StudyMed医師国家試験

体重の「2割」が細胞外液―60・40・20の法則で解く体液量計算

第117回医師国家試験 F問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第75問

30歳の健常男性で,身長175cm,体重70kg。BMI 22.8,腹囲81cm,体脂肪率18%である場合の推定細胞外液量を求めよ。  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答:①② L

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、体液の分画をもとに細胞外液量を推定する計算問題だ。ポイントは、成人の体液が体重のどれくらいを占め、それが細胞の内と外にどう分かれているかを正しく覚えているかどうか。それと、問題文に並んでいる数字のうち、どれが計算に必要でどれが判断材料なのかを見分けることだね。
医学生医学生
BMIや腹囲、体脂肪率まで書いてあるので、何か複雑な補正式を使うのかと身構えてしまいました。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だよ。でも、この3つは「この人は標準的な体格の成人男性です」と確認するための情報なんだ。BMI 22.8は普通体重、腹囲もメタボリックシンドロームの男性基準85cm未満、体脂肪率も標準的。つまり、教科書通りの体液比率をそのまま当てはめてよい、という合図だと読めばいい。
医学生医学生
生理学の講義で習った「60・40・20」の数字ですね。総体液量が体重の60%、細胞内液が40%、細胞外液が20%でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。さらに細胞外液は、細胞と細胞のすきまを満たす組織間液が体重の約15%、血管の中の血漿が約5%に分かれる。では、この男性の細胞外液量を計算してみよう。
医学生医学生
体重70kgの20%なので、70×0.2で14kgです。でも答えはLで求められているので、変換が必要ですか。
ドクタードクター
体液の比重はほぼ1だから、14kgはそのまま約14Lと考えていい。小数点以下も出ないので、答えは14Lだ。
医学生医学生
思ったよりシンプルでした。ついでに総体液量を出すと70×0.6で42L、細胞内液は28Lですね。
ドクタードクター
よくできた。組織間液は70×0.15で10.5L、血漿は70×0.05で3.5Lになる。ちなみに循環血液量は血球も含めて体重の約1/13、だいたい7〜8%だから、血漿量と混同しないようにね。
医学生医学生
CBTの勉強で、血漿量と循環血液量を取り違えて間違えたことがあります。血球の分が上乗せされるんですね。
ドクタードクター
よくあるミスだよ。次に、今回の比率がいつも当てはまるわけではない、という点も押さえておこう。脂肪組織は水分が少ないから、体脂肪の多い人や女性では総体液量の割合が下がり、成人女性ではおおむね体重の50〜55%程度とされる。高齢者も筋肉量が減るので約50%程度まで下がる。
医学生医学生
だから問題文で体脂肪率や年齢をわざわざ示して、標準体型の若い男性だと強調していたんですね。逆に赤ちゃんは水分が多いと聞きました。
ドクタードクター
そう。新生児では総体液量が体重の約75〜80%、特に細胞外液の割合が大きい。小児科実習で、乳幼児が下痢や嘔吐であっという間に脱水になるのを見たことがあるかもしれないけれど、その背景にはこの体液構成がある。
医学生医学生
臨床で、この体液分画の知識はどこで役に立ちますか。
ドクタードクター
いちばん身近なのは輸液だね。生理食塩液や乳酸リンゲル液のような等張電解質液は、ほぼ細胞外液にとどまり、組織間液と血漿に約3:1で分布する。だから1,000mL入れても血管内に残るのは約250mL程度なんだ。
医学生医学生
5%ブドウ糖液はどうなりますか。等張なら同じように細胞外液に残りそうですが。
ドクタードクター
そこが落とし穴。ブドウ糖は細胞に取り込まれて代謝されるから、最終的には電解質を含まない自由水を入れたのと同じになる。自由水は総体液全体に広がるので、細胞内液:組織間液:血漿がおよそ8:3:1。1,000mL入れても血管内に残るのは約80mLにすぎない。循環血液量を増やしたい場面には向かないわけだ。
医学生医学生
体液の分け方の割合が、そのまま輸液の効き方の計算に使えるんですね。60・40・20の数字が急に実用的に見えてきました。
ドクタードクター
まさにそこが大事。水が細胞膜を挟んで動くのは浸透圧差、血管壁を挟んで動くのはStarlingの法則による静水圧と膠質浸透圧のバランス。この仕組みと体液の割合をセットで理解しておけば、脱水や浮腫、輸液の選択まで一貫して考えられるようになるよ。

まとめ

標準的な体格の成人では、総体液量は体重の約60%、細胞内液は約40%、細胞外液は約20%(組織間液約15%、血漿約5%)と推定でき、体重70kgの男性の細胞外液量は70×0.2=14Lとなります。問題文のBMI・腹囲・体脂肪率は、肥満や加齢による補正が不要な標準体格であることを示す情報で、計算には体重だけを用います。女性・肥満者・高齢者では体液比率が低く、新生児では高く特に細胞外液が多いため、脱水のなりやすさにも差が生じます。等張電解質液は細胞外液に、5%ブドウ糖液は全体液に分布するため、血管内に残る量が大きく異なります。体液分画の基本数値は、脱水・浮腫の理解や輸液の選択を支える土台となる知識です。

解答・解説

正解は14 Lです

考え方

成人の体液量は、体重のおよそ60%を占める(体液全体を総体液量という)。このうち細胞の中にある細胞内液が体重の約40%、細胞の外にある細胞外液が体重の約20%である。細胞外液はさらに、組織間液(間質液:細胞と細胞のすきまを満たす液)が体重の約15%、血漿(血管内の血液の液体成分)が体重の約5%に分かれる。 本問の対象は30歳の健常な成人男性で、BMI 22.8(普通体重)、腹囲81cm(男性のメタボリックシンドローム基準85cm未満)、体脂肪率18%といずれも標準的であり、肥満や加齢による体液比率の偏りを考慮する必要はない。BMI・腹囲・体脂肪率はこのことを確認するための情報であり、計算そのものには体重だけを用いればよい。

計算

推定細胞外液量=体重×0.20 =70kg×0.20 =14kg 体液の比重はほぼ1であるため、14kg≒14L となる。 小数点以下は生じないので、答えは 14L である。

補足

同じ考え方で、この男性の総体液量は70×0.6=42L、細胞内液量は70×0.4=28L、組織間液量は70×0.15=10.5L、血漿量は70×0.05=3.5L と推定できる。

体液分画(成人男性の目安)

・総体液量:体重の約60% ・細胞内液:体重の約40%(総体液量の約2/3) ・細胞外液:体重の約20%(総体液量の約1/3)  ・組織間液:体重の約15%  ・血漿:体重の約5% ※循環血液量(血漿+血球)は体重の約1/13(約7〜8%)である。

年齢・性別・体格による違い

・脂肪組織は水分が少ないため、体脂肪の多い人や女性では総体液量の割合が低く、成人女性では体重の約50〜55%とされる。 ・高齢者では筋肉量の減少により総体液量の割合が約50%程度に下がり、脱水を起こしやすい。 ・新生児では総体液量が体重の約75〜80%、乳児で約70%と多く、特に細胞外液の割合が大きい(新生児では体重の約40%程度に及ぶ)。そのため乳幼児は水分喪失により容易に脱水に陥る。

体液の移動を決める力

・細胞内液と細胞外液の間:細胞膜は水を自由に通すが、NaやKなどのイオンの移動はポンプなどで制御されている。そのため水は浸透圧(主にNaなどによる晶質浸透圧)の差に従って移動する。細胞外液の主な陽イオンはNa、細胞内液の主な陽イオンはKである。 ・血管内(血漿)と組織間液の間:毛細血管壁は水と電解質を通すが、アルブミンなどの蛋白はほとんど通さない。このため血漿の蛋白による膠質浸透圧と、血管内の静水圧のバランス(Starlingの法則)で水の出入りが決まる。

輸液製剤の体内分布

・生理食塩液、乳酸リンゲル液などの等張電解質液:細胞外液とほぼ同じ浸透圧のため、投与した量はほぼすべて細胞外液にとどまり、組織間液と血漿に約3:1で分布する。例えば1,000mL投与すると、血管内に残るのは約250mLである。 ・5%ブドウ糖液:投与時には等張であるため溶血を起こさないが、ブドウ糖は細胞に取り込まれて代謝されるため、最終的には自由水(電解質を含まない水)を与えたのと同じになる。自由水は総体液全体に均等に広がるため、細胞内液:細胞外液=2:1、つまり細胞内液:組織間液:血漿≒8:3:1に分布し、1,000mL投与しても血管内に残るのは約80mLにすぎない。 ・蒸留水をそのまま静注すると、赤血球内に水が入り込んで溶血を起こすため禁忌である。

POINT

・成人の体液量は体重の約60%、細胞内液40%、細胞外液20%(組織間液15%、血漿5%)。 ・細胞外液量=体重×0.2 → 70kg×0.2=14L。 ・女性・肥満者・高齢者は体液比率が低く、乳幼児は高い(特に細胞外液が多い)。 ・等張電解質液は細胞外液に、5%ブドウ糖液は全体液に分布する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。