暗い部屋で横になる理由―診断基準から読み解く片頭痛の正体
第99回医師国家試験 E問題 第53問
国試問題にチャレンジ
片頭痛で正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.日常生活に支障をきたす。
- b.発作は1週間程度持続する。
- c.脳波検査で異常発作波が出現する。
- d.発作は音過敏や光過敏を伴う。
- e.発作急性期にはセロトニン受容体刺激薬が有効である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
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ドクターまとめ
片頭痛は若年〜中年女性に多い一次性頭痛で、片側性・拍動性・中等度〜重度の痛みが4〜72時間持続し、日常動作で増悪して生活に支障をきたします。発作中は悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴うため、患者は暗く静かな部屋で休むことを好みます。器質的病変のない機能性頭痛であり、脳波や画像に特異的な異常はなく、診断は問診による診断基準の確認が基本です。急性期治療の中心は5-HT1B/1D受容体作動薬であるトリプタンですが、虚血性心疾患・脳血管障害には禁忌で、頻回発作には予防療法、薬剤の使用過多による頭痛への注意も欠かせません。緊張型頭痛や群発頭痛との違いを診断基準に沿って整理することが、日常診療で頻繁に出会う頭痛を適切に扱う土台になります。
解答・解説
正解はa, d, eです
片頭痛は、頭痛そのものが疾患である一次性頭痛の代表で、若年~中年の女性に多い。本問は片頭痛の臨床像(頭痛の性状・持続時間・随伴症状)、検査所見、急性期治療に関する基本知識を問うている。
片頭痛の診断基準の骨格
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の「前兆のない片頭痛」は、おおむね次のように定義される。 ・頭痛発作が4~72時間持続する(未治療または治療が無効の場合)。 ・次の4項目のうち2項目以上:①片側性、②拍動性、③中等度~重度の痛み、④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける。 ・発作中に次の1項目以上:①悪心または嘔吐、②光過敏および音過敏。 ・他に最適なICHD-3の診断がない。
考え方
この診断基準を思い浮かべれば、「痛みが強く日常生活に支障をきたす」「光過敏・音過敏を伴う」は基準そのものに含まれる特徴であり、持続時間は数時間~3日程度で「1週間」は長すぎることがわかる。また片頭痛は機能性の頭痛であり、画像検査や脳波検査で特異的な異常を示さない。急性期治療の中心は、セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬であるトリプタン系薬剤である。
選択肢考察
- ○a. 日常生活に支障をきたす。
片頭痛の痛みは中等度~重度であり、歩行や階段昇降などの日常的な動作で増悪するため、発作中は仕事や家事を中断して横になって休むことが多い。診断基準にも「日常的な動作により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける」という項目がある。この点は、痛みが軽度~中等度で日常動作による増悪がなく、仕事を続けられることが多い緊張型頭痛との重要な鑑別点である。
- ×b. 発作は1週間程度持続する。
片頭痛発作の持続時間は、未治療または治療無効の場合で4~72時間(小児では2~72時間)とされ、数時間から長くても3日程度で治まる。1週間も持続することは典型的ではない。なお、72時間を超えて持続する重度の片頭痛発作は「片頭痛発作重積」として別に扱われる。
- ×c. 脳波検査で異常発作波が出現する。
片頭痛は器質的病変を伴わない機能性の頭痛であり、脳波検査で棘波・鋭波などのてんかん性発作波は出現しない。発作中に非特異的な徐波がみられることはあるが、診断的な意義はない。したがって片頭痛の診断に脳波検査は不要で、診断は問診による臨床症状の確認が基本となる。脳波で発作波を認める場合は、てんかんなど他疾患を考える。
- ○d. 発作は音過敏や光過敏を伴う。
片頭痛発作中には、光過敏(普段は気にならない明るさがまぶしく不快)や音過敏(生活音がうるさく感じる)、においへの過敏がしばしばみられる。悪心・嘔吐とともに片頭痛に特徴的な随伴症状で、診断基準にも含まれている。そのため患者は発作中、暗く静かな部屋で横になって過ごすことを好む。
- ○e. 発作急性期にはセロトニン受容体刺激薬が有効である。
トリプタン系薬剤(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなど)はセロトニン5-HT1B/1D受容体の作動薬である。5-HT1B受容体を介して拡張した硬膜血管を収縮させ、5-HT1D受容体を介して三叉神経終末からのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチド放出を抑えて神経原性炎症を鎮める。中等度~重度の片頭痛発作の急性期治療薬の中心であり、頭痛が始まってから早めに服用すると効果が高い。虚血性心疾患や脳血管障害のある患者では血管収縮作用のため禁忌である。
片頭痛の概要
・疫学:本邦の有病率は約8%。女性に多く(男性の約3~4倍)、20~40歳代に多い。家族歴を有することが多い。 ・誘因:ストレスやストレスからの解放(週末頭痛)、睡眠不足や寝過ぎ、月経、空腹、天候の変化、人混みや強い光・音、アルコール(特に赤ワイン)、チョコレート・チーズなどの食品。 ・病態:三叉神経血管説が有力で、三叉神経終末からCGRPなどが放出され、硬膜血管の拡張と神経原性炎症が生じて痛みが起こると考えられている。前兆は大脳皮質の皮質拡延性抑制(cortical spreading depression)によると説明される。
前兆のある片頭痛
閃輝暗点(ギザギザした光が視野に現れて広がり、その後に暗点を残す)が代表的で、5~60分ほど持続したのち頭痛が起こる。感覚障害や言語障害の前兆もある。
治療
・急性期:軽度~中等度ではアセトアミノフェンやNSAIDs、中等度~重度ではトリプタン。悪心には制吐薬(メトクロプラミドなど)を併用する。近年はラスミジタン(5-HT1F受容体作動薬、血管収縮作用が乏しい)も用いられる。エルゴタミン製剤は現在ではあまり使われない。 ・予防:発作が頻回な場合に、バルプロ酸、プロプラノロール(β遮断薬)、ロメリジン(Ca拮抗薬)、アミトリプチリンなどを用いる。近年はCGRPまたはその受容体に対するモノクローナル抗体製剤(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)も予防に用いられる。 ・注意点:鎮痛薬やトリプタンの使いすぎは薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の原因となる。
緊張型頭痛・群発頭痛との比較
・緊張型頭痛:両側性、圧迫感・締め付け感、軽度~中等度、日常動作で増悪しない、悪心・嘔吐はない。 ・群発頭痛:若年男性に多い、片側の眼窩部周囲の激痛、15~180分持続、1日1回~数回が数週~数か月の群発期に集中、同側の流涙・結膜充血・鼻漏・Horner徴候を伴う。急性期に純酸素吸入やスマトリプタン皮下注が有効。
POINT
・片頭痛:片側性・拍動性・中等度~重度、日常動作で増悪し日常生活に支障をきたす。 ・持続は4~72時間(数時間~3日程度)で、1週間は長すぎる。 ・随伴症状:悪心・嘔吐、光過敏・音過敏。 ・検査(画像・脳波)に特異的な異常はなく、診断は問診による。 ・急性期治療の中心はトリプタン(5-HT1B/1D受容体作動薬)。虚血性心疾患・脳血管障害には禁忌。
