StudyMed医師国家試験

「使い方はひとつ」では取り残される―ユニバーサルデザイン7原則の考え方

第116回医師国家試験 F問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第12問

ユニバーサルデザインの原則に含まれないのはどれか。

  1. a.公平に利用できる。
  2. b.身体的な負担が少ない。
  3. c.使い方が限定的である。
  4. d.単純で直感的に利用できる。
  5. e.使い方を誤っても重大な結果になりにくい。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生から、ユニバーサルデザインの原則を問う問題だ。7つの原則を丸暗記していなくても、「そもそもユニバーサルデザインは何を目指す考え方か」をつかんでいれば解ける。まずはその理念から確認しよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義でバリアフリーと一緒に出てきました。障害のある人のための設計、というイメージです。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。ユニバーサルデザインは、米国のロナルド・メイスが提唱した考え方で、年齢、性別、体格、言語、障害の有無にかかわらず、はじめから「できるだけ多くの人」が使いやすいように製品や建物、情報を設計することをいう。特定の人のための対策ではなく、対象を最初から全員に広げるのが特徴なんだ。
医学生医学生
では、バリアフリーとはどう違うんですか。
ドクタードクター
バリアフリーは、すでにある段差などの障壁を後から取り除く発想が中心だ。既存の建物に後付けする段差解消機や点字表示がその例だね。一方ユニバーサルデザインは、設計段階から障壁を作らない発想。駅のエレベーターは、車椅子の人だけでなく高齢者やベビーカー、大きな荷物を持つ人も使うよね。両者は対立するものではなく、ユニバーサルデザインはバリアフリーを発展させた考え方と位置づけられている。
医学生医学生
なるほど。それで、7原則の中身はどうなっていますか。
ドクタードクター
公平な利用、利用における柔軟性、単純で直感的な利用、認知できる情報、失敗に対する寛大さ、少ない身体的努力、接近や利用のための大きさと空間の7つだ。選択肢と照らし合わせてみよう。「公平に利用できる」はどうかな。
医学生医学生
1つ目の公平な利用そのものですね。幅の広い自動ドアなら車椅子の人もベビーカーの人も同じように通れます。
ドクタードクター
その通り。「身体的な負担が少ない」は少ない身体的努力にあたる。握って回すドアノブより、押し下げるだけのレバーハンドルの方が握力の弱い人でも開けやすい、という例が典型だ。
医学生医学生
病院実習で、病棟のドアがほとんどレバーハンドルか引き戸だったのを思い出しました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。医療機関はまさに多様な人が利用する場所だから、こうした配慮が多い。「単純で直感的に利用できる」は、経験や言語能力にかかわらず使い方がすぐわかること。文字が読めなくても意味が伝わるピクトグラムが代表例だ。
医学生医学生
「使い方を誤っても重大な結果になりにくい」は、失敗に対する寛大さですね。人を感知すると開き直るエレベーターのドアとか。
ドクタードクター
完璧だ。取り消し機能のある操作画面や、ふたを閉めないと動かない家電もそうだね。では残った「使い方が限定的である」はどうだろう。
医学生医学生
シンプルで迷わないから、むしろ良いことのように一瞬思ってしまいました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いんだ。でも使い方がひとつに限られていると、その方法をとれない人は使えなくなってしまう。7原則の「利用における柔軟性」は、右利きでも左利きでも使える、自分のペースで操作できるなど、使う人の好みや能力に応じて方法を選べることを求めている。だから「限定的」はこれに真っ向から反し、原則には含まれない。これが正解だ。
医学生医学生
「単純」と「限定的」は別物なんですね。わかりやすいことと、選択肢が少ないことを混同していました。
ドクタードクター
その区別が大事だよ。最後に臨床との関わりも押さえておこう。背景にあるのはノーマライゼーション、つまり障害の有無にかかわらず誰もが地域で普通の生活を送れる社会を目指す理念だ。日本ではバリアフリー法が建築物や公共交通機関の移動円滑化を定めている。
医学生医学生
医療の現場だと、説明文書や薬の袋のデザインにも関係しそうです。
ドクタードクター
まさにそう。文字を大きくする、図を添える、多言語や音声でも伝えるといった工夫は「認知できる情報」の実践になる。高齢者や外国人、視覚・聴覚に障害のある患者さんが増えるなかで、医療者自身がこの視点を持つことが、安全で公平な医療につながるんだ。

まとめ

ユニバーサルデザインは、ロナルド・メイスが提唱した、年齢・障害・言語などにかかわらず設計段階から「できるだけ多くの人」が使いやすいように作る考え方です。7原則は、公平な利用、利用における柔軟性、単純で直感的な利用、認知できる情報、失敗に対する寛大さ、少ない身体的努力、接近や利用のための大きさと空間であり、「使い方が限定的である」ことは柔軟性の原則に反するため含まれません。既存の障壁を後から取り除くバリアフリーとの違いや、背景にあるノーマライゼーションの理念もあわせて押さえておきましょう。病院の設備や説明文書、薬剤の表示など医療現場にもこの考え方は広く生かされており、多様な患者に公平で安全な医療を届けるための基本的な視点となります。

解答・解説

正解はcです

本問は、ユニバーサルデザインの基本的な考え方と、その7原則を問う問題である。

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザイン(universal design:UD)は、米国ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(Ronald Mace)が提唱した考え方で、年齢、性別、体格、国籍・言語、障害の有無などの個人差にかかわらず、はじめから「できるだけ多くの人が利用しやすいように」製品・建物・環境・情報を設計することをいう。1997年に同大学のユニバーサルデザインセンターが、そのための7つの原則をまとめた。

7原則

①公平な利用(Equitable Use):誰でも同じように公平に使える。 ②利用における柔軟性(Flexibility in Use):使う人の好みや能力に応じて、さまざまな使い方ができる。 ③単純で直感的な利用(Simple and Intuitive Use):経験・知識・言語能力・集中力にかかわらず、使い方がすぐにわかる。 ④認知できる情報(Perceptible Information):視覚・聴覚・触覚など複数の手段で、必要な情報が確実に伝わる。 ⑤失敗に対する寛大さ(Tolerance for Error):誤った操作や意図しない動作をしても、危険や重大な結果につながりにくい。 ⑥少ない身体的努力(Low Physical Effort):無理な姿勢や大きな力を必要とせず、効率よく楽に使える。 ⑦接近や利用のための大きさと空間(Size and Space for Approach and Use):体格・姿勢・移動能力にかかわらず、近づいて使うのに十分な大きさと空間が確保されている。

考え方

ユニバーサルデザインの本質は、「多様な人」が「多様な方法」で使えるようにすることにある。使い方を一つに限定すると、その方法をとれない人が利用できなくなるため、原則②の「利用における柔軟性」に反する。したがって「使い方が限定的である」は原則に含まれない。

選択肢考察

  1. ×a.  公平に利用できる。

    7原則の①「公平な利用」に該当する。能力の違いにかかわらず、誰もが同じように、あるいは同等の方法で利用でき、特定の利用者を区別したり不利にしたりしないことを求める原則である。例えば、誰でも通れる幅の広い自動ドアは、車椅子使用者、ベビーカーを押す人、大きな荷物を持つ人のいずれにも同じように使える。原則に含まれる。

  2. ×b.  身体的な負担が少ない。

    7原則の⑥「少ない身体的努力」に該当する。無理な姿勢をとらずに済み、弱い力でも操作でき、繰り返し動作による疲労が少ないように設計することを求める。例えば、握って回すドアノブより、押し下げるだけのレバーハンドルの方が、握力の弱い高齢者や手指に障害のある人でも開けやすい。原則に含まれる。

  3. ○c.  使い方が限定的である。

    ユニバーサルデザインは、7原則の②「利用における柔軟性」として、利用者の好みや能力に合わせて使い方を選べること(例:右利きでも左利きでも使える、自分のペースで操作できる)を求めている。使い方が一つに限られていると、その方法をとれない人が利用から取り残されてしまい、「できるだけ多くの人が使える」という理念に反する。よってこれは原則に含まれない。

  4. ×d.  単純で直感的に利用できる。

    7原則の③「単純で直感的な利用」に該当する。使う人の経験、知識、言語能力、その時の集中力にかかわらず、使い方が容易に理解できることを求める。例えば、文字が読めない子どもや外国人でも意味がわかるピクトグラム(絵文字による案内表示)がこれにあたる。原則に含まれる。

  5. ×e.  使い方を誤っても重大な結果になりにくい。

    7原則の⑤「失敗に対する寛大さ」に該当する。うっかりした操作や意図しない動作をしても、危険や不利益につながりにくいように設計することを求める。例えば、取り消し(元に戻す)機能のある操作画面、閉まりかけても人や物を感知すると開き直るドア、ふたをしないと作動しない家電などがこれにあたる。原則に含まれる。

バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

・バリアフリー:すでに存在する障壁(バリア)を、高齢者や障害者などが生活するうえで支障とならないように取り除く、という考え方である。対象者を想定し、既存の環境に後から対策を加える発想に立つことが多い。例:既存の建物の段差に後付けで設置する手すりや段差解消機、視覚障害者向けの点字表示など。 ・ユニバーサルデザイン:障壁を後から取り除くのではなく、設計の段階からはじめて、年齢・障害の有無・国籍などにかかわらず、すべての人が使いやすいように作るという考え方である。例:駅のエレベーター(車椅子使用者だけでなく、高齢者、ベビーカーや大きな荷物を持つ人も使う)、段差のない出入口、多機能トイレ、シャンプー容器の側面の刻み(目を閉じていてもリンスと区別できる)、ピクトグラムなど。 ・両者は対立するものではなく、ユニバーサルデザインはバリアフリーの考え方を発展させたものと位置づけられる。

関連する法律・概念

・日本では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法、2006年)が、建築物や公共交通機関の移動円滑化を定めている。 ・ノーマライゼーション:障害の有無にかかわらず、誰もが地域で普通の生活を送れる社会を目指す理念であり、ユニバーサルデザインやバリアフリーの背景にある考え方である。

POINT

・ユニバーサルデザインは、設計の段階から「できるだけ多くの人」が使いやすいように作る考え方(ロナルド・メイスが提唱)。 ・7原則:①公平な利用、②利用における柔軟性、③単純で直感的な利用、④認知できる情報、⑤失敗に対する寛大さ、⑥少ない身体的努力、⑦接近や利用のための大きさと空間。 ・「使い方が限定的」は②の柔軟性に反し、原則に含まれない。 ・バリアフリーは既存の障壁を取り除く発想、ユニバーサルデザインははじめから障壁を作らない発想である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。