「ヒューヒュー」は息を吐くときに―擬音で聴き分ける肺副雑音とwheezes
第120回医師国家試験 B問題 第16問
国試問題にチャレンジ
気管支喘息患者の肺野で聴取されるwheezesの表現で適切なのはどれか。
- a.吸気時に聴かれるパチパチという音
- b.吸気時に聴かれるブツブツという音
- c.吸気呼気両方で聴かれるキュッキュという音
- d.呼気時に聴かれるゴロゴロという音
- e.呼気時に聴かれるヒューヒューという音
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
肺の副雑音は、連続性か断続性か、音の高さ、聴かれる時相で整理すると理解しやすくなります。wheezes(笛声音)は細い気道の狭窄で生じる高調性の連続性ラ音で、呼気時に胸腔内圧が上がり気道がさらに狭まるため呼気優位に「ヒューヒュー」と聴かれ、気管支喘息の典型的な所見です。吸気後半の「パチパチ」はfine crackles(間質性肺炎)、吸気初期からの「ブツブツ」はcoarse crackles(肺炎・肺水腫)、両相の「キュッキュッ」は胸膜摩擦音、低い「ゴロゴロ」は太い気道の分泌物によるrhonchiなどと区別します。重症発作でwheezesが消えるsilent chestや、wheezesが喘息以外でも聴かれること、上気道狭窄によるstridorも合わせて押さえておくと、聴診所見を臨床判断に生かせます。
解答・解説
正解はeです
肺の聴診で聴かれる異常音(副雑音、ラ音)を、日本語の擬音でどう表現するかを問う問題である。 副雑音はまず「連続性」か「断続性」かで大きく二つに分ける。連続性ラ音は一定時間以上途切れずに続く楽音様の音で、狭くなった気道を空気が速い流れで通過する際に気道壁が振動して生じる。音の高さにより、高調性のwheezes(笛声音)と低調性のrhonchi(いびき音)に分けられる。断続性ラ音は短く途切れる破裂音の連なりで、細かく高調なfine crackles(捻髪音)と、粗く低調なcoarse crackles(水泡音)がある。肺外由来の副雑音として胸膜摩擦音もある。 気管支喘息では、気道の炎症、平滑筋収縮、粘膜浮腫、粘液栓によって末梢の比較的細い気道が狭窄する。呼気時には胸腔内圧が上昇して気道がさらに細くなるため、狭窄部での気流速度が増し、高調な連続音が呼気相で目立つ。これがwheezesで、日本語では「ヒューヒュー」「ピーピー」と表現される。したがって、音の性状(高調性・連続性)と聴かれる時相(呼気優位)の両方が合致する選択肢を選べばよい。
選択肢考察
- ×a. 吸気時に聴かれるパチパチという音
吸気の後半(終末)に聴かれる細かく高い破裂音で、fine crackles(捻髪音)の表現である。間質の線維化などで虚脱していた末梢気道や肺胞が吸気時に急に開放される際に生じ、「髪の毛を耳元でこすり合わせる音」「マジックテープを剥がす音(ベルクロラ音)」にもたとえられる。特発性肺線維症などの間質性肺炎、石綿肺で典型的に聴取され、喘息のwheezesとは異なる。
- ×b. 吸気時に聴かれるブツブツという音
吸気の早い時相から聴かれる粗く低めの断続音で、coarse crackles(水泡音)の表現である。気道内にたまった分泌物や液体の膜を空気が通過して破裂する際に生じ、「ブツブツ」「ボコボコ」と表現される。肺炎、肺水腫、気管支拡張症などでみられる。断続性ラ音であり、連続性ラ音のwheezesではない。
- ×c. 吸気呼気両方で聴かれるキュッキュという音
吸気と呼気の両方で聴かれ、「キュッキュッ」「ギュッギュッ」(雪を踏みしめる音、革がこすれる音)と表現されるのは胸膜摩擦音の特徴である。炎症で粗くなった臓側胸膜と壁側胸膜が呼吸運動に伴ってこすれ合うことで生じ、胸膜炎の初期などでみられる。胸水が増えて両胸膜が離れると消えることがある。なお、低調性連続音のrhonchiも吸気・呼気の両方で聴かれうるが、いずれにしても呼気優位の高調性連続音であるwheezesの表現とはいえない。
- ×d. 呼気時に聴かれるゴロゴロという音
「ゴロゴロ」は低く濁った音の表現で、太い気道(中枢気道)に分泌物や痰がたまっているときに聴かれる音を指す。低調性の連続音であるrhonchi(いびき音、「グーグー」とも表現)や、痰が絡んだ際の雑音がこれにあたる。咳払いや吸引で痰が移動すると変化・消失することがあるのが特徴である。音の高さが低い点で、高調なwheezesとは区別される。
- ○e. 呼気時に聴かれるヒューヒューという音
wheezes(笛声音)は、比較的細い気道が狭窄した部位を空気が高速で通過し、気道壁が振動して生じる高調性の連続性ラ音で、「ヒューヒュー」「ピーピー」と表現される。呼気時には胸腔内圧の上昇で気道がさらに狭くなるため呼気相で聴かれやすく、気管支喘息の発作時に典型的である。強制呼出(勢いよく息を吐かせる)で誘発・増強されることもある。したがって、気管支喘息でのwheezesの表現として最も適切である。
肺副雑音の分類
・連続性ラ音 wheezes(笛声音):高調性。「ヒューヒュー」「ピーピー」。細い気道の狭窄。気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、うっ血性心不全による心臓喘息など。呼気で目立つ。 rhonchi(いびき音):低調性。「グーグー」「ゴロゴロ」。太い気道の分泌物貯留や狭窄。慢性気管支炎など。咳払いで変化・消失しうる。 ・断続性ラ音 fine crackles(捻髪音):細かく高調。「パチパチ」「チリチリ」。吸気後半。間質性肺炎、石綿肺。 coarse crackles(水泡音):粗く低調。「ブツブツ」「ボコボコ」。吸気初期から。肺炎、肺水腫、気管支拡張症。 ・その他 胸膜摩擦音:「ギュッギュッ」「キュッキュッ」。吸気・呼気の両相。胸膜炎。 stridor(ストライダー):吸気時に頸部で強く聴かれる高調な連続音。喉頭蓋炎、喉頭浮腫、気道異物など上気道(胸郭外気道)の狭窄を示し、緊急性が高い。
補足
・喘息発作が非常に重症になると気流が極端に減少し、wheezesがかえって聴こえなくなる(silent chest)。wheezesが消えたことを改善と誤認してはならない。 ・「喘鳴」は患者自身や周囲が耳で聞き取れるヒューヒュー音を指す症状の用語として使われることが多く、聴診所見としてのwheezesと関連が深い。 ・wheezesは喘息に特異的ではなく、COPD、心不全、気道異物、腫瘍による気道狭窄でも聴かれる。局所的に固定して聴かれる場合は腫瘍や異物を疑う。
POINT
・wheezes=高調性連続性ラ音、「ヒューヒュー」、呼気優位、細い気道の狭窄(気管支喘息など) ・rhonchi=低調性連続性ラ音、「グーグー」「ゴロゴロ」、太い気道の分泌物 ・fine crackles=「パチパチ」吸気後半、間質性肺炎 ・coarse crackles=「ブツブツ」吸気初期から、肺炎・肺水腫 ・胸膜摩擦音=「ギュッギュッ」吸気呼気両相、胸膜炎 ・重症喘息発作でwheezesが消えるsilent chestに注意
