吐き切っても残る空気―肺気量分画で「残気量」を見抜き、COPDの過膨張を読む
第118回医師国家試験 C問題 第23問
国試問題にチャレンジ
健常者と進行したCOPD患者との肺気量分画を示す。 残気量はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
肺気量分画は最大吸気位・安静吸気位・安静呼気位・最大呼気位の4つの境界で区切られ、残気量は最大呼気位から下、つまり最大限吐き出しても肺に残る空気の量です。安静呼気位から下の機能的残気量(予備呼気量+残気量)や、底から最大吸気位までの全肺気量(肺活量+残気量)と区別して覚えることが大切です。進行したCOPDでは肺胞壁破壊による弾性収縮力の低下と末梢気道の閉塞によってエアトラッピングが起こり、残気量・機能的残気量・全肺気量が増加する一方、肺活量と最大吸気量は低下します。残気量を含む量はスパイロメトリー単独では測定できず、ガス希釈法や体プレチスモグラフ法が必要です。分画の定義とCOPDでの変化をセットで理解すると、過膨張による労作時呼吸困難の病態を説明できるようになります。
解答・解説
正解はcです
図の読み取り
縦軸は健常者の全肺気量を100%とした相対値である。健常者の柱は下から、残気量(最大呼気後も肺に残る部分)、予備呼気量、最大吸気量(安静呼気位から上の部分)に分かれており、全体でおよそ100%、安静呼気位はおよそ50%、最大呼気位はおよそ25%の高さにある。進行したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の柱は、全体がおよそ130%近くまで高くなり、最も下の区画(最大呼気位まで吐き切っても残る部分)がおよそ80%にまで大きく増えている。
各記号が指すもの
・①:健常者の柱の底(0)から最上端(最大吸気位)まで=全肺気量(TLC) ・②:底から中間の境界(安静呼気位)まで=機能的残気量(FRC) ・③:底から最下段の上端(最大呼気位)まで=残気量(RV) ・④:COPD患者の安静呼気位から最大吸気位まで=最大吸気量(IC) ・⑤:COPD患者の最大呼気位から最大吸気位まで=肺活量(VC)
考え方
肺気量分画は、最大吸気位・安静吸気位・安静呼気位・最大呼気位という4つの「位」を境界として区切られる。残気量は「最大呼気位から肺の底(0)まで」であり、スパイロメトリーでは呼出できないため直接測定できない量である。図で底から最下段の上端までを示すのは③であり、COPD患者で同じ区画が著しく増大していることも、残気量であることを裏付けている。
選択肢考察
- ×a. ①
肺の底から最大吸気位までを示しており、最大限に吸い込んだときの肺内のガス総量である全肺気量(TLC)にあたる。肺活量と残気量の和に等しい。COPD進行例では過膨張のために増加する。
- ×b. ②
肺の底から安静呼気位までを示しており、安静時に普通に息を吐き終えた時点で肺に残っているガス量である機能的残気量(FRC)にあたる。残気量と予備呼気量の和である。COPDでは呼気時に末梢気道が早期に閉塞し空気が取り残される(エアトラッピング)ため増加する。
- ○c. ③
肺の底から最大呼気位までを示しており、最大限に吐き出したあとも肺内に残るガス量、すなわち残気量(RV)である。進行したCOPDでは、肺胞壁破壊による弾性収縮力の低下と末梢気道の閉塞のため呼出しきれない空気が増え、残気量は健常者の約25%から約80%へと最も顕著に増加している。
- ×d. ④
COPD患者の安静呼気位から最大吸気位までを示しており、最大吸気量(IC)にあたる。1回換気量と予備吸気量の和である。COPDでは機能的残気量が増えて安静呼気位が上方へ移動するため、全肺気量の増加幅を上回って最大吸気量が減少する。最大吸気量の低下は動的過膨張の指標として労作時呼吸困難と関連する。
- ×e. ⑤
COPD患者の最大呼気位から最大吸気位までを示しており、肺活量(VC)にあたる。全肺気量から残気量を引いた量である。COPDでは残気量の増え方が全肺気量の増え方より大きいため、肺活量は低下する。
肺気量分画の整理
4つの基本量(volume) ・1回換気量(TV):安静時の1回の呼吸で出入りする量 ・予備吸気量(IRV):安静吸気位からさらに吸い込める量 ・予備呼気量(ERV):安静呼気位からさらに吐き出せる量 ・残気量(RV):最大呼気後も肺に残る量 基本量を組み合わせた4つの容量(capacity) ・最大吸気量(IC)=TV+IRV ・機能的残気量(FRC)=ERV+RV ・肺活量(VC)=IRV+TV+ERV ・全肺気量(TLC)=VC+RV 残気量を含む量(RV、FRC、TLC)はスパイロメトリーだけでは測定できず、ヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフ法などで測定する。閉塞性疾患では換気されにくい肺領域にガスが届かないため、ガス希釈法では過小評価されやすく、体プレチスモグラフ法の値の方が大きくなる。
COPDで肺気量がどう変わるか
・残気量、残気率(RV/TLC)、機能的残気量、全肺気量:増加(過膨張) ・肺活量、最大吸気量:低下 ・1秒量、1秒率:低下(閉塞性換気障害) ・肺拡散能(DLCO):肺胞壁破壊により低下 ・静肺コンプライアンス:弾性収縮力低下により増加 機序:肺胞壁の破壊で肺の弾性収縮力が失われ、さらに末梢気道の炎症・線維化で気道が狭くなるため、呼気時に気道が早期に閉塞して空気が肺内に取り残される(エアトラッピング)。
COPDの臨床像の要点
・主な原因は長期の喫煙である。 ・身体所見:口すぼめ呼吸、樽状胸郭、呼吸補助筋(胸鎖乳突筋など)の肥大、Hoover徴候など。 ・胸部エックス線:横隔膜の平坦化、肺野の透過性亢進、肋間腔の開大、滴状心。 ・胸部CT:低吸収領域(LAA)の散在。 ・動脈血ガス:進行例でPaO2低下、PaCO2上昇、A-aDO2開大。 ・診断:気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)<70%を満たし、他の気流閉塞をきたす疾患を除外する。
POINT
・残気量=最大呼気位から下の部分(最大限吐いても残る空気)。スパイロメトリー単独では測れない。 ・全肺気量=肺活量+残気量、機能的残気量=予備呼気量+残気量、最大吸気量=1回換気量+予備吸気量。 ・COPDでは残気量・機能的残気量・全肺気量が増加し、残気量の増加が最も顕著。肺活量と最大吸気量は低下する。
