StudyMed医師国家試験

随時血糖250の先にあるもの―糖尿病を「1回で」診断できる2つの条件

第119回医師国家試験 A問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第12問

随時血糖250mg/dLを示す非妊娠者で糖尿病の診断基準を満たすのはどれか。2つ選べ。

  1. a.尿糖陽性
  2. b.尿蛋白陽性
  3. c.HbA1c 6.7%
  4. d.尿ケトン体陽性
  5. e.口渇,多飲,多尿の症状

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は糖尿病の診断基準そのものを問う問題だ。ポイントは、血糖値がすでに「糖尿病型」に入っているときに、あと何がそろえばその場で糖尿病と言い切れるのか、という点。まずは診断の全体像から整理しよう。糖尿病型の4つの基準は言えるかな。
医学生医学生
空腹時血糖126mg/dL以上、75gOGTTの2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上、の4つです。
ドクタードクター
完璧だね。今回の随時血糖250mg/dLは、そのうちの随時血糖の基準を満たしているから、血糖値は糖尿病型だ。ただし、糖尿病型が1回出ただけでは原則として糖尿病とは診断しない。
医学生医学生
え、250もあるのにまだ確定じゃないんですか。てっきりこれだけで診断できると思っていました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いよ。でも血糖値は食事やストレス、感染症などで一時的に跳ね上がることがある。だから「本当に慢性的な高血糖なのか」を裏づける材料が必要なんだ。その材料が、同じ採血でのHbA1cの糖尿病型、口渇・多飲・多尿・体重減少といった典型的症状、そして確実な糖尿病網膜症の3つ。どれかがあれば1回の検査で診断できる。
医学生医学生
HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映するから、血糖とセットで見れば一過性じゃないとわかる、ということですね。
ドクタードクター
その通り。だからHbA1c 6.7%は6.5%以上を満たしていて、随時血糖とあわせて両方が糖尿病型となり、その場で糖尿病と診断できる。では症状のほうはどうだろう。
医学生医学生
口渇、多飲、多尿は典型的症状そのものなので、これも当てはまります。生理学の講義で、尿糖が増えると浸透圧利尿で多尿になると習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。尿にブドウ糖が大量に出ると水も一緒に引っ張られて多尿になり、脱水と血漿浸透圧の上昇で喉が渇いて多飲になる。さらにインスリン作用不足で脂肪や筋肉が分解されて体重も減る。これらは持続的な高血糖があることの証拠だから、診断根拠として認められているんだ。
医学生医学生
でも、尿糖陽性も高血糖の証拠になりそうな気がします。これはだめなんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。尿糖は血糖が腎臓の再吸収の上限、おおよそ160〜180mg/dLを超えると出てくるけれど、その閾値には個人差がある。腎性糖尿や妊娠、SGLT2阻害薬の内服では血糖が正常でも陽性になるし、高齢者では閾値が上がって高血糖でも陰性のことがある。だからスクリーニングの手がかりにはなっても、診断基準には入っていないんだ。
医学生医学生
なるほど。尿蛋白は糖尿病性腎症のサインですよね。
ドクタードクター
そう、合併症である腎症の評価や病期分類には大切だね。ただ糸球体腎炎や高血圧性腎硬化症など多くの腎疾患でも陽性になるから、糖尿病に特異的ではなく、診断には使わない。
医学生医学生
尿ケトン体はどうでしょう。CBTの勉強で、糖尿病ケトアシドーシスのところに必ず出てきた記憶があります。
ドクタードクター
ケトン体はインスリン作用が著しく不足したときに脂肪分解が進んで増えるから、ケトアシドーシスやインスリン依存状態を疑う重要な手がかりだ。でも飢餓や絶食、嘔吐が続いたとき、極端な糖質制限でも陽性になる。だから診断基準には含まれない。
医学生医学生
つまり尿検査の項目は、どれも診断には使わないということですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。もう一つ押さえておきたいのが、1回で診断できなかった場合だ。その場合は原則1か月以内に再検査して、再び糖尿病型なら糖尿病と診断する。ただし、初回か再検査のどちらかで血糖値が糖尿病型である必要がある。
医学生医学生
HbA1cだけが2回とも6.5%以上でも、診断はつかないということですか。
ドクタードクター
その通りで、それは「糖尿病の疑い」にとどまる。HbA1cは赤血球の寿命に左右される指標だからね。溶血性貧血や出血後、鉄欠乏性貧血の回復期、エリスロポエチン製剤の使用中では低めに出やすく、逆に鉄欠乏状態では高めに出やすい。そういうときはグリコアルブミンなども参考にする。あと、問題文に「非妊娠者」とあるのは、妊娠中は妊娠糖尿病などの別の基準が使われるからだ。
医学生医学生
内分泌代謝内科の実習で、貧血のある患者さんのHbA1cと血糖が合わないと指導医の先生が話していたのは、そういうことだったんですね。
ドクタードクター
まさにそれだ。数値をうのみにせず、その指標が何を反映しているかを考えることが臨床では大事なんだよ。

まとめ

糖尿病の診断では、空腹時血糖126mg/dL以上、75gOGTT 2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれかを「糖尿病型」とし、血糖値とHbA1cがともに糖尿病型であるか、血糖値が糖尿病型で口渇・多飲・多尿・体重減少などの典型的症状または確実な糖尿病網膜症を伴えば、1回の検査で糖尿病と診断できます。随時血糖250mg/dLにHbA1c 6.7%、あるいは典型的症状が加わればこの条件を満たします。尿糖・尿蛋白・尿ケトン体は、それぞれスクリーニングや合併症・病態の評価には役立つものの、特異性に欠けるため診断基準には含まれません。1回で診断できない場合は再検査を行いますが、HbA1cのみの反復では診断できず、貧血や出血などでHbA1cが実際の血糖状態を反映しにくい点にも注意が必要です。各指標が何を反映するかを理解しておくことが、正確な診断と日常診療での判断につながります。

解答・解説

正解はc, eです

日本糖尿病学会の診断基準では、まず検査値が「糖尿病型」に該当するかを判定し、そのうえで追加の条件がそろえば糖尿病と診断する、という2段階の考え方をとる。

糖尿病型の判定基準

① 早朝空腹時血糖値 126 mg/dL以上 ② 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値 200 mg/dL以上 ③ 随時血糖値 200 mg/dL以上 ④ HbA1c(ヘモグロビンA1c:過去1〜2か月の平均血糖を反映する指標)6.5%以上

1回の検査で糖尿病と診断できる場合

・血糖値(①〜③のいずれか)とHbA1c(④)が同じ採血でともに糖尿病型である場合。 ・血糖値が糖尿病型であり、かつ次のいずれかがある場合:口渇・多飲・多尿・体重減少などの糖尿病の典型的症状、または確実な糖尿病網膜症。

それ以外の場合

別の日に再検査を行い、再び糖尿病型が確認されれば糖尿病と診断する。ただし、初回と再検査の少なくとも一方で血糖値が糖尿病型である必要があり、HbA1cだけを繰り返しても診断はできない。 本問の患者は随時血糖250 mg/dLであり、③を満たすので血糖値は糖尿病型である。したがって、この1回の検査で糖尿病と診断するには、「同時に測定したHbA1cが6.5%以上」か「典型的症状」または「確実な糖尿病網膜症」の存在が加わればよい。選択肢の中からこれらに該当するものを選ぶ。なお、設問に「非妊娠者」とあるのは、妊娠中は妊娠糖尿病・妊娠中の明らかな糖尿病という別の基準が適用されるためである。

選択肢考察

  1. ×a.  尿糖陽性

    誤り。尿糖は診断基準に含まれない。尿糖は血糖値が腎臓のブドウ糖再吸収能の上限(腎の排泄閾値、おおよそ160〜180 mg/dL)を超えると出現するが、その閾値には個人差がある。腎性糖尿(尿細管のブドウ糖再吸収障害)、妊娠、SGLT2阻害薬の服用では血糖が正常でも尿糖が陽性になり、逆に高齢者などでは閾値が上がって高血糖でも陰性のことがある。このため尿糖はスクリーニングの手掛かりにはなるが、診断には用いない。

  2. ×b.  尿蛋白陽性

    誤り。尿蛋白は診断基準に含まれない。糖尿病の細小血管障害である糖尿病性腎症が進行すると、微量アルブミン尿を経て持続性蛋白尿(顕性腎症)が出現するため、尿蛋白は合併症の評価・病期分類に用いられる。しかし尿蛋白は糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症など多くの腎疾患でも陽性となり、糖尿病に特異的ではない。

  3. ○c.  HbA1c 6.7%

    正しい。HbA1c 6.7%は糖尿病型の基準である6.5%以上を満たす。本問では随時血糖250 mg/dL(200 mg/dL以上)で血糖値も糖尿病型であり、血糖値とHbA1cがともに糖尿病型と確認されたことになるため、再検査を待たずに1回の検査で糖尿病と診断できる。血糖値はその時点の状態を、HbA1cは慢性的な高血糖を反映するため、両者がそろえば一過性の高血糖ではなく慢性の高血糖状態であると判断できる。

  4. ×d.  尿ケトン体陽性

    誤り。尿ケトン体は診断基準に含まれない。ケトン体はインスリン作用が著しく不足して脂肪分解が亢進したときに増加し、糖尿病ケトアシドーシスやケトーシスを疑う手掛かり、インスリン依存状態の評価として重要である。しかし飢餓、絶食、嘔吐の持続、極端な糖質制限、激しい運動などでも陽性になるため、糖尿病の診断には使えない。

  5. ○e.  口渇,多飲,多尿の症状

    正しい。血糖値が糖尿病型であり、かつ口渇・多飲・多尿・体重減少といった糖尿病の典型的症状を伴う場合は、1回の検査で糖尿病と診断できる。高血糖で尿糖が大量に排泄されると浸透圧利尿により多尿となり、脱水と血漿浸透圧の上昇から口渇・多飲が生じる。さらに尿中へのブドウ糖喪失と、インスリン作用不足による脂肪・筋蛋白の分解で体重が減少する。これらの症状は持続的な高血糖の存在を示すため、診断の根拠として認められている。

糖尿病の診断の流れ(日本糖尿病学会)

1. 初回検査で糖尿病型(空腹時血糖126 mg/dL以上、OGTT 2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれか)を確認する。 2. 血糖値とHbA1cがともに糖尿病型 → 糖尿病。 3. 血糖値のみ糖尿病型で、典型的症状または確実な糖尿病網膜症がある → 糖尿病。 4. 上記以外 → 原則1か月以内に再検査。再検査で再び糖尿病型(初回・再検査のどちらかで血糖値の基準を満たすこと)→ 糖尿病。HbA1cのみ2回糖尿病型の場合は「糖尿病の疑い」にとどまる。 5. 過去に糖尿病と診断された証拠(糖尿病型の検査値や典型的症状の記録)がある場合は、現時点の値が基準に満たなくても糖尿病として対応する。

血糖値の区分

・正常型:空腹時血糖110 mg/dL未満かつOGTT 2時間値140 mg/dL未満。 ・境界型:正常型にも糖尿病型にも属さないもの。 ・空腹時血糖100〜109 mg/dLは正常高値とされ、OGTTの施行が推奨される。

HbA1cの注意点

HbA1cは赤血球寿命に影響されるため、溶血性貧血、失血・出血後、鉄欠乏性貧血の回復期、腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤の使用、妊娠などでは低めに出やすく、鉄欠乏状態では高めに出やすい。このような場合はグリコアルブミンなど他の指標も参考にする。

POINT

・糖尿病型:空腹時≧126、OGTT 2時間値≧200、随時≧200(mg/dL)、HbA1c≧6.5%。 ・1回で診断できるのは「血糖値+HbA1cがともに糖尿病型」または「血糖値が糖尿病型+典型的症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)か確実な糖尿病網膜症」。 ・HbA1cのみの繰り返しでは診断できない(必ず血糖値の基準を一度は満たす)。 ・尿糖、尿蛋白、尿ケトン体は診断基準に含まれない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。