中から視索が写っている断面を選ぶ画像解剖の問題だ。ポイントは2つ。視覚路が頭の中をどう走っているかを立体的にイメージすることと、それぞれの断面が「どの高さか」を目印から判定することだよ。まず、視覚路の順番を言えるかな。
医学生医学生
網膜から視神経、視交叉、視索、外側膝状体、視放線、そして後頭葉の視覚野です。神経解剖の講義で何度も書かされました。
ドクタードクター
完璧だね。では視交叉はどこにあるか覚えている?
医学生医学生
下垂体の上だったと思います。だから下垂体腺腫で両耳側半盲になるんですよね。
ドクタードクター
その通り。視交叉は鞍上部、つまり脳底槽の一部である鞍上槽の高さにある。そこで鼻側網膜の線維だけが反対側に交差する。視交叉を出た線維が視索で、左右に開きながら後外側へ走り、中脳の大脳脚の外側を巻くようにして視床の外側膝状体に入るんだ。
医学生医学生
ということは、視交叉が見える断面に視索も一緒に写っているんじゃないでしょうか。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。視索は視交叉から後ろ上方へ向かうので、水平断では視交叉の断面よりわずかに頭側、中脳の大脳脚が見える高さで確認しやすい。視交叉が写っている断面は「視索の一歩手前」なんだ。
医学生医学生
なるほど、高さが少し違うんですね。では各断面の高さはどうやって決めればいいですか。
ドクタードクター
脳幹の形と脳室、脳槽、眼窩の構造を組み合わせるのがコツだ。下から順に見ていこう。一番下の断面は、延髄の周りに小脳半球が広がり、前方には斜台や蝶形骨洞が見える延髄レベル。視覚路はもっと上にあるから当然含まれない。
医学生医学生
2枚目は小脳の真ん中に第4脳室があるので橋のレベルですね。眼窩の中に視神経が見えますが、これは違いますか。
ドクタードクター
いい観察だね。この高さでは眼球から後ろへ伸びる視神経は追えるけれど、左右が合流する視交叉も、その後ろの視索もまだ現れない。三叉神経や海綿静脈洞内の内頸動脈が見えるのもこの高さの特徴だ。
医学生医学生
3枚目は橋の前に脳脊髄液で満たされた脳底槽が広がっていて、その前方に視神経が合流する視交叉が見えます。
ドクタードクター
そう、ここが鞍上槽レベル。T1強調画像では脳脊髄液が黒く写るから、その中を走る白っぽい索状構造として視神経や視交叉が追いやすい。でも視索そのものではない。では次の断面は?
医学生医学生
中脳の大脳脚が見えています。その前外側を帯状の構造が後ろへ回り込んでいるのが視索ですね。
ドクタードクター
正解。大脳脚の外側縁に沿って後外側へ走る帯状構造、これが視索だ。この先で外側膝状体に達する。「大脳脚が見えたら、その外側に接する帯を探す」と覚えておくと同定しやすいよ。
医学生医学生
最後の断面は正中にMonro孔があって、視床と内包、Sylvius裂が見えます。ここではもう視放線になっているということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。視索はこれより尾側で外側膝状体に終わり、この高さでは視放線として側脳室の外側を後頭葉へ向かっている段階だ。だから視索としては認められない。
医学生医学生
延髄、橋、鞍上槽、中脳、Monro孔と、下から順に目印を確認すれば高さが決まるんですね。脳神経外科の実習で読影したときも、まず脳幹の形を見ろと言われました。
ドクタードクター
それは良い指導だね。発展として、視覚路のどこが障害されると視野がどう欠けるかもセットで覚えておこう。視神経なら障害側の単眼の視野欠損、視交叉なら両耳側半盲、視索なら反対側の同名半盲で、左右の欠損の形がそろわない不調和なものが多い。
医学生医学生
視放線だと、側頭葉のMeyer係蹄なら上1/4、頭頂葉側なら下1/4の同名半盲でしたよね。後頭葉だと黄斑回避が起こりやすいとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく整理できている。臨床では、視野検査で欠損のパターンを見て病変の高さを予想し、MRIでその部位を確認するという流れになる。今回のような画像解剖の知識は、まさにその読影の土台になるんだ。

まとめ

視覚路は視神経、視交叉、視索、外側膝状体、視放線、後頭葉一次視覚野の順に走り、視交叉は鞍上槽の高さに、視索はそのわずか頭側の中脳レベルで大脳脚の前外側を回り込む帯状構造として描出されます。MRI水平断の高さは、延髄と小脳、橋と第4脳室、鞍上槽と視交叉、中脳の大脳脚、Monro孔と視床・内包といった目印を下から順に確認して判定します。視交叉が写る断面は視索の一歩手前であり、視索を探すなら大脳脚の外側縁に注目するのがコツです。視交叉障害では両耳側半盲、視索障害では反対側の不調和な同名半盲が生じるなど、障害部位と視野欠損は密接に対応します。画像上の解剖と視野欠損のパターンを結びつけて理解することは、神経眼科や脳神経外科領域の診断の基本となります。

解答・解説

正解はdです

本問は、尾側(足側)から頭側へ順に並んだ頭部単純MRIの水平断(体軸断)5枚のうち、視索が写っている断面を選ばせる画像解剖の問題である。

視覚路の走行を頭に描く

網膜の神経節細胞から出た軸索は、視神経として眼窩内を後方へ走り、視神経管を通って頭蓋内に入る。左右の視神経は下垂体の上方・鞍上部で合流して視交叉をつくり、ここで鼻側網膜由来の線維だけが反対側へ交差する(半交叉)。視交叉を出た線維は視索と名前を変え、左右に分かれながら後外側へ走り、中脳の大脳脚の外側を巻くようにして視床の外側膝状体に達する。その後は視放線となって後頭葉の一次視覚野(鳥距溝周囲)へ投射する。

断面の高さと構造の対応

水平断では、下から順に「延髄・小脳 → 橋・第4脳室 → 鞍上部(視神経・視交叉) → 中脳(大脳脚) → 第3脳室・Monro孔(モンロー孔、室間孔)・内包・視床」の順に構造が現れる。視交叉は鞍上槽(脳底槽の一部)の高さにあり、そのわずか頭側の中脳レベルになると、視交叉から左右に開いて大脳脚の前外側を後方へ回り込む帯状の構造として視索が確認できる。 したがって、視交叉が見える断面(③)と、視床・内包が見える断面(⑤)の間、すなわち大脳脚(中脳)が描出された④が視索を含む断面となる。各断面を判定する際は、脳幹の形(延髄・橋・中脳)、第4脳室や第3脳室の有無、眼球・視神経の描出、脳槽の形といった目印を組み合わせて高さを決めるとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    延髄の高さの断面である。眼窩と外耳孔を結ぶ線(眼窩外耳孔線、OMライン)よりやや尾側で、延髄の周囲に小脳半球が広がり、前方には側頭葉の底面、斜台(頭蓋底の傾斜した骨)や蝶形骨洞が写る。視覚路の構造はこれより頭側にあるため、視索は含まれない。

  2. ×b.  ②

    橋から上~中小脳脚の高さの断面である。小脳の中央に第4脳室があり、橋の外側から出る三叉神経や、海綿静脈洞内を走る内頸動脈が見える。眼窩内では眼球から後方へ向かう視神経を追えるが、左右の視神経が合流する視交叉や、その後方の視索はまだ現れない。

  3. ×c.  ③

    脳底槽(鞍上槽)の高さの断面である。橋の前方に脳脊髄液で満たされた脳底槽が広がり、そこから脳幹を取り巻く迂回槽へと続く。脳底槽の前方には左右の視神経と、それらが合流して半交叉する視交叉が描出されている。視交叉は視索の直前の構造であり、紛らわしいが視索そのものはこれより頭側の断面で見える。

  4. ○d.  ④

    中脳の大脳脚の高さの断面である。視交叉の後方から左右に開くように出た視索が、大脳脚の前外側に沿って後外側へ回り込む帯状構造として描出されている。視索はこの先で視床の外側膝状体に至るため、大脳脚が見える高さで大脳脚の外側縁に接する構造を探すのが同定のコツである。視索が見えるのは本断面である。

  5. ×e.  ⑤

    Monro孔(室間孔)の高さの断面である。左右の側脳室と第3脳室をつなぐMonro孔が正中にあり、その周囲に視床と内包、外側にSylvius裂(外側溝)が描出される。視索はこれより尾側で外側膝状体に終わり、この高さでは視放線として側脳室の外側を後頭葉へ向かう段階にあるため、視索としては認められない。

視覚路と障害部位による視野欠損

・視神経:障害側の単眼の視力低下・視野欠損(全盲) ・視交叉:交差する鼻側網膜の線維が障害され、両耳側半盲。下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、鞍結節部髄膜腫などの鞍上部腫瘍が代表的原因である。 ・視索:障害側と反対側の同名半盲。左右の眼で欠損の形がそろわない(不調和な)ことが多い。 ・外側膝状体:反対側の同名半盲 ・視放線:側頭葉を通るMeyer係蹄(マイヤーループ)の障害では反対側の上1/4同名半盲、頭頂葉側の線維の障害では下1/4同名半盲 ・後頭葉視覚野:反対側の同名半盲で、黄斑回避を伴いやすい。

頭部水平断MRIの主な高さの目印(下から)

・延髄レベル:延髄、小脳半球、斜台、蝶形骨洞 ・橋レベル:橋、第4脳室、中小脳脚、三叉神経、内耳道 ・鞍上部レベル:鞍上槽(脳底槽)、視神経、視交叉、脳底動脈、Willis動脈輪の一部 ・中脳レベル:大脳脚、中脳水道、迂回槽、視索、海馬 ・第3脳室レベル:第3脳室、Monro孔、視床、内包、基底核、Sylvius裂

T1強調画像の見え方

T1強調画像では脳脊髄液が低信号(黒)、白質が灰白質よりやや高信号に写る。視神経・視交叉・視索は有髄線維の束であり、周囲を低信号の脳脊髄液(脳槽)に囲まれるため、脳槽内の索状構造として追いやすい。

POINT

・視覚路:視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 後頭葉一次視覚野 ・視交叉は鞍上槽(脳底槽)の高さ、視索はその直上の中脳(大脳脚)の高さで、大脳脚の前外側を回り込む。 ・水平断の高さは、脳幹の形・脳室・脳槽・眼窩内構造を目印に判定する。 ・視交叉障害は両耳側半盲、視索障害は反対側の同名半盲。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。