StudyMed医師国家試験

白いヒダの外側に赤いヒダ―間接喉頭鏡像で仮声帯を見抜く

第102回医師国家試験 B問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第32問

間接喉頭鏡所見の模式図を示す。  仮声帯はどれか。

第102回 B問題 第32問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は喉頭の解剖を問う問題だ。間接喉頭鏡で見た喉頭の模式図から、仮声帯がどれかを答える。ポイントは2つ。鏡に映った像がどの向きになっているかと、仮声帯と声帯の位置関係だ。まず、間接喉頭鏡がどんな器具か覚えているかな。
医学生医学生
柄の先に小さな丸い鏡が付いていて、口から入れて喉の奥を映すものですよね。耳鼻科の臨床実習で額帯鏡と一緒に使い方を見学しました。
ドクタードクター
その通り。鏡を咽頭の後ろに置いて、映った喉頭を上から見下ろす形になる。ここで大事なのが像の向きだ。鏡像なので前後が反転し、図の上方が患者の前方、つまり頸の前面側、下方が後方の食道・頸椎側になる。
医学生医学生
左右も反転するんでしょうか。鏡だから全部ひっくり返るような気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこはよく誤解されるところだね。左右は反転せず、患者と向かい合って直接のぞいたときと同じ関係になる。患者の右側は観察者から見て左側に映るわけだ。では、この向きを踏まえて図を読んでみよう。上方を大きく覆っている葉っぱのような構造は何だと思う?
医学生医学生
前方にあるので喉頭蓋ですね。舌根のすぐ後ろにあって、嚥下のときに倒れて気道にふたをする構造です。
ドクタードクター
正解。弾性軟骨が芯になっていて、舌根との間のくぼみが喉頭蓋谷だ。次に喉頭の内腔を見ると、前方で集まって後方へ開くV字形のヒダが内側と外側に2対並んでいる。どちらが声帯でどちらが仮声帯かな。
医学生医学生
正直、迷います。仮声帯は声帯より上にあると習ったので、上から見ると声帯を隠して内側に見えるのかと思いました。
ドクタードクター
いい疑問だね。解剖学的に仮声帯は声帯の上方にあるけれど、同時に外側にも位置している。だから上から見下ろすと、仮声帯は声帯の外側に並んで見えるんだ。最も内側で左右から声門裂を挟んでいる白く細いヒダが声帯、その外側にほぼ平行して走るヒダが仮声帯、別名で室ヒダや前庭ヒダと呼ばれるものだ。
医学生医学生
色でも区別できるんですか。
ドクタードクター
できる。声帯は重層扁平上皮に覆われていて白く光沢があり、仮声帯は赤みを帯びた普通の粘膜に見える。声帯は前方で甲状軟骨の内面、後方で披裂軟骨の声帯突起に付着していて、前で左右が合わさるからV字形になる。内部には声帯靱帯と声帯筋があり、呼気で振動して声をつくる。一方、仮声帯は通常の発声には関与しない。そして両者の間の外側へのくぼみが喉頭室だ。
医学生医学生
解剖実習で喉頭を正中で割ったとき、上下のヒダの間にポケットのようなくぼみがあったのを思い出しました。あれが喉頭室ですね。
ドクタードクター
まさにそれ。残りの構造も確認しておこう。図の下方、つまり後方に左右一対の膨らみがあるね。
医学生医学生
後ろなので披裂軟骨のあたりでしょうか。声門を開閉するのに動く軟骨ですよね。
ドクタードクター
そう。披裂軟骨とその上の小角軟骨・楔状軟骨を覆う粘膜の隆起で、披裂部と呼ぶ。粘膜には小角結節や楔状結節という小さな隆起も見られる。そして左右の披裂部の間のくぼみが披裂間切痕で、喉頭の後壁にあたる。ここは胃食道逆流による発赤や肥厚、長期挿管後の肉芽などが見つかる部位として臨床的にも大事なんだ。
医学生医学生
整理すると、前に喉頭蓋、後ろに披裂部とその間の切痕、内腔は内側から声門裂、白い声帯、赤い仮声帯の順ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、喉頭は声門上部・声門部・声門下部の3つに分けられる。仮声帯や喉頭室、喉頭蓋は声門上部、声帯は声門部に属する。この区分は喉頭癌の部位分類にも使われていて、日本では声門癌が最も多い。声帯は声帯ポリープや声帯結節の好発部位でもあるね。
医学生医学生
今は間接喉頭鏡よりファイバースコープで見ることが多いと聞きましたが、見え方は変わりますか。
ドクタードクター
現在は経鼻の軟性ファイバースコープや電子内視鏡が主流だけれど、どちらも上方から見下ろす像になるので、仮声帯が声帯の外側に並んで見える点は共通だ。ちなみに声帯の動きが悪くなった人では、仮声帯を振動させて声を出す仮声帯発声が見られることもある。外来で喉頭を観察するときは、まず喉頭蓋と披裂部で前後の向きを確認してから内腔のヒダを同定する習慣をつけておこう。

まとめ

間接喉頭鏡像は鏡像のため前後が反転し、図の上方が患者の前方(喉頭蓋側)、下方が後方(披裂部側)になりますが、左右は反転しません。仮声帯(室ヒダ)は声帯の上外側にあるため、上から見下ろす像では白く光沢のある声帯の外側に、赤みを帯びたヒダとして並んで見え、両者の間には喉頭室があります。前方の喉頭蓋、後方の披裂部と披裂間切痕を目印に向きを確かめると、内側から声門裂・声帯・仮声帯の順に同定できます。喉頭は声門上部・声門部・声門下部に区分され、喉頭癌の部位分類や声帯病変の理解にも直結します。この見方はファイバースコープによる観察でも共通であり、耳鼻咽喉科診療の基本となる知識です。

解答・解説

正解はbです

間接喉頭鏡は柄の先に小さな円形の鏡が付いた器具で、口から咽頭後部に入れ、鏡に映った喉頭を観察する。鏡像であるため、見える像は前後(腹背)が反転しており、図の上方が患者の前方(頸部の前面側)、下方が患者の後方(食道・頸椎側)にあたる。左右は反転せず、向かい合って直接のぞいたときと同じ関係になる(患者の右側は観察者から見て左側に映る)。 この向きを踏まえて模式図を読み解くと次のようになる。 ・上方を大きく覆う葉状の構造(①)は、舌根の後方で喉頭入口の前壁をなす喉頭蓋である。 ・喉頭の内腔には前方(図の上方)で集まり後方へ向かって開くV字形のヒダが見える。内側の細い白いヒダ(③)が声帯(声帯ヒダ)で、その外側に並行して走るヒダ(②)が仮声帯(室ヒダ、前庭ヒダ)である。左右の声帯の間の空間が声門裂である。 ・後方(図の下方)の左右の膨らみ(④)は披裂軟骨とその上にある小角軟骨・楔状軟骨を覆う粘膜の隆起(披裂部)で、⑤はその左右の隆起の間のくぼみである披裂間切痕(披裂間部)である。 仮声帯と声帯を区別する要点は、仮声帯が声帯の上方かつ外側に位置するため、上から見下ろす喉頭鏡像では声帯の外側に見えること、そして仮声帯は赤みを帯びた粘膜、声帯は白く光沢のあるヒダとして見えることである。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は図の上方(患者の前方)を大きく覆う葉状の構造で、喉頭蓋である。喉頭蓋は弾性軟骨を芯とし、嚥下時に後方へ倒れて喉頭入口を覆い、食塊が気道に入るのを防ぐ。舌根との間には喉頭蓋谷がある。仮声帯ではない。

  2. ○b.  ②

    ②は声帯(③)の外側に、声帯とほぼ平行して走るヒダであり、仮声帯(室ヒダ、前庭ヒダ)である。解剖学的に仮声帯は声帯の上方にあり、声帯との間には喉頭室というくぼみがある。上方から見下ろす喉頭鏡像では、声帯より上外側にある仮声帯は声帯の外側に並んで見える。粘膜は赤みを帯び、声帯のような白い光沢はない。通常の発声には関与しない。

  3. ×c.  ③

    ③は最も内側にあって左右で声門裂を挟むヒダで、声帯(声帯ヒダ)である。前方では甲状軟骨の内面に、後方では披裂軟骨の声帯突起に付着し、前方で左右が合わさるためV字形に見える。内部に声帯靱帯と声帯筋(甲状披裂筋)を含み、粘膜は白く光沢がある。呼気で振動して発声を担う。仮声帯はこの外側に位置する。

  4. ×d.  ④

    ④は図の下方(患者の後方)に左右一対で見える膨らみで、披裂軟骨とその上の小角軟骨・楔状軟骨を覆う粘膜の隆起(披裂部)である。この部の粘膜には小角軟骨による小角結節、楔状軟骨による楔状結節という小隆起が認められる。披裂軟骨は声帯の後端が付着する軟骨で、その動きによって声門が開閉する。仮声帯ではない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は左右の披裂部の隆起の間にあるくぼみで、披裂間切痕(披裂間部)である。喉頭の後壁にあたり、胃食道逆流による粘膜の発赤・肥厚(咽喉頭逆流症)や、長期挿管後の肉芽形成などが観察される部位として臨床上重要である。仮声帯ではない。

喉頭の構造(上から下へ)

喉頭は上から、声門上部(喉頭蓋、披裂喉頭蓋ヒダ、仮声帯、喉頭室を含む)、声門部(声帯)、声門下部(声帯の下縁から輪状軟骨下縁まで)の3部に分けられる。この区分は喉頭癌の部位分類にも用いられ、日本では声門癌が最も多い。

仮声帯と声帯

・仮声帯(室ヒダ):声帯の上方にあり、内部に室靱帯を含む。赤い粘膜。通常の発声には関与しないが、声帯の機能が低下したときなどに仮声帯を振動させて出す発声(仮声帯発声)がある。 ・声帯(声帯ヒダ):声帯靱帯と声帯筋を含み、表面は重層扁平上皮に覆われて白く見える。声帯ポリープ、声帯結節、喉頭癌などの好発部位である。 ・両者の間の外側へのくぼみが喉頭室である。

喉頭の軟骨

単一の軟骨として甲状軟骨・輪状軟骨・喉頭蓋軟骨、対をなす軟骨として披裂軟骨・小角軟骨・楔状軟骨がある。

喉頭の観察法

間接喉頭鏡のほか、現在は経鼻的な軟性ファイバースコープ(電子内視鏡)による観察が広く行われる。直達喉頭鏡は全身麻酔下での喉頭微細手術などに用いられる。間接喉頭鏡でも内視鏡でも、上方(あるいは後上方)から見下ろす像になるため、仮声帯が声帯の外側に並んで見える点は共通である。

POINT

・間接喉頭鏡像は前後が反転し、図の上が患者の前方(喉頭蓋側)、下が後方(披裂部側)になる。左右は反転しない。 ・内側から外側へ:声門裂 → 声帯(白) → 仮声帯(赤)。 ・前方に喉頭蓋、後方に左右の披裂部の隆起と、その間の披裂間切痕がある。 ・仮声帯は声帯の上外側にあり、両者の間に喉頭室がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。