StudyMed医師国家試験

受精から着床までの「1週間の旅」―着床開始と着床完了を区別せよ

第99回医師国家試験 D問題 第56問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第56問

受精から着床までの期間はどれか。

  1. a.1日
  2. b.3日
  3. c.6日
  4. d.12日
  5. e.18日

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、受精卵が卵管を下って子宮内膜に潜り込むまでの時間経過を問う問題だ。数字だけを丸暗記すると、似た数字の選択肢に引っかかりやすい。受精卵が「どこで」「どんな形になっているか」を順に追っていけば、自然と答えが出るよ。まず、受精はどこで起こるかな。
医学生医学生
卵管膨大部です。発生学の講義で、卵管采が卵子を拾い上げるところから習いました。
ドクタードクター
その通り。卵子が受精能を保てるのは排卵後12〜24時間ほどと短いから、受精は通常、排卵後1日以内に膨大部で起こる。そこから受精卵は卵管の蠕動と線毛運動で子宮へ運ばれながら卵割を繰り返す。卵割は細胞の数は増えるけれど、全体の大きさは変わらない分裂だ。
医学生医学生
受精後1日だとまだ2細胞期くらいで、卵管の中にいる段階ですね。だから1日はさすがに早すぎます。
ドクタードクター
そうだね。受精後約3日では16細胞前後の桑実胚になる。細胞がぎっしり集まって桑の実のように見える段階だ。
医学生医学生
3日で子宮に着いて、そのまま着床するのかと思っていました。
ドクタードクター
そこが惜しいところ。桑実胚はちょうど卵管から子宮腔に入ろうとする時期で、まだ透明帯に包まれているから子宮内膜にくっつけない。子宮腔に到達するのは受精後約4日で、そこで内部に胞胚腔という腔をもつ胚盤胞になる。そして受精後5日前後に透明帯から抜け出す、いわゆるハッチングが起こるんだ。
医学生医学生
透明帯を脱いでからでないと着床できない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。透明帯は多精子受精を防いだり、卵管内で胚が早まって着床するのを防いだりする役割もある。ハッチングを経た胚盤胞が、受精後6〜7日目に内細胞塊の側から分泌期の子宮内膜に接着し、侵入を始める。これが着床の開始だ。
医学生医学生
なので受精から着床までは6日が正解ですね。でも12日という選択肢も気になります。着床にはもっと時間がかかると聞いたような。
ドクタードクター
いい疑問だね。12日は着床の「完了」の時期なんだ。胚盤胞は数日かけて内膜の中に潜り込み、受精後11〜12日ごろに完全に埋没して、侵入部の上皮も修復される。「着床開始」と「着床完了」を区別しておくと、この選択肢に迷わない。
医学生医学生
18日はどうでしょう。さすがに着床は終わっていますよね。
ドクタードクター
そう。受精後3週目は原始線条が現れて、外胚葉・中胚葉・内胚葉の三胚葉が分化する原腸形成の時期だ。着床とは別のイベントだね。
医学生医学生
着床のとき、胚のどの部分が内膜に入り込むんですか。
ドクタードクター
胚盤胞は外側の栄養膜、つまりトロホブラストと、内側の内細胞塊からできている。内細胞塊が将来の胎児、栄養膜が将来の胎盤の一部になる。栄養膜は合胞体栄養膜と細胞性栄養膜に分かれ、合胞体栄養膜が内膜に侵入しながらhCGを産生する。hCGは黄体を維持してプロゲステロンを出し続けさせ、妊娠を支えるんだ。
医学生医学生
妊娠検査薬でhCGを測るのは、着床してから陽性になるということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。臨床的な注意点も押さえよう。妊娠週数は最終月経の初日を0週0日として数えるから、28日周期なら排卵・受精が妊娠2週0日ごろ、着床開始は妊娠3週ごろにあたる。受精からの日数と妊娠週数を混同しないことが大切だ。また、着床のころに少量の出血、いわゆる着床出血がみられて月経と間違われることもある。
医学生医学生
子宮体部以外に着床すると異所性妊娠になるんですよね。救急外来の実習で卵管妊娠の破裂を見学しました。
ドクタードクター
そう、異所性妊娠の大部分は卵管妊娠だ。正常な着床は子宮体部の後壁上部に多い。受精卵の旅の道筋と時間を知っておくと、こうした病態の理解にもつながるよ。

まとめ

受精は排卵後24時間以内に卵管膨大部で起こり、受精卵は卵割を繰り返しながら子宮へ運ばれ、約3日で桑実胚、約4日で子宮腔に達して胚盤胞となります。約5日で透明帯から脱出したのち、受精後6〜7日目に分泌期の子宮内膜への接着・侵入を開始するのが着床の始まりで、受精後11〜12日ごろに内膜内へ完全に埋没して着床が完了します。着床した栄養膜の合胞体栄養膜はhCGを産生して黄体を維持し、妊娠の継続を支えます。着床開始と着床完了、受精後日数と妊娠週数を区別して理解しておくことは、妊娠初期の診断や異所性妊娠の病態を考えるうえでの土台になります。

解答・解説

正解はcです

排卵から着床までの初期発生の時間経過を問う問題である。 卵巣から排卵された卵子は卵管采に取り込まれ、卵管膨大部で精子と出会って受精する。卵子が受精能を保つのは排卵後およそ12〜24時間と短いため、受精は排卵後1日以内に起こるのが通常である。 受精卵(接合子)は卵管の蠕動運動と線毛運動によって子宮方向へ運ばれながら卵割(細胞数は増えるが全体の大きさは変わらない分裂)を繰り返す。受精後約3日で16細胞前後の桑実胚(細胞が密に集まって桑の実のように見える段階)となり、受精後約4日で子宮腔に到達する。子宮腔内で内部に腔(胞胚腔)をもつ胚盤胞(胞胚)に変化し、受精後5日前後に透明帯から脱出(ハッチング)する。そして受精後およそ6〜7日目に、胚盤胞が内細胞塊側から子宮内膜(分泌期内膜)に接着・侵入し始める。これが着床の開始である。 したがって「受精から着床まで」の期間としては約6日が最も適切である。なお、着床が完了して胚が子宮内膜に完全に埋没するのは受精後およそ11〜12日目であり、「着床開始」と「着床完了」を区別して覚えておくと選択肢の吟味に役立つ。

選択肢考察

  1. ×a.  1日

    受精後1日の時点では、受精卵は卵管膨大部付近にあり、前核の融合を経て最初の卵割(2細胞期)が起こる頃である。子宮にはまだ到達しておらず、着床には程遠い。

  2. ×b.  3日

    受精後3日ごろの胚は16細胞前後の桑実胚となり、卵管峡部から子宮腔へ入ろうとする時期にあたる。胚盤胞にはまだなっておらず、透明帯にも包まれているため、子宮内膜に接着することはできない。

  3. ○c.  6日

    受精後4日ごろ子宮腔に達した胚は胚盤胞へと発育し、透明帯から脱出したのち、受精後6〜7日目に子宮内膜への接着・侵入を開始する。着床の開始時期として最も合致するため、これが正解である。

  4. ×d.  12日

    受精後11〜12日ごろは、胚盤胞が子宮内膜内に完全に埋没し、侵入部の上皮が修復されて着床が完了する時期である。着床の開始ではなく完了の時期であり、「受精から着床まで」としては長すぎる。

  5. ×e.  18日

    受精後3週目(15〜21日ごろ)は原腸形成(原腸胚形成)の時期で、原始線条が出現し、胚は外胚葉・中胚葉・内胚葉の三胚葉からなる胚盤へと分化する。着床はすでに完了している。

受精から着床までの流れ(受精日を0日とした目安)

・排卵後12〜24時間以内:卵管膨大部で受精 ・受精後約1日:2細胞期(最初の卵割) ・受精後約3日:桑実胚(16細胞前後) ・受精後約4日:子宮腔に到達、胚盤胞の形成が始まる ・受精後約5日:透明帯からの脱出(ハッチング) ・受精後6〜7日:着床開始(子宮内膜への接着・侵入) ・受精後11〜12日:着床完了(内膜内に完全に埋没) ・受精後3週目:原腸形成、三胚葉の分化

着床に関連する事項

・胚盤胞は外側の栄養膜(トロホブラスト、将来の胎盤の一部)と内側の内細胞塊(将来の胎児)からなる。栄養膜は合胞体栄養膜と細胞性栄養膜に分化し、合胞体栄養膜がヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を産生する。hCGは黄体を維持してプロゲステロン分泌を続けさせ、妊娠の継続を支える。 ・着床が可能な子宮内膜の状態が整っている期間は「着床の窓(implantation window)」とよばれ、排卵後約6〜10日目(黄体期中期)の分泌期内膜にあたる。 ・正常な着床部位は子宮体部の後壁上部に多い。卵管など子宮体部内膜以外の部位に着床したものが異所性妊娠であり、その大部分は卵管妊娠である。 ・着床のころに少量の性器出血(着床出血)がみられることがあり、月経と誤認されることがある。 ・妊娠週数は最終月経の初日を0週0日として数えるため、28日周期の女性では排卵・受精が妊娠2週0日ごろ、着床開始は妊娠3週ごろにあたる。

POINT

・受精は排卵後24時間以内に卵管膨大部で起こる。 ・受精後約3日で桑実胚、約4日で子宮腔に到達し胚盤胞となる。 ・着床開始は受精後6〜7日、着床完了は受精後11〜12日。 ・受精後3週目に三胚葉が形成される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。