StudyMed医師国家試験

産前は「請求」、産後は「強制」―出産・育児と働き方のルールを法律ごとに整理する

第116回医師国家試験 C問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第35問

出産,育児と就労について正しいのはどれか。3つ選べ。

  1. a.産前休業は請求すればいつでも取得できる。
  2. b.産後休業は出産日翌日から8週間取得できる。
  3. c.育児休業は子供が1歳の誕生日まで取得できる。
  4. d.育児休業は子供が3歳になるまで延長できる。
  5. e.育児休業は配偶者も取得することができる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、出産や育児の時期に働く人を守る制度の問題だ。コツは、根拠となる法律が二つあると意識すること。産前・産後休業は労働基準法、育児休業は育児・介護休業法で決まっている。それぞれ「いつから」「いつまで」「誰が」取れるのかに注目しよう。
医学生医学生
産休と育休、普段は一緒くたに言ってしまっていますが、法律から違うんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。まず産前休業から。労働基準法では、出産予定日の6週間前、多胎妊娠なら14週間前から、本人が請求すれば休業できる。請求がなければ事業主に休ませる義務はない、いわば任意の休業だ。
医学生医学生
では「請求すればいつでも取得できる」というのは、期間の制限がある点で誤りですね。でも、妊娠初期につわりがひどくて働けない人はどうするんでしょう。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。産婦人科の外来でもよくある相談だ。その場合は男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置を使う。医師などの指導に基づいて、勤務時間の短縮や休業といった措置を事業主に求められるんだ。年次有給休暇で対応することもある。
医学生医学生
母性健康管理指導事項連絡カードというのを、産婦人科の臨床実習で見せてもらいました。あれがその仕組みなんですね。
ドクタードクター
その通り。医師が書く書類だから、将来も関わる可能性が高いよ。次は産後休業。出産日の翌日から8週間は、本人の希望にかかわらず就業させてはならない。こちらは強制的な休業なんだ。
医学生医学生
産後は「請求」ではなく「強制」なんですね。母体の回復を優先するためでしょうか。
ドクタードクター
そう考えていい。産褥期は子宮の復古や全身の回復が進む時期だからね。ただし例外があって、産後6週間を過ぎた女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務なら就業できる。ちなみに出産当日は産前休業に含まれ、出産が予定日より遅れても、産後の8週間は実際の出産日を基準に確保される。
医学生医学生
次は育児休業ですね。「1歳まで」と習った記憶がありますが、延長があったような……3歳までだったでしょうか。
ドクタードクター
そこがこの問題のひっかけだね。育児・介護休業法では、原則として子が1歳に達するまで取得できる。厳密には法律上の「1歳に達する日」は誕生日の前日だけど、「子が1歳になるまで」という趣旨として正しいと扱われている。延長は、保育所に入れないなど雇用継続のために特に必要な場合に1歳6か月まで、さらに必要なら2歳まで。上限は2歳で、3歳までの延長はない。
医学生医学生
では3歳という数字はどこから来たんでしょう。どこかで見た気がします。
ドクタードクター
3歳未満の子を育てる労働者のために、事業主が短時間勤務制度、原則1日6時間を設ける義務がある。この「3歳」と育児休業の延長上限が混ざりやすいんだ。数字ごとに何の制度かをセットで覚えよう。
医学生医学生
最後の、配偶者も取得できるというのは、父親も育休を取れるということですよね。
ドクタードクター
そう。育児休業は性別を問わず、子を養育する労働者なら取得できる。母親は産後休業の終了後から、父親は子の出生日から取れて、夫婦同時でも交代でもよい。両親ともに取得する場合は「パパ・ママ育休プラス」で、子が1歳2か月になるまでの間に各自最長1年取得できる。
医学生医学生
まとめると、産後休業の8週間、育児休業の原則1歳まで、配偶者も取得可の3つが正しくて、産前休業は期間に制限があり、延長も2歳までということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、2022年10月からは子の出生後8週間以内に最長4週間を2回に分割して取れる「出生時育児休業(産後パパ育休)」が創設され、通常の育児休業も2回まで分割できるようになった。また労働基準法には、生後1年未満の子を育てる女性が1日2回各30分以上の育児時間を請求できる規定もある。
医学生医学生
お金の面の支援も気になります。休んでいる間の収入はどうなるんですか。
ドクタードクター
産前産後休業中は健康保険の出産手当金、育児休業中は雇用保険の育児休業給付金が所得を補う。出産費用には健康保険の出産育児一時金がある。どの制度から何が出るのかを整理しておくと、妊婦さんや同僚の相談にも答えやすいし、自分自身のキャリアを考えるうえでも役に立つよ。

まとめ

出産・育児期の就労支援は、産前・産後休業が労働基準法、育児休業が育児・介護休業法と、根拠法を分けて整理すると理解しやすくなります。産前休業は出産予定日前6週間(多胎14週間)から本人の請求で取得し、産後休業は出産翌日から8週間の強制休業で、産後6週間経過後は本人の請求と医師の許可があれば就業できます。育児休業は原則子が1歳になるまで、性別を問わず配偶者も取得でき、保育所に入れない場合などは1歳6か月、さらに2歳まで延長できますが、3歳までの延長はありません。「3歳」は短時間勤務制度の区切りであり、妊娠中の体調不良には男女雇用機会均等法の母性健康管理措置で対応します。これらの制度は医師が書類作成や助言で関わる場面も多く、患者さんや同僚、そして自分自身の働き方を支える知識として重要です。

解答・解説

正解はb, c, eです

出産・育児期の労働者を保護する制度について問う問題である。根拠となる法律が二つあることを意識して整理すると解きやすい。

産前・産後休業:労働基準法(第65条)

・産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から、本人が請求した場合に取得できる。請求がなければ事業主に休業させる義務はない(任意の休業)。期間外に「いつでも」取れるわけではない。 ・産後休業:出産日の翌日から8週間は、本人の希望にかかわらず就業させてはならない(強制的な休業)。ただし産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障ないと認めた業務に就くことは認められる。 ・出産当日は産前休業に含まれる。

育児休業:育児・介護休業法

・原則として、子が1歳に達するまで(法律上は1歳の誕生日の前日まで)取得できる。母親は産後休業の終了後から、父親は子の出生日から取得できる。 ・男女を問わず取得でき、両親がともに取得することも可能である。 ・保育所に入所できないなど雇用継続のために特に必要な場合は1歳6か月まで、さらに必要なら2歳まで延長できる。3歳までの延長制度はない。 この枠組みに当てはめると、b・c・e が正しく、a(「いつでも」ではなく出産予定日前6週間〈多胎14週間〉以内)と d(延長は最長2歳まで)は誤りである。 なお c の「1歳の誕生日まで」は、厳密には「1歳に達する日(誕生日の前日)まで」であるが、「子が1歳になるまで取得できる」という制度の趣旨として正しいと扱われている。

選択肢考察

  1. ×a.  産前休業は請求すればいつでも取得できる。

    誤り。労働基準法では、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)以内の女性が休業を請求した場合に、事業主はその女性を就業させてはならないと定めている。請求できる期間が決まっているため、妊娠中のいつでも産前休業を取れるわけではない。それ以前の時期に妊娠に伴う症状で働けない場合は、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置(医師等の指導に基づく勤務時間の短縮や休業など)や、年次有給休暇などで対応する。

  2. ○b.  産後休業は出産日翌日から8週間取得できる。

    正しい。労働基準法により、出産日の翌日から8週間は就業させてはならない。産前休業と異なり本人の請求を要しない強制休業である。例外として、産後6週間を経過した女性本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に限り就業させることができる。なお出産日が予定日より遅れた場合、遅れた日数分は産前休業として扱われ、産後休業の8週間は実際の出産日を基準に確保される。

  3. ○c.  育児休業は子供が1歳の誕生日まで取得できる。

    正しい。育児・介護休業法では、労働者は原則として子が1歳に達するまで育児休業を取得できる。法律上「1歳に達する日」は1歳の誕生日の前日を指すため、厳密には誕生日の前日までとなるが、「子が1歳になるまで」という趣旨で正しい記述とされる。母親の場合は産後休業(8週間)の終了翌日から、父親の場合は子の出生日から取得できる。両親がともに育児休業を取得する場合は「パパ・ママ育休プラス」により、子が1歳2か月に達するまでの間で各自最長1年間取得できる。

  4. ×d.  育児休業は子供が3歳になるまで延長できる。

    誤り。保育所等への入所を希望しているが入れない、養育予定だった配偶者が死亡・負傷・疾病などで養育困難になった、といった雇用継続のために特に必要と認められる場合には、子が1歳6か月に達するまで延長でき、それでも状況が続けば2歳に達するまで再延長できる。延長の上限は2歳であり、3歳までの延長はない。なお「3歳」は、3歳未満の子を養育する労働者に対して事業主が短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることが義務付けられている、という別の制度の区切りであり、混同しないよう注意する。

  5. ○e.  育児休業は配偶者も取得することができる。

    正しい。育児休業は性別を問わず、子を養育する労働者であれば取得できる。父親(母親の配偶者)は子の出生日から取得でき、夫婦が同時に取得することも、交代で取得することも可能である。さらに2022年10月からは、子の出生後8週間以内に最長4週間(2回に分割可)を取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」が創設され、通常の育児休業も2回まで分割して取得できるようになった。

出産・育児期の主な就労支援制度

労働基準法 ・産前休業:出産予定日前6週間(多胎14週間)、本人の請求により取得。 ・産後休業:出産翌日から8週間(強制。産後6週間経過後は本人請求+医師の許可で就業可)。 ・妊産婦の危険有害業務の就業制限、請求による時間外・休日・深夜労働の制限、軽易業務への転換。 ・育児時間:生後1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各30分以上の育児時間を請求できる。 男女雇用機会均等法 ・母性健康管理措置:妊娠中・産後の女性が保健指導・健康診査を受ける時間の確保、医師等の指導事項(つわり・切迫早産などへの対応)を守るための勤務時間変更・休業等の措置。 ・妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止。 育児・介護休業法 ・育児休業:原則子が1歳まで。保育所に入れない等の場合は1歳6か月、さらに2歳まで延長可。2回まで分割取得可。 ・パパ・ママ育休プラス:両親とも取得する場合、子が1歳2か月まで延長(各自の取得上限は1年)。 ・出生時育児休業(産後パパ育休):子の出生後8週間以内に最長4週間、2回に分割可。 ・3歳未満の子を養育する労働者のための短時間勤務制度(事業主の措置義務)。 ・子の看護休暇、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限など。

経済的支援(参考)

・出産手当金(健康保険):産前産後休業中の所得保障。 ・出産育児一時金(健康保険):出産費用の補助。 ・育児休業給付金(雇用保険):育児休業中の所得保障。

POINT

・産前休業:出産予定日前6週間(多胎14週間)、本人の請求が必要。 ・産後休業:出産翌日から8週間は就業禁止(産後6週間経過後、本人請求+医師が認めれば就業可)。 ・育児休業:原則子が1歳まで。延長は最長2歳まで(3歳ではない)。 ・育児休業は父親(配偶者)も取得でき、夫婦同時取得も可能。産後パパ育休も整備されている。 ・産前産後休業は労働基準法、育児休業は育児・介護休業法が根拠。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。