StudyMed医師国家試験

作るのは視床下部、出すのは後葉―下垂体後葉ホルモンが2つしかない理由

第99回医師国家試験 D問題 第47問

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第99回 D問題 第47問

下垂体後葉から分泌されるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.成長ホルモン
  2. b.プロラクチン
  3. c.バソプレシン
  4. d.オキシトシン
  5. e.卵胞刺激ホルモン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、下垂体ホルモンを前葉と後葉に振り分けられるかを問う基本問題だ。丸暗記で解くこともできるけれど、前葉と後葉は生まれも仕組みもまったく違う、という点を押さえると忘れにくくなる。まず、下垂体が2つの部分からできている理由は覚えているかな。
医学生医学生
発生学の講義で、前葉はRathke嚢から、後葉は間脳から来ると習った気がします。
ドクタードクター
その通り。前葉は胎生期の口腔天井の外胚葉が上に伸びたRathke嚢に由来する、いわば本物の内分泌腺だ。前葉の細胞が自分でホルモンを合成して分泌する。一方の後葉は間脳の底が下へ伸び出した神経組織で、後葉そのものにはホルモンを作る細胞がないんだ。
医学生医学生
えっ、作る細胞がないのに後葉ホルモンと呼ぶんですか。
ドクタードクター
そこが面白いところ。後葉ホルモンを作っているのは視床下部の視索上核と室傍核にある大きな神経分泌ニューロンなんだ。作られたホルモンは軸索の中を運ばれて後葉の神経終末に貯蔵され、刺激が来ると血中へ放出される。これを神経分泌と呼ぶ。後葉は「倉庫兼出荷口」だと考えるとわかりやすい。
医学生医学生
なるほど。それで後葉から出るのはバソプレシンとオキシトシンの2つだけなんですね。
ドクタードクター
そう、後葉ホルモンはこの2つだけ。これが正解だ。バソプレシンは抗利尿ホルモンとも呼ばれ、血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少で分泌される。腎集合管のV2受容体を介してアクアポリン2を管腔側の膜に移動させ、水の再吸収を増やす。高濃度ではV1受容体を介して血管も収縮させる。
医学生医学生
オキシトシンは分娩と授乳ですよね。産婦人科の実習で、分娩後に子宮収縮剤として使われているのを見ました。
ドクタードクター
よく見ていたね。オキシトシンは子宮平滑筋を収縮させ、さらに乳腺の筋上皮細胞を収縮させて乳汁を押し出す、つまり射乳を起こす。分娩時の産道の伸展や、赤ちゃんが乳首を吸う刺激で分泌が高まるんだ。ちなみにバソプレシンとオキシトシンはどちらも9個のアミノ酸からなるペプチドで、構造がよく似ている。では、残りの選択肢を見ていこう。プロラクチンはどうかな。
医学生医学生
乳汁に関わるので、オキシトシンと同じ後葉かと一瞬迷いました。
ドクタードクター
そこはよくあるひっかけだね。乳汁を「作る」のはプロラクチン、乳汁を「押し出す」のはオキシトシン、と分けて覚えよう。プロラクチンは前葉ホルモンで、視床下部からは主にドパミンによって抑制されている点が、他の前葉ホルモンと違う特徴だ。
医学生医学生
成長ホルモンと卵胞刺激ホルモンは前葉ですよね。GHRHやGnRHで調節されるので。
ドクタードクター
正解。成長ホルモンはGHRHで促進、ソマトスタチンで抑制され、肝臓でIGF-Iを作らせて骨や軟部組織の成長を進める。卵胞刺激ホルモンはGnRHで促進され、女性では卵胞の発育、男性ではSertoli細胞を介して精子形成を支える。どちらも視床下部から下垂体門脈という血管で届く放出ホルモンに調節されている。
医学生医学生
前葉は血管でつながっていて、後葉は神経でつながっている、という違いですね。
ドクタードクター
その対比がまさに本質だ。前葉ホルモンはGH、PRL、ACTH、TSH、FSH、LHの6つ、後葉はバソプレシンとオキシトシンの2つ、とセットで整理しておこう。
医学生医学生
CBTの勉強のとき、この区別を語呂だけで覚えていたので、仕組みから理解するとすっきりします。
ドクタードクター
仕組みがわかると臨床にもつながるよ。たとえば下垂体茎が腫瘍や外傷で障害されると、ドパミンの抑制が届かなくなるので、他の前葉ホルモンは下がるのにプロラクチンだけは上がりやすい。また、MRIのT1強調像では正常な後葉は高信号に見えるけれど、中枢性尿崩症ではこの後葉輝点が消えることが多い。
医学生医学生
バソプレシンが足りないと中枢性尿崩症、多すぎるとSIADHでしたね。
ドクタードクター
その通り。どちらも電解質異常、特にナトリウムの異常として臨床でよく出会う。あわせて、分娩時の大量出血で下垂体が壊死するSheehan症候群では主に前葉機能が落ち、授乳できないことが最初のサインになりやすい。前葉か後葉かを区別できると、こうした病態の理解がぐっと楽になるんだ。

まとめ

下垂体後葉から分泌されるのはバソプレシン(抗利尿ホルモン)とオキシトシンの2つだけで、いずれも視床下部の視索上核・室傍核で合成され、軸索を通って後葉に運ばれ、貯蔵・放出されます(神経分泌)。前葉はRathke嚢に由来する内分泌腺で、視床下部から下垂体門脈を通る放出・抑制ホルモンに調節されながら、GH、PRL、ACTH、TSH、FSH、LHの6つを自ら合成します。乳汁を作るのはプロラクチン、押し出すのはオキシトシンという区別は頻出のひっかけです。バソプレシンの欠乏による中枢性尿崩症、過剰によるSIADH、下垂体茎障害でのプロラクチン上昇、Sheehan症候群など、前葉と後葉の違いを仕組みから理解しておくことが内分泌疾患全体の理解の土台になります。

解答・解説

正解はc, dです

下垂体ホルモンの分泌部位(前葉か後葉か)を区別できるかを問う基本問題である。 下垂体は発生も構造もまったく異なる二つの部分からなる。 【下垂体前葉(腺性下垂体)】胎生期の口腔天井の外胚葉が上方へ伸びたRathke嚢に由来する内分泌腺そのものである。前葉細胞がホルモンを自ら合成して分泌し、その分泌は視床下部から下垂体門脈を通って届く放出ホルモン・抑制ホルモンによって調節される。前葉ホルモンは成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)の6種類である。 【下垂体後葉(神経性下垂体)】間脳の底部が下方へ伸び出した神経組織である。後葉自体にはホルモン産生細胞はなく、視床下部の視索上核・室傍核にある大細胞性神経分泌ニューロンが合成したホルモンが、軸索(視床下部下垂体路)を通って後葉の神経終末へ運ばれ、そこに貯蔵され、刺激に応じて血中へ放出される。これが神経分泌であり、放出されるのはバソプレシンとオキシトシンの2種類のみである。 したがって「後葉から分泌される」ものはバソプレシンとオキシトシンの2つであり、残りはすべて前葉ホルモンである。

選択肢考察

  1. ×a.  成長ホルモン

    成長ホルモン(GH)は下垂体前葉の成長ホルモン産生細胞から分泌される前葉ホルモンである。視床下部の成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)で促進、ソマトスタチンで抑制され、胃から出るグレリンも分泌を促す。肝臓などでインスリン様成長因子-I(IGF-I)の産生を促して骨・軟部組織の成長を進めるほか、脂肪分解や血糖上昇などの代謝作用ももつ。後葉ホルモンではないので誤りである。

  2. ×b.  プロラクチン

    プロラクチン(PRL)は下垂体前葉のプロラクチン産生細胞から分泌される。前葉ホルモンの中では例外的に、視床下部から主にドパミンによる抑制性の支配を受けている(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン〈TRH〉は分泌を促進する)。乳腺に作用して乳汁の産生を促し、高値になるとGnRHの分泌を抑えて無月経や性腺機能低下を来す。乳汁を「作る」のはプロラクチン、乳汁を「押し出す」のはオキシトシンであり、この区別に注意する。前葉ホルモンなので誤りである。

  3. ○c.  バソプレシン

    バソプレシン(アルギニンバソプレシン〈AVP〉、抗利尿ホルモン〈ADH〉とも呼ぶ)は、視床下部の視索上核・室傍核の神経細胞で合成され、軸索輸送によって下垂体後葉に運ばれて貯蔵され、そこから血中へ放出される。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少が分泌刺激となる。腎集合管のV2受容体を介してアクアポリン2を管腔側膜へ移動させ、水の再吸収を増やす(抗利尿作用)。高濃度では血管平滑筋のV1受容体を介して血管を収縮させる。分泌が不足すると中枢性尿崩症を来す。下垂体後葉から分泌されるので正しい。

  4. ○d.  オキシトシン

    オキシトシンもバソプレシンと同様に視床下部の室傍核・視索上核で合成され、下垂体後葉に貯蔵されて放出される後葉ホルモンである。両者はいずれも9個のアミノ酸からなるペプチドで、構造がよく似ている。分娩時の子宮頸部・腟の伸展(Ferguson反射)や、授乳時の乳頭吸啜刺激によって分泌が高まり、子宮平滑筋を収縮させる作用と、乳腺の筋上皮細胞を収縮させて乳汁を射出させる作用(射乳)をもつ。臨床では陣痛促進や分娩後の子宮収縮促進に用いられる。下垂体後葉から分泌されるので正しい。

  5. ×e.  卵胞刺激ホルモン

    卵胞刺激ホルモン(FSH)は下垂体前葉のゴナドトロピン産生細胞から、黄体形成ホルモン(LH)とともに分泌される。視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)で促進され、性腺から出るインヒビンやエストロゲンで抑制される。女性では卵胞の発育と顆粒膜細胞でのエストロゲン産生(アロマターゼ活性の促進)を、男性ではSertoli細胞に作用して精子形成を支える。前葉ホルモンなので誤りである。

下垂体前葉と後葉の比較

・前葉(腺性下垂体):Rathke嚢(口腔外胚葉)由来。ホルモンを自ら合成する。視床下部とは下垂体門脈系という血管でつながる。 ・後葉(神経性下垂体):間脳(神経外胚葉)由来。ホルモンは視床下部で作られ、神経線維(軸索)を通って運ばれ、後葉で放出される。

前葉ホルモンと視床下部の調節因子

・GH:GHRH(促進)、ソマトスタチン(抑制) ・PRL:ドパミン(抑制が主体)、TRH(促進) ・ACTH:CRH(促進) ・TSH:TRH(促進) ・FSH・LH:GnRH(促進)

後葉ホルモン

・バソプレシン(ADH):抗利尿作用(V2受容体)、血管収縮(V1受容体)。欠乏で中枢性尿崩症、過剰で抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)。 ・オキシトシン:子宮収縮、射乳。

関連する臨床事項

・下垂体茎の障害(腫瘍、外傷など)では、ドパミンによる抑制が届かなくなるため、他の前葉ホルモンが低下する一方でPRLは上昇しやすい。 ・MRIのT1強調像で後葉は正常では高信号(後葉輝点)を示し、中枢性尿崩症ではこれが消失することが多い。 ・Sheehan症候群(分娩時大量出血後の下垂体壊死)は主に前葉機能低下を来し、授乳不能(PRL低下)が初発症状となりやすい。

POINT

・下垂体後葉から分泌されるのはバソプレシン(ADH)とオキシトシンの2つだけ。いずれも視床下部(視索上核・室傍核)で合成され、後葉に貯蔵・放出される。 ・前葉ホルモンはGH、PRL、ACTH、TSH、FSH、LHの6つ。 ・乳汁の産生はPRL、射乳はオキシトシン。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。