「使い方はひとつ」では取り残される―ユニバーサルデザイン7原則の考え方
第116回医師国家試験 F問題 第12問
国試問題にチャレンジ
ユニバーサルデザインの原則に含まれないのはどれか。
- a.公平に利用できる。
- b.身体的な負担が少ない。
- c.使い方が限定的である。
- d.単純で直感的に利用できる。
- e.使い方を誤っても重大な結果になりにくい。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
ユニバーサルデザインは、ロナルド・メイスが提唱した、年齢・障害・言語などにかかわらず設計段階から「できるだけ多くの人」が使いやすいように作る考え方です。7原則は、公平な利用、利用における柔軟性、単純で直感的な利用、認知できる情報、失敗に対する寛大さ、少ない身体的努力、接近や利用のための大きさと空間であり、「使い方が限定的である」ことは柔軟性の原則に反するため含まれません。既存の障壁を後から取り除くバリアフリーとの違いや、背景にあるノーマライゼーションの理念もあわせて押さえておきましょう。病院の設備や説明文書、薬剤の表示など医療現場にもこの考え方は広く生かされており、多様な患者に公平で安全な医療を届けるための基本的な視点となります。
解答・解説
正解はcです
本問は、ユニバーサルデザインの基本的な考え方と、その7原則を問う問題である。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザイン(universal design:UD)は、米国ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(Ronald Mace)が提唱した考え方で、年齢、性別、体格、国籍・言語、障害の有無などの個人差にかかわらず、はじめから「できるだけ多くの人が利用しやすいように」製品・建物・環境・情報を設計することをいう。1997年に同大学のユニバーサルデザインセンターが、そのための7つの原則をまとめた。
7原則
①公平な利用(Equitable Use):誰でも同じように公平に使える。 ②利用における柔軟性(Flexibility in Use):使う人の好みや能力に応じて、さまざまな使い方ができる。 ③単純で直感的な利用(Simple and Intuitive Use):経験・知識・言語能力・集中力にかかわらず、使い方がすぐにわかる。 ④認知できる情報(Perceptible Information):視覚・聴覚・触覚など複数の手段で、必要な情報が確実に伝わる。 ⑤失敗に対する寛大さ(Tolerance for Error):誤った操作や意図しない動作をしても、危険や重大な結果につながりにくい。 ⑥少ない身体的努力(Low Physical Effort):無理な姿勢や大きな力を必要とせず、効率よく楽に使える。 ⑦接近や利用のための大きさと空間(Size and Space for Approach and Use):体格・姿勢・移動能力にかかわらず、近づいて使うのに十分な大きさと空間が確保されている。
考え方
ユニバーサルデザインの本質は、「多様な人」が「多様な方法」で使えるようにすることにある。使い方を一つに限定すると、その方法をとれない人が利用できなくなるため、原則②の「利用における柔軟性」に反する。したがって「使い方が限定的である」は原則に含まれない。
選択肢考察
- ×a. 公平に利用できる。
7原則の①「公平な利用」に該当する。能力の違いにかかわらず、誰もが同じように、あるいは同等の方法で利用でき、特定の利用者を区別したり不利にしたりしないことを求める原則である。例えば、誰でも通れる幅の広い自動ドアは、車椅子使用者、ベビーカーを押す人、大きな荷物を持つ人のいずれにも同じように使える。原則に含まれる。
- ×b. 身体的な負担が少ない。
7原則の⑥「少ない身体的努力」に該当する。無理な姿勢をとらずに済み、弱い力でも操作でき、繰り返し動作による疲労が少ないように設計することを求める。例えば、握って回すドアノブより、押し下げるだけのレバーハンドルの方が、握力の弱い高齢者や手指に障害のある人でも開けやすい。原則に含まれる。
- ○c. 使い方が限定的である。
ユニバーサルデザインは、7原則の②「利用における柔軟性」として、利用者の好みや能力に合わせて使い方を選べること(例:右利きでも左利きでも使える、自分のペースで操作できる)を求めている。使い方が一つに限られていると、その方法をとれない人が利用から取り残されてしまい、「できるだけ多くの人が使える」という理念に反する。よってこれは原則に含まれない。
- ×d. 単純で直感的に利用できる。
7原則の③「単純で直感的な利用」に該当する。使う人の経験、知識、言語能力、その時の集中力にかかわらず、使い方が容易に理解できることを求める。例えば、文字が読めない子どもや外国人でも意味がわかるピクトグラム(絵文字による案内表示)がこれにあたる。原則に含まれる。
- ×e. 使い方を誤っても重大な結果になりにくい。
7原則の⑤「失敗に対する寛大さ」に該当する。うっかりした操作や意図しない動作をしても、危険や不利益につながりにくいように設計することを求める。例えば、取り消し(元に戻す)機能のある操作画面、閉まりかけても人や物を感知すると開き直るドア、ふたをしないと作動しない家電などがこれにあたる。原則に含まれる。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
・バリアフリー:すでに存在する障壁(バリア)を、高齢者や障害者などが生活するうえで支障とならないように取り除く、という考え方である。対象者を想定し、既存の環境に後から対策を加える発想に立つことが多い。例:既存の建物の段差に後付けで設置する手すりや段差解消機、視覚障害者向けの点字表示など。 ・ユニバーサルデザイン:障壁を後から取り除くのではなく、設計の段階からはじめて、年齢・障害の有無・国籍などにかかわらず、すべての人が使いやすいように作るという考え方である。例:駅のエレベーター(車椅子使用者だけでなく、高齢者、ベビーカーや大きな荷物を持つ人も使う)、段差のない出入口、多機能トイレ、シャンプー容器の側面の刻み(目を閉じていてもリンスと区別できる)、ピクトグラムなど。 ・両者は対立するものではなく、ユニバーサルデザインはバリアフリーの考え方を発展させたものと位置づけられる。
関連する法律・概念
・日本では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法、2006年)が、建築物や公共交通機関の移動円滑化を定めている。 ・ノーマライゼーション:障害の有無にかかわらず、誰もが地域で普通の生活を送れる社会を目指す理念であり、ユニバーサルデザインやバリアフリーの背景にある考え方である。
POINT
・ユニバーサルデザインは、設計の段階から「できるだけ多くの人」が使いやすいように作る考え方(ロナルド・メイスが提唱)。 ・7原則:①公平な利用、②利用における柔軟性、③単純で直感的な利用、④認知できる情報、⑤失敗に対する寛大さ、⑥少ない身体的努力、⑦接近や利用のための大きさと空間。 ・「使い方が限定的」は②の柔軟性に反し、原則に含まれない。 ・バリアフリーは既存の障壁を取り除く発想、ユニバーサルデザインははじめから障壁を作らない発想である。
