その手帳、保健所では出せません―地域保健法から読み解く保健所の守備範囲
第119回医師国家試験 F問題 第18問
国試問題にチャレンジ
保健所の業務で誤っているのはどれか。
- a.精神疾患の相談
- b.医療機関への立入検査
- c.身体障害者手帳の交付
- d.人口動態統計に関する業務
- e.結核発生時の接触者健康診断
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
保健所は地域保健法に基づき都道府県・指定都市・中核市などが設置する地域保健の広域的・専門的拠点で、その業務は同法第6条に、統計、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病、感染症予防、試験検査など14項目として規定されています。精神保健相談、医療法に基づく医療機関への立入検査、人口動態統計の審査・集計、結核の接触者健康診断はいずれも保健所の業務です。一方、身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づく福祉行政の事務で、市町村窓口に申請し都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が交付するため、保健所の業務ではありません。乳幼児健診や母子健康手帳交付など身近な対人サービスは市町村保健センターが担うという役割分担も併せて理解しておくと、臨床現場で患者を適切な行政機関へつなぐ際に役立ちます。
解答・解説
正解はcです
保健所の業務範囲を問う問題である。「誤っているのはどれか」型なので、保健所が担っていない業務を一つ選ぶ。 保健所は地域保健法に基づき、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、東京都の特別区が設置する、地域保健の広域的・専門的・技術的な拠点である。その業務は地域保健法第6条に14項目として列挙されており、統計、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病、感染症予防、試験検査などが含まれる。一方、市町村が設置する市町村保健センターは、住民に身近な健康相談・健康診査・保健指導などの対人サービスを担う施設であり、役割が分担されている。 解き方としては、各選択肢を地域保健法第6条の項目(あるいは精神保健福祉法・医療法・感染症法などの個別法による保健所の役割)に当てはめ、どれにも該当しないものを探す。身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づく福祉行政の事務であり、申請は市町村の福祉担当窓口(福祉事務所など)を経由し、交付は都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が行う。保健所の業務には含まれないため、これが正解となる。
選択肢考察
- ×a. 精神疾患の相談
保健所の業務である。地域保健法第6条に「精神保健に関する事項」が規定され、精神保健福祉法でも保健所は精神保健福祉に関する相談・訪問指導を行う機関と位置づけられている。精神保健相談は市町村(保健センター等)や精神保健福祉センターも担い、複雑・困難な事例は都道府県・指定都市が設置する精神保健福祉センターが専門的に対応することが多い。
- ×b. 医療機関への立入検査
保健所の業務である。医療法第25条に基づく立入検査(いわゆる医療監視)では、病院・診療所などの人員配置、構造設備、清潔保持、記録の管理などが適正かを確認する。地域保健法第6条の「医事及び薬事に関する事項」に相当する。なお特定機能病院に対する立入検査は厚生労働省(地方厚生局)が行い、それ以外の病院・診療所は都道府県・保健所設置市などが保健所を通じて実施する。
- ○c. 身体障害者手帳の交付
保健所の業務ではないので、これが正解である。身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づき、本人(15歳未満は保護者)が都道府県知事の定める指定医の診断書を添えて居住地の市町村(福祉事務所や障害福祉担当課)に申請し、都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が交付する。福祉行政の事務であり、地域保健法第6条に列挙された保健所の業務には含まれない。
- ×d. 人口動態統計に関する業務
保健所の業務である。地域保健法第6条に「人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項」が明記されている。出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出は市区町村が受理して人口動態調査票を作成し、保健所が内容を審査・集計したうえで都道府県を経て厚生労働省へ送付する流れになっている。
- ×e. 結核発生時の接触者健康診断
保健所の業務である。結核は感染症法上の二類感染症であり、医師から保健所長を経由して都道府県知事へ届出がなされる。保健所は患者への積極的疫学調査を行い、家族・職場・学校などの接触者を把握して、感染症法第17条に基づく接触者健康診断(インターフェロンγ遊離試験〔IGRA〕や胸部X線検査など)を実施する。地域保健法第6条の「感染症その他の疾病の予防に関する事項」に該当する。
保健所の概要
・根拠法:地域保健法(1994年に保健所法を改正・改称)。 ・設置主体:都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区。 ・所長:原則として医師(一定の条件下で医師以外も可)。 ・役割:広域的・専門的・技術的な拠点。対人保健のうち専門性の高いもの(難病、精神保健、結核・感染症など)と、対物保健(食品衛生、環境衛生、医事・薬事の監視)、統計、試験検査などを担う。
地域保健法第6条に規定される保健所の業務(14項目)
1. 地域保健に関する思想の普及及び向上 2. 人口動態統計その他地域保健に係る統計 3. 栄養の改善及び食品衛生 4. 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生 5. 医事及び薬事 6. 保健師に関する事項 7. 公共医療事業の向上及び増進 8. 母性及び乳幼児並びに老人の保健 9. 歯科保健 10. 精神保健 11. 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健 12. 感染症その他の疾病の予防 13. 衛生上の試験及び検査 14. その他地域住民の健康の保持及び増進
市町村保健センターとの違い
市町村保健センターは市町村が任意で設置し、乳幼児健診、母子健康手帳の交付、予防接種、健康相談、特定保健指導以外の一般的な健康教育など、住民に身近な対人サービスを担う。センター長が医師である必要はない。
障害者手帳の種類と交付主体
・身体障害者手帳(身体障害者福祉法):都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が交付。 ・精神障害者保健福祉手帳(精神保健福祉法):都道府県知事・指定都市市長が交付。 ・療育手帳(知的障害、法律ではなく通知に基づく):都道府県知事・指定都市市長が交付。 いずれも申請窓口は市町村であり、保健所は交付主体ではない。
POINT
・保健所の業務は地域保健法第6条の14項目で押さえる(統計、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病、感染症予防、試験検査など)。 ・医療機関への立入検査(医療監視)は医療法に基づき保健所が行う(特定機能病院は国)。 ・結核の接触者健診・積極的疫学調査は保健所の代表的業務。 ・身体障害者手帳は福祉行政の事務で、市町村窓口に申請し都道府県知事等が交付する。保健所の業務ではない。 ・身近な対人サービス(乳幼児健診、母子健康手帳交付など)は市町村(保健センター)が担う。
