0歳の8割を占める死因は?―帯グラフで読む「不慮の事故」の年齢地図
第117回医師国家試験 D問題 第5問
国試問題にチャレンジ
令和元年の年齢階級別にみた不慮の事故による死因別割合(%)を示す。 Aはどれか。

- a.窒息
- b.交通事故
- c.溺死および溺水
- d.煙,火および火災
- e.転倒・転落・墜落
対話形式の解説
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ドクターまとめ
不慮の事故による死因の内訳は年齢によって大きく異なり、0歳では窒息が約8割と突出しています。乳児は自力で気道を確保する力が未熟で、寝具による鼻口部の閉塞やミルク・小物の誤嚥で窒息しやすく、高齢者でも嚥下機能の低下から食物による窒息が増えるため、窒息は両端で多いU字型の分布を示します。交通事故は15〜29歳で過半数を占め、溺死および溺水は5〜9歳と65〜79歳、転倒・転落・墜落は80歳以上で最多となります。年齢ごとの典型的な死因を押さえれば、凡例のないグラフでも区画を推定できます。こうした統計の理解は、乳児の安全な睡眠環境や高齢者の嚥下・入浴・転倒対策など、年齢に応じた事故予防の指導に直結します。
解答・解説
正解はaです
本問は、人口動態統計(令和元年=2019年)における不慮の事故死の内訳が、年齢階級によってどう変わるかを示した帯グラフから、Aにあたる死因を特定する問題である。
グラフの読み取り
Aの帯の幅(割合)を年齢ごとに追うと、次のような特徴がある。 ・0歳では帯のおよそ8割をAが占め、圧倒的に多い。 ・1~4歳でも約3割と大きい。 ・5~14歳、15~44歳では比較的小さくなる。 ・45歳以降で再び増え、65歳以上では約2割前後を占める主要な死因の一つとなる。 つまりAは「乳児で突出して多く、高齢者でも多い」というU字型の分布を示す。
考え方
不慮の事故の主な死因の年齢分布は次のように整理できる。 ・乳児(0歳):寝具による鼻口部の閉塞、吐いたミルク(胃内容物)や食物・小物の誤嚥などによる窒息が大半を占める。 ・幼児~若年成人:交通事故が大きな割合を占め、とくに15~29歳では過半数に達する。小児では溺水も多い。 ・高齢者:嚥下機能の低下による食物の誤嚥(窒息)、浴槽での溺死、転倒・転落・墜落が増える。80歳以上では転倒・転落・墜落が最多となる。 0歳で8割近くを占めるという特徴に当てはまるのは窒息のみであり、高齢者で再び割合が増える点も矛盾しない。したがってAは窒息である。 参考までに、グラフの最も左の区画は15~29歳で過半数を占めることから交通事故、横線の区画は80歳以上で約3割と最大であることから転倒・転落・墜落、点描の区画は5~9歳や65~79歳で最大となることから溺死および溺水と読み取れる。
選択肢考察
- ○a. 窒息
正しい。窒息は0歳の不慮の事故死の大部分(約8割)を占める。乳児は自力で寝返りや顔の向きを変えて気道を確保する能力が未熟であり、柔らかい寝具やうつ伏せ寝による鼻口部の閉塞、ミルクの吐き戻しの誤嚥、小さな物や食物の誤嚥などで窒息しやすい。一方、高齢者では嚥下機能の低下により餅や肉などの食物を誤嚥して窒息する例が多く、65歳以上で再び割合が上昇する。グラフのAの分布(0歳で突出、1~4歳でも多く、高齢者でも約2割)と一致する。
- ×b. 交通事故
誤り。交通事故は0歳ではわずかだが、1歳以降で主要な死因となり、1~4歳や15~64歳では最大の割合を占める(10~14歳では転倒・転落・墜落や溺死および溺水とほぼ同程度)。とくに15~29歳では不慮の事故死の半数以上を占める。グラフでは最も左の区画がこれにあたり、0歳で約8割を占めるAとは分布が全く異なる。
- ×c. 溺死および溺水
誤り。溺死および溺水は、水遊びや入浴中の事故が起こりやすい小児期(とくに5~9歳で最多)と、浴槽内での溺水が多い高齢者(65~79歳で最多)で比較的多い。0歳で不慮の事故死の大半を占めることはなく、Aとは一致しない。
- ×d. 煙,火および火災
誤り。煙、火および火災による死亡は、どの年齢階級でも不慮の事故死に占める割合は小さく、数%程度にとどまる。帯の大きな部分を占めるAには当たらない。
- ×e. 転倒・転落・墜落
誤り。転倒・転落・墜落は年齢とともに割合が増え、80歳以上では不慮の事故死の約3割を占めて最多となる。骨粗鬆症や筋力・バランス機能の低下により、平地での転倒でも大腿骨近位部骨折や頭部外傷を起こし死亡につながりやすいためである。0歳での割合は小さく、Aの分布とは合わない。
不慮の事故死の全体像
不慮の事故は、わが国の死因順位で上位に入る死因であり、とくに小児(1歳以上)や若年者では死因の上位を占める。年間の不慮の事故死はおよそ4万人で、その大部分は65歳以上の高齢者である。 全年齢で合計すると、近年は窒息、転倒・転落・墜落、溺死および溺水が上位を占め、交通事故は減少傾向にある。交通事故死は道路交通環境の整備、シートベルトやチャイルドシートの着用義務化、飲酒運転の厳罰化などにより長期的に大きく減少してきた。
年齢階級別の主な死因(令和元年のグラフに基づく)
・0歳:窒息が約8割と突出 ・1~4歳:交通事故が最多で、窒息も多い ・5~9歳:溺死および溺水が最多 ・10~14歳:交通事故・転倒転落・溺水がほぼ同程度 ・15~29歳:交通事故が半数以上 ・30~64歳:交通事故が最多だが割合は年齢とともに低下 ・65~79歳:溺死および溺水が最多(浴槽内の溺水が多い) ・80歳以上:転倒・転落・墜落が最多で、窒息がこれに次ぐ
予防の観点
・乳児の窒息予防:あおむけ寝、固めの寝具、ベッド周囲に柔らかい物やひもを置かない、誤飲しうる小物(直径約4cm未満)を手の届く所に置かない。 ・高齢者の窒息予防:食形態の工夫、一口量を少なくする、嚥下機能の評価と訓練。 ・入浴中の溺水予防:脱衣所・浴室の温度差を減らす(ヒートショック対策)、湯温を低めにする、飲酒後や食後すぐの入浴を避ける。 ・転倒予防:運動による筋力・バランスの維持、住環境の整備、転倒リスクのある薬剤の見直し、骨粗鬆症の治療。
POINT
・0歳の不慮の事故死は窒息が圧倒的に多い(約8割)。 ・1歳以降~中年期は交通事故が主要な死因で、15~29歳では過半数を占める。 ・溺死および溺水は小児(5~9歳)と高齢者(65~79歳)で多い。 ・80歳以上では転倒・転落・墜落が最多、窒息がこれに次ぐ。 ・窒息は乳児と高齢者の両端で多いU字型の分布を示す。
