StudyMed医師国家試験

喉頭展開の「いちばん奥」に何が見える?―仰臥位で読み解く咽頭・喉頭の前後関係

第100回医師国家試験 G問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第34問

仰臥位で直接喉頭鏡で喉頭を展開した。 最も背側に見えるのはどれか。

  1. a.舌根
  2. b.喉頭蓋
  3. c.咽頭後壁
  4. d.梨状陥凹
  5. e.披裂部粘膜

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、気管挿管のときに使う直接喉頭鏡でのぞいた視野を、解剖の前後関係に置き換えられるかを問う問題だ。ポイントは「仰臥位では腹側が天井、背側が床になる」ということ。口から奥へ進むにつれて、どんな順で構造が並ぶかを考えてみよう。
医学生医学生
声帯がいちばん奥にあるイメージなんですが、選択肢に声帯がないので迷います。披裂部が一番後ろでしょうか。
ドクタードクター
いいところまで来ているね。たしかに喉頭の構造としては披裂部が後方の縁をつくっている。でも、喉頭の後ろにはまだ何かがあるはずだ。喉頭と食道の位置関係を思い出してみて。
医学生医学生
解剖実習で頸部を剖出したとき、気管の後ろに食道がありました。ということは、喉頭の後ろには咽頭がつながっている…?
ドクタードクター
その通り。咽頭は喉頭の背側を上下に走る管で、その後壁は椎前筋膜を隔てて頸椎の前面に接している。腹側から背側へ並べると、舌根、喉頭蓋谷、喉頭蓋、声門、披裂部、そして咽頭後壁という順になる。だから最も背側に見えるのは咽頭後壁なんだ。
医学生医学生
でも、喉頭の真後ろには食道の入口があるはずですよね。食道の穴が一番奥に見えるのではないですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。食道入口部は普段、輪状咽頭筋、つまり上部食道括約筋の収縮で閉じている。だから内腔としては見えず、視野の奥には咽頭後壁の粘膜が見えることになるんだ。では、ほかの選択肢も位置づけていこう。まず舌根は?
医学生医学生
舌の後ろ3分の1で、喉頭鏡のブレードで持ち上げる部分ですよね。一番手前、つまり腹側だと思います。
ドクタードクター
そう。舌根は中咽頭の前壁をつくる構造で、選択肢の中では最も腹側にある。意識障害で舌根が落ち込むと気道が塞がる、いわゆる舌根沈下もこの位置関係から理解できるね。次に喉頭蓋は?
医学生医学生
麻酔科の実習で、Macintosh型のブレードの先を喉頭蓋谷に入れて持ち上げるように教わりました。喉頭蓋は舌根のすぐ後ろですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。舌根と喉頭蓋の間のくぼみが喉頭蓋谷で、Macintosh型ではそこにブレード先端を入れて舌根ごと持ち上げると、喉頭蓋が間接的に起きて声門が見える。直型のMiller型では喉頭蓋そのものを直接すくい上げる。どちらにせよ喉頭蓋は喉頭入口の腹側にあるから、最も背側ではない。
医学生医学生
梨状陥凹は下咽頭なので、咽頭後壁と同じくらい奥にあるのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは間違えやすいところだ。梨状陥凹は、喉頭が咽頭の中に膨らみ出していることでその左右外側にできるくぼみなんだ。前後方向で見ると喉頭の横に位置するから、咽頭後壁よりは腹側にある。魚の骨が引っかかりやすく、下咽頭癌の多くがここから発生することも重要だよ。
医学生医学生
披裂部粘膜は声門の奥に左右一対の盛り上がりとして見えるんですよね。背側寄りだけれど、その後ろにさらに下咽頭がある、と。
ドクタードクター
完璧だ。披裂部は披裂軟骨を覆う粘膜の隆起で、声帯の後端がつく部分。喉頭としては後方だけど、さらに背側には輪状後部や咽頭後壁がある。並べ直すと、舌根、喉頭蓋、披裂部と梨状陥凹、咽頭後壁の順になる。
医学生医学生
挿管で声門が見えないまま奥へ進めると食道挿管になる、というのもこの前後関係から説明できますね。
ドクタードクター
まさにそこが臨床で大事な点だ。直接喉頭鏡でどこまで見えるかはCormack-Lehane分類で評価する。声門がほぼ全体見えるのがグレード1、披裂部など声門の後方だけ見えるのがグレード2、喉頭蓋しか見えないのが3、喉頭蓋も見えないのが4だ。視野が悪いときほど背側に進めてしまいやすいから、挿管後は呼気二酸化炭素の検出などで気管内にあることを必ず確認する。
医学生医学生
間接喉頭鏡だと鏡像なので見え方が変わる、と耳鼻科の講義で聞いた覚えがあります。
ドクタードクター
そう、間接喉頭鏡では前後が上下に反転して見えるから注意が必要だ。外来では経鼻的な喉頭ファイバースコープが主流で、覚醒下に発声や嚥下の動きも観察できる。どの方法で見ても、頭の中に立体的な前後関係を描けることが、正しい所見の読み取りにつながるよ。

まとめ

仰臥位で直接喉頭鏡により喉頭を展開すると、腹側(天井側)から背側(床側)へ、舌根、喉頭蓋谷、喉頭蓋、声門、披裂部、咽頭後壁の順に構造が並びます。梨状陥凹は喉頭の左右外側にある下咽頭のくぼみで、前後方向では喉頭の側方にあたり、下咽頭癌や魚骨異物の好発部位です。喉頭の真後ろには食道入口部がありますが、平常時は輪状咽頭筋の収縮で閉じているため、視野の最も背側に見えるのは咽頭後壁です。この前後関係は、Macintosh型・Miller型ブレードの使い分けやCormack-Lehane分類、食道挿管が起こる理由の理解に直結します。解剖を立体的にとらえることが、安全な気道確保の基盤になります。

解答・解説

正解はcです

【テーマ】喉頭とその周囲(中咽頭・下咽頭)の前後関係を、直接喉頭鏡による視野に当てはめて理解しているかを問う問題である。

前提の整理

・直接喉頭鏡とは、喉頭鏡のブレード(へら)で舌を持ち上げて、口から喉頭を直接のぞき込む器具である。代表例は気管挿管に用いるMacintosh型(曲型ブレード)やMiller型(直型ブレード)の喉頭鏡である。鏡を介して観察する間接喉頭鏡や、全身麻酔下の喉頭微細手術で用いる筒状の喉頭直達鏡とは区別される。 ・患者は仰臥位であるため、腹側(前方)が天井側、背側(後方)が床側になる。術者は患者の頭側に立って見下ろすので、視野の上方(ブレードの先側に近い方)に腹側の構造、視野の下方(奥)に背側の構造が見える。

前後関係の考え方

口から入って奥へ進むと、腹側から背側へ順に次の構造が並ぶ。 舌根 → 喉頭蓋谷(舌根と喉頭蓋の間のくぼみ)→ 喉頭蓋 → 声門(声帯)→ 披裂部 → 下咽頭後壁(咽頭後壁) 梨状陥凹は披裂部・披裂喉頭蓋ひだの外側に左右一対ある下咽頭のくぼみであり、前後方向では喉頭の側方に位置する。披裂部のさらに背側には、喉頭の後ろ側を覆う下咽頭の後壁があり、その背側は椎前筋膜・頸椎となる。喉頭の真後ろには本来食道入口部があるが、食道は通常は輪状咽頭筋の収縮によって閉じているため、内腔としては見えず、視野の一番奥(背側)には咽頭後壁の粘膜が見えることになる。

解答の考え方

選択肢の構造を腹側から背側へ並べると「舌根 → 喉頭蓋 → 披裂部粘膜・梨状陥凹 → 咽頭後壁」となり、最も背側にあるのは咽頭後壁である。気管挿管時に喉頭展開がうまくいかず、声門が見えないまま背側に進めると食道挿管となる理由も、この前後関係から理解できる。

選択肢考察

  1. ×a.  舌根

    舌根は舌の後方1/3にあたり、中咽頭の前壁を構成する。選択肢の中では最も腹側にある構造である。直接喉頭鏡ではブレードで舌根を腹側(天井側)へ持ち上げ、視野を確保して喉頭を展開する。舌根が落ち込むと上気道が閉塞しやすく、意識障害時の舌根沈下はこのためである。

  2. ×b.  喉頭蓋

    喉頭蓋は舌根のすぐ背側、舌根の基部から上方へ立ち上がる葉状の軟骨(弾性軟骨)を芯とする構造で、嚥下時に喉頭の入口を覆う。舌根と喉頭蓋の間には喉頭蓋谷というくぼみがある。Macintosh型喉頭鏡ではブレード先端を喉頭蓋谷に入れて舌根ごと持ち上げることで、喉頭蓋が間接的に起こされて声門が見える。Miller型喉頭鏡ではブレード先端で喉頭蓋そのものを直接すくい上げる。いずれにしても喉頭蓋は喉頭の入口の腹側にあり、最も背側の構造ではない。

  3. ○c.  咽頭後壁

    咽頭は喉頭の背側を上下に走る管であり、その後壁は椎前筋膜を隔てて頸椎の前面に接している。喉頭展開時には、声門・披裂部のさらに奥(床側)に下咽頭の後壁が見え、これが視野の中で最も背側の構造となる。喉頭の真後ろには食道入口部があるが、平常時は輪状咽頭筋(上部食道括約筋)の収縮によって閉じており、内腔としては観察されない。そのため最も背側に見えるのは咽頭後壁である。

  4. ×d.  梨状陥凹

    梨状陥凹は下咽頭の一部で、喉頭(披裂喉頭蓋ひだ・披裂部)が咽頭内へ膨隆していることにより、その左右外側に形成されるくぼみである。前後方向でみると喉頭の側方に位置し、咽頭後壁よりは腹側にある。魚骨などの異物が引っかかりやすい部位であり、下咽頭癌の好発部位(下咽頭癌の大部分は梨状陥凹から発生する)でもある。

  5. ×e.  披裂部粘膜

    披裂部は披裂軟骨を覆う粘膜の隆起で、喉頭入口部の後方(背側)の縁をつくる。喉頭展開では声門の奥に左右一対の隆起として見え、声帯の後端が付着する。喉頭の構造としては背側寄りであるが、そのさらに背側に下咽頭(輪状後部・咽頭後壁)が位置するため、最も背側ではない。

咽頭の区分

・上咽頭(鼻咽腔): 頭蓋底から軟口蓋の高さまで。耳管咽頭口、アデノイド(咽頭扁桃)がある。 ・中咽頭: 軟口蓋から喉頭蓋谷の高さまで。前壁(舌根・喉頭蓋谷)、側壁(口蓋扁桃)、後壁、上壁(軟口蓋)に分けられる。 ・下咽頭: 喉頭蓋谷の高さ(舌骨上縁)から輪状軟骨下縁の高さまで。梨状陥凹、輪状後部、後壁の3亜部位に分けられる。

喉頭の区分

・声門上部: 喉頭蓋、披裂喉頭蓋ひだ、披裂部、仮声帯、喉頭室。 ・声門: 声帯とその上下の狭い範囲。 ・声門下部: 声帯の下から輪状軟骨下縁まで。

喉頭の観察法

・間接喉頭鏡検査: 小さな鏡を口の奥に入れて鏡像を観察する。鏡像では前後が上下に反転して見える点に注意する。 ・喉頭ファイバースコープ(軟性内視鏡): 経鼻的に挿入し、覚醒下で発声・嚥下時の動きも観察できる。外来診療の主流である。 ・直接喉頭鏡: 気管挿管時に用いる。仰臥位・頭部後屈(スニッフィングポジション)で口腔軸・咽頭軸・喉頭軸をそろえて声門を見る。 ・喉頭直達鏡: 全身麻酔下に硬性の筒状の鏡を挿入し、顕微鏡を用いた喉頭微細手術を行う。

気管挿管との関連

Cormack-Lehane分類は、直接喉頭鏡でどこまで見えるかによって喉頭展開の難易度を4段階に分けるものである(1: 声門のほぼ全体が見える、2: 声門の後方部分・披裂部のみ見える、3: 喉頭蓋のみ見える、4: 喉頭蓋も見えない)。声門が確認できないまま背側へ進めると食道挿管となるため、挿管後は呼気二酸化炭素の検出などで気管内にあることを必ず確認する。

POINT

・仰臥位の喉頭展開では、腹側から背側へ「舌根 → 喉頭蓋谷 → 喉頭蓋 → 声門 → 披裂部 → 咽頭後壁」の順に並ぶ。 ・梨状陥凹は喉頭の左右外側にある下咽頭のくぼみ(下咽頭癌・異物の好発部位)。 ・食道入口部は通常閉じているため、最も背側に見えるのは咽頭後壁。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。