StudyMed医師国家試験

素手で触れていいのは「内側」だけ―手袋の外し方に潜む汚染の落とし穴

第118回医師国家試験 F問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第7問

個人防護具のうち手袋の脱衣の順番を示す。  誤っているのはどれか。

第118回 F問題 第7問の問題画像
  1. a.手袋をした手で対側の手袋の表面をつかむ。
  2. b.手袋を外側が内になるように外す。
  3. c.手袋をした手で外した手袋を持つ。
  4. d.手袋を脱いだ手で対側の手袋の表面をつかむ。
  5. e.脱いだ素手を対側の手袋の内側に差し込んで外す。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染対策の基本中の基本、手袋の外し方を問う問題だ。一見すると当たり前の手順が並んでいるけれど、カギは「どこが汚染部分で、どこが非汚染部分か」を意識できるかどうか。この視点で一つひとつの動作を見ていこう。
医学生医学生
手袋は着けるときより外すときのほうが大事だと、臨床実習前のOSCE対策で言われた気がします。
ドクタードクター
その通り。個人防護具、つまりPPEは、外すときに着用者自身が汚染を受けやすいんだ。使い終わった手袋の外側は、患者さんの血液や体液、病原体で汚れていると考える。一方、手袋の内側と素手は汚染されていない部分として扱う。原則は「汚染部分どうし、非汚染部分どうしだけを触れさせる」ことだ。
医学生医学生
だとすると、最初の1枚目を外すときに、手袋をした手で反対側の手袋の表面をつかむのは問題ないんですね。
ドクタードクター
そう。両手とも手袋をしているから、汚れた表面どうしが触れるだけで皮膚は汚染されない。手首の縁ではなく、手のひら側の手首付近をつまむと、縁がはねて皮膚に当たるのを防ぎやすいよ。
医学生医学生
そのまま裏返すように外すのは、汚れた面を内側に閉じ込めるためですよね。
ドクタードクター
そういうこと。表面が内側に包み込まれるので、周りや自分の衣服への汚染の広がりを防げる。勢いよく引っ張ると付着物が飛び散ることがあるから、ゆっくり外すのもポイントだ。では、外した1枚目の手袋はどうする?
医学生医学生
まだ手袋をしている側の手で丸めて握っておく、ですね。汚れたもの同士だから大丈夫だと思います。
ドクタードクター
正解。そうしておくと、最後に2枚目を裏返したとき、1枚目をその中に包み込んで一緒に捨てられる。さて、ここからが問題の核心だ。片手が素手になった状態で、残りの手袋をどう外すか。
医学生医学生
素手で手袋の表面をつかんで外す……あ、それだと素手が汚れますね。
ドクタードクター
気づいたね。そこが今回の誤りの選択肢だ。素手は非汚染部分だから、汚染された手袋の表面に触れた瞬間に手指が直接汚染される。そうなると医療従事者自身の感染だけでなく、その手を介して他の患者さんや環境に病原体を広げる接触感染の原因になってしまう。
医学生医学生
だから素手の指は、残った手袋の手首部分の内側に差し込むんですね。内側は皮膚に接していた面なので、汚れていないとみなせる。
ドクタードクター
その通り。指を差し込んだまま裏返すように引き下ろせば、握っていた1枚目も中に包み込まれる。汚染面が一度も外に出ず、素手も汚染面に触れない、きれいな流れになるんだ。
医学生医学生
手袋を外したら、もう手は清潔と考えていいんでしょうか。
ドクタードクター
そこは油断禁物。目に見えない汚染や、手袋の小さな穴であるピンホールから汚染している可能性もある。だから外した後は必ず手指衛生を行う。擦式アルコール製剤での手指消毒か、流水と石けんでの手洗いだね。手袋の着用は手指衛生の代わりにはならない、とよく覚えておこう。
医学生医学生
微生物学や感染症の講義で習った標準予防策ともつながりますね。
ドクタードクター
まさに標準予防策の実践だ。すべての患者さんの血液、汗を除く体液・分泌物・排泄物、傷のある皮膚、粘膜を感染の可能性があるものとして扱い、手指衛生を基本に場面に応じてPPEを選ぶ。脱ぐ順番も押さえておこう。一般的には、最も汚れやすい手袋を最初に外し、次にゴーグルやフェイスシールド、ガウン、そして呼吸を守るマスクは病室の外などで最後に外す。最後にもう一度手指衛生だ。
医学生医学生
施設によってはガウンと手袋を一緒に外すやり方もあると、実習中に感染制御部の先生から聞いたことがあります。
ドクタードクター
そうだね。方法は施設で多少違っても、汚染面は手袋をした手で、内側は素手で触れる、汚染面を内側に丸め込む、顔や髪に触れない、最後に手指衛生をする、という共通原則は変わらない。新興感染症の流行時には、この基本が自分と周りを守る最後の砦になるんだ。

まとめ

使用後の手袋は表面を汚染部分、内側と素手を非汚染部分として扱い、「汚染部分どうし、非汚染部分どうしだけを接触させる」のが脱衣の原則です。1枚目は手袋をした手で表面をつまんで裏返しながら外し、手袋をしている手で握っておきます。2枚目は素手の指を手袋の手首部分の内側に差し込み、1枚目を包み込むように裏返して外すのが正しく、素手で手袋の表面をつかむのは手指を汚染する誤った手順です。手袋を外した後は、ピンホールなどによる汚染に備えて必ず手指衛生を行い、PPE全体では手袋を最初に、マスクを最後に外すのが基本です。こうした手技は標準予防策の土台であり、医療従事者自身と患者を接触感染から守るために、実習の初日から確実に身につけておきたい知識です。

解答・解説

正解はdです

個人防護具(personal protective equipment:PPE)は、着けるときよりも外すときに着用者自身が汚染を受けやすい。使用後の手袋の外側(表面)は患者の血液・体液や病原体で汚染されていると考え、手袋の内側と素手は汚染されていない部分として扱う。脱衣時の原則は「汚染部分どうし、非汚染部分どうしだけを接触させる」ことであり、素手で手袋の表面に触れてはならない。 この原則に沿った手袋の外し方は次のとおりである。 1. 手袋をした手で、反対側の手袋の手首付近の表面をつまむ(汚染面どうしの接触)。 2. その手袋を裏返しながら外し、表面が内側に包み込まれるようにする。 3. 外した手袋は、まだ手袋をしている側の手で握って持つ。 4. 手袋を外した素手の指を、残っている手袋の手首部分の内側(皮膚との間)に差し込む(非汚染面どうしの接触)。 5. 内側から裏返すように外し、先に外した手袋を包み込んだ状態で廃棄する。 6. 最後に手指衛生(擦式アルコール製剤による手指消毒、または流水と石けんによる手洗い)を行う。 選択肢はこの一連の手順を順に並べたものであり、手順4にあたる部分で「表面をつかむ」としている記述が誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  手袋をした手で対側の手袋の表面をつかむ。

    適切な手順である。最初の1枚目を外す段階では両手とも手袋をしているため、汚染された手袋の表面どうしが触れるだけで、皮膚が汚染されることはない。手首側の縁ではなく、手のひら側・手首付近の表面をつまむと、縁がはねて皮膚に触れることを避けやすい。

  2. ×b.  手袋を外側が内になるように外す。

    適切な手順である。裏返しながら外すことで汚染された表面が内側に閉じ込められ、周囲や自分の衣服・皮膚への汚染の拡散を防げる。手袋を勢いよく引っ張ると、付着物が飛散することがあるため、ゆっくり外す。

  3. ×c.  手袋をした手で外した手袋を持つ。

    適切な手順である。外した手袋はまだ手袋を着けている側の手で丸めて握っておく。こうすると、最後に残りの手袋を裏返したときに、1枚目を2枚目の中に包み込んで一緒に廃棄でき、汚染面が外に出ない。

  4. ○d.  手袋を脱いだ手で対側の手袋の表面をつかむ。

    誤った手順である。手袋を外した素手は汚染されていない部分であり、それで汚染された手袋の表面に触れると、手指が直接汚染され、接触感染(医療従事者自身の感染や、その手を介した他の患者・環境への伝播)の原因となる。正しくは、素手の指を残った手袋の手首部分の内側に差し込み、内側だけに触れて外す。

  5. ×e.  脱いだ素手を対側の手袋の内側に差し込んで外す。

    適切な手順である。手袋の内側は皮膚に接していた部分で汚染されていないとみなせるため、素手で触れてよい。指を差し込んだまま裏返すように引き下ろすと、先に外して握っていた手袋も中に包み込まれる。外した後は、目に見えない汚染やピンホールからの汚染に備え、必ず手指衛生を行う。

標準予防策と個人防護具

標準予防策(スタンダードプリコーション)は、すべての患者の血液、汗を除く体液・分泌物・排泄物、傷のある皮膚、粘膜を感染の可能性があるものとして扱う考え方である。手指衛生を基本とし、曝露が予想される場面に応じて手袋、ガウン(エプロン)、マスク、ゴーグル・フェイスシールドなどのPPEを選択して用いる。

PPEの着脱の順序(一例)

・着用:手指衛生 → ガウン → マスク(N95マスクの場合はユーザーシールチェックを行う)→ ゴーグル・フェイスシールド → 手袋(ガウンの袖口を覆うように着ける) ・脱衣:手袋 → (手指衛生)→ ゴーグル・フェイスシールド → ガウン → マスク → 手指衛生 最も汚染されやすい手袋を最初に外し、顔に近く着用者の呼吸を守るマスクは病室外などで最後に外すのが基本的な考え方である。施設によってはガウンと手袋を一体として外す方法もある。PPEを外すたびに手指衛生を行うと、汚染の持ち込みをさらに減らせる。

脱衣時の共通原則

・汚染されている外側(表面)には手袋をした手で、汚染されていない内側には素手で触れる。 ・汚染面を内側に丸め込んで廃棄する。 ・顔や髪、衣服に手を触れない。 ・最後に必ず手指衛生を行う(手袋の着用は手指衛生の代わりにならない)。

POINT

・使用後の手袋は表面が汚染部分、内側と素手は非汚染部分として扱う。 ・1枚目は手袋をした手で表面をつまみ、裏返して外し、手袋をした手で握る。 ・2枚目は素手の指を手袋の内側に差し込み、1枚目を包み込むように裏返して外す。 ・素手で手袋の表面に触れてはならない。 ・手袋を外した後は必ず手指衛生を行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。