赤ちゃんの心拍は「育つほどゆっくり」に―妊娠32週の胎児心拍数を読み解く
第101回医師国家試験 B問題 第83問
国試問題にチャレンジ
妊娠32週の胎児心拍数で誤っているのはどれか。
- a.胎動によって変化する。
- b.140/分は正常範囲である。
- c.一過性の増加がみられる。
- d.妊娠12週の心拍数より多い。
- e.変動が大きい時間帯と小さい時間帯とがある。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
胎児心拍数基線の正常範囲は110〜160bpmで、140bpmは正常です。胎児心拍数は妊娠9〜10週ごろに170〜180bpm前後でピークとなり、以後は副交感神経の成熟に伴って低下し、妊娠後期には140bpm前後になるため、妊娠32週の心拍数は12週より少ないのが正常です。健康な胎児では胎動に伴う一過性頻脈や基線細変動がみられ、睡眠・覚醒のサイクルによって変動の大きい時間帯と小さい時間帯が生じます。NSTでreactiveが得られない場合も、睡眠周期を考慮して検査延長や音響刺激を行い、細変動消失や遅発一過性徐脈があれば胎児低酸素を疑います。胎児心拍を自律神経の成熟という視点で理解することは、CTG判読と胎児well-being評価の土台となります。
解答・解説
正解はdです
妊娠32週の胎児の心拍数(fetal heart rate:FHR)が、どのような性質をもつかを問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、正常な胎児心拍の特徴にあてはまらない記述を1つ選ぶ。 押さえるべき要点は次の3つである。 1. 基線(ベースライン)の正常範囲:現在の日本産科婦人科学会の基準では110~160bpm(beats per minute:1分間の拍数)を正常脈とする。 2. 妊娠週数に伴う心拍数の推移:胎児心拍は妊娠5~6週ごろ経腟超音波で確認できるようになり、その後急速に上昇して妊娠9~10週ごろに170~180bpm前後の最大値をとる。以後は副交感神経(迷走神経)の成熟に伴って緩やかに低下し、妊娠中期以降はおおむね140bpm前後、満期では130~140bpm程度に落ち着く。 3. 自律神経の成熟による変動:妊娠後期の健康な胎児では、交感・副交感神経がバランスよく働くため、基線細変動や胎動に伴う一過性頻脈がみられ、さらに覚醒と睡眠のリズムによって心拍パターンが時間帯ごとに変わる。 これらを踏まえると、妊娠32週の心拍数が妊娠12週より「多い」とする記述は、週数とともに心拍数が低下するという事実と逆であり、誤りと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 胎動によって変化する。
記述は正しい。健康な胎児では、胎動に伴って交感神経が刺激され、心拍数が一時的に上昇する(一過性頻脈、acceleration)。ノンストレステスト(NST:子宮収縮などの負荷をかけずに胎児心拍数と胎動を記録する検査)はこの反応を利用しており、妊娠32週以降では「基線から15bpm以上、15秒以上続く一過性頻脈が20分間に2回以上」みられればreactive(反応性あり)と判定する。妊娠32週未満では自律神経が未熟なため、「10bpm以上、10秒以上」の基準を用いる。胎動と心拍数の連動は胎児の中枢神経・自律神経が正常に機能していることを示す。
- ×b. 140/分は正常範囲である。
記述は正しい。胎児心拍数基線の正常範囲は110~160bpmであり、140bpmはその中に収まる。基線が110bpm未満であれば徐脈、160bpmを超えれば頻脈と分類される。なお、かつては正常範囲を120~160bpmとしていたが、現行の基準では下限が110bpmに改められている。いずれの基準でも140bpmは正常である。
- ×c. 一過性の増加がみられる。
記述は正しい。妊娠後期の健康な胎児では、基線に6~25bpm程度の細かなゆらぎ(基線細変動)がみられ、それに加えて胎動や外部刺激に反応した一過性頻脈が認められる。一過性頻脈の出現は、胎児が低酸素状態になく、自律神経系が良好に反応していることを示す所見(well-being の指標)であり、異常所見ではない。
- ○d. 妊娠12週の心拍数より多い。
記述が誤りであり、本問の正解である。胎児心拍数は妊娠初期に急上昇して妊娠9~10週ごろに170~180bpm前後のピークに達し、その後は副交感神経の発達により徐々に低下していく。妊娠12週の平均はおよそ160bpm前後であるのに対し、妊娠中期~後期の平均は140bpm前後である。したがって妊娠32週の心拍数は妊娠12週より少ないのが正常であり、「多い」とする本記述は事実と逆である。
- ×e. 変動が大きい時間帯と小さい時間帯とがある。
記述は正しい。妊娠後期の胎児には覚醒状態(awake state)と睡眠状態(sleep state)が交互に現れる。覚醒時には胎動が多く、細変動や一過性頻脈が目立って心拍の変動が大きくなる。一方、静睡眠(quiet sleep)の時期には胎動が乏しく、細変動が減少して心拍パターンが平坦に近くなる。睡眠周期は通常20~40分程度で、長くても約40分を超えることは少ないとされる。NSTで一過性頻脈が得られない場合に、すぐ異常と判断せず検査時間を延長したり音響刺激を加えたりするのはこのためである。
胎児心拍数陣痛図(CTG)の基本用語
・胎児心拍数基線:10分間の平均的な心拍数(5bpm刻みで表す)。正常脈110~160bpm、徐脈110bpm未満、頻脈160bpm超。 ・基線細変動:基線の細かなゆらぎ。振幅6~25bpmが中等度で正常。消失(肉眼で認められない)、減少(5bpm以下)、増加(26bpm以上)は異常として扱う。細変動の存在は胎児の中枢神経・自律神経が保たれていることを示す重要な指標である。 ・一過性頻脈:心拍数が急速に上昇し、ピークまで30秒未満で、基線から15bpm以上・開始から戻るまで15秒以上2分未満持続するもの(妊娠32週未満では10bpm以上・10秒以上)。 ・一過性徐脈:早発・遅発・変動・遷延の4型に分類され、遅発一過性徐脈や高度の変動一過性徐脈、細変動消失を伴う場合は胎児低酸素を疑う。
妊娠週数と胎児心拍数の推移
・妊娠5~6週:経腟超音波で心拍を確認できるようになる(初期は100~120bpm程度)。 ・妊娠9~10週:最大(170~180bpm前後)。 ・妊娠12週ごろ:約160bpm前後。 ・妊娠中期以降:約140bpm前後へ低下し、満期までゆるやかに減少する。 この低下は迷走神経(副交感神経)による抑制が発達することで説明される。
胎児の行動状態
妊娠後期には胎児に睡眠・覚醒のサイクルが形成され、静睡眠(1F)、動睡眠(2F)、静覚醒(3F)、動覚醒(4F)などの状態が区別される。静睡眠期には細変動の減少や一過性頻脈の欠如がみられうるため、ノンリアクティブなNSTを評価する際には睡眠周期の影響を考慮する必要がある。
POINT
・胎児心拍数基線の正常範囲は110~160bpm。 ・胎児心拍数は妊娠9~10週ごろが最大(約170~180bpm)で、以後は週数とともに低下する(妊娠後期は140bpm前後)。 ・健康な胎児では胎動に伴う一過性頻脈と基線細変動がみられる(reactive NST:妊娠32週以降は15bpm・15秒以上が20分間に2回以上)。 ・睡眠・覚醒サイクルにより、心拍変動が大きい時間帯と小さい時間帯がある。
