StudyMed医師国家試験

鼻のすぐ隣なのに仲間外れ―眼窩をつくる7つの骨と「鼻骨」のひっかけ

第101回医師国家試験 B問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第27問

眼窩を構成しないのはどれか。

  1. a.蝶形骨
  2. b.篩骨
  3. c.涙骨
  4. d.鼻骨
  5. e.頰骨

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼窩、つまり眼球を収める骨のくぼみがどの骨でできているかを問う解剖の問題だ。ポイントは「眼窩の近くにある骨」と「実際に眼窩の壁をつくる骨」を区別できるかどうか。まず眼窩の形をイメージできるかな。
医学生医学生
解剖実習で頭蓋骨を見たとき、前に開いた円錐みたいな穴だと思いました。
ドクタードクター
いいイメージだね。正確には四角錐状で、開口部が前方、尖端が後内方を向いている。そして壁は全部で7種類の骨で構成される。前頭骨、蝶形骨、篩骨、涙骨、上顎骨、頬骨、口蓋骨だ。
医学生医学生
7つもあるんですね。選択肢に並んでいる骨はどれも眼の周りにありそうで、全部入っている気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこがこの問題のねらいだね。丸暗記より、上壁・下壁・内側壁・外側壁の四壁ごとに整理すると確実だ。まず上壁は前頭骨の眼窩部が主体で、後方を蝶形骨小翼が担う。外側壁は前方が頬骨、後方が蝶形骨大翼で、4つの壁の中で最も厚く丈夫なんだ。
医学生医学生
蝶形骨は上壁にも外側壁にも出てくるんですね。視神経管もたしか蝶形骨でした。
ドクタードクター
その通り。視神経管は小翼の根部にあって視神経と眼動脈が通る。大翼と小翼の隙間が上眼窩裂で、動眼神経・滑車神経・外転神経・眼神経の枝が通る。蝶形骨は眼窩の後部を広く担う、まさに奥の主役だ。次に内側壁はどうかな。
医学生医学生
篩骨の紙様板があるのは覚えています。とても薄いと講義で強調されました。
ドクタードクター
よく覚えているね。内側壁は前から上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨眼窩板(紙様板)、蝶形骨体の順に並び、最も薄い壁だ。涙骨は小さな骨だけど、上顎骨前頭突起とともに涙嚢窩をつくり、そこに涙嚢が収まる。涙はそこから鼻涙管を通って下鼻道へ流れていく。
医学生医学生
下壁は上顎骨ですよね。頬骨も関わるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。下壁は主に上顎骨で、外側を頬骨、後方のごく一部を口蓋骨の眼窩突起が担う。直下には上顎洞があって、眼窩下神経が眼窩下溝・眼窩下管を通っている。
医学生医学生
そうすると、残る鼻骨は内側壁の前のほうに入っているのかと思ったのですが、違うんですか。
ドクタードクター
そこが一番のひっかけだね。鼻骨は左右一対の細長い骨で、鼻背の上部、つまり外鼻の骨格をつくる骨だ。眼窩内側縁のすぐ内側に位置するけれど、眼窩の壁には加わらない。内側縁の前部をつくっているのは上顎骨前頭突起で、鼻骨はその内側に接しているだけなんだ。だから眼窩を構成しないのは鼻骨になる。
医学生医学生
位置が近いだけで、壁そのものではないんですね。上顎骨前頭突起と鼻骨を混同していました。
ドクタードクター
多くの人がそこで迷うよ。頭蓋骨の模型で、眼窩の縁を指でなぞってみると違いがよくわかる。では臨床との関係も押さえておこう。眼球に鈍的外力が加わると眼窩内圧が上がり、薄い下壁や内側壁が折れる。これが眼窩吹き抜け骨折だ。
医学生医学生
救急外来の実習で、ボールが目に当たって上を向くと二重に見えるという患者さんがいました。
ドクタードクター
典型的だね。下壁骨折では下直筋が骨折部に絞扼されて上転障害と複視が起こり、眼窩下神経障害による頬部のしびれや眼球陥凹を伴うこともある。若年者では骨が弾性に富むため、骨片が戻って筋を挟み込む閉鎖型の骨折になりやすく、早期手術が検討されることがある点も覚えておきたい。
医学生医学生
逆に、厚い外側壁は折れにくいということですね。
ドクタードクター
そう、外側壁は頬骨と蝶形骨大翼でできた最も頑丈な壁だ。もう一つ、眼窩は上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞に囲まれているから、特に薄い紙様板を介して篩骨洞炎が眼窩に波及し、眼窩蜂巣炎を起こすことがある。一方、鼻骨は顔面で最も折れやすい骨の一つだけれど、鼻骨骨折は鼻の変形や鼻出血が主体で、眼窩の骨折とは分けて考えるんだ。
医学生医学生
骨の構成を壁ごとに覚えておくと、骨折の症状や副鼻腔炎の波及まで説明できるんですね。
ドクタードクター
その通り。解剖の知識はそのまま画像の読影や症状の理解につながる。四壁と主な孔・裂をセットで整理しておこう。

まとめ

眼窩は前頭骨・蝶形骨・篩骨・涙骨・上顎骨・頬骨・口蓋骨の7種類の骨で構成され、鼻骨は眼窩内側縁のすぐそばにあるものの眼窩壁には加わりません。上壁は前頭骨と蝶形骨小翼、外側壁は頬骨と蝶形骨大翼、下壁は上顎骨を主体に頬骨と口蓋骨、内側壁は上顎骨前頭突起・涙骨・篩骨紙様板・蝶形骨体と、壁ごとに整理すると確実に覚えられます。最も薄い内側壁と下壁は眼窩吹き抜け骨折を起こしやすく、外眼筋の絞扼による複視や眼窩下神経障害の理解に直結します。また紙様板を介した篩骨洞炎の波及は眼窩蜂巣炎の原因となります。眼窩の骨構成は、外傷・感染・腫瘍など眼窩疾患を理解するための基礎となる知識です。

解答・解説

正解はdです

眼窩(がんか)は眼球・外眼筋・視神経・涙腺などを収める、頭蓋骨の前面に開いた四角錐状のくぼみである。開口部(眼窩口)が前方、頂点(眼窩尖端)が後内方を向き、その壁は計7種類の骨で構成される。 眼窩を構成する7骨は、前頭骨、蝶形骨、篩骨(しこつ)、涙骨、上顎骨、頬骨、口蓋骨である。本問ではこの7つに含まれない骨を選べばよい。鼻骨は鼻根部で左右一対をなし外鼻の骨格(鼻背)を作る骨で、眼窩の内側縁の近くにあるものの眼窩壁には加わらない。したがって正解は鼻骨である。 位置の近さに惑わされやすいので、「上・下・内側・外側の四壁+尖端」のそれぞれがどの骨でできているかを壁ごとに整理して覚えると確実である。

選択肢考察

  1. ×a.  蝶形骨

    蝶形骨は眼窩の後部を広く担う。小翼は眼窩上壁の後方部を、大翼は眼窩外側壁の後方部を形成し、体部は内側壁の最後部に関わる。視神経管は小翼の根部にあり、上眼窩裂は大翼と小翼の間の隙間である。眼窩を構成する骨であり、誤りの選択肢である。

  2. ×b.  篩骨

    篩骨の眼窩板(紙様板)は眼窩内側壁の主要部分を占める。非常に薄い骨であるため、眼窩吹き抜け骨折では下壁とともに骨折しやすく、篩骨洞炎が眼窩内へ波及して眼窩蜂巣炎を起こす経路にもなる。眼窩を構成する骨である。

  3. ×c.  涙骨

    涙骨は眼窩内側壁の前方にある小さな薄い骨で、上顎骨前頭突起とともに涙嚢窩を形成し、ここに涙嚢が収まる。涙嚢窩から鼻涙管へ続き、涙は下鼻道へ排出される。眼窩を構成する骨である。

  4. ○d.  鼻骨

    鼻骨は左右一対の細長い骨で、前頭骨・上顎骨前頭突起と接して鼻背(鼻梁)の上部を形成する。眼窩内側縁のすぐ内側に位置するが、眼窩壁の構成には加わらない。眼窩内側縁の前部を作るのは上顎骨前頭突起であり、鼻骨と混同しないことが重要である。よって眼窩を構成しない骨として本選択肢が正解である。

  5. ×e.  頰骨

    頬骨は眼窩外側壁の前方部と眼窩下壁の外側部を形成し、眼窩外側縁・下縁の一部も作る。外側壁は前方が頬骨、後方が蝶形骨大翼という構成である。眼窩を構成する骨である。

眼窩の壁と構成骨

・上壁(眼窩天井):前頭骨の眼窩部、後方は蝶形骨小翼。前頭蓋窩・前頭洞と接する。 ・下壁(眼窩底):主に上顎骨、外側に頬骨、後方の小部分に口蓋骨(眼窩突起)。直下に上顎洞があり、眼窩下溝・眼窩下管を眼窩下神経が通る。 ・内側壁:前から上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨眼窩板(紙様板)、蝶形骨体。最も薄い壁である。 ・外側壁:前方が頬骨、後方が蝶形骨大翼。最も厚く丈夫な壁である。

眼窩の主な孔・裂

・視神経管(蝶形骨小翼):視神経、眼動脈が通る。 ・上眼窩裂(大翼と小翼の間):動眼神経、滑車神経、外転神経、眼神経(三叉神経第1枝)の枝、上眼静脈が通る。 ・下眼窩裂:上顎神経(三叉神経第2枝)の枝である眼窩下神経・頬骨神経などが通る。

臨床との関連

・眼窩吹き抜け骨折(blowout fracture):眼球への鈍的外力で眼窩内圧が上昇し、薄い下壁(上顎骨)や内側壁(篩骨紙様板)が骨折する。下直筋や内直筋の絞扼による眼球運動障害・複視、眼窩下神経障害による頬部の感覚低下、眼球陥凹などをきたす。 ・副鼻腔(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)は眼窩を取り囲んでおり、副鼻腔炎は眼窩蜂巣炎の原因となる。 ・鼻骨は顔面骨の中で最も骨折しやすい骨の一つだが、鼻骨骨折は鼻の変形や鼻出血が主体であり、眼窩の骨折とは区別して考える。

POINT

・眼窩を構成する骨は7種類:前頭骨、蝶形骨、篩骨、涙骨、上顎骨、頬骨、口蓋骨。 ・鼻骨は眼窩に近いが眼窩を構成しない(頻出のひっかけ)。 ・最も薄い壁は内側壁(篩骨紙様板)、次いで下壁。吹き抜け骨折はこれらに起こりやすい。 ・最も厚い壁は外側壁(頬骨+蝶形骨大翼)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。