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「ヒューヒュー」は狭い気道の悲鳴―笛音〈wheezes〉を生む3つの病態

第118回医師国家試験 C問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第34問

笛音〈wheezes〉の原因となるのはどれか。3つ選べ。

  1. a.気胸
  2. b.無気肺
  3. c.左心不全
  4. d.気管支喘息
  5. e.慢性閉塞性肺疾患

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は聴診の基本、笛音〈wheezes〉がどんな病態で生じるかを問う問題だ。カギは、wheezesが「どういう仕組みで鳴る音なのか」を押さえること。仕組みが分かれば、選択肢は自然に振り分けられるよ。
医学生医学生
wheezesは連続性ラ音で、「ヒューヒュー」という高い音ですよね。OSCEの練習で、聴診シミュレーターで聴いたことがあります。
ドクタードクター
その通り。比較的細い気管支が狭くなり、そこを空気が速く通過するときに気道壁が振動して生じる高調な連続音だ。呼気時に目立つことが多い。だから「気道の内腔が狭くなる機序があるかどうか」で考えればいいんだ。
医学生医学生
それなら気管支喘息は真っ先に入りますね。発作のときに典型的に聴こえる音ですし。
ドクタードクター
そうだね。喘息では好酸球などによる慢性の気道炎症を背景に、発作時には平滑筋の収縮、粘膜浮腫、粘液栓で気道が可逆的に狭くなる。wheezesの最も代表的な原因だ。慢性閉塞性肺疾患はどうかな。
医学生医学生
COPDも閉塞性障害なので入ると思います。呼吸器内科の実習で、ヘビースモーカーの患者さんの胸から呼気の終わりにピーという音が聴こえました。
ドクタードクター
いい経験だね。COPDでは末梢気道の壁が炎症や線維化で厚くなり、分泌物も増える。さらに肺胞壁が壊れて弾性収縮力が落ちると、呼気時に末梢気道がつぶれやすくなる。これらで内腔が狭くなってwheezesが生じるんだ。呼気延長や全体的な呼吸音の減弱もよくみられる。
医学生医学生
気胸と無気肺はどうでしょう。どちらも肺の病気なので、何か音が出そうな気もしますが。
ドクタードクター
そこが整理のしどころだ。気胸は胸膜腔に空気がたまって肺が虚脱し、その空気層が音の伝達も妨げるから、患側の呼吸音は減弱ないし消失する。打診では鼓音だね。無気肺は肺胞の空気が失われて肺がつぶれた状態で、空気の流れ自体がないから、やはり呼吸音は減弱・消失し、打診は濁音になる。
医学生医学生
つまり、異常な音が「加わる」のではなく、音が「減る」タイプの病態なんですね。
ドクタードクター
その理解で正しい。もっとも、無気肺の原因となる閉塞部位の手前に部分的な狭窄があれば局所的に連続音を聴くことはあり得る。でも無気肺そのものの典型的所見は呼吸音の減弱・消失で、wheezesの原因としては挙げないんだ。
医学生医学生
残る左心不全が意外でした。心臓の病気で気道が狭くなるんですか。
ドクタードクター
ここがこの問題の一番のポイントだね。左心不全では肺静脈圧が上がって肺うっ血をきたし、間質に漏れた水分で細気管支周囲や気管支粘膜下に浮腫が生じる。これで気道内腔が狭くなり、反射性の気管支収縮も加わってwheezesが聴かれることがある。これを心臓喘息と呼ぶんだ。
医学生医学生
循環器の講義で聞いた「心臓喘息」ですね。夜間発作性呼吸困難や起坐呼吸もあると、気管支喘息と区別しにくそうです。
ドクタードクター
まさにそこが臨床の落とし穴だ。高齢者が夜間にゼーゼーして来院したら、喘息と決めつけずに心不全も必ず考える。肺胞内にまで水がたまる段階になると、吸気時の水泡音〈coarse crackles〉も聴かれるようになるから、それも手がかりになるよ。
医学生医学生
副雑音全体も整理しておきたいです。捻髪音は間質性肺炎、水泡音は肺炎や肺水腫でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。連続性ラ音にはもう一つ、太い気道の狭窄や分泌物で生じる低調な「グーグー」といういびき音〈rhonchi〉がある。また、上気道の狭窄で吸気時に聴かれる高調な連続音はstridorと呼び、喉頭蓋炎やクループ、異物を考える。それから、いつも同じ部位で聴かれる一側性の固定したwheezesは、腫瘍や異物による局所の気管支狭窄を疑うサインだ。
医学生医学生
喘息発作でwheezesが聴こえなくなったら、良くなったと考えていいですか。
ドクタードクター
そこは要注意だ。重症発作で換気量が極端に落ちると、気流が少なすぎてかえってwheezesが聴こえなくなる。これをsilent chestといって、呼吸停止が迫る危険な徴候なんだ。音が消えたら、呼吸状態や意識、SpO2を必ずあわせて評価しよう。

まとめ

笛音〈wheezes〉は、比較的細い気管支の狭窄部を空気が速く通過する際に生じる高調な連続性ラ音で、主に呼気時に聴取されます。代表的な原因は、平滑筋収縮・粘膜浮腫・粘液栓で気道が狭まる気管支喘息、末梢気道病変と気腫性変化で気流閉塞をきたす慢性閉塞性肺疾患、そして肺うっ血による細気管支周囲の浮腫で気道が狭まる左心不全(心臓喘息)です。一方、気胸や無気肺では副雑音が加わるのではなく、呼吸音そのものが減弱・消失するのが典型で、打診所見と組み合わせて鑑別します。喘息重症発作でwheezesが消えるsilent chestや、限局性・固定性のwheezesが腫瘍や異物を示唆する点は臨床で見逃せない知識です。音の発生機序から病態を推論する考え方は、聴診所見全般を理解する土台になります。

解答・解説

正解はc, d, eです

肺の聴診所見(呼吸音の異常)に関する一般問題である。

呼吸音の異常の分類

聴診で捉える異常は、大きく「呼吸音そのものの変化」と「副雑音(本来の呼吸音に加わる異常音)」に分けられる。前者には呼吸音の減弱・消失、呼気延長、気管支呼吸音化などがあり、後者は連続性ラ音(continuous sounds)と断続性ラ音(crackles)、さらに胸膜摩擦音などに分けられる。

笛音〈wheezes〉とは

wheezes は連続性ラ音のうち高調(おおむね400Hz以上)な「ヒューヒュー」「ピーピー」という音である。比較的細い気管支が狭くなり、そこを空気が速く通過する際に気道壁が振動して生じる。呼気時に目立つことが多い。これに対し、太い気道の狭窄や分泌物で生じる低調な「グーグー」という連続音は いびき音〈rhonchi〉と呼ぶ。

考え方

したがって「wheezes の原因」を問われたら、その病態に「末梢〜中枢の気道内腔が狭くなる機序があるか」を考えればよい。気管支平滑筋の収縮、気道粘膜の浮腫・壁肥厚、分泌物の貯留などがその代表である。一方、肺に空気が入らない・胸腔に空気が介在して音が伝わらないといった病態では、副雑音が加わるのではなく呼吸音自体が減弱・消失する。

選択肢考察

  1. ×a.  気胸

    気胸は胸膜腔に空気が貯留して肺が虚脱する病態である。虚脱した肺では換気が減り、さらに胸腔内の空気層が音の伝達を妨げるため、患側の呼吸音は減弱ないし消失する。打診では鼓音を呈し、声音振盪も低下する。気道の狭窄を生じる機序はないため、wheezes の原因にはならない。

  2. ×b.  無気肺

    無気肺は気道閉塞(腫瘍、痰栓、異物など)や外からの圧迫によって肺胞内の空気が失われ、肺組織がつぶれた状態である。含気のない領域には空気の流れがないため、患側の呼吸音は減弱ないし消失し、打診では濁音となる。閉塞した部位の手前で部分的な狭窄があれば局所的に連続音を聴くことはあり得るが、無気肺そのものの典型的聴診所見は呼吸音の減弱・消失であり、wheezes の原因としては挙げない。

  3. ○c.  左心不全

    左心不全では左房圧・肺静脈圧が上昇して肺うっ血をきたす。間質に漏れた水分により細気管支周囲や気管支粘膜下に浮腫が生じ、気道内腔が狭くなるほか、反射性の気管支収縮も加わって wheezes を聴取することがある。これを心臓喘息と呼び、夜間発作性呼吸困難や起坐呼吸を伴って気管支喘息と紛らわしい。肺胞内に水分が貯留する段階では、吸気時の水泡音〈coarse crackles〉も聴かれるようになる。

  4. ○d.  気管支喘息

    気管支喘息は好酸球などによる慢性の気道炎症を背景に、気道過敏性が亢進し、発作時には気管支平滑筋の収縮(攣縮)、粘膜浮腫、粘液栓(痰)の貯留によって気道が可逆的に狭窄する疾患である。この狭窄部を空気が通過する際に生じる wheezes は最も代表的な所見で、特に呼気時に強く聴かれる。なお、重症発作で換気量が極端に低下すると、かえって wheezes が聴こえなくなる(silent chest)ことがあり、危険な徴候である。

  5. ○e.  慢性閉塞性肺疾患

    慢性閉塞性肺疾患(COPD: chronic obstructive pulmonary disease)は主に長期の喫煙により生じ、末梢気道病変(気道壁の炎症・線維化による肥厚、分泌物の増加)と気腫性病変(肺胞壁の破壊による弾性収縮力の低下で、呼気時に末梢気道が虚脱しやすくなる)が組み合わさって気流閉塞をきたす。これらにより末梢気道の内腔が狭くなるため wheezes が聴取される。呼気延長、全体的な呼吸音の減弱もよくみられる所見である。

副雑音(ラ音)の整理

・連続性ラ音  笛音〈wheezes〉: 高調。比較的細い気管支の狭窄。気管支喘息、COPD、心臓喘息(左心不全)など。  いびき音〈rhonchi〉: 低調。太い気道の狭窄や分泌物。気管支炎、気管支拡張症、喀痰貯留など。 ・断続性ラ音  捻髪音〈fine crackles〉: 細かく高調、吸気後半に聴取。閉塞していた末梢気道が吸気時に開放されて生じる。間質性肺炎(特に特発性肺線維症)、石綿肺など。  水泡音〈coarse crackles〉: 粗く低調、吸気早期から聴取。気道内の分泌物や液体の中を空気が通過して生じる。肺炎、肺水腫、気管支拡張症など。 ・その他  胸膜摩擦音: 炎症で粗くなった臓側・壁側胸膜がこすれ合う音。胸膜炎の初期など。  stridor(ストライダー): 上気道(喉頭・気管)の狭窄で吸気時に聴かれる高調な連続音。喉頭蓋炎、異物、クループなど。

呼吸音が減弱・消失する主な病態

気胸、胸水貯留、無気肺、高度の肺気腫、喘息の重症発作(silent chest)など。打診所見(気胸・肺気腫では鼓音、胸水・無気肺では濁音)と合わせて鑑別する。

限局性の wheezes

両側びまん性ではなく、いつも同じ部位で聴かれる一側性の wheezes(固定性・限局性)は、腫瘍や異物による局所の気管支狭窄を疑う手がかりとなる。

POINT

・wheezes は気道狭窄で生じる高調な連続性ラ音で、主に呼気時に聴取される。 ・代表的原因は気管支喘息、COPD、左心不全(心臓喘息:細気管支周囲の浮腫による狭窄)。 ・気胸・無気肺・胸水では副雑音ではなく、呼吸音の減弱・消失が典型である。 ・喘息重症発作で wheezes が消える silent chest は危険な徴候。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。