日齢3の「普通」と「異常」の境界線―体重減少17%と生後12時間の黄疸を見逃すな
第117回医師国家試験 C問題 第39問
国試問題にチャレンジ
日齢3の女児。在胎39週,2,900g,Apgarスコア8点(5分)で出生した。①体重2,400g。体温37.4℃。心拍数120/分,整。②血圧70/40mmHg。呼吸数44/分。③大泉門は2×2cm。④生後8時間後に暗緑色の排便を認め,⑤生後12時間後から黄疸が目立つようになった。 下線部のうち異常所見はどれか。2つ選べ。
- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
新生児の所見は「正常値」と「出現時期」を組み合わせて判断することが重要です。生理的体重減少は生後3〜5日に出生体重の5〜10%程度で、生後1〜2週間で戻るため、本例の約17%の減少は哺乳不足や脱水を疑う異常所見です。黄疸は生理的には生後2〜3日に出現しますが、生後24時間以内に肉眼で分かる早発黄疸は病的で、血液型不適合による溶血をはじめとする原因検索と、光線療法・交換輸血の検討が必要です。一方、正期産新生児では心拍数120〜160/分、呼吸数40〜60/分、血圧60〜80/40mmHg前後、大泉門2〜3cm、生後24時間以内の胎便排泄が正常であり、大人の基準で判断しないことが大切です。こうした基準を押さえることは、ビリルビン脳症のような重い合併症を防ぐ新生児診療の基本になります。
解答・解説
正解はa, eです
背景の確認
在胎39週(正期産:37週0日〜41週6日)、出生体重2,900g(2,500g以上4,000g未満の正常範囲)、5分後のApgarスコア8点(7点以上は正常)で生まれた日齢3の女児である。出生時に大きな問題のない正期産児について、早期新生児期(生後1週間以内)の所見が正常か異常かを一つずつ判断する問題である。
各所見の判断の要点
①体重2,400g:出生体重からの減少率を計算すると、(2,900−2,400)÷2,900×100≒17.2%となる。生理的体重減少の上限とされる約10%を大きく超えており、異常である。体温37.4℃(新生児の正常範囲はおよそ36.5〜37.5℃)、心拍数120/分(正常範囲はおよそ120〜160/分)は正常範囲内である。 ②血圧70/40mmHg:正期産新生児の血圧として正常範囲である。呼吸数44/分も正常範囲(40〜60/分)である。 ③大泉門2×2cm:出生時の大泉門は2〜3cm程度の菱形であり、正常である。 ④生後8時間後の暗緑色便:胎便であり、生後24時間以内に出ているので正常である。 ⑤生後12時間後から目立つ黄疸:生後24時間以内に肉眼で分かる黄疸は早発黄疸であり、病的である。 したがって異常所見は①と⑤である。早発黄疸の原因として多いのは溶血(血液型不適合など)であり、早急な原因検索と光線療法・交換輸血を含めた治療の検討が必要になる。また、黄疸のある児は哺乳力が落ちやすく、哺乳不足は腸からのビリルビン再吸収(腸肝循環)を増やして黄疸をさらに悪化させる。過度な体重減少と黄疸はこのように悪循環を作りうるため、両方に同時に対応する必要がある。
選択肢考察
- ○a. ①
体重減少率は(2,900−2,400)÷2,900≒17.2%である。生理的体重減少は、哺乳量がまだ少ないこと、胎便や尿の排泄、皮膚や呼吸からの水分の喪失(不感蒸泄)によって起こり、生後3〜5日ごろに最大となるが、通常は出生体重の5〜10%程度にとどまり、生後1〜2週間で出生体重に戻る。10%を超える減少は異常であり、本例は哺乳不足、脱水(高ナトリウム血症を伴うこともある)などを考えて評価する必要がある。なお、同じ下線部内の体温37.4℃、心拍数120/分は正常範囲である。
- ×b. ②
正期産新生児の血圧は、収縮期60〜80mmHg前後、拡張期40mmHg前後が目安であり、70/40mmHgは正常範囲である。新生児の平均血圧は在胎週数(週)の値以上あることが一つの目安とされ、本例の平均血圧(約50mmHg)は39週の児として問題ない。呼吸数44/分も正常範囲(40〜60/分)である。
- ×c. ③
大泉門は前頭骨と左右の頭頂骨の間にある菱形の膜状部分で、出生時は一辺2〜3cm程度である。2×2cmは正常範囲である。大泉門は生後しばらく大きくなることもあるが、1歳〜1歳6か月ごろまでに閉じる。異常に大きい場合は水頭症、甲状腺機能低下症、骨形成不全などを、早く閉じる・小さい場合は小頭症や頭蓋骨早期癒合症などを考える。膨隆は頭蓋内圧の上昇、陥凹は脱水のサインになる。
- ×d. ④
胎便は、胎内で飲み込んだ羊水、腸の上皮細胞、胆汁などからなる暗緑色で粘りのある無臭の便である。正期産児の大部分は生後24時間以内に初回の胎便を出し、生後2〜3日で黄色の移行便、その後は乳便に変わる。生後8時間後の暗緑色便は正常である。生後24〜48時間を過ぎても胎便が出ない場合は胎便排泄遅延とされ、Hirschsprung病、胎便栓症候群、嚢胞性線維症に伴う胎便イレウス、甲状腺機能低下症などを考える。
- ○e. ⑤
生理的黄疸は生後2〜3日ごろから目立ち始め、4〜5日ごろにピークとなり、1〜2週間で消える。生後24時間以内に肉眼で分かる黄疸(血清ビリルビンがおよそ5mg/dL以上)は早発黄疸と呼ばれ、病的黄疸として扱う。原因として最も重要なのは血液型不適合(Rh式・ABO式)による溶血性疾患であり、遺伝性球状赤血球症などの赤血球の異常、感染症(敗血症)なども考える。急速にビリルビンが上昇してビリルビン脳症(核黄疸)を起こすおそれがあるため、血清ビリルビン、血液型、直接Coombs試験、血算(網赤血球を含む)などを調べ、光線療法や交換輸血を検討する。日齢3で黄疸があること自体は正常でも、生後12時間で黄疸が目立った点が異常である。
正期産新生児のバイタルサインの目安
・体温:36.5〜37.5℃ ・心拍数:120〜160/分 ・呼吸数:40〜60/分(60/分を超えると多呼吸) ・血圧:収縮期60〜80mmHg前後、拡張期40mmHg前後
生理的体重減少
・生後3〜5日ごろに出生体重の5〜10%減少し、生後1〜2週間で出生体重に戻る。 ・10%を超える減少、または2週間たっても出生体重に戻らない場合は、哺乳不足、脱水、感染症などを考える。 ・母乳栄養では哺乳回数を増やすなどの哺乳支援を行い、必要に応じて人工乳の補足や輸液を行う。
新生児黄疸の分類
・生理的黄疸:生後2〜3日で出現し、4〜5日でピークとなり、1〜2週間で消失する。新生児は赤血球の量が多く寿命が短いこと、肝臓のグルクロン酸抱合(UDP-グルクロン酸転移酵素)がまだ未熟なこと、腸肝循環が盛んなことによる。 ・病的黄疸:①早発黄疸(生後24時間以内に出現)、②血清ビリルビン値が高すぎるもの(高ビリルビン血症)、③ビリルビン値の上昇が急速なもの(1日5mg/dL以上など)、④遷延性黄疸(正期産児で2週間以上続く)、⑤直接ビリルビンが高いもの(胆道閉鎖症、新生児肝炎などを考える)。 ・早発黄疸の主な原因:Rh式・ABO式血液型不適合による溶血、遺伝性球状赤血球症、G6PD欠乏症、感染症(敗血症、先天感染)、頭血腫などの閉鎖腔内出血、多血症。 ・治療:光線療法(ビリルビンを水に溶けやすい異性体に変えて排泄させる)。重症では交換輸血を行う。治療を始める基準は、在胎週数・出生体重・日齢・ビリルビン値をもとに判断する。 ・合併症:ビリルビン脳症(核黄疸)。間接ビリルビンが血液脳関門を通過して大脳基底核などに沈着し、急性期には筋緊張低下・哺乳不良・後弓反張などを示し、後遺症としてアテトーゼ型脳性麻痺や感音難聴を残す。
胎便
・正期産児では生後24時間以内に初回排便があり、2〜3日で移行便を経て乳便になる。 ・初回排便が生後24〜48時間以降に遅れる場合は、Hirschsprung病、胎便栓症候群、胎便イレウス、甲状腺機能低下症などを考える。
大泉門
・出生時は2〜3cm程度の菱形で、1歳〜1歳6か月ごろに閉じる。小泉門は生後1〜2か月ごろまでに閉じる。
POINT
・生理的体重減少は出生体重の5〜10%で、生後1〜2週間で戻る。10%を超える減少は異常である(本例は約17%)。 ・生後24時間以内に肉眼で分かる黄疸は早発黄疸であり、病的である。血液型不適合による溶血をまず考える。 ・胎便は生後24時間以内に出るのが正常である。 ・大泉門は出生時2〜3cm程度で、1歳〜1歳6か月で閉じる。 ・正期産新生児の正常値:心拍数120〜160/分、呼吸数40〜60/分、血圧60〜80/40mmHg前後。
