児頭が越えるべき「最狭の関門」―産科的真結合線はなぜ一番短いのか
第99回医師国家試験 D問題 第37問
国試問題にチャレンジ
骨盤の計測値で最も小さいのはどれか。
- a.解剖学的真結合線
- b.産科的真結合線
- c.対角結合線
- d.骨盤横径
- e.骨盤斜径
対話形式の解説
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ドクターまとめ
骨盤入口部の前後径は、仙骨岬角から恥骨結合の上縁中央へ引く解剖学的真結合線(約11.5cm)、後面の最突出点へ引く産科的真結合線(約11cm)、下縁中央へ引く対角結合線(約12.5〜13cm)に分けられます。産科的真結合線は岬角と恥骨結合後面の最短距離として定義されるため前後径の中で最も短く、さらに入口部は横径(約13cm)・斜径(約12.5cm)が長い横楕円形であることから、選択肢中で最小となります。この値は児頭が通過する入口部の最狭部にあたり、9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤としてCPDの評価に直結します。内診で測れるのは対角結合線のみで、そこから1.5〜2cm引くと産科的真結合線を推定でき、正確な計測にはX線(Guthmann法・Martius法)やMRIを用います。骨盤の形と径線の大小関係を理解しておくことは、分娩機転や分娩様式の判断を学ぶうえでの土台になります。
解答・解説
正解はbです
本問は骨盤入口部に関する各径線の定義と大小関係を問う一般問題である。 骨盤入口部の前後径は、後方の基準点である仙骨岬角(第1仙椎上縁前面の突出部)と、前方の恥骨結合のどこを結ぶかによって3種類に分けられる。 ・解剖学的真結合線:岬角中央〜恥骨結合上縁中央 ・産科的真結合線:岬角中央〜恥骨結合後面(内面)の最も突出した点。岬角から恥骨結合への最短距離 ・対角結合線:岬角中央〜恥骨結合下縁中央 産科的真結合線は定義上「岬角と恥骨結合後面との最短距離」であるから、同じ岬角を起点とする他の2本の前後径より必ず短い。さらに骨盤入口部では横径(約13cm)、斜径(約12.5cm)が前後径より長く、入口部は横に長い楕円形をしている。したがって選択肢中で最も小さいのは産科的真結合線(平均約11cm)である。 産科的真結合線は分娩時に児頭が通過しなければならない入口部の最狭部であり、児頭骨盤不均衡(cephalopelvic disproportion:CPD)や狭骨盤の評価で最も重視される計測値である。
選択肢考察
- ×a. 解剖学的真結合線
岬角中央と恥骨結合上縁中央を結ぶ線で、約11.5cmである。恥骨結合上縁は後面の最突出点よりわずかに前上方にあるため、産科的真結合線より数mm程度長い。解剖学的な入口面の前後径を表すが、児頭通過の評価には産科的真結合線が用いられる。
- ○b. 産科的真結合線
岬角中央と恥骨結合後面を結ぶ最短距離で、正常値はおよそ10.5〜12.5cm(平均約11cm)である。骨盤入口部の径線の中で最も短く、児頭が通過する際の最狭部となる。9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤とされ、CPDの判定に直結する。X線骨盤計測(Guthmann法)で測定する。
- ×c. 対角結合線
岬角中央と恥骨結合下縁中央を結ぶ線で、約12.5〜13cmと前後径の中で最も長い。内診指で直接触れて測定できる唯一の前後径であり、対角結合線から約1.5〜2cmを差し引くと産科的真結合線の推定値となる。
- ×d. 骨盤横径
骨盤入口部で左右の分界線間の最大距離であり、約13cmと入口部の径線の中で最も長い。入口部が横長の楕円形であることを示し、児頭が入口部を横向き(矢状縫合が横径に一致)で進入する理由となる。
- ×e. 骨盤斜径
一側の仙腸関節と対側の腸恥隆起(腸恥骨結節)を結ぶ線で、約12.5cmである。右仙腸関節と左腸恥隆起を結ぶものを第1斜径(右斜径)、左仙腸関節と右腸恥隆起を結ぶものを第2斜径(左斜径)という。産科的真結合線より長い。
骨盤入口部の径線(おおよその正常値)
・骨盤横径:約13cm(最長) ・対角結合線:約12.5〜13cm ・骨盤斜径:約12.5cm ・解剖学的真結合線:約11.5cm ・産科的真結合線:約11cm(10.5〜12.5cm、最短)
産科的真結合線による骨盤の評価
・9.5cm未満:狭骨盤 ・9.5〜10.5cm未満:比較的狭骨盤 狭骨盤ではCPDとなり経腟分娩が困難となる可能性が高く、児頭の大きさ(児頭大横径など)と合わせて分娩様式を検討する。
X線骨盤計測
・Guthmann法(側面撮影):産科的真結合線、骨盤各面の前後径、骨盤傾斜などを評価 ・Martius法(入口面撮影):入口部の形態や横径を評価し、児頭との関係もみる 近年は被曝を考慮し、適応を限定して行う。MRIによる計測も用いられる。
骨盤の各面
骨盤腔は入口部・濶部・峡部・出口部に分けられる。入口部は横径が長い横楕円形、出口部は前後径が長い縦楕円形であり、児頭はこれに合わせて回旋しながら下降する(第2回旋)。
POINT
・産科的真結合線=岬角中央〜恥骨結合後面の最短距離で、骨盤入口部の径線中で最も短い(平均約11cm)。 ・9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤。 ・前後径の長さ:対角結合線>解剖学的真結合線>産科的真結合線。 ・対角結合線は内診で測定でき、そこから1.5〜2cm引くと産科的真結合線の推定値。 ・入口部の最長径は横径(約13cm)。
