StudyMed医師国家試験

尿路結石は「生活習慣病」―数字で押さえる日本の腎・尿管結石の疫学

第120回医師国家試験 A問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第120回 A問題 第2問

我が国の腎・尿管結石症に関する説明で正しいのはどれか。

  1. a.好発年齢は20歳台である。
  2. b.結石成分は尿酸が最も多い。
  3. c.罹患率は男性より女性が高い。
  4. d.糖尿病との関連が指摘されている。
  5. e.膀胱・尿道結石症より罹患率が低い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本の腎・尿管結石の疫学を問う問題だ。部位、性差、好発年齢、結石成分、背景因子という5つの骨格を頭に入れておけば、どの選択肢も見抜ける。まずは尿路結石がどこにできやすいかから考えよう。
医学生医学生
腎臓や尿管にできるイメージが強いです。膀胱結石はあまり聞かない気がします。
ドクタードクター
その感覚は正しい。尿路結石のおよそ95%前後は腎・尿管、つまり上部尿路にできる。膀胱・尿道結石は少数派だ。だから腎・尿管結石のほうが罹患率が低いという記述は逆なんだ。
医学生医学生
膀胱結石は、どんな人にできやすいんですか。
ドクタードクター
前立腺肥大症や神経因性膀胱などで尿が停滞しやすい高齢男性に多い。尿道結石は、多くが上から下りてきた結石が嵌頓したものだね。次は性差。男女どちらに多いと思う?
医学生医学生
泌尿器科の実習で救急外来の尿管結石の患者さんを見たのは、ほとんど男性でした。男性に多いですよね。
ドクタードクター
その通り。男女比はおよそ2〜2.5対1で、生涯罹患率は男性で約7人に1人、女性で約15人に1人とされる。男性は動物性蛋白質や脂肪の摂取が多いこと、肥満やメタボリックシンドロームが多いことが背景と考えられている。
医学生医学生
年齢はどうでしょう。激しい痛みで救急車で来るのは、若い人の印象がありました。
ドクタードクター
若い人にも起こるけれど、ピークではない。好発年齢は男性で40〜50歳台、女性は閉経後の50歳以降だ。女性では閉経によるエストロゲン低下が、骨からのカルシウム動員や尿中クエン酸の減少に関わると考えられている。だから20歳台が好発という記述は誤りになる。
医学生医学生
成分については、痛風と関係がありそうなので尿酸が多いのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこはよくあるひっかけだね。最も多いのはシュウ酸カルシウムを主体とするカルシウム含有結石で、全体の約8〜9割を占める。尿酸結石は数%にとどまるんだ。ちなみに尿酸結石は単純X線で写りにくいX線透過性で、CTでは描出される、という特徴も重要だよ。
医学生医学生
CBTの勉強で、X線に写らない結石として尿酸結石を覚えました。ここにつながるんですね。
ドクタードクター
そう。そして残るのが糖尿病との関連。これが正しい記述だ。糖尿病、特に2型糖尿病の患者さんは尿路結石の罹患率が高く、約2倍という報告もある。
医学生医学生
糖尿病で結石ができやすくなる仕組みが、いまひとつイメージできません。
ドクタードクター
ポイントは尿の酸性化だ。インスリン抵抗性があると腎尿細管でのアンモニア産生が低下して、尿が持続的に酸性に傾く。酸性尿では尿酸が溶けにくくなるから、尿酸結石や、尿酸の結晶を核にしたシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。高インスリン血症で尿中カルシウム排泄が増えることも関与するとされているよ。
医学生医学生
糖尿病だけでなく、肥満や高血圧、脂質異常症も危険因子なんですか。
ドクタードクター
その通り。メタボリックシンドロームの構成要素はいずれも結石の危険因子で、尿路結石は生活習慣病の一つと位置づけられるようになっている。日本での罹患率が数十年にわたり増えているのも、食生活の欧米化や生活習慣病の増加が背景と考えられているんだ。
医学生医学生
つまり結石の患者さんを診たら、痛みを取るだけでなく、生活習慣全体を見直す必要があるということですね。
ドクタードクター
まさにそこが臨床で大事な点だ。尿路結石は再発しやすく、初発後5年でおよそ半数が再発するとされる。予防の基本は1日2,000 mL以上の尿量を確保する飲水、動物性蛋白質や塩分、ほうれん草などシュウ酸の多い食品の摂りすぎを控えること、そして肥満の是正だ。
医学生医学生
カルシウムの結石だから、カルシウムは控えたほうがいいんでしょうか。
ドクタードクター
それは誤解しやすいところだね。食事中のカルシウムは腸管でシュウ酸と結合して、その吸収を抑えてくれる。極端に制限すると腸からのシュウ酸吸収が増え、かえって結石ができやすくなりうる。カルシウムは適量摂る、が正解だよ。

まとめ

日本の尿路結石の約95%は腎・尿管の上部尿路結石で、膀胱・尿道結石は少数です。男女比はおよそ2〜2.5対1と男性に多く、好発年齢は男性40〜50歳台、女性は閉経後の50歳以降で、成分はシュウ酸カルシウムを主体とするカルシウム含有結石が約8〜9割を占め、尿酸結石は数%にとどまります。糖尿病ではインスリン抵抗性による尿の酸性化などを介して結石の罹患率が高まり、肥満・高血圧・脂質異常症を含むメタボリックシンドロームとの関連から、尿路結石は生活習慣病の一つと捉えられています。再発率が高いため、十分な飲水、食事内容の見直し、適量のカルシウム摂取、肥満の是正といった予防指導が欠かせません。疫学の数字を背景にある生活習慣と結びつけて理解しておくと、診断だけでなく再発予防まで見据えた診療につながります。

解答・解説

正解はdです

本問は、日本における上部尿路結石(腎結石・尿管結石)の疫学に関する基本的な知識を問う一般問題である。

押さえるべき疫学の骨格

・部位:尿路結石の大部分(およそ95%前後)は上部尿路(腎・尿管)に生じ、下部尿路(膀胱・尿道)の結石は少数である。 ・性差:男性に多く、男女比はおよそ2〜2.5:1である。生涯罹患率は男性で約7人に1人、女性で約15人に1人とされる。 ・年齢:男性は40〜50歳台、女性は閉経後の50歳以降に多い。女性では閉経によるエストロゲン低下が骨からのカルシウム動員や尿中クエン酸の減少に関与すると考えられている。 ・成分:シュウ酸カルシウムを主体とするカルシウム含有結石が約8〜9割を占め、尿酸結石は数%にとどまる。 ・背景因子:肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、すなわちメタボリックシンドロームとの関連が明らかになっており、尿路結石は「生活習慣病の一つ」として位置づけられるようになっている。 この骨格を頭に入れておけば、各選択肢の数値・性差・成分の誤りを容易に見抜ける。生活習慣病との関連を述べた選択肢が正しい記述として残る。

選択肢考察

  1. ×a.  好発年齢は20歳台である。

    誤り。上部尿路結石の好発年齢は、男性で40〜50歳台、女性では閉経後の50歳以降である。20歳台にも発症はあるが、ピークではない。近年は高齢化と食生活の変化を背景に、中高年での発症がむしろ増加傾向にある。

  2. ×b.  結石成分は尿酸が最も多い。

    誤り。最も多いのはカルシウム含有結石で、なかでもシュウ酸カルシウム結石(単独あるいはリン酸カルシウムとの混合)が大半を占める。カルシウム含有結石全体で約8〜9割に達する。尿酸結石は数%程度であり、ほかに感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)、シスチン結石などがある。尿酸結石はX線透過性(単純X線で写りにくい)であることも特徴として覚えておく。

  3. ×c.  罹患率は男性より女性が高い。

    誤り。男性の罹患率は女性の2倍以上である。男性では動物性蛋白質・脂肪の摂取量が多いこと、肥満やメタボリックシンドロームの頻度が高いことなどが要因と考えられている。なお女性は閉経後に増加し、性差は以前よりやや縮まりつつある。

  4. ○d.  糖尿病との関連が指摘されている。

    正しい。糖尿病(とくに2型糖尿病)患者では非糖尿病者に比べ尿路結石の罹患率が高く、約2倍とする報告もある。機序として、インスリン抵抗性により腎尿細管でのアンモニア産生が低下し、尿が持続的に酸性に傾くことが挙げられる。酸性尿では尿酸が溶けにくくなり、尿酸結石や、尿酸結晶を核としたシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。さらに高インスリン血症に伴う尿中カルシウム排泄の増加も関与するとされる。糖尿病に限らず、肥満・高血圧・脂質異常症などメタボリックシンドロームの構成要素はいずれも結石の危険因子である。

  5. ×e.  膀胱・尿道結石症より罹患率が低い。

    誤り。逆であり、腎・尿管結石は尿路結石全体のおよそ95%を占め、膀胱・尿道結石よりはるかに多い。膀胱結石は前立腺肥大症や神経因性膀胱などで尿が停滞しやすい高齢男性に多く、尿道結石は多くが上部や膀胱から下降してきた結石が嵌頓したものである。

尿路結石の成分と特徴

・シュウ酸カルシウム結石:最多。X線不透過。高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、低クエン酸尿症が危険因子。 ・リン酸カルシウム結石:アルカリ尿で形成されやすい。原発性副甲状腺機能亢進症、尿細管性アシドーシス(遠位型)などで生じる。 ・尿酸結石:酸性尿・高尿酸尿で形成。X線透過性で、CTでは描出される。痛風、メタボリックシンドローム、糖尿病と関連。尿アルカリ化(クエン酸製剤)で溶解が期待できる。 ・リン酸マグネシウムアンモニウム結石(感染結石):ウレアーゼ産生菌(Proteus など)による尿路感染でアルカリ尿となり形成。サンゴ状結石の原因となり、女性に比較的多い。 ・シスチン結石:常染色体潜性遺伝のシスチン尿症で生じる。若年発症・再発を繰り返す。

再発と予防

尿路結石は再発しやすく、初発後5年でおよそ半数が再発するとされる。予防の基本は、1日2,000 mL以上の尿量を確保する飲水指導、動物性蛋白質・塩分・シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、チョコレートなど)の過剰摂取の制限、適量のカルシウム摂取(食事中のカルシウムは腸管でシュウ酸と結合しその吸収を抑える)、肥満の是正である。カルシウム摂取を極端に制限すると、腸管からのシュウ酸吸収が増えかえって結石が増えうる点に注意する。

疫学の推移

日本の尿路結石の罹患率は数十年にわたり増加傾向にある。食生活の欧米化(動物性蛋白質・脂肪の増加)と生活習慣病の増加が背景と考えられている。

POINT

・腎・尿管結石は尿路結石の約95%を占める(下部尿路結石は少ない)。 ・男女比は約2〜2.5:1で男性に多い。生涯罹患率は男性約7人に1人、女性約15人に1人。 ・好発年齢は男性40〜50歳台、女性は閉経後の50歳以降。 ・成分はシュウ酸カルシウムを主体とするカルシウム含有結石が最多。尿酸結石は数%でX線透過性。 ・肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症などメタボリックシンドロームと関連し、生活習慣病の一つと捉えられる。 ・再発率が高く、5年でおよそ半数が再発する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。