StudyMed医師国家試験

「4日以内」「一般名でOK」「薬局は患者が選ぶ」―処方箋のルールを医薬分業から読み解く

第117回医師国家試験 B問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第117回 B問題 第12問

処方箋について正しいのはどれか。

  1. a.有効期間は1日である。
  2. b.薬剤師に発行権限がある。
  3. c.一般名による薬剤名の記載は有効である。
  4. d.医療機関が特定の保険薬局を指定できる。
  5. e.処方医は自筆で署名をしなくてはならない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は処方箋の基本ルールを問う問題だ。法律の条文を丸暗記するより、「誰が出すのか」「いつまで使えるのか」「どう書くのか」「どこで薬をもらうのか」という4つの視点で整理すると、迷わず解けるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で医師法と薬剤師法を習いましたが、処方箋の細かい決まりまでは自信がありません。
ドクタードクター
大丈夫、ひとつずつ確認しよう。まず「誰が出すのか」。処方箋を交付できるのは誰だと思う?
医学生医学生
医師と歯科医師ですよね。でも薬剤師さんも薬の専門家なので、何か発行できる場面があるのかと一瞬迷いました。
ドクタードクター
そこはきっぱり「ない」と覚えていい。医師法では、治療上薬剤の投与が必要と認めたとき、医師は原則として処方箋を交付しなければならないとされている。薬剤師の役割は、受け取った処方箋の内容が適切かをチェックしてから調剤することだ。おかしな点があれば処方医に問い合わせて、解消するまで調剤してはならない。これを疑義照会というんだ。
医学生医学生
臨床実習で内科を回ったとき、薬局から「この用量で大丈夫ですか」と電話がかかってきて、指導医の先生がすぐ処方を直していました。あれが疑義照会なんですね。
ドクタードクター
その通り。医師が処方し、独立した薬剤師がそれを確認する――この二重チェックこそが医薬分業の意義なんだ。次に「いつまで使えるのか」。処方箋の使用期間は?
医学生医学生
もらったらその日のうちに薬局に行くもの、というイメージなので1日でしょうか。
ドクタードクター
そこが引っかけ。保険診療の処方箋の使用期間は、交付日を含めて4日以内と定められている。さらに、長期の旅行など特別な事情があると医師が認めれば、使用期間欄に日付を書いて延長することもできる。1日という決まりはないんだ。
医学生医学生
週末をはさんでも薬局に行けるように、少し余裕があるということですね。
ドクタードクター
そういうこと。では本題の「どう書くのか」。薬剤名は商品名でないといけないと思う?
医学生医学生
カルテの処方オーダーでは商品名をよく見ますが、OSCEの練習で先輩が一般名で処方していた気がします。一般名でも有効なんでしょうか。
ドクタードクター
有効だよ。これが正解だ。薬剤名は商品名でも一般名、つまり有効成分の名前でも構わない。一般名で書かれていれば、薬局では同じ成分の先発医薬品と後発医薬品の中から、患者さんと相談して選んで調剤できる。医療費を抑えるための後発医薬品の使用促進策として、一般名処方は診療報酬でも加算がつくほど推奨されているんだ。
医学生医学生
商品名で書いてあった場合は、そのメーカーの薬しか出せないんですか。
ドクタードクター
処方医が「変更不可」としていなければ、薬局で後発医薬品に変更して調剤できる。逆に言えば、医学的な理由で銘柄を変えたくないときは、医師がその意思を明示する必要がある。署名についても確認しておこう。処方医は必ず自筆で署名しなければならないかな?
医学生医学生
本人が出したことを証明するために、手書きのサインが必要だと思っていました。
ドクタードクター
実は医師法施行規則では「記名押印または署名」とされている。印字やゴム印で名前を記して押印する方法でもいいから、自筆署名に限られるわけではない。電子処方箋では電子署名などの仕組みが使われるよ。
医学生医学生
最後の「どこで薬をもらうのか」ですが、病院の前の薬局を指定してもいいのでは?患者さんにとっても便利そうです。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、それは禁止されている。療担規則では、保険医が患者に特定の保険薬局で調剤を受けるよう指示することを禁じていて、医療機関が薬局へ患者を誘導する見返りに利益を受けることも許されない。薬局を選ぶのはあくまで患者さんだ。医療機関と薬局が経済的に結びつくと、薬剤師による独立したチェックが働かなくなってしまうからね。
医学生医学生
なるほど、誘導禁止も疑義照会も、全部「医薬分業を守るため」という一本の筋で説明できるんですね。
ドクタードクター
いいまとめだね。最後に最近の制度も押さえておこう。2022年度からは、症状が安定した患者さんに対し、医師の診察なしで最大3回まで同じ処方箋を繰り返し使えるリフィル処方箋が導入された。2023年からは電子処方箋の運用も始まっている。研修医になればすぐに処方を書く立場になるから、こうしたルールは実務の基本として身につけておこう。
医学生医学生
処方箋1枚に、医師と薬剤師の役割分担や医療費の問題まで詰まっているんですね。

まとめ

処方箋を交付できるのは医師・歯科医師であり、薬剤師は内容を確認し、疑問があれば処方医に疑義照会してから調剤します。保険診療での使用期間は交付日を含めて4日以内で、特別な事情があれば延長できます。薬剤名は商品名でも一般名でも有効であり、一般名処方は後発医薬品の使用促進策として推奨されています。処方医は記名押印または署名をすればよく、自筆署名に限られません。また保険医が特定の保険薬局を指定・誘導することは禁止され、薬局は患者が自由に選びます。これらのルールは医薬分業の趣旨から一貫して理解でき、リフィル処方箋や電子処方箋といった新しい制度とあわせて、臨床現場で処方を書く際の基本となります。

解答・解説

正解はcです

処方箋に関するルールは、主に医師法(処方箋の交付義務)、医師法施行規則(処方箋の記載事項)、保険医療機関及び保険医療養担当規則(いわゆる療担規則:保険診療における処方箋の使用期間や保険薬局への誘導禁止など)、薬剤師法(調剤・疑義照会)に定められている。 本問はこれらの規定のうち、誰が発行できるか(医師・歯科医師)、どの程度の期間使えるか(交付日を含め4日以内)、どう記載するか(薬剤名は商品名でも一般名でもよい、記名押印または署名)、患者の薬局選択の自由(特定薬局への誘導禁止)を問うている。 薬剤名の記載方法として、近年は後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進策の一環として一般名処方が推進されており、一般名で記載された処方箋は当然有効である。この点に気づけば正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  有効期間は1日である。

    誤り。保険診療における処方箋の使用期間は、交付の日を含めて4日以内と定められている(療担規則)。ただし、長期の旅行など特別な事情があると処方医が認めた場合には、処方箋の「使用期間」欄に日付を記載することで、それより長い期間を設定できる。1日という規定はない。

  2. ×b.  薬剤師に発行権限がある。

    誤り。処方箋を交付できるのは医師と歯科医師(獣医師は動物用)であり、医師法第22条では、患者に治療上薬剤を投与する必要があると認めた場合、医師は原則として処方箋を交付しなければならないとされている。薬剤師の役割は、受け取った処方箋の内容が適正かを確認(処方鑑査)したうえで調剤することであり、疑問がある場合には処方医に問い合わせて解消しなければ調剤できない(疑義照会、薬剤師法第24条)。薬剤師が自ら処方箋を発行する権限はない。

  3. ○c.  一般名による薬剤名の記載は有効である。

    正しい。処方箋の薬剤名は、商品名(銘柄名)で書いても一般名(有効成分の名称)で書いてもよい。一般名で処方された場合、薬局では同じ有効成分をもつ先発医薬品・後発医薬品のなかから、患者と相談のうえで選んで調剤できる。医療費の抑制を目的とした後発医薬品の使用促進策として、診療報酬上も一般名処方を評価する加算(一般名処方加算)が設けられている。また、商品名で記載されていても、処方医が「変更不可」としていなければ、薬局で後発医薬品に変更して調剤することが可能である。

  4. ×d.  医療機関が特定の保険薬局を指定できる。

    誤り。療担規則では、保険医が処方箋の交付に際して、患者に特定の保険薬局で調剤を受けるよう指示することを禁じており、保険医療機関も特定の保険薬局へ患者を誘導する見返りとして金品などの利益を受け取ってはならないとされている。どの薬局で調剤を受けるかは患者が自由に選べる。これは医療機関と薬局が経済的に結びつくことを防ぎ、医薬分業(処方は医師、調剤は独立した薬剤師が担い、相互に確認する仕組み)の趣旨を保つためである。

  5. ×e.  処方医は自筆で署名をしなくてはならない。

    誤り。医師法施行規則では、処方箋には患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月日、使用期間、医療機関の名称・所在地などを記載し、医師が「記名押印または署名」することとされている。したがって、自筆の署名に限らず、印字やゴム印などで氏名を記したうえで押印する方法でもよい。なお、電子処方箋の場合は押印・署名の代わりに電子署名などの仕組みが用いられる。

処方箋に関する主な規定

・交付義務(医師法第22条):治療上薬剤の投与が必要と認めた場合、医師は患者または看護者に処方箋を交付しなければならない。ただし、患者が処方箋不要と申し出た場合や、暗示的効果を期待する場合(プラセボ的使用など)、病状の不安を与え治療を困難にするおそれがある場合、診断・治療方法が決定していない場合、応急措置として薬剤を投与する場合、安静を要し薬剤師が容易に求められない場合、覚醒剤を投与する場合、薬剤師が乗り組んでいない船舶内の場合などは例外とされる。 ・記載事項(医師法施行規則第21条):患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法、用量、発行年月日、使用期間、病院・診療所の名称と所在地(または医師の住所)を記載し、記名押印または署名する。 ・使用期間:交付日を含め4日以内(特別の事情があれば延長可)。 ・薬局の選択:患者が自由に選ぶ。保険医が特定の保険薬局への誘導・指示をすることは禁止。

薬剤師側の規定

・処方鑑査:処方箋の内容(用量、相互作用、重複投与など)が適正かを確認すること。 ・疑義照会(薬剤師法第24条):処方箋に疑わしい点があるときは、処方医に問い合わせ、疑義を解消してからでなければ調剤してはならない。照会の内容と結果は記録する。 ・調剤鑑査:調製した薬剤の種類・分量などが処方箋どおりかを確認すること。

関連する制度

・一般名処方と後発医薬品への変更調剤:後発医薬品の使用促進のため、一般名処方が推進されている。 ・リフィル処方箋:2022年度の診療報酬改定で導入され、症状が安定した患者に対し、医師の診察なしで一定期間内に最大3回まで同じ処方箋を反復利用できる。 ・電子処方箋:2023年から運用が始まり、紙の処方箋に代わって電子的に処方情報をやり取りできる。

POINT

・処方箋を発行できるのは医師・歯科医師であり、薬剤師ではない。 ・使用期間は交付日を含めて4日以内(特別な事情があれば延長可)。 ・薬剤名は商品名でも一般名でも有効。一般名処方は後発医薬品の使用促進策として推奨されている。 ・保険医は特定の保険薬局への誘導・指定をしてはならない(患者が薬局を選ぶ)。 ・処方医の記名押印または署名が必要(自筆署名に限らない)。 ・薬剤師は処方箋に疑義があれば処方医に照会してから調剤する(疑義照会)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。