生まれたての赤ちゃんは「小さな大人」ではない―4頭身・泉門・Moro反射・体温・動脈管で押さえる新生児の基本
第101回医師国家試験 B問題 第53問
国試問題にチャレンジ
新生児で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.6頭身である。
- b.大泉門は生後7日で閉鎖する。
- c.Moro反射は両側性に出現する。
- d.体温は環境による影響を受けやすい。
- e.動脈管は呼吸開始とともに閉鎖する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
新生児は約4頭身で、大泉門は1歳半前後(〜2歳)、小泉門は生後1〜2か月で閉鎖します。Moro反射は左右対称に出現して生後3〜4か月ごろに消失し、左右差は腕神経叢麻痺や鎖骨骨折、欠如や残存は中枢神経障害の手がかりとなります。新生児は体表面積が大きく皮下脂肪が少なく、ふるえによる熱産生もできないため体温が環境温の影響を受けやすく、出生直後の乾燥と保温が重要です。動脈管は酸素分圧上昇とプロスタグランジンE2低下で段階的に収縮し、機能的閉鎖は生後10〜15時間程度、器質的閉鎖は2〜3週であり、呼吸開始と同時に閉じるわけではありません。正常新生児の数値と生理を正確に押さえておくことが、異常所見を見逃さない診察の土台になります。
解答・解説
正解はc, dです
正常新生児の身体的特徴・神経反射・体温調節・循環動態の基本事項を問う一般問題である(2つ選ぶ)。 各選択肢は、次の知識と照らし合わせて判断する。 ・体型:年齢が低いほど身長に対して頭が大きく、新生児は約4頭身である。 ・大泉門:出生時は開いており、1歳半前後(おおむね2歳まで)に閉鎖する。 ・原始反射:Moro反射は正常では左右対称に出現する。 ・体温調節:新生児は体重当たりの体表面積が大きく、皮下脂肪が少なく、体温調節機能も未熟なため、環境温の影響を強く受ける。 ・循環の移行:出生後、動脈管はまず機能的に閉鎖(血流の途絶)し、その後数週をかけて器質的(解剖学的)に閉鎖する。呼吸開始と同時に閉じるわけではない。 以上から、正しいのはcとdである。数値(頭身、大泉門閉鎖時期、動脈管閉鎖時期)を正確に覚えているかが問われている。
選択肢考察
- ×a. 6頭身である。
誤り。新生児の頭部と身長の比(頭身)は約1:4、すなわち4頭身である。その後、2〜3歳で約5頭身、5〜6歳で約6頭身、12歳前後で約7頭身、成人で約8頭身となる。頭部は胎児期から早く発育するため、年齢が低いほど身長に占める頭の割合が大きい。
- ×b. 大泉門は生後7日で閉鎖する。
誤り。大泉門(前頭骨と左右の頭頂骨の間にあるひし形の泉門)は、出生時に約2〜3cm程度開いており、生後1歳半前後(通常2歳まで)に閉鎖する。なお、小泉門(頭頂骨と後頭骨の間)は生後1〜2か月ごろまでに閉鎖する。大泉門の早期閉鎖は小頭症や頭蓋縫合早期癒合症、閉鎖遅延はくる病・甲状腺機能低下症・水頭症などを疑う手がかりとなる。また大泉門の膨隆は頭蓋内圧亢進、陥凹は脱水の所見として診察で重要である。
- ○c. Moro反射は両側性に出現する。
正しい。Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて急に少し落下させるなど、急な体位変化や大きな音を刺激として誘発される原始反射である。両上肢を伸展・外転し手指を開いたあと、抱きつくように内転・屈曲する。正常では左右対称(両側性)に出現し、生後3〜4か月ごろ(遅くとも6か月ごろまで)に消失する。左右差がある場合は腕神経叢麻痺(分娩麻痺)、鎖骨骨折、上腕骨骨折などを疑う。反射が出ない場合や消失時期を過ぎても残る場合は中枢神経障害を考える。
- ○d. 体温は環境による影響を受けやすい。
正しい。新生児は、(1)体重当たりの体表面積が大きく熱を失いやすい、(2)皮下脂肪が薄く断熱性が低い、(3)体温調節機能が未熟でふるえ(shivering)による熱産生がほとんどできず、褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生に頼る、(4)エネルギー貯蔵が少ない、といった理由から、環境温に応じて体温が下がったり上がったりしやすい。低体温は低血糖や代謝性アシドーシス、呼吸障害を招くため、出生直後の皮膚の水分をすぐに拭き取り、保温に努めることが重要である。新生児室の室温は24〜25℃程度に保たれる。
- ×e. 動脈管は呼吸開始とともに閉鎖する。
誤り。出生後、呼吸開始により肺血管抵抗が低下し、動脈血酸素分圧が上昇する。さらに胎盤由来のプロスタグランジンE2が減少することで、動脈管の平滑筋が収縮する。この過程には時間を要し、動脈管の血流が途絶える機能的閉鎖は生後おおむね10〜15時間以内(遅くとも数日以内)に起こり、線維化による器質的閉鎖は生後2〜3週ごろに完成する。呼吸開始の瞬間に閉じるわけではない。閉鎖しない状態が動脈管開存症であり、早産児で起こりやすい。
新生児の身体計測の目安(正期産児)
・体重:約3,000g、身長:約50cm、頭囲:約33cm、胸囲:約32cm(出生時は頭囲>胸囲)。 ・生後数日間に出生体重の5〜10%程度が減少する(生理的体重減少)。
頭身の変化
新生児4頭身 → 2〜3歳5頭身 → 5〜6歳6頭身 → 12歳ごろ7頭身 → 成人8頭身。
泉門
・大泉門:1歳半前後(〜2歳)で閉鎖。膨隆=頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症など)、陥凹=脱水。 ・小泉門:生後1〜2か月で閉鎖。
主な原始反射と消失時期の目安
・Moro反射:〜4か月ごろ ・把握反射(手掌):〜4か月ごろ ・吸啜反射・探索反射:〜4〜6か月ごろ ・非対称性緊張性頸反射:〜4〜6か月ごろ ・自動歩行:〜2か月ごろ ・Babinski反射:〜1〜2歳ごろ 原始反射の左右差・欠如・残存は、末梢神経損傷や中枢神経障害の手がかりとなる。
胎児循環から新生児循環への移行
・静脈管:臍帯血流の途絶で閉鎖し、静脈管索となる。 ・卵円孔:肺血流増加で左房圧が右房圧を上回り、弁が押し付けられて機能的に閉鎖する。 ・動脈管:酸素分圧上昇とプロスタグランジンE2低下で収縮し、機能的閉鎖(生後10〜15時間程度)→器質的閉鎖(2〜3週)。閉鎖後は動脈管索となる。 ・臨床応用:動脈管依存性の先天性心疾患ではプロスタグランジンE1製剤で動脈管を開存させ、早産児の動脈管開存症ではインドメタシンやイブプロフェン(プロスタグランジン合成阻害薬)で閉鎖を促す。
新生児の熱喪失の経路
蒸散(羊水で濡れた皮膚からの蒸発)、輻射、伝導、対流の4経路があり、出生直後は蒸散による熱喪失が大きい。
POINT
・新生児は4頭身(6頭身は5〜6歳)。 ・大泉門は1歳半前後(〜2歳)、小泉門は生後1〜2か月で閉鎖。 ・Moro反射は左右対称に出現し、生後4か月ごろ消失。左右差は腕神経叢麻痺・鎖骨骨折を疑う。 ・新生児は体表面積が大きく皮下脂肪が少ないため、環境温の影響を受けやすい(保温が重要)。 ・動脈管は機能的閉鎖が生後10〜15時間程度、器質的閉鎖が2〜3週。呼吸開始と同時には閉じない。
