「正常分娩」の物差しを持とう―時期・破水・回旋・時間・出血の5つの基準
第101回医師国家試験 B問題 第85問
国試問題にチャレンジ
分娩で正常なのはどれか。2つ選べ。
- a.妊娠満42週の分娩
- b.子宮口全開大時の破水
- c.後方後頭位分娩
- d.分娩所要時間32時間
- e.早期産褥出血量400mL
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
正常分娩かどうかは、分娩時期(正期産は37週0日〜41週6日で、満42週以降は過期産)、破水時期(子宮口全開大ごろの適時破水が正常)、胎児の回旋(前方後頭位が正常で、後方後頭位は第2回旋の異常)、分娩所要時間(初産婦30時間・経産婦15時間を超えると遷延分娩)、出血量(従来は500mL以上を異常出血)という基準で判定します。本問では子宮口全開大時の破水と400mLの早期産褥出血が正常範囲に入ります。過期産では胎盤機能低下や胎便吸引症候群、回旋異常では分娩遷延や産道損傷、分娩後出血では4Tに基づく原因検索とショックインデックスによる重症度評価が重要です。それぞれの基準を「なぜ異常なのか」という臨床的リスクとセットで理解しておくことが、分娩管理の判断の土台になります。
解答・解説
正解はb, eです
正常分娩の定義に関わる基本事項(分娩時期、破水の時期、胎児の回旋、分娩所要時間、出血量)を整理しているかを問う問題である。5つの選択肢それぞれについて「正常とされる基準」を思い出し、その範囲に入るものを2つ選ぶ。 確認すべき基準は次のとおりである。 ・分娩時期:正期産は妊娠37週0日~41週6日。22週0日~36週6日は早産、42週0日以降は過期産である。 ・破水の時期:子宮口全開大(約10cm)の前後に起こる破水を適時破水といい、正常である。陣痛開始前の破水は前期破水、陣痛開始後で全開大前の破水は早期破水と呼ぶ。 ・胎児の回旋:正常では第2回旋で胎児の後頭部が母体の前方(恥骨側)を向く「前方後頭位」となって娩出される。 ・分娩所要時間:陣痛開始から胎盤娩出までの時間で、初産婦で30時間、経産婦で15時間を超えると遷延分娩とされる。 ・出血量:分娩後の出血が500mL以上になると異常出血として扱うのが従来からの国際的な目安である。 これに照らすと、正常範囲にあるのは子宮口全開大時の破水と、400mLの早期産褥出血の2つとなる。
選択肢考察
- ×a. 妊娠満42週の分娩
異常である。正期産は妊娠37週0日から41週6日までであり、妊娠42週0日以降の分娩は過期産に分類される。「満42週」は42週0日以降を意味するため正期産には含まれない。「42週までは正期産」と誤解しやすいので注意が必要である。過期妊娠では胎盤機能の低下による胎児機能不全、羊水過少、羊水混濁(胎便吸引症候群のリスク)、巨大児による分娩障害などが増えるため、実際の診療では妊娠41週台に分娩誘発を検討することが多い。
- ○b. 子宮口全開大時の破水
正常である。分娩第1期の終わり、子宮口が全開大(約10cm)となる前後で卵膜が破れて羊水が流出するのを適時破水といい、生理的な破水時期である。卵膜と前羊水(胎胞)は子宮口を押し広げる役割を担っており、全開大に達したところで破綻するのが本来の経過である。これに対し、陣痛発来前の破水(前期破水)は上行性感染や臍帯脱出のリスクがあり、陣痛開始後でも全開大前の破水(早期破水)は時期として正常から外れる。また、全開大後も破水しない場合は遅滞破水と呼び、人工破膜を行うことがある。
- ×c. 後方後頭位分娩
異常である。正常の胎児回旋では、第1回旋で児頭が屈曲して小泉門が先進し、第2回旋で小泉門(後頭部)が母体前方の恥骨側へ回って前方後頭位となる。後方後頭位は、第2回旋で後頭部が母体後方(仙骨側)へ回ってしまう回旋異常であり、児頭が通過する周囲径が大きくなるため、分娩の遷延、会陰裂傷の増大、吸引・鉗子分娩の必要性の増加などを招きやすい。
- ×d. 分娩所要時間32時間
異常である。分娩所要時間は陣痛開始(陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の規則的な陣痛)から胎盤娩出までの時間である。平均は初産婦で12~16時間程度、経産婦で5~8時間程度とされ、初産婦で30時間、経産婦で15時間を超えるものを遷延分娩と定義する。32時間は初産婦・経産婦のいずれであっても基準を超えており遷延分娩にあたる。原因としては微弱陣痛、児頭骨盤不均衡、回旋異常、軟産道強靱などが挙げられる。
- ○e. 早期産褥出血量400mL
正常である。早期産褥出血は分娩後24時間以内の出血を指し、従来から500mL以上を異常出血(分娩後異常出血)とする基準が用いられてきた。400mLはこれを下回るため正常範囲である。なお、日本の大規模データでは経腟分娩(単胎)の出血量の90パーセンタイル値が約800mLであることから、臨床上はより高い値を目安に管理することもあるが、いずれの基準でも400mLは異常とはならない。
分娩時期による分類
・流産:妊娠22週未満 ・早産:妊娠22週0日~36週6日 ・正期産:妊娠37週0日~41週6日 ・過期産:妊娠42週0日以降
破水時期による分類
・前期破水:陣痛開始前の破水 ・早期破水:陣痛開始後、子宮口全開大前の破水 ・適時破水:子宮口全開大ごろの破水(正常) ・遅滞破水:子宮口全開大後も破水しないもの
分娩の3期
・第1期(開口期):陣痛開始~子宮口全開大 ・第2期(娩出期):子宮口全開大~胎児娩出 ・第3期(後産期):胎児娩出~胎盤娩出 分娩所要時間はこの3期の合計であり、初産婦30時間・経産婦15時間を超えると遷延分娩である。
胎児の回旋(正常:前方後頭位)
・第1回旋:屈曲(顎を胸につけ、小泉門が先進) ・第2回旋:内回旋(後頭部が母体前方へ向く) ・第3回旋:伸展(恥骨下を支点に顔が娩出される) ・第4回旋:外回旋(肩の娩出に合わせて児頭が母体の側方を向く) 回旋異常には、前方前頭位(第1回旋の異常)、後方後頭位・低在横定位(第2回旋の異常)、反屈位などがある。
分娩後の異常出血
主な原因は弛緩出血、産道裂傷、胎盤遺残、子宮内反症、凝固障害である(4T:Tone・Trauma・Tissue・Thrombin)。出血量に加え、ショックインデックス(心拍数÷収縮期血圧)が1以上であれば出血量は約1.5L以上に相当すると考え、早期に対応する。
POINT
・正期産は37週0日~41週6日。満42週は過期産。 ・子宮口全開大ごろの破水(適時破水)が正常。 ・正常の回旋は前方後頭位。後方後頭位は第2回旋の異常。 ・遷延分娩:初産婦30時間、経産婦15時間を超えるもの。 ・分娩後の出血は500mL以上を異常出血とする(400mLは正常範囲)。
