StudyMed医師国家試験

男性で第1位、女性でも肩こりと並ぶ―国民の自覚症状、その最多クラスは腰痛

第117回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第117回 B問題 第10問

2016年および2019年に行われた国民生活基礎調査で,病気やけが等で自覚症状がある人数を人口1,000人比で求めた有訴者率を,性別と症状別にグラフに記したものを示す。  Aの症状はどれか。

第117回 B問題 第10問の問題画像
  1. a.下痢
  2. b.動悸
  3. c.腹痛
  4. d.腰痛
  5. e.手足のしびれ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国民生活基礎調査の「有訴者率」を、症状別のグラフから読み解く問題だ。注目してほしいのは、Aが男性で突出した1位、女性では1位とほぼ並ぶ2位という特徴。この「男女ともにトップクラス」という点が最大のヒントになるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で有訴者率という言葉は聞きましたが、定義があいまいです。有病率とは違うんですよね?
ドクタードクター
いい確認だね。有訴者率は、病気やけがなどで「自覚症状がある人」が人口1,000人あたり何人いるか、という指標だ。診断がついているかどうかは問わない、本人の訴えベースの数字なんだ。ちなみに分母の世帯人員には入院者を含むけれど、分子の有訴者には入院者を含めないという細かい決まりもある。
医学生医学生
診断名ではなく自覚症状なんですね。国民生活基礎調査は毎年行われているんでしたっけ。
ドクタードクター
厚生労働省が毎年実施しているけれど、健康票を含む大規模調査は3年ごとだ。2016年と2019年はその大規模調査の年だから、このグラフに並んでいるんだね。2020年は新型コロナの影響で中止されたことも、知識として持っておくといい。
医学生医学生
では選択肢を考えます。男性で1位になる症状……CBTの対策で、肩こりと腰痛が多いと覚えた気がします。
ドクタードクター
その記憶は正しい。症状別の有訴者率は、男性では腰痛が1位で肩こりが2位、女性では肩こりが1位で腰痛が2位なんだ。グラフでは女性の1位が肩こりと明示されていて、Aはそれとほぼ同じ高さで並んでいる。男性ではAが肩こりを大きく上回っている。これはまさに腰痛のパターンだね。
医学生医学生
なるほど、肩こりがグラフに書いてある以上、それと張り合えるのは腰痛だと。
ドクタードクター
その推論でいい。2019年の数値では、腰痛は男性91.2、女性113.3、肩こりは男性57.2、女性113.8。女性ではわずか0.5の差なんだ。ほかの選択肢も見ておこう。下痢や腹痛はどうだろう。
医学生医学生
消化器症状はよくありそうですが、腰痛ほど多いとは思えません。
ドクタードクター
そうだね。下痢も腹痛も男女とも上位5位には入らず、人口1,000人あたりの値はAの数分の1程度にとどまる。動悸も女性でやや多い症状ではあるけれど、やはり上位には入らない。
医学生医学生
手足のしびれは高齢者でよく聞きます。整形外科の実習でも、しびれを訴える外来患者さんが多かった印象があります。
ドクタードクター
実際によくある訴えだけれど、全年齢の有訴者率では上位5位に入らない。ここで注意したいのが、グラフに出てくる「手足の関節が痛む」という項目だ。女性で3位、男性で5位に入っているけれど、これは「しびれ」とは別の項目だから混同しないようにね。
医学生医学生
関節痛としびれ、名前が似ていて引っかかりそうです。上位はほとんど運動器の症状ばかりなんですね。
ドクタードクター
鋭いね。腰痛、肩こり、関節痛と、男女ともに筋骨格系の症状が上位を占めているのが大きな特徴だ。腰痛は加齢、姿勢、筋力低下、骨粗鬆症などを背景に高齢になるほど増えるから、ロコモティブシンドローム対策や介護予防とも直結するテーマなんだよ。
医学生医学生
有訴者率全体では、男女どちらが高いんですか。
ドクタードクター
女性のほうが高い。2019年は総数302.5で、男性270.8、女性332.1だ。年齢別では10〜19歳が最も低く、80歳以上が最も高い。それから似た指標の通院者率も整理しておこう。こちらは傷病で通院している人の人口1,000人比で、傷病別では男女とも高血圧症が1位だ。
医学生医学生
自覚症状なら腰痛、通院理由なら高血圧、と分けて覚えておきます。
ドクタードクター
それがいちばん大事な整理だね。症状を訴える人が多い領域と、通院している人が多い病気は一致しない。統計を読むときは、その指標が何を数えているのかを常に意識しよう。

まとめ

有訴者率は、病気やけがなどで自覚症状のある人の人口1,000人あたりの数で、厚生労働省の国民生活基礎調査(3年ごとの大規模調査)で把握されます。症状別では男性は腰痛が1位・肩こりが2位、女性は肩こりが1位・腰痛が2位で、腰痛は男女ともにトップクラスの症状です。下痢、腹痛、動悸、手足のしびれは上位5位に入らず、グラフ中の「手足の関節が痛む」はしびれとは別項目なので注意が必要です。有訴者率は女性が男性より高く、高齢になるほど上昇し、上位は運動器症状が占めるため、ロコモティブシンドローム対策や介護予防とも関連します。通院者率の1位が高血圧症であることとあわせて、指標ごとに何を数えているかを区別して理解することが、保健統計を読み解く基本になります。

解答・解説

正解はdです

テーマ

国民生活基礎調査の「有訴者率」を症状別にみたとき、どの症状が多いかを問う統計問題である。

有訴者率とは

有訴者とは、世帯員のうち病気やけが等で自覚症状がある者をいい、有訴者率は人口1,000人あたりの有訴者数で表す。分母の世帯人員には入院者を含むが、分子の有訴者には入院者を含めない。国民生活基礎調査は厚生労働省が毎年実施し、3年ごとに健康票を含む大規模調査が行われる(2016年、2019年が大規模調査年)。なお2022年調査でも、症状別の上位の顔ぶれは大きく変わっていない。

グラフの読み取り

男性のグラフでは、Aが約90と突出して1位で、以下、肩こり(約57)、鼻がつまる(約50)、せきやたんが出る(約50)、手足の関節が痛む(約40)と続く。 女性のグラフでは、肩こり(約115)が1位、Aがほぼ同程度の約113で2位、以下、手足の関節が痛む(約70)、身体がだるい(約55)、頭痛(約50)と続く。 つまりAは「男性で最多、女性では肩こりに僅差で続く2位」という症状であり、これは腰痛に一致する。2019年調査の値では、腰痛は男性91.2、女性113.3、肩こりは男性57.2、女性113.8であった。

覚え方

症状別有訴者率の上位は「男性は腰痛>肩こり、女性は肩こり>腰痛」であり、腰痛と肩こりが男女とも上位2位を占める。選択肢の下痢、動悸、腹痛、手足のしびれはいずれも上位5位に入らず、グラフ中のAのように1,000人あたり90〜110を超える値にはならない。

選択肢考察

  1. ×a.  下痢

    下痢の有訴者率は男女とも上位5位に入らず、人口1,000人あたり20前後と、Aの値(男性約90、女性約113)を大きく下回る。Aには該当しない。

  2. ×b.  動悸

    動悸は女性のほうがやや多い症状だが、それでも有訴者率は人口1,000人あたり20程度で上位には入らない。男性で最多となるAには該当しない。

  3. ×c.  腹痛

    腹痛(胃痛を含む項目)の有訴者率も女性でやや高いが、男女とも上位5位には含まれず、値はAの数分の1にとどまる。Aには該当しない。

  4. ○d.  腰痛

    腰痛は男性の症状別有訴者率で第1位(2019年:91.2)、女性では肩こり(113.8)に次ぐ第2位(113.3)である。2016年調査でも同じ順位であり、グラフのAが男性で突出した1位、女性で肩こりとほぼ同値の2位という特徴に一致する。腰痛は加齢、姿勢、筋力低下、骨粗鬆症などを背景に高齢になるほど増え、高齢化とともに国民の健康上の大きな課題になっている。

  5. ×e.  手足のしびれ

    手足のしびれは高齢者で比較的多い症状だが、全年齢の有訴者率は人口1,000人あたり30〜40程度で男女とも上位5位に入らない。なお、グラフ中の「手足の関節が痛む」(女性3位、男性5位)とは別の項目であり、混同しないよう注意する。

国民生活基礎調査の主な健康指標

・有訴者率:自覚症状のある者の人口1,000人比。2019年は総数302.5(男性270.8、女性332.1)で、女性のほうが高い。年齢階級別では10〜19歳が最も低く、80歳以上が最も高い(総数511.0)。 ・通院者率:傷病で病院・診療所や施術所に通っている者の人口1,000人比。2019年は総数404.0程度で、傷病別では男女とも高血圧症が最多である。男性では高血圧症に続き糖尿病、女性では高血圧症に続き脂質異常症、眼の病気、腰痛症などが多い。 ・「日常生活に影響のある者率」や「健康意識(主観的健康感)」も同調査で把握されている。

症状別有訴者率の上位(2019年)

男性:腰痛 > 肩こり > 鼻がつまる・鼻汁が出る > せきやたんが出る > 手足の関節が痛む 女性:肩こり > 腰痛 > 手足の関節が痛む > 身体がだるい > 頭痛 ※男女とも運動器(筋骨格系)の症状が上位を占める点が特徴で、ロコモティブシンドローム対策や介護予防とも関連する。

国民生活基礎調査の概要

厚生労働省が世帯を対象に実施する基幹統計調査で、保健・医療・福祉・年金・所得などを調べる。毎年の簡易調査に加え、3年ごとに健康票・介護票・所得票などを含む大規模調査が行われる(直近の大規模調査は2016年、2019年、2022年。2020年は新型コロナウイルス感染症のため中止)。

POINT

・有訴者率=自覚症状のある者の人口1,000人比(分子に入院者は含めない)。 ・症状別有訴者率:男性1位腰痛・2位肩こり、女性1位肩こり・2位腰痛。 ・有訴者率は女性>男性、高齢になるほど高い。 ・通院者率の傷病別1位は男女とも高血圧症。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。