泡が2つ並んだら十二指腸―新生児の消化管閉塞を「閉塞部位」で解き明かす
第99回医師国家試験 E問題 第30問
国試問題にチャレンジ
組合せで正しいのはどれか。
- a.先天性食道閉鎖Gross C ―― 胃内ガスの減少
- b.肥厚性幽門狭窄症 ―― 胆汁性嘔吐
- c.先天性十二指腸閉鎖 ―― double bubble sign
- d.腸重積症 ―― 灰白色便
- e.Hirschsprung病 ―― 噴水状嘔吐
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
新生児・乳幼児の消化管疾患は、閉塞部位を起点に考えると整理しやすく、Vater乳頭より口側の閉塞では無胆汁性嘔吐、肛門側では胆汁性嘔吐となり、X線では閉塞部より口側の拡張ガス像と遠位ガスの欠如がみられます。先天性十二指腸閉鎖では拡張した胃と十二指腸球部によるdouble bubble signが代表的所見で、Down症候群や輪状膵の合併が知られています。食道閉鎖で最多のGross C型は気管食道瘻により胃内ガスがむしろ増加し、肥厚性幽門狭窄症は無胆汁性の噴水状嘔吐、腸重積症はイチゴゼリー様粘血便、Hirschsprung病は胎便排泄遅延と便秘が特徴で、灰白色便は胆道閉鎖症など閉塞性黄疸の所見です。病態から症状を導く考え方を身につけることで、組合せ問題に強くなるだけでなく、胆汁性嘔吐のような緊急サインを見逃さない臨床判断にもつながります。
解答・解説
正解はcです
新生児期から乳幼児期にみられる先天性・後天性の消化管疾患について、それぞれに特徴的な症状や画像所見を正しく結び付けられるかを問う問題である。 この領域の問題を解くときは、「消化管のどこで通過が妨げられているか(閉塞部位)」を起点に考えると整理しやすい。 ・閉塞部位がVater乳頭(胆汁が十二指腸に流れ込む開口部)より口側であれば、吐物に胆汁は混じらない(無胆汁性嘔吐)。肥厚性幽門狭窄症や、Vater乳頭より口側の十二指腸閉鎖がこれに当たる。 ・閉塞部位がVater乳頭より肛門側であれば、胆汁性(緑色)嘔吐となる。十二指腸閉鎖の多くや小腸閉鎖、腸回転異常症などが該当する。 ・閉塞部位より肛門側には空気が届かないため、腹部単純X線写真では閉塞部位の口側の拡張したガス像と、それより遠位のガス像の欠如が特徴となる。十二指腸閉鎖では拡張した胃と十二指腸球部の2つのガス像(double bubble sign)が現れる。 ・食道閉鎖では、下部食道と気管との間に瘻孔(気管食道瘻)があるかどうかで胃腸管内のガスの有無が決まる。 さらに、便の性状(血便か、灰白色便か)や嘔吐の様式(噴水状か否か)が、どの疾患の特徴なのかを整理しておくことで、各組合せの正誤を判断できる。本問では、先天性十二指腸閉鎖とdouble bubble signの組合せのみが正しい。
選択肢考察
- ×a. 先天性食道閉鎖Gross C ―― 胃内ガスの減少
Gross C型は、上部食道が盲端に終わり、下部食道が気管(多くは気管分岐部付近)と瘻孔でつながる型で、先天性食道閉鎖症の約85〜90%を占める最多の病型である。呼吸のたびに空気が気管から瘻孔を通って下部食道・胃へ流れ込むため、胃内ガスはむしろ増加し、腹部膨満をきたす。胃液が瘻孔を逆流して気管に入ると化学性肺炎の原因にもなる。胃腸管内ガスが欠如(gasless abdomen)するのは、下部食道に気管との交通がないGross A型(およびB型)である。したがって「胃内ガスの減少」との組合せは誤りである。
- ×b. 肥厚性幽門狭窄症 ―― 胆汁性嘔吐
肥厚性幽門狭窄症は、幽門の輪状筋が肥厚して胃の出口が狭くなる疾患である。通過障害の部位は胆汁が流入するVater乳頭よりも口側にあるため、吐物は胃内容物(ミルク)のみで、胆汁を含まない無胆汁性嘔吐となる。典型的には生後2〜8週ごろの男児に、哺乳直後の噴水状嘔吐として現れる。したがって「胆汁性嘔吐」との組合せは誤りである。
- ○c. 先天性十二指腸閉鎖 ―― double bubble sign
十二指腸が閉鎖していると、飲み込まれた空気は胃と閉鎖部より口側の十二指腸(主に球部)にたまり、それより先の小腸・大腸には到達しない。立位の腹部単純X線写真では、拡張した胃と十二指腸球部が2つの大きな鏡面形成(ニボー)を伴うガス像として並び、遠位腸管のガス像が欠如する。この所見をdouble bubble signと呼び、十二指腸閉鎖の代表的所見である。胎児期には羊水過多や胎児超音波でのdouble bubbleとして出生前に指摘されることも多い。なお、同じサインは輪状膵や腸回転異常症などによる十二指腸の高度閉塞でもみられるため、鑑別が必要である。
- ×d. 腸重積症 ―― 灰白色便
腸重積症では、口側の腸管が肛門側の腸管に入り込み、はまり込んだ腸管の腸間膜が締め付けられて静脈還流が障害される。うっ血した粘膜から血液と粘液が漏れ出すため、イチゴゼリー(イチゴジャム)様の粘血便がみられるのが特徴である。一方、灰白色便は腸管内に胆汁が排泄されないことを示す所見で、胆道閉鎖症などの閉塞性黄疸でみられる。したがって本組合せは誤りである。
- ×e. Hirschsprung病 ―― 噴水状嘔吐
Hirschsprung病は、腸管壁内の神経節細胞が肛門から連続して欠如し、その部分が蠕動せず機能的な閉塞を起こす疾患である。主な症状は胎便排泄遅延、頑固な便秘、腹部膨満であり、進行すると嘔吐(しばしば胆汁性)を伴うこともあるが、噴水状嘔吐はこの疾患の特徴ではない。噴水状嘔吐は肥厚性幽門狭窄症に典型的な症状である。したがって本組合せは誤りである。
先天性食道閉鎖症のGross分類
・A型:上下食道とも盲端で、気管食道瘻なし。胃腸管内ガスは欠如する。 ・B型:上部食道と気管に瘻孔があり、下部食道は盲端。胃腸管内ガスは欠如する。 ・C型:上部食道は盲端、下部食道と気管に瘻孔がある。最多(約85〜90%)。胃腸管内ガスは存在し、むしろ増加する。 ・D型:上下両方の食道に気管との瘻孔がある。 ・E型:食道閉鎖はなく、気管食道瘻のみ(H型瘻)。 臨床症状として、出生直後からの泡沫状の唾液流出、哺乳時のむせ・チアノーゼがみられる。胃管を挿入すると上部食道盲端で反転する(coil up sign)ことで診断される。羊水過多を伴いやすく、VACTERL連合(椎体、肛門、心臓、気管食道、腎、四肢の異常)の合併に注意する。
先天性十二指腸閉鎖症
・羊水過多、Down症候群の合併(約30%)、輪状膵や腸回転異常症の合併が知られる。 ・閉鎖部位はVater乳頭より肛門側であることが多く、その場合は出生後早期からの胆汁性嘔吐となる。 ・腹部X線でdouble bubble sign、遠位腸管ガスの欠如。膜様狭窄など不完全閉塞では遠位にガスがみられることもある。
肥厚性幽門狭窄症
・生後2〜8週の男児(とくに第1子)に多い。 ・哺乳後の無胆汁性の噴水状嘔吐、右上腹部のオリーブ様腫瘤、胃の蠕動不穏。 ・胃酸(塩酸)を失うため、低クロール性低カリウム性代謝性アルカローシスをきたす。 ・腹部超音波で幽門筋層の肥厚(目安として筋層厚約4 mm以上)と幽門管の延長を確認する。 ・治療は脱水・電解質補正ののち、粘膜外幽門筋切開術(Ramstedt手術)、またはアトロピン療法。
腸重積症
・生後3か月〜2歳ごろに好発し、回腸末端が結腸に入り込む回腸結腸型が最多。 ・間欠的腹痛(不機嫌・間欠的啼泣)、嘔吐、イチゴゼリー様粘血便が三主徴。右上腹部にソーセージ様腫瘤を触れ、右下腹部は空虚(Dance徴候)。 ・超音波でtarget sign(横断像)、pseudo-kidney sign(縦断像)。 ・発症早期であれば高圧浣腸(造影剤・空気・生理食塩水)で整復し、整復不能や腸管壊死が疑われれば手術を行う。
Hirschsprung病
・腸管壁内の神経叢(Auerbach神経叢・Meissner神経叢)の神経節細胞が、肛門側から連続して欠如する。直腸〜S状結腸までの短域型が多い。男児に多く、Down症候群との合併もある。 ・生後24〜48時間を過ぎても胎便が出ない胎便排泄遅延、腹部膨満、便秘。重症例では腸炎を併発し致死的になりうる。 ・注腸造影で狭小部(無神経節部)と口側拡張部の境界(caliber change)、直腸肛門内圧検査で直腸肛門反射の欠如、直腸粘膜生検でアセチルコリンエステラーゼ陽性神経線維の増生、全層生検で神経節細胞の欠如を確認する。
便の色と疾患
・イチゴゼリー様粘血便:腸重積症 ・灰白色便(白色便):胆道閉鎖症など胆汁の腸管内排泄が途絶える病態。ロタウイルス腸炎でも白色の水様便がみられる。
POINT
・double bubble sign:先天性十二指腸閉鎖(輪状膵、腸回転異常症でもみられる) ・食道閉鎖Gross C(最多):下部食道の気管食道瘻により胃内ガスは増加する。ガスが欠如するのはA型・B型 ・肥厚性幽門狭窄症:無胆汁性の噴水状嘔吐、オリーブ様腫瘤、低Cl性代謝性アルカローシス ・腸重積症:イチゴゼリー様粘血便。灰白色便は胆道閉鎖症など閉塞性黄疸 ・Hirschsprung病:胎便排泄遅延、便秘、腹部膨満。噴水状嘔吐は特徴ではない ・嘔吐に胆汁が混じるかは、閉塞部位がVater乳頭より口側か肛門側かで決まる
