StudyMed医師国家試験

デスモソームにⅦ型コラーゲンはない―皮膚の「細胞と接着」を水疱症から整理する

第101回医師国家試験 B問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第26問

組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.色素細胞 ―― メラノソーム
  2. b.Langerhans細胞 ―― Birbeck顆粒
  3. c.マスト細胞 ―― ヒスタミン
  4. d.表皮角化細胞 ―― ケラチン
  5. e.デスモソーム ―― Ⅶ型コラーゲン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、皮膚を構成する細胞や構造と、それぞれを特徴づける小器官や物質の組合せを問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので注意しよう。着眼点は、表皮にどんな細胞がいるか、そして細胞同士や細胞と基底膜をつなぐ接着構造が何でできているか、の2つだ。
医学生医学生
組織学の実習で皮膚の標本を見ましたが、表皮はほとんど角化細胞だった印象です。
ドクタードクター
そうだね。表皮は重層扁平上皮で、大部分は表皮角化細胞、つまりケラチノサイトだ。基底層から有棘層、顆粒層を経て角層へと分化しながら、中間径フィラメントのケラチンを蓄積していく。最後は核を失った角質細胞になってバリアをつくる。だから角化細胞とケラチンの組合せは正しい。
医学生医学生
ケラチンにも種類があると生化学で習った気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。基底層ではケラチン5/14、有棘層より上ではケラチン1/10が主に発現する。ケラチン5/14の遺伝子変異では基底細胞の中で裂けて単純型表皮水疱症になる。では、角化細胞以外で表皮にいる細胞は?
医学生医学生
基底層に色素細胞、有棘層にLangerhans細胞、それからMerkel細胞もいたと思います。
ドクタードクター
その通り。色素細胞、つまりメラノサイトは神経堤由来で基底層に分布し、メラノソームという小器官の中でチロシナーゼを使ってチロシンからメラニンを合成する。成熟したメラノソームは樹状突起を通じて周囲の角化細胞へ受け渡される。色素細胞とメラノソームの組合せも正しい。
医学生医学生
チロシナーゼの異常だと白皮症になるんでしたね。Langerhans細胞のBirbeck顆粒は、テニスラケットみたいな形のものですか。
ドクタードクター
そう、電子顕微鏡で見えるテニスラケット状の顆粒だ。Langerhans細胞は骨髄由来の樹状細胞で、皮膚に入った抗原を取り込んで所属リンパ節のT細胞に提示する。アレルギー性接触皮膚炎の感作にも関わる。免疫染色ではCD1a、S-100蛋白、langerinが陽性で、Langerhans細胞組織球症の診断にも使われる。これも正しい組合せだ。
医学生医学生
マスト細胞とヒスタミンは、Ⅰ型アレルギーの代表なので間違いないと思います。
ドクタードクター
うん。マスト細胞は真皮の血管周囲などにいて、表面の高親和性IgE受容体に結合したIgEが抗原で架橋されると脱顆粒し、ヒスタミンやトリプターゼなどを放出する。蕁麻疹の膨疹やかゆみの主因だね。さて、残るのがデスモソームとⅦ型コラーゲンの組合せだ。
医学生医学生
デスモソームは細胞同士の接着装置ですよね。コラーゲンは細胞外基質なので、少し違和感があります。でも、ⅩⅦ型コラーゲンも接着に関わると聞いたので混乱しています。
ドクタードクター
その違和感は正しい。整理しよう。デスモソームは角化細胞どうしをつなぐ装置で、細胞外ではデスモグレインとデスモコリン、細胞内ではプラコグロビンやデスモプラキンを介してケラチンとつながる。ⅩⅦ型コラーゲン、つまりBP180は、基底細胞と基底膜をつなぐヘミデスモソームの成分だ。そしてⅦ型コラーゲンは、基底膜のさらに真皮側にある係留線維の主成分で、基底膜を真皮に固定している。
医学生医学生
つまり、Ⅶ型コラーゲンはデスモソームとは場所も役割も違うから、この組合せが誤り、ということですね。
ドクタードクター
正解。表皮の上から下へ、デスモソーム、ヘミデスモソーム、係留線維と順番に並べると覚えやすい。そしてこの位置関係は、そのまま水疱症の分類につながるんだ。
医学生医学生
皮膚科の講義で、天疱瘡は表皮内水疱、類天疱瘡は表皮下水疱と習いました。
ドクタードクター
まさにそれ。デスモグレイン3に対する自己抗体が尋常性天疱瘡で粘膜病変が目立ち、デスモグレイン1に対する自己抗体が落葉状天疱瘡。黄色ブドウ球菌の表皮剥脱毒素がデスモグレイン1を切断するとブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群になる。いずれも表皮内で裂け、Nikolsky現象が陽性になる。
医学生医学生
ヘミデスモソームのBP180やBP230に対する自己抗体が水疱性類天疱瘡で、高齢者に多いんですよね。
ドクタードクター
その通り。そしてⅦ型コラーゲンに対する自己抗体は後天性表皮水疱症、COL7A1遺伝子の変異は栄養障害型表皮水疱症を起こす。どの分子が壊れるかで、どの深さで裂けるかが決まる。蛍光抗体法で抗体の沈着部位を見るのも、この発想に基づいているんだ。
医学生医学生
組合せ問題に見えて、実は水疱症の病態の土台を確認する問題だったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。臨床で水疱を見たら、表皮内か表皮下か、標的分子は何かを考える習慣をつけよう。

まとめ

表皮は主に角化細胞(ケラチン)からなり、基底層の色素細胞(メラノソームでメラニン合成)、有棘層のLangerhans細胞(Birbeck顆粒、CD1a・S-100・langerin陽性)、基底層のMerkel細胞を含み、真皮にはヒスタミンを放出するマスト細胞が分布します。デスモソームは角化細胞どうしの接着装置で、デスモグレイン・デスモコリンが細胞外で結合し、細胞内でケラチンとつながります。ⅩⅦ型コラーゲン(BP180)はヘミデスモソームの成分であり、Ⅶ型コラーゲンは基底膜直下の係留線維の主成分なので、デスモソームの構成成分ではありません。デスモグレインは天疱瘡、BP180・BP230は水疱性類天疱瘡、Ⅶ型コラーゲンは後天性表皮水疱症や栄養障害型表皮水疱症の標的となります。接着構造の位置と構成分子を整理しておくと、水疱症の鑑別や裂隙の深さの理解に直結します。

解答・解説

正解はeです

テーマ

皮膚を構成する細胞・構造と、それぞれに特徴的な細胞小器官・物質(マーカー)の対応を問う問題である。「誤っている組合せ」を選ぶ点に注意する。

皮膚の構成要素の整理

表皮は重層扁平上皮で、次の細胞からなる。 ・表皮角化細胞(ケラチノサイト):表皮の大部分を占め、基底層から角層へと分化しながらケラチンを蓄積する。 ・色素細胞(メラノサイト):基底層に存在し、メラノソームでメラニンを合成して周囲の角化細胞に受け渡す。 ・Langerhans細胞:有棘層に存在する抗原提示細胞で、Birbeck顆粒をもつ。 ・Merkel細胞:基底層に存在する触覚の受容に関わる細胞。 真皮には線維芽細胞、マスト細胞(肥満細胞)、マクロファージなどが存在する。

細胞間・細胞基質間の接着構造

・デスモソーム:角化細胞どうしをつなぐ接着装置。細胞外ではデスモグレイン・デスモコリン(カドヘリンファミリー)が結合し、細胞内ではプラコグロビン・デスモプラキンを介してケラチン(中間径フィラメント)とつながる。 ・ヘミデスモソーム:基底細胞と基底膜をつなぐ接着装置。BP180(ⅩⅦ型コラーゲン)やBP230などを含む。 ・Ⅶ型コラーゲン:基底膜(透明帯・基底板)のさらに真皮側に存在する係留線維(anchoring fibril)の主成分で、基底膜と真皮を結びつける。 したがって、Ⅶ型コラーゲンはデスモソームの構成成分ではない。接着構造とその構成分子の位置関係は、自己免疫性水疱症や先天性表皮水疱症の病態を理解するうえで重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  色素細胞 ―― メラノソーム

    正しい組合せである。色素細胞(メラノサイト)は神経堤由来で表皮基底層に分布し、細胞質内の小器官であるメラノソームでメラニンを合成する。メラノソーム内ではチロシナーゼの働きでチロシンからメラニンが作られ、成熟したメラノソームは樹状突起を通じて周囲の角化細胞へ受け渡される。チロシナーゼ遺伝子の異常では眼皮膚白皮症が生じる。

  2. ×b.  Langerhans細胞 ―― Birbeck顆粒

    正しい組合せである。Langerhans細胞は骨髄由来の樹状細胞で、主に表皮有棘層に存在し、皮膚に侵入した抗原を取り込んで所属リンパ節のT細胞に提示する(アレルギー性接触皮膚炎の感作にも関与する)。電子顕微鏡で観察されるテニスラケット状の細胞質内顆粒であるBirbeck顆粒が特徴で、免疫組織化学ではCD1a、S-100蛋白、langerin(CD207)が陽性となる。Langerhans細胞組織球症の診断にもこれらの所見が用いられる。

  3. ×c.  マスト細胞 ―― ヒスタミン

    正しい組合せである。マスト細胞(肥満細胞)は真皮の血管周囲などに分布し、細胞質に好塩基性(メタクロマジーを示す)の顆粒をもつ。細胞表面の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合したIgEが抗原によって架橋されると脱顆粒し、ヒスタミン、ヘパリン、トリプターゼなどを放出するほか、ロイコトリエンやプロスタグランジンを新たに産生する。これがⅠ型アレルギーや蕁麻疹の膨疹・瘙痒の主因となる。

  4. ×d.  表皮角化細胞 ―― ケラチン

    正しい組合せである。表皮角化細胞(ケラチノサイト)は中間径フィラメントであるケラチンを豊富に含み、基底層から有棘層、顆粒層を経て角層へと分化する過程でケラチンを蓄積し、最終的に核を失った角質細胞となって皮膚のバリアを形成する。分化段階によって発現するケラチンの種類が異なり(基底層ではケラチン5/14、有棘層以上ではケラチン1/10)、これらの遺伝子変異は単純型表皮水疱症や表皮融解性魚鱗癬の原因となる。

  5. ○e.  デスモソーム ―― Ⅶ型コラーゲン

    誤った組合せであり、これが正解である。デスモソームは角化細胞どうしを結合する接着装置で、その構成分子はデスモグレイン、デスモコリン、プラコグロビン、デスモプラキンであり、細胞内ではケラチン(中間径フィラメント)が付着する。一方、Ⅶ型コラーゲンは基底膜直下の係留線維の主成分で、基底膜を真皮に固定する役割をもち、デスモソームとは存在部位も機能も異なる。Ⅶ型コラーゲンの遺伝子(COL7A1)変異は栄養障害型(劣性・優性)表皮水疱症を、これに対する自己抗体は後天性表皮水疱症をひき起こす。

接着構造と水疱症の対応

皮膚の接着分子が障害されると、その部位で表皮の結合が破綻して水疱が生じる。 ・デスモソーム(表皮内の細胞間接着)  デスモグレイン3(±デスモグレイン1)に対する自己抗体 → 尋常性天疱瘡(粘膜病変が目立つ)  デスモグレイン1に対する自己抗体 → 落葉状天疱瘡(粘膜病変はまれ)  黄色ブドウ球菌の表皮剥脱毒素がデスモグレイン1を切断 → ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)  いずれも表皮内水疱となり、Nikolsky現象が陽性となる。 ・ヘミデスモソーム(基底細胞と基底膜の接着)  BP180(ⅩⅦ型コラーゲン)、BP230に対する自己抗体 → 水疱性類天疱瘡(表皮下水疱、高齢者に多い) ・係留線維(基底膜と真皮の接着)  Ⅶ型コラーゲンに対する自己抗体 → 後天性表皮水疱症  COL7A1遺伝子変異 → 栄養障害型表皮水疱症 ・ケラチン(基底細胞の細胞骨格)  ケラチン5/14遺伝子変異 → 単純型表皮水疱症(基底細胞内で裂ける)

表皮の層構造

深部から基底層→有棘層→顆粒層→角層(手掌・足底では顆粒層と角層の間に淡明層)。基底細胞が角層に達して剥がれ落ちるまでの表皮のターンオーバーはおよそ4週間(約45日とする記載もある)とされる。

表皮内のケラチノサイト以外の細胞

・メラノサイト(基底層):メラニン産生。悪性化すると悪性黒色腫。 ・Langerhans細胞(有棘層):抗原提示。 ・Merkel細胞(基底層):触覚受容。悪性化するとMerkel細胞癌。

POINT

・デスモソーム=角化細胞どうしの接着(デスモグレイン・デスモコリン、細胞内はケラチン)→ 天疱瘡の標的。 ・ヘミデスモソーム=基底細胞と基底膜の接着(BP180=ⅩⅦ型コラーゲン、BP230)→ 水疱性類天疱瘡の標的。 ・Ⅶ型コラーゲン=基底膜直下の係留線維 → 栄養障害型表皮水疱症(先天性)・後天性表皮水疱症。 ・メラノサイト=メラノソーム、Langerhans細胞=Birbeck顆粒(CD1a、S-100、langerin陽性)、マスト細胞=ヒスタミン(FcεRIを介する脱顆粒)、角化細胞=ケラチン。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。