「赤い」「大きい」は正常でも「青い唇」は見逃すな―生後3日の新生児診察
第101回医師国家試験 B問題 第84問
国試問題にチャレンジ
生後3日の正期産児で異常なのはどれか。
- a.上眼瞼の紅斑
- b.吸啜反射陽性
- c.口唇チアノーゼ
- d.大泉門3×3cm大
- e.右肋骨弓下に肝を2cm触知
対話形式の解説
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ドクターまとめ
新生児では、大人の基準で異常に見える所見の多くが生理的範囲に含まれます。上眼瞼・眉間の淡い紅斑はサーモンパッチで多くは自然消退し、吸啜反射などの原始反射は存在するのが正常、大泉門は1〜3cm程度で大きさより膨隆・陥凹が重要、肝を肋骨弓下2〜3cmに触れるのも生理的です。一方、口唇・舌など体の中心部にみられる中心性チアノーゼは動脈血酸素飽和度の低下を示す異常所見であり、出生直後の四肢末端の末梢性チアノーゼとは区別します。生後数日での中心性チアノーゼは、チアノーゼ性先天性心疾患や動脈管依存性心疾患、新生児遷延性肺高血圧症などを疑い、パルスオキシメトリや心エコーで速やかに評価します。正常な新生児所見を押さえることは、重篤な疾患のサインを見逃さないための第一歩です。
解答・解説
正解はcです
生後3日の正期産児(在胎37週0日~41週6日で出生した児)について、正常所見と異常所見を見分ける問題である。新生児は成人と比べて体の構造や生理が大きく異なるため、成人の感覚では「異常」に見える所見の多くが、実は新生児期には正常範囲に含まれる。 考え方の軸は次のとおりである。 ・皮膚:新生児に特有の一過性の皮膚所見(正中部の毛細血管性の紅斑、中毒性紅斑、稗粒腫、蒙古斑など)は生理的なものが多い。 ・神経:吸啜反射やモロー反射などの原始反射は、新生児では「あるのが正常」で、欠如や左右差があると異常を疑う。 ・頭部:大泉門は開いているのが正常で、大きさには個人差が大きい。評価で重要なのは大きさよりも膨隆・陥凹の有無である。 ・腹部:新生児の肝臓は体格に比して大きく、肋骨弓下に数cm触れるのが普通である。 ・循環・呼吸:出生直後は肺循環への移行期にあり、手足の先に軽いチアノーゼ(末梢性チアノーゼ)がみられることがあるが、生後3日になっても口唇などの中心部にチアノーゼが続くのは異常である。 これらを当てはめると、生後3日の時点での口唇チアノーゼのみが異常所見であり、先天性心疾患や呼吸器疾患などの精査が必要となる。
選択肢考察
- ×a. 上眼瞼の紅斑
正常である。上眼瞼・眉間・前額部の正中付近にみられる淡い紅斑はサーモンパッチ(正中部母斑)と呼ばれ、毛細血管奇形の一種である。新生児の2~3割程度にみられるありふれた所見で、泣いたり力んだりすると赤みが増す。顔面のものは多くが1~2歳ごろまで、遅くとも3歳ごろまでに自然に消えるため、原則として治療は不要である。なお、項部(うなじ)のもの(ウンナ母斑)は残存しやすい。顔面の片側に広がり正中を越えない濃い紅斑(ポートワイン母斑)は自然消退せず、スタージ・ウェーバー症候群との関連に注意が必要であり、サーモンパッチとは区別する。
- ×b. 吸啜反射陽性
正常である。吸啜反射は口に指や乳首を入れると規則的に吸いつく原始反射で、正期産の新生児では出生時から明らかに認められ、哺乳を支える重要な反射である。原始反射は脳幹・脊髄レベルで起こる反射で、大脳の成熟とともに抑制されて消失していく(吸啜反射は生後4~6か月ごろまでに随意的な哺乳へ移行する)。新生児期に反射が弱い・欠如している場合には、中枢神経障害、重症感染症、低血糖などを疑う。
- ○c. 口唇チアノーゼ
異常であり、本問の正解である。チアノーゼは還元ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビン)が毛細血管血中で約5g/dL以上に増えたときに皮膚・粘膜が青紫色にみえる状態である。出生直後は肺呼吸と新生児循環への移行期で、手足の末梢循環も不安定なため、四肢末端に軽いチアノーゼ(末梢性チアノーゼ、先端チアノーゼ)がみられることは生理的である。しかし、口唇・口腔粘膜・舌など体の中心部にみられるチアノーゼは中心性チアノーゼであり、動脈血の酸素飽和度低下を意味する。生後3日でこれがみられる場合は、チアノーゼ性先天性心疾患(大血管転位、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常など)、動脈管の閉鎖に伴って症状が顕在化する動脈管依存性心疾患、新生児遷延性肺高血圧症、呼吸器疾患、メトヘモグロビン血症などを考え、パルスオキシメトリ、心エコーなどによる速やかな評価が必要である。
- ×d. 大泉門3×3cm大
正常である。大泉門は左右の前頭骨と頭頂骨の間にある菱形の間隙で、新生児ではおおむね1~3cm程度(平均約2~2.5cm)の大きさで開いており、3×3cmは正常範囲内と考えてよい。大泉門は生後数か月まではむしろやや拡大し、その後縮小して1歳6か月ごろまでに閉鎖する。評価で重要なのは大きさよりも緊張度であり、膨隆していれば頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症、頭蓋内出血など)、陥凹していれば脱水を疑う。極端に大きい場合は水頭症、甲状腺機能低下症、骨形成不全症などを、早期閉鎖や極端に小さい場合は小頭症や頭蓋骨縫合早期癒合症を考える。
- ×e. 右肋骨弓下に肝を2cm触知
正常である。新生児・乳児の肝臓は体に対する比率が大きく、右鎖骨中線上で肋骨弓下に2~3cm程度、辺縁が鋭く軟らかく触れるのは生理的である。肝臓の辺縁が3cmを大きく超えて触れる場合や、硬く触れる場合には、心不全によるうっ血肝、先天感染、胆道閉鎖症、代謝性疾患などによる肝腫大を考える。
新生児にみられる主な生理的所見
・皮膚:サーモンパッチ(正中部母斑)、中毒性紅斑(生後数日に出現し自然消退)、稗粒腫(鼻周囲の白色小丘疹)、蒙古斑(仙骨部の青色斑、学童期までにほぼ消退)、生理的黄疸(生後2~3日から出現し1~2週で消退)、落屑。 ・頭部:産瘤(出生直後から、縫合を越える浮腫)、大泉門の開大(1~3cm程度)、小泉門は開いているか指先大。 ・神経:原始反射(吸啜、探索、モロー、把握、足踏み、非対称性緊張性頸反射など)の存在。 ・腹部:肝を肋骨弓下2~3cmに触知、脾の先端をわずかに触れることがある。 ・その他:生理的体重減少(生後3~5日に出生体重の5~10%程度減少し、1~2週で回復)、新生児月経・乳房腫大(母体ホルモンの影響)、四肢末端の軽いチアノーゼ(出生直後)。
チアノーゼの分類
・中心性チアノーゼ:動脈血の酸素飽和度が低下して起こる。口唇・舌・口腔粘膜・体幹にみられる。原因はチアノーゼ性心疾患(右左短絡)、肺疾患、肺高血圧、異常ヘモグロビンなど。 ・末梢性チアノーゼ:動脈血の酸素飽和度は正常で、末梢循環の低下により組織での酸素抽出が増えて起こる。手足の先や口周囲にみられ、寒冷や出生直後の循環不安定でも生じる。 新生児ではチアノーゼの見落としを防ぐため、上肢(右手)と下肢でのパルスオキシメトリによるスクリーニングも行われる。
POINT
・新生児の中心性チアノーゼ(口唇・舌・体幹)は異常であり、先天性心疾患や呼吸器疾患を疑って精査する。出生直後の四肢末端の軽度チアノーゼは生理的。 ・上眼瞼・眉間の紅斑はサーモンパッチで、多くは自然消退する。 ・原始反射は新生児では存在するのが正常。 ・大泉門は1~3cm程度が正常で、1歳6か月ごろまでに閉鎖。大きさよりも膨隆・陥凹が重要。 ・新生児の肝は肋骨弓下2~3cmに触れるのが正常。
