男性で第1位、女性でも肩こりと並ぶ―国民の自覚症状、その最多クラスは腰痛
第117回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
2016年および2019年に行われた国民生活基礎調査で,病気やけが等で自覚症状がある人数を人口1,000人比で求めた有訴者率を,性別と症状別にグラフに記したものを示す。 Aの症状はどれか。

- a.下痢
- b.動悸
- c.腹痛
- d.腰痛
- e.手足のしびれ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
有訴者率は、病気やけがなどで自覚症状のある人の人口1,000人あたりの数で、厚生労働省の国民生活基礎調査(3年ごとの大規模調査)で把握されます。症状別では男性は腰痛が1位・肩こりが2位、女性は肩こりが1位・腰痛が2位で、腰痛は男女ともにトップクラスの症状です。下痢、腹痛、動悸、手足のしびれは上位5位に入らず、グラフ中の「手足の関節が痛む」はしびれとは別項目なので注意が必要です。有訴者率は女性が男性より高く、高齢になるほど上昇し、上位は運動器症状が占めるため、ロコモティブシンドローム対策や介護予防とも関連します。通院者率の1位が高血圧症であることとあわせて、指標ごとに何を数えているかを区別して理解することが、保健統計を読み解く基本になります。
解答・解説
正解はdです
テーマ
国民生活基礎調査の「有訴者率」を症状別にみたとき、どの症状が多いかを問う統計問題である。
有訴者率とは
有訴者とは、世帯員のうち病気やけが等で自覚症状がある者をいい、有訴者率は人口1,000人あたりの有訴者数で表す。分母の世帯人員には入院者を含むが、分子の有訴者には入院者を含めない。国民生活基礎調査は厚生労働省が毎年実施し、3年ごとに健康票を含む大規模調査が行われる(2016年、2019年が大規模調査年)。なお2022年調査でも、症状別の上位の顔ぶれは大きく変わっていない。
グラフの読み取り
男性のグラフでは、Aが約90と突出して1位で、以下、肩こり(約57)、鼻がつまる(約50)、せきやたんが出る(約50)、手足の関節が痛む(約40)と続く。 女性のグラフでは、肩こり(約115)が1位、Aがほぼ同程度の約113で2位、以下、手足の関節が痛む(約70)、身体がだるい(約55)、頭痛(約50)と続く。 つまりAは「男性で最多、女性では肩こりに僅差で続く2位」という症状であり、これは腰痛に一致する。2019年調査の値では、腰痛は男性91.2、女性113.3、肩こりは男性57.2、女性113.8であった。
覚え方
症状別有訴者率の上位は「男性は腰痛>肩こり、女性は肩こり>腰痛」であり、腰痛と肩こりが男女とも上位2位を占める。選択肢の下痢、動悸、腹痛、手足のしびれはいずれも上位5位に入らず、グラフ中のAのように1,000人あたり90〜110を超える値にはならない。
選択肢考察
- ×a. 下痢
下痢の有訴者率は男女とも上位5位に入らず、人口1,000人あたり20前後と、Aの値(男性約90、女性約113)を大きく下回る。Aには該当しない。
- ×b. 動悸
動悸は女性のほうがやや多い症状だが、それでも有訴者率は人口1,000人あたり20程度で上位には入らない。男性で最多となるAには該当しない。
- ×c. 腹痛
腹痛(胃痛を含む項目)の有訴者率も女性でやや高いが、男女とも上位5位には含まれず、値はAの数分の1にとどまる。Aには該当しない。
- ○d. 腰痛
腰痛は男性の症状別有訴者率で第1位(2019年:91.2)、女性では肩こり(113.8)に次ぐ第2位(113.3)である。2016年調査でも同じ順位であり、グラフのAが男性で突出した1位、女性で肩こりとほぼ同値の2位という特徴に一致する。腰痛は加齢、姿勢、筋力低下、骨粗鬆症などを背景に高齢になるほど増え、高齢化とともに国民の健康上の大きな課題になっている。
- ×e. 手足のしびれ
手足のしびれは高齢者で比較的多い症状だが、全年齢の有訴者率は人口1,000人あたり30〜40程度で男女とも上位5位に入らない。なお、グラフ中の「手足の関節が痛む」(女性3位、男性5位)とは別の項目であり、混同しないよう注意する。
国民生活基礎調査の主な健康指標
・有訴者率:自覚症状のある者の人口1,000人比。2019年は総数302.5(男性270.8、女性332.1)で、女性のほうが高い。年齢階級別では10〜19歳が最も低く、80歳以上が最も高い(総数511.0)。 ・通院者率:傷病で病院・診療所や施術所に通っている者の人口1,000人比。2019年は総数404.0程度で、傷病別では男女とも高血圧症が最多である。男性では高血圧症に続き糖尿病、女性では高血圧症に続き脂質異常症、眼の病気、腰痛症などが多い。 ・「日常生活に影響のある者率」や「健康意識(主観的健康感)」も同調査で把握されている。
症状別有訴者率の上位(2019年)
男性:腰痛 > 肩こり > 鼻がつまる・鼻汁が出る > せきやたんが出る > 手足の関節が痛む 女性:肩こり > 腰痛 > 手足の関節が痛む > 身体がだるい > 頭痛 ※男女とも運動器(筋骨格系)の症状が上位を占める点が特徴で、ロコモティブシンドローム対策や介護予防とも関連する。
国民生活基礎調査の概要
厚生労働省が世帯を対象に実施する基幹統計調査で、保健・医療・福祉・年金・所得などを調べる。毎年の簡易調査に加え、3年ごとに健康票・介護票・所得票などを含む大規模調査が行われる(直近の大規模調査は2016年、2019年、2022年。2020年は新型コロナウイルス感染症のため中止)。
POINT
・有訴者率=自覚症状のある者の人口1,000人比(分子に入院者は含めない)。 ・症状別有訴者率:男性1位腰痛・2位肩こり、女性1位肩こり・2位腰痛。 ・有訴者率は女性>男性、高齢になるほど高い。 ・通院者率の傷病別1位は男女とも高血圧症。
