StudyMed医師国家試験

その分類、つくったのは誰?―WHOが管理するICDとICFを見抜く

第120回医師国家試験 F問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第34問

世界保健機関〈WHO〉が策定・公表しているのはどれか。2つ選べ。

  1. a.TNM分類
  2. b.NYHA心機能分類
  3. c.国際疾病分類〈ICD〉
  4. d.国際生活機能分類〈ICF〉
  5. e.Glasgow Coma Scale〈GCS〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、臨床や公衆衛生でよく使う分類・スケールが「どの組織によってつくられたか」を問う問題だ。着眼点は、WHOが国際比較のために整備している分類体系を知っているかどうか。そして略語の正式名称に、作成者のヒントが隠れていることが多いという点だよ。
医学生医学生
WHOがつくるものなら、名前に「国際」と付いているものが怪しい気がします。
ドクタードクター
いい勘だね。WHOは、国や地域をまたいで健康情報を同じ物差しで比較できるように、国際分類を作成・管理している。これを「WHO国際分類ファミリー(WHO-FIC)」とよび、その中心が国際疾病分類(ICD)と国際生活機能分類(ICF)なんだ。
医学生医学生
ICDは病名コードですよね。臨床実習で電子カルテに病名を入力したとき、横にコードが出ていました。
ドクタードクター
まさにそれ。ICDの正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」で、病気・けが・死因をコードで体系化している。各国の死因統計を共通基準で比べる土台であり、診療録管理や診療報酬請求にも使われる。最新版のICD-11は2019年の世界保健総会で採択され、2022年に発効した。
医学生医学生
日本の死因統計も、もうICD-11になっているんですか。
ドクタードクター
そこは注意が必要で、日本の人口動態統計などでは現在もICD-10(2013年版)が使われていて、ICD-11への移行作業が進められている段階だよ。では、ICFはどうかな。
医学生医学生
リハビリテーション科を回ったとき、カンファレンスで「ICFで整理しよう」と言われました。でも中身はうろ覚えです。
ドクタードクター
ICFは2001年の世界保健総会で採択された、生活機能と障害の分類だ。前身の国際障害分類(ICIDH)は「機能障害→能力障害→社会的不利」という一方向で、障害のマイナス面に注目したモデルだった。ICFは「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という生活機能を軸に、健康状態や環境因子・個人因子と相互に影響し合うモデルに変えたんだ。
医学生医学生
一方向から相互作用へ、マイナス面だけでなくプラス面も、というのが変化のポイントですね。
ドクタードクター
その通り。だからリハビリや介護、障害福祉の現場で、本人の状態を総合的に把握する共通言語として使われている。では残りの3つ、TNM分類はどうだろう。
医学生医学生
がんの病期分類なので、WHOが国際的に決めていそうに思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。TNM分類は原発腫瘍の広がり、所属リンパ節転移、遠隔転移の3要素で病期を表すもので、国際対がん連合(UICC)が定めて改訂している。国内の癌取扱い規約もこれを基にしている。ちなみにWHOは腫瘍の「組織型」の分類を刊行しているけれど、TNM分類とは別物だよ。
医学生医学生
WHOは組織型、UICCは病期、と分けて覚えればいいんですね。NYHA心機能分類は名前にニューヨークと入っています。
ドクタードクター
そう、名前の通りニューヨーク心臓協会がまとめたもの。身体活動の制限の程度、つまり自覚症状で心不全の重症度をⅠ〜Ⅳ度に分ける。Ⅰ度は日常活動で症状なし、Ⅳ度は安静時にも症状がある状態だ。Glasgow Coma Scaleも同様で、英国グラスゴー大学の脳神経外科医TeasdaleとJennettが1974年に発表した意識障害の評価法だよ。
医学生医学生
OSCEの救急の練習で、開眼4点、言語5点、運動6点の合計15点満点と叩き込まれました。
ドクタードクター
よく覚えているね。合計3〜15点で、低いほど意識障害が重い。日本で広く使われるJapan Coma Scaleは日本で考案されたものだ。どれも臨床では日常的に使うけれど、作成者はWHOではない。
医学生医学生
名前に組織名や地名が入っているものは、そこがつくった分類、と考えると判断しやすいですね。
ドクタードクター
その通り。発展知識として、WHO-FICの中心分類にはICD、ICFに加えて、手術や処置などの保健医療行為を分類するICHIも位置づけられている。分類の作成者を知ることは、単なる暗記ではなく、その分類が何の目的で、誰の視点でつくられたかを理解することにつながるよ。

まとめ

WHOは、健康に関する情報を国際的に比較・共有するためにWHO国際分類ファミリーを整備しており、その中心が疾病・傷害・死因を分類する国際疾病分類(ICD)と、生活機能と障害を分類する国際生活機能分類(ICF)です。ICD-11は2019年に採択、2022年に発効しましたが、日本の公的統計では現在もICD-10(2013年版)が使われています。ICFは2001年に採択され、前身のICIDHと異なり、生活機能のプラス面と環境因子・個人因子との相互作用を重視するモデルです。一方、TNM分類は国際対がん連合(UICC)、NYHA心機能分類はニューヨーク心臓協会、Glasgow Coma Scaleは英国グラスゴー大学の研究者によるもので、WHOとは無関係です。名称に含まれる組織名や地名と正式名称をあわせて押さえることで、分類の目的と背景を理解しやすくなります。

解答・解説

正解はc, dです

臨床や公衆衛生で使われる分類・スケールが、どの組織によってつくられたものかを問う問題である。 世界保健機関(WHO: World Health Organization)は、国や地域をまたいで健康に関する情報を同じ物差しで比較できるように、国際的な分類体系を作成・管理している。これらは「WHO国際分類ファミリー(WHO-FIC)」とよばれ、その中心となるのが、病気や死因を分類する国際疾病分類(ICD)と、生活機能と障害を分類する国際生活機能分類(ICF)である。 一方、TNM分類は国際対がん連合(UICC)、NYHA心機能分類はニューヨーク心臓協会、Glasgow Coma Scaleは英国グラスゴー大学の研究者が作成したもので、いずれもWHOによるものではない。名称に含まれる組織名・地名がそのまま作成者を示していることが多いので、略語の正式名称とあわせて覚えておくと判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  TNM分類

    誤り。TNM分類は悪性腫瘍の進行度(病期)を、原発腫瘍の広がり(T: tumor)、所属リンパ節転移(N: node)、遠隔転移(M: metastasis)の3要素で表す分類である。国際対がん連合(UICC)が定めて定期的に改訂しており、米国がん合同委員会(AJCC)の病期分類とも整合が図られている。国内では各臓器の癌取扱い規約(各学会が作成)がこれを基に病期を定めている。なお、WHOは腫瘍の「組織型」の分類(WHO腫瘍分類)を刊行しているが、これはTNM分類とは別物である。

  2. ×b.  NYHA心機能分類

    誤り。NYHA心機能分類は、米国のニューヨーク心臓協会(NYHA)がまとめた分類で、心疾患患者の身体活動の制限の程度(自覚症状)によって心不全の重症度をⅠ〜Ⅳ度に分ける。Ⅰ度は日常の身体活動で症状がないもの、Ⅱ度は日常の身体活動で症状が出る軽度の制限、Ⅲ度は日常以下の軽い活動で症状が出る高度の制限、Ⅳ度は安静時にも症状があるものである。WHOによるものではない。

  3. ○c.  国際疾病分類〈ICD〉

    正しい。国際疾病分類(ICD)は、正式名称を「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」といい、WHOが作成し改訂を続けている分類である。病気・けが・死因をコードで体系化しており、各国の死因統計や疾病統計を共通の基準で比べるための土台となる。診療録の管理や診療報酬の請求などにも利用される。おおむね10年単位で改訂され、最新版のICD-11は2019年の世界保健総会で採択され、2022年に発効した。日本の人口動態統計などでは現在もICD-10(2013年版)が用いられており、ICD-11への移行作業が進められている。

  4. ○d.  国際生活機能分類〈ICF〉

    正しい。国際生活機能分類(ICF)は、人の生活機能と障害を分類する枠組みとして、2001年の世界保健総会でWHOが採択したものである。前身の国際障害分類(ICIDH、1980年)が「機能障害→能力障害→社会的不利」という一方向の、障害のマイナス面に注目したモデルであったのに対し、ICFは「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という生活機能のプラス面を軸に据え、それらが健康状態や「環境因子」「個人因子」(背景因子)と相互に影響し合うモデルとして整理した。リハビリテーションや介護、障害福祉の分野で、本人の状態を総合的に把握する共通言語として用いられる。

  5. ×e.  Glasgow Coma Scale〈GCS〉

    誤り。Glasgow Coma Scale(GCS)は、1974年に英国グラスゴー大学の脳神経外科医TeasdaleとJennettが発表した意識障害の評価法である。開眼(E: 1〜4点)、最良言語反応(V: 1〜5点)、最良運動反応(M: 1〜6点)の合計(3〜15点)で評価し、点数が低いほど意識障害が重い。WHOによるものではない。なお、日本で広く使われるJapan Coma Scale(JCS)は日本で考案されたものである。

WHO国際分類ファミリー(WHO-FIC)

WHOは、保健医療に関する情報を国際的に比較・共有するための分類体系を整備しており、中心分類として次の3つを位置づけている。 ・国際疾病分類(ICD): 疾病・傷害・死因の分類。死因統計・疾病統計の基盤。 ・国際生活機能分類(ICF): 生活機能と障害の分類。 ・医療行為の分類(ICHI): 手術・処置などの保健医療行為の分類。

ICFの構成

・生活機能: 心身機能・身体構造、活動、参加 ・背景因子: 環境因子(物的環境、人的環境、制度など)、個人因子(年齢、性別、生活歴など) ・これらの要素と健康状態(疾患・変調)が相互に作用するとみなす「相互作用モデル」である。生活機能が問題を抱えた状態がそれぞれ機能障害、活動制限、参加制約と表現される。

主な分類・スケールと作成者

・TNM分類: 国際対がん連合(UICC) ・NYHA心機能分類: ニューヨーク心臓協会 ・Glasgow Coma Scale: 英国グラスゴー大学(Teasdale、Jennett) ・Japan Coma Scale: 日本で考案 ・ICD、ICF: WHO

POINT

・WHOが策定・管理する代表的な国際分類はICD(疾病・死因の分類)とICF(生活機能と障害の分類)である。 ・ICD-11は2019年に採択、2022年に発効。日本の公的統計は現在ICD-10(2013年版)を使用している。 ・ICFは2001年採択。前身のICIDHと異なり、生活機能のプラス面と環境因子・個人因子との相互作用を重視する。 ・TNM分類はUICC、NYHA分類はニューヨーク心臓協会、GCSはグラスゴー大学によるもので、WHOとは無関係。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。