StudyMed医師国家試験

動かないのに「1」?―徒手筋力テストは収縮・関節運動・重力・抵抗の4段で読む

第116回医師国家試験 B問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第116回 B問題 第20問

足関節背屈の徒手筋力テストにおいて,足関節の動きを認めず前脛骨筋の収縮のみを認めた。  評価はどれか。

  1. a.0
  2. b.1
  3. c.2
  4. d.3
  5. e.4

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は徒手筋力テスト、いわゆるMMTの段階づけを問う問題だ。ポイントは「筋が収縮しているか」と「関節が動いているか」を分けて考えること。この2つをどう判定に使うか、一緒に整理していこう。
医学生医学生
関節が動かないなら、筋力はゼロと考えてしまいそうです。
ドクタードクター
直感的にはそう思うよね。でもMMTの0は「筋収縮すら認めない」状態なんだ。関節が動かなくても、筋がピクッと収縮しているのが見えたり触れたりすれば、0ではない。
医学生医学生
OSCEの神経診察の練習で、0〜5の6段階というのは覚えたんですが、下の段階の区別があいまいでした。
ドクタードクター
じゃあ判定基準を下から積み上げてみよう。最初の関門が「筋収縮があるか」で、これが0と1を分ける。次が「関節が動くか」で1と2を分ける。その次が「重力に逆らって全可動域を動かせるか」で2と3を分け、最後に「検査者の抵抗にどこまで抗せるか」で3・4・5を分ける。
医学生医学生
なるほど、4つの関門を順に越えていくイメージですね。今回は収縮はあるけど関節は動かないから、1つ目は越えて2つ目で止まっている……つまり1ですか。
ドクタードクター
その通り、正解は1、英語でTraceと呼ぶ段階だ。足関節背屈の主動作筋は前脛骨筋で、下腿前面の皮下にあって腱も足首の前で触れやすい。だから関節が動かなくても収縮を確認しやすいんだ。
医学生医学生
解剖実習で、すねの骨のすぐ外側にある筋だと確認しました。支配神経は深腓骨神経でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。では2との違いも確認しよう。2はどんな状態だと思う?
医学生医学生
少しでも関節が動けば2でしょうか。
ドクタードクター
惜しい、そこはよくある誤解なんだ。2は「重力の影響を除いた肢位なら全可動域を動かせる」状態。足関節背屈なら側臥位で下腿を水平にし、重力が運動を邪魔しない向きで動かしてもらう。今回は関節の動き自体がないから2には届かない。
医学生医学生
3は重力に逆らって全可動域を動かせる段階で、4はそこに抵抗が加わっても動かせる段階ですね。
ドクタードクター
そう。3は抵抗がなければ重力に抗して全可動域を動かせる状態で、日常生活動作の自立にかかわる目安になる。4は中等度の抵抗に、5は最大の抵抗に抗せる状態だ。今回のように関節運動がない症例とはかけ離れているね。
医学生医学生
実際の診察では、どの段階から試していくんですか。
ドクタードクター
基準点になるのは3だ。まず重力に抗して全可動域を動かせるか試し、できれば抵抗をかけて4か5かを判定する。できなければ重力除去位で2を確認し、それも無理なら収縮の有無を見て1か0かを決める。この手順なら効率よく評価できるよ。
医学生医学生
4と5の区別は検者によって差が出そうですね。
ドクタードクター
鋭いね。MMTは検査者の主観が入るし、特に4と5の区別は難しい。必要に応じて+や−を付けて細かく表現したり、ハンドヘルドダイナモメーターのような徒手筋力計で客観的に測ったりする。それから臨床的な話をすると、足関節背屈筋力が落ちると下垂足になり、歩行時につま先が引っかからないよう膝を高く上げる鶏歩がみられる。腓骨神経麻痺やL5神経根障害で起こりやすいね。
医学生医学生
整形外科の実習で、足を組む癖のある患者さんが腓骨頭の圧迫で下垂足になった例を見ました。MMTの経時的な変化で回復を追っていました。
ドクタードクター
まさにそういう場面でMMTが役立つ。1から2、2から3へと段階が上がっていくことが、神経回復の目に見える指標になるんだ。

まとめ

徒手筋力テスト(MMT)は0〜5の6段階で筋力を評価し、「筋収縮の有無」「関節運動の有無」「重力に抗せるか」「抵抗にどこまで抗せるか」の順に判定基準が積み上がります。関節は動かないが筋収縮を視診・触診で確認できる状態は1(Trace)であり、収縮すらなければ0、重力除去位で全可動域を動かせれば2、重力に抗して全可動域を動かせれば3、中等度・最大の抵抗に抗せればそれぞれ4・5となります。足関節背屈の主動作筋は深腓骨神経支配の前脛骨筋で、筋力低下は下垂足や鶏歩をきたし、腓骨神経麻痺やL5神経根障害で生じやすい所見です。評価では3を基準点に上下を判定し、主観が入りやすい点にも留意します。各段階の定義を正確に押さえることは、神経・運動器疾患の診察や回復の経過観察の基本となります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)の6段階評価(0〜5)の判定基準を問う問題である。

MMTの判定の考え方

MMTは、検査者が手で筋力を評価する方法で、次の順に判定基準が積み上がっていく。 ・筋収縮があるか(0と1を分ける) ・関節が動くか(1と2を分ける) ・重力に逆らって全可動域を動かせるか(2と3を分ける) ・検査者の抵抗に抗せるか、その抵抗の強さはどの程度か(3・4・5を分ける)

本問の当てはめ

足関節背屈の主動作筋は前脛骨筋(深腓骨神経支配)である。本例では、 ・前脛骨筋の収縮は認める → 0ではない ・足関節の動きは全く認めない → 2以上ではない したがって、「筋収縮はあるが関節運動は生じない」段階、すなわち1(Trace)と評価する。前脛骨筋は下腿前面の皮下にあり、腱も足関節前面で触れやすいため、関節が動かなくても収縮を視診・触診で確認しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  0

    0(Zero)は、視診・触診で筋収縮をまったく認めない状態である。本例では前脛骨筋の収縮が確認されているため、0には該当しない。

  2. ○b.  1

    1(Trace)は、筋の収縮は視診や触診で確認できるが、関節運動は起こらない状態である。本例は足関節の動きを認めず、前脛骨筋の収縮のみを認めているので、この定義にそのまま一致する。

  3. ×c.  2

    2(Poor)は、重力の影響を除いた肢位(例えば足関節背屈なら側臥位で下腿を水平にした状態)であれば関節を全可動域にわたって動かせるが、重力に抗しては動かせない状態である。本例は関節の動きそのものを認めないため該当しない。

  4. ×d.  3

    3(Fair)は、抵抗を加えなければ重力に抗して全可動域を動かせる状態である。日常生活動作の自立に必要な目安とされる段階であるが、本例は関節が全く動かないので該当しない。

  5. ×e.  4

    4(Good)は、重力に抗して全可動域を動かせ、さらに検査者のある程度の抵抗にも抗せる状態である(強い抵抗に抗せれば5)。関節運動を認めない本例とはかけ離れており、該当しない。

MMTの6段階評価(Danielsらの方法)

・5(Normal):重力および最大の抵抗に抗して全可動域を動かせる ・4(Good):重力および中等度の抵抗に抗して全可動域を動かせる ・3(Fair):抵抗がなければ重力に抗して全可動域を動かせる ・2(Poor):重力を除いた肢位なら全可動域を動かせる ・1(Trace):筋収縮は認めるが関節運動はない ・0(Zero):筋収縮を認めない

評価の注意点

・「重力に抗して全可動域を動かせるか」を示す3が、判定の基準点となる。まず3を試し、可能なら抵抗を加えて4・5を、不可能なら重力除去位で2を、さらに収縮の有無で1・0を判定するのが一般的な手順である。 ・必要に応じて+/−を付けて細かく表現することもある。 ・MMTは検査者の主観を含み、4と5の区別は特に難しい。より客観的な評価には徒手筋力計(ハンドヘルドダイナモメーター)などを用いる。

足関節背屈の評価

・主動作筋:前脛骨筋(深腓骨神経、主にL4〜L5) ・背屈筋力の低下は下垂足(drop foot)をきたし、歩行時に足先が引っかかるため、膝を高く上げる鶏歩(steppage gait)がみられる。腓骨神経麻痺やL5神経根障害で生じやすい。

POINT

・MMTは0〜5の6段階 ・0:収縮なし/1:収縮のみ(関節運動なし)/2:重力除去で全可動域/3:重力に抗して全可動域/4:中等度抵抗に抗する/5:最大抵抗に抗する ・「関節は動かないが筋収縮は確認できる」→ 1(Trace) ・足関節背屈の主動作筋は前脛骨筋(深腓骨神経)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。