StudyMed医師国家試験

「若手は下がって」は誤り―院内急変で力を発揮するチームのつくり方

第100回医師国家試験 E問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第100回 E問題 第40問

急変した入院患者に対する複数科のチーム医療で適切でないのはどれか。

  1. a.安全確認は複数で行う。
  2. b.看護師もチームに含める。
  3. c.若い医師はチームから除く。
  4. d.速やかにチームリーダーを決める。
  5. e.口頭指示の内容を把握し記録する担当を決める。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、入院患者が急変したときに複数の診療科や職種が集まって対応する場面で、チームとしてどう動くべきかを問う問題だ。「適切でないもの」を選ぶ形式なので、そこは気をつけよう。急変対応は、その場に駆けつけた人でつくる即席チームであることが多い。そのチームで質の高い蘇生をするには何が必要か、という視点で選択肢を見ていこう。
医学生医学生
BLSの実習でやったシミュレーションを思い出します。人数が多いと、かえって誰が何をしているのか分からなくなって混乱しました。
ドクタードクター
まさにそれが急変現場で一番起こりやすい失敗なんだ。だからこそ、最初にやるべきなのが速やかにチームリーダーを決めること。リーダーが曖昧だと、指示が重複したり矛盾したり、逆に誰もやっていない処置が出てきたりする。
医学生医学生
リーダーは一番経験のある先生が、挿管とかの難しい手技をやりながら指示を出すイメージでした。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。リーダーは原則として自分は手技に没頭せず、一歩引いて全体を俯瞰するのが望ましい。モニターの波形、処置の進み具合、次に何をするかを把握して、役割を割り振り、治療方針を決める。手が塞がると全体が見えなくなるからね。
医学生医学生
なるほど。では、記録係を決めるというのも同じ理由ですか。
ドクタードクター
そう。急変時は「アドレナリン1mg静注」「除細動の準備」といった口頭指示が次々と飛ぶ。全部を正確に覚えておくのは無理だから、記録係を決めて、指示の内容、薬剤投与の時刻と量、除細動の実施、リズムの変化などを時系列で残していく。これがあると、次のアドレナリンをいつ打つべきかが分かるし、指示の実施漏れも防げるし、あとで振り返ったりカルテを書いたりするときにも役立つ。
医学生医学生
口頭指示は聞き間違いが怖いですね。
ドクタードクター
だから受けた側は必ず復唱して、実施したら「投与しました」と報告する。これをクローズドループ・コミュニケーションという。指示を出す側も、「誰か薬を」ではなく名指しで頼むのがコツだ。
医学生医学生
安全確認を複数で行う、というのはダブルチェックのことですよね。病棟実習で、看護師さんが輸血のときに2人で読み合わせをしていました。
ドクタードクター
いい観察だね。急変で使う薬や機器は、間違えると直接命に関わる。しかも緊迫した状況ではヒューマンエラーが起きやすい。薬剤名、濃度、投与量の確認や、除細動のときに誰も患者に触れていないことの確認は、複数の目で行うのが原則だ。
医学生医学生
看護師さんをチームに含めるのも当然、という理解でいいですか。
ドクタードクター
もちろん。チーム医療では、患者さんを救うという共通の目標のもと、関わる人はみなチームの一員だ。看護師は胸骨圧迫、換気の補助、薬剤の準備と投与、モニター管理、記録と、担う役割がとても多い。しかも急変前の患者さんの様子を一番よく知っているのも看護師であることが多い。薬剤師や臨床工学技士が加わることもあるよ。
医学生医学生
そうすると、残る「若い医師はチームから除く」が不適切ですね。でも正直、慣れていない人がいると邪魔になるのでは、と少し思ってしまいました。
ドクタードクター
その気持ちは分かるけれど、急変対応では人手がとにかく必要なんだ。胸骨圧迫は質を保つために2分程度で交代するのが望ましいし、静脈路の確保、記録、家族への連絡など、若手でもできる役割はたくさんある。チームは年齢や経験年数で組むのではなく、その場にいる人がそれぞれの能力に見合った役割を担うのが基本。大事なのは排除することではなく、リーダーが技能に合った役割を割り当てることなんだ。
医学生医学生
それに、実際の急変に立ち会うこと自体が研修医にとって大事な学びの機会になりますね。
ドクタードクター
その通り。一律に外してしまえば、貴重な人手も教育の機会も失うことになる。もう一つ大切なのが相互尊重だ。経験や職種に関係なく、「投与量が違うかもしれません」と気づいたことを遠慮なく言える雰囲気がチームの安全を支える。若手や学生でも、気づいたら声を上げていいんだよ。
医学生医学生
上の先生に指摘するのは勇気がいりますが、それが患者さんを守ることにつながるんですね。急変を防ぐ仕組みのようなものもあるんでしょうか。
ドクタードクター
多くの病院では、心停止などのときに専門チームを呼ぶ院内緊急コール、いわゆるコードブルーがある。さらに、呼吸数や脈拍、血圧、意識の変化といった急変の前兆を捉えて早めに介入するRRS(院内迅速対応システム)も広まっている。そして対応が終わったら、チームで振り返るデブリーフィングを行い、次に生かすことも大切だ。
医学生医学生
リーダーを決めて、役割を分けて、指示は復唱、記録と安全確認を忘れず、全員で動く。OSCEの前にもう一度シミュレーションで練習しておきます。

まとめ

入院患者の急変対応は、駆けつけた多職種・複数科のメンバーによる即席のチームで行われることが多く、質の高い蘇生には効果的なチームダイナミクスが欠かせません。速やかにリーダーを決めて役割を分担し、口頭指示は復唱と実施報告によるクローズドループ・コミュニケーションで確認し、記録係が経過を時系列で残し、薬剤や除細動などの安全確認は複数人で行います。看護師をはじめ医師以外の職種も重要なメンバーであり、若手医師を経験の浅さを理由に一律に排除するのは、人手と教育の機会を失わせるため適切ではありません。職種や経験に関わらず各自の能力に応じた役割を担い、気づいたことを発言できる相互尊重の雰囲気が安全を支えます。コードブルーやRRSといった院内体制も含めて理解しておくことは、研修医としての最初の急変対応に直結します。

解答・解説

正解はcです

入院患者の急変(心停止、呼吸停止、ショックなど)に対して、複数の診療科や職種が集まって対応する場面でのチーム医療の原則を問う一般問題である。「適切でないもの」を選ぶ形式であることに注意する。 急変対応では、短時間に多くの処置(胸骨圧迫、気道確保、静脈路確保、薬剤投与、除細動など)を並行して行う必要があり、しかも関わる人員はその場に駆けつけた者で構成される即席のチームであることが多い。このような状況で質の高い蘇生を行うためには、次のような効果的なチームダイナミクスが重要とされる。 ・リーダーを明確にし、各メンバーの役割分担(胸骨圧迫、気道管理、薬剤投与、記録など)をはっきりさせる。 ・指示は明確に伝え、受けた側は復唱して実施後に報告する(クローズドループ・コミュニケーション)。 ・薬剤名・投与量や機器操作などの安全確認は複数の目で行う。 ・経過を時系列で記録する。 ・職種や経験年数にかかわらず、各自が自分の能力の範囲内で役割を担い、気づいた問題は遠慮なく発言できる雰囲気(相互尊重)をつくる。 この原則に照らすと、経験の浅さを理由に若手医師を一律に排除することは、人手が必要な急変時に貴重な人員を減らすうえ、教育の機会も失わせるため適切でない。

選択肢考察

  1. ×a.  安全確認は複数で行う。

    適切である。急変時に用いる薬剤(アドレナリン、抗不整脈薬など)や機器(除細動器など)は誤使用が直接生命に関わり、しかも緊迫した状況ではヒューマンエラーが起こりやすい。薬剤名・濃度・投与量の確認や、除細動時に誰も患者に触れていないことの確認などを複数人で行う(ダブルチェック)ことで、誤りを防ぐことができる。

  2. ×b.  看護師もチームに含める。

    適切である。チーム医療では、患者の救命という共通目標のもとで医療に関わる者はすべてチームの一員であり、医師に限られない。看護師は胸骨圧迫、バッグバルブマスク換気の補助、薬剤の準備・投与、モニター管理、記録など多くの役割を担い、急変前の患者の状態を最もよく知っている職種でもある。薬剤師、臨床工学技士、診療放射線技師などもチームに加わりうる。

  3. ○c.  若い医師はチームから除く。

    適切でない(本問の正解)。急変対応のチームは年齢や経験年数で構成を決めるものではなく、その場に集まった人員がそれぞれの能力に応じた役割を担う。若手医師であっても胸骨圧迫、静脈路確保、記録、家族への連絡など担える役割は多く、人手が必要な急変時に一律に排除するのは不合理である。また、実際の急変対応に参加することは若手医師にとって重要な教育・研修の機会でもある。重要なのは排除ではなく、リーダーが各人の技能に見合った役割を割り当てることである。

  4. ×d.  速やかにチームリーダーを決める。

    適切である。複数科・多職種が集まる急変現場では、誰が指揮を執るかが曖昧だと、指示の重複や矛盾、処置の抜け落ちが生じやすい。速やかにリーダーを決め、リーダーは全体を俯瞰して役割分担・治療方針の決定を行い、メンバーはその指揮のもとで協力することで、チームの能力を最大限に発揮できる。リーダーは原則として自ら手技に没頭せず、全体の把握に専念するのが望ましい。

  5. ×e.  口頭指示の内容を把握し記録する担当を決める。

    適切である。緊急時には指示が口頭で次々と出され、すべてを正確に記憶しておくことは困難である。記録係を決めて、指示内容、薬剤投与の時刻と量、除細動の実施、心リズムや主要所見の変化などを時系列で逐次記録することで、聞き間違い・実施漏れの防止、次の薬剤投与のタイミングの把握(例: アドレナリンの反復投与間隔)、事後の検証や診療録作成が可能となる。口頭指示を受けた者は復唱して確認することも重要である。

効果的な蘇生チームの要素(チームダイナミクス)

・明確な役割と責任: リーダーが役割を割り当て、各メンバーは自分の能力の範囲内で行動する。 ・クローズドループ・コミュニケーション: 指示者はメンバーを名指しで明確に指示し、受けた者は復唱し、実施後に「〜を投与しました」と報告する。 ・明確なメッセージ: 簡潔で聞き取りやすい指示を落ち着いた声で出す。 ・知識の共有と建設的な介入: 誤りや懸念に気づいたら、経験や職種に関係なく指摘する。 ・相互尊重と事後の振り返り(デブリーフィング)。

院内急変への体制

多くの病院では、院内の急変時に専門チームを呼び出す仕組み(コードブルーなどの院内緊急コール)や、急変の前兆(呼吸数・脈拍・血圧・意識の変化など)を捉えて早期に介入するRRS(rapid response system:院内迅速対応システム)が整備されている。

チーム医療とは

医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、リハビリテーション職、管理栄養士などの多職種が、目的と情報を共有し、それぞれの専門性を生かして連携・補完し合いながら患者に最適な医療を提供することをいう。

POINT

・急変時のチーム医療では、速やかなリーダー決定、役割分担、記録係の設置、複数人での安全確認が重要である。 ・チームは職種や経験年数を問わず、その場にいる者で構成し、各自の能力に応じた役割を割り当てる(若手医師や看護師を排除しない)。 ・口頭指示は復唱して確認し、実施後に報告する(クローズドループ・コミュニケーション)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。