17のゴールのどこにある?―SDGsゴール3と「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」
第119回医師国家試験 C問題 第24問
国試問題にチャレンジ
持続可能な開発のための2030アジェンダ〈SDGs〉の1つであるゴール3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する」で具体的な目標となっているのはどれか。
- a.水・衛生へのアクセス
- b.国内および国家間の不平等の是正
- c.社会的な健康規定要因への取り組み
- d.グローバル・パートナーシップの活性化
- e.ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉の達成
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
SDGsは2015年に国連で採択された2030年までの国際目標で、17のゴールと169のターゲットから成り、先進国を含むすべての国を対象に「誰一人取り残さない」ことを理念とします。保健を扱うゴール3では、ターゲット3.8にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉の達成が明記されており、すべての人が経済的困窮に陥ることなく必要な保健医療サービスを受けられる状態を目指します。水・衛生へのアクセスはゴール6、不平等の是正はゴール10、グローバル・パートナーシップはゴール17であり、健康の社会的決定要因は重要な概念ですがゴール3のターゲットには明記されていません。ゴール3には母子保健、感染症、非感染性疾患、交通事故、たばこ対策なども含まれ、1961年に国民皆保険を達成した日本はUHC推進を国際的に主導してきました。国際目標と国内の保健医療制度のつながりを理解することは、公衆衛生の学習だけでなく、医療へのアクセスを支える医師の視点を養ううえでも重要です。
解答・解説
正解はeです
テーマ
持続可能な開発目標〈SDGs:Sustainable Development Goals〉は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた国際目標である。2030年を期限とし、17のゴール(目標)と169のターゲット(具体的な達成目標)から構成される。2000〜2015年のミレニアム開発目標〈MDGs〉が主に開発途上国を対象としていたのに対し、SDGsは先進国を含むすべての国が取り組む普遍的な目標であり、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を理念とする。
ゴール3の位置づけ
保健分野を正面から扱うのがゴール3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する」である。その下には妊産婦死亡・乳幼児死亡の削減、感染症対策、非感染性疾患〈NCDs〉対策などのターゲットが並び、ターゲット3.8が「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉の達成」である。
解き方
選択肢の多くは「健康に関係しそうな概念」だが、SDGsでは別のゴールとして独立しているものが多い。水・衛生はゴール6、不平等の是正はゴール10、グローバル・パートナーシップはゴール17である。社会的な健康規定要因は公衆衛生上重要な概念ではあるが、ゴール3のターゲットとして明記されてはいない。したがってゴール3の具体的目標に該当するのはUHCの達成である。
選択肢考察
- ×a. 水・衛生へのアクセス
安全な飲料水と衛生施設(トイレ・下水など)へのアクセスは、ゴール6「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」(通称「安全な水とトイレを世界中に」)の内容である。水系感染症の予防を通じて健康と深く関連するものの、ゴール3の目標ではない。なお、ゴール3のターゲット3.9には「有害化学物質や大気・水・土壌の汚染による死亡と疾病の削減」が含まれるが、これは汚染対策であり水・衛生へのアクセスそのものとは異なる。
- ×b. 国内および国家間の不平等の是正
所得格差や社会的・経済的・政治的な包摂の推進など、国内および国家間の不平等を減らすことはゴール10(通称「人や国の不平等をなくそう」)の内容である。健康格差の背景要因ではあるが、ゴール3の具体的目標には当たらない。
- ×c. 社会的な健康規定要因への取り組み
社会的な健康規定要因〈SDH:social determinants of health、健康の社会的決定要因〉とは、所得・教育・雇用・社会的つながりなど、個人の生物学的要因以外で健康を左右する社会的条件をさす。WHO欧州事務局は社会格差、ストレス、幼少期、社会的排除、労働、失業、社会的支援、薬物依存、食品、交通の10項目に整理している。健康格差の是正に不可欠な考え方であり、WHOも重視しているが、SDGsのゴール3のターゲットとしては明記されていない。
- ×d. グローバル・パートナーシップの活性化
資金、技術、能力構築、貿易などを通じて各国・多様な主体が協力し、SDGs全体の実施手段を強化することはゴール17(通称「パートナーシップで目標を達成しよう」)の内容である。保健に特化した目標ではなく、全ゴールに横断的に関わる実施手段のゴールである。
- ○e. ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉の達成
ゴール3のターゲット3.8は「財政的リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス、および安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉を達成する」と定めている。UHCとは、すべての人が必要な保健医療サービス(予防・治療・リハビリテーションなど)を、支払いによって経済的困窮に陥ることなく受けられる状態をいう。ゴール3の具体的目標として明記されているので正しい。
ゴール3の主なターゲット
・3.1 世界の妊産婦死亡率を出生10万対70未満に削減する ・3.2 新生児死亡率を出生1,000対12以下、5歳未満児死亡率を出生1,000対25以下に削減し、予防可能な死亡をなくす ・3.3 エイズ、結核、マラリア、顧みられない熱帯病〈NTDs〉の流行を終わらせ、肝炎、水系感染症などに対処する ・3.4 NCDsによる早期死亡を予防と治療を通じて3分の1減少させ、精神保健と福祉を促進する ・3.5 薬物乱用・アルコールの有害な摂取の防止と治療を強化する ・3.6 道路交通事故による死傷者を半減させる ・3.7 家族計画を含む性と生殖に関する保健サービスへの普遍的アクセスを確保する ・3.8 UHCを達成する ・3.9 有害化学物質や大気・水・土壌の汚染による死亡と疾病を大幅に減らす ・3.a たばこ規制枠組条約〈FCTC〉の実施を強化する ・3.b ワクチン・医薬品の研究開発を支援し、安価な必須医薬品へのアクセスを提供する ・3.c 開発途上国の保健財政と保健人材を増強する ・3.d 健康危険因子の早期警告・リスク軽減・管理の能力を強化する
UHCの3つの次元
WHOはUHCを「誰が(対象となる人口の広がり)」「どのサービスを(提供されるサービスの範囲)」「どれだけの自己負担で(費用の保護)」の3軸で表す。日本は1961年に国民皆保険を達成しており、UHCを早期に実現した国として国際保健の場でUHC推進を主導してきた。毎年12月12日は国連が定めた「UHCデー」である。
健康と関係が深いゴール3以外の例
・ゴール2:飢餓をゼロに(栄養改善) ・ゴール5:ジェンダー平等 ・ゴール6:安全な水とトイレ ・ゴール10:不平等の是正 ・ゴール13:気候変動対策 ・ゴール17:パートナーシップ
POINT
・SDGsは2015年国連採択、2030年が期限、17ゴール・169ターゲットから成る。 ・保健のゴールはゴール3で、UHCの達成はターゲット3.8に明記されている。 ・水・衛生はゴール6、不平等の是正はゴール10、グローバル・パートナーシップはゴール17。 ・社会的な健康規定要因〈SDH〉は重要な概念だが、ゴール3のターゲットではない。
