StudyMed医師国家試験

喫煙者は肺癌に8.5倍かかりやすい―コホート研究で求めるリスク比の基本

第115回医師国家試験 F問題 第75問

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第115回 F問題 第75問

調査開始時に肺癌に罹患していなかった10万人をその時点の喫煙状況で2つのグループに分けた。調査開始後5年間の肺癌罹患の有無を調べた結果を以下に示す。 (単位:人) 調査開始時点 の喫煙状況 調査開始時点の人数 調査期間中に肺癌に 罹患した人数 喫煙者 40,000   408 非喫煙者 60,000   72 計 100,000   480 喫煙による肺癌罹患のリスク比を求めよ。 ただし,小数第2位以下の数値が得られた場合は,小数第2位を四捨五入すること。 解答:① . ②

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、表のデータから喫煙による肺癌罹患のリスク比を計算する問題だ。計算そのものは単純だけれど、まず研究デザインを見極めて、どの数字を分母にするかを正しく選べるかがポイントになる。この調査はどんな研究デザインだと思う?
医学生医学生
喫煙しているかどうかで分けて、その後の肺癌の発生を追いかけているので、コホート研究でしょうか。
ドクタードクター
その通り。調査開始時点で肺癌のない人を曝露の有無で2群に分け、前向きに追跡している。コホート研究の強みは、各群の罹患率、つまり一定期間に新たに病気になった人の割合を直接求められることだ。だからリスク比が計算できる。
医学生医学生
リスク比は相対危険度と同じものですよね。疫学の講義では「何倍なりやすいか」と習いました。
ドクタードクター
そう。定義は、曝露群の罹患率を非曝露群の罹患率で割ったもの。では、まず喫煙者の5年間の罹患率を出してみよう。
医学生医学生
肺癌になった408人を喫煙者全体の40,000人で割って、0.0102、つまり1,000人あたり10.2人です。
ドクタードクター
正解。同じように非喫煙者の罹患率を出して、リスク比まで計算してみよう。
医学生医学生
72人を60,000人で割って0.0012、1,000人あたり1.2人です。なので10.2を1.2で割ると……8.5になります。
ドクタードクター
よくできた。分数のまま計算すると、408×60,000を72×40,000で割る形になって、約分すると1,224÷144でちょうど8.5。割り切れるので四捨五入の必要はなく、答えは8.5だ。喫煙者は非喫煙者に比べて、5年間で肺癌にかかるリスクが8.5倍高いと解釈できる。
医学生医学生
表の一番下の「計」の数字は使わなくていいんですか。
ドクタードクター
リスク比の計算には使わない。480を100,000で割った値は集団全体の罹患率で、後で話す集団寄与危険度などで使う数字なんだ。もう一つ気をつけたいのが分母の取り方だ。
医学生医学生
罹患しなかった人数で割ってしまうと、オッズになってしまうということでしょうか。
ドクタードクター
まさにそこ。罹患した人数を罹患しなかった人数で割るとオッズで、その比がオッズ比になる。このデータでオッズ比を計算すると約8.6で、リスク比とわずかにずれる。問われているのはリスク比だから、分母は各群の調査開始時点の人数にする必要がある。
医学生医学生
オッズ比は症例対照研究で使う指標でしたよね。
ドクタードクター
そう。症例対照研究では患者と対照の人数を研究者が決めるので、罹患率そのものが求められない。だからオッズ比を使う。病気がまれな場合には、オッズ比はリスク比の近似値になるんだ。今回も肺癌の罹患がまれなので、8.5と約8.6でほとんど同じになっているね。
医学生医学生
なるほど、だから値が近いんですね。ほかにコホート研究で計算できる指標も問われそうです。
ドクタードクター
よく出るので整理しておこう。寄与危険度は罹患率の「差」で、10.2から1.2を引いて1,000人あたり9.0。喫煙によって上乗せされた罹患の大きさを表す。寄与危険割合は9.0を10.2で割って約88%で、喫煙者の肺癌のうち喫煙に起因する割合だ。
医学生医学生
集団寄与危険度はさっきの「計」を使うんですね。
ドクタードクター
その通り。全体の罹患率1,000人あたり4.8から非喫煙者の1.2を引いて3.6、それを4.8で割った集団寄与危険割合は75%になる。集団全体の肺癌のうち、喫煙が原因と考えられる割合を示していて、禁煙対策でどれだけ減らせるかを見積もる公衆衛生上の指標になる。
医学生医学生
相対危険度は関連の強さ、寄与危険度は対策の効果の大きさ、と使い分けるわけですね。
ドクタードクター
そういうことだ。臨床で患者さんに禁煙を勧めるとき、「肺癌になるリスクが何倍」という説明は相対危険度の考え方そのものなんだよ。

まとめ

曝露の有無で分けた集団を追跡するコホート研究では、各群の罹患率を直接求められるため、リスク比(相対危険度)=曝露群の罹患率÷非曝露群の罹患率を計算できます。本問では喫煙者が408÷40,000で1,000人あたり10.2、非喫煙者が72÷60,000で1,000人あたり1.2となり、リスク比は8.5です。分母は各群の調査開始時点の人数であり、罹患しなかった人数で割るとオッズになってオッズ比(約8.6)とずれる点や、全体の合計行はリスク比には用いない点に注意が必要です。あわせて、罹患率の差である寄与危険度、寄与危険割合、集団寄与危険度・集団寄与危険割合も同じ表から求められるので、比と差の違いを意識して整理しておきましょう。研究デザインと指標の対応を理解することは、論文の結果を正しく読み取り、患者への説明や公衆衛生施策を考えるうえでの基礎になります。

解答・解説

正解は8.5です

研究デザインの確認

調査開始時点で肺癌に罹患していない集団を、曝露(喫煙)の有無で2群に分け、その後5年間に新たに肺癌を発症した人数を追跡している。これは前向きコホート研究である。コホート研究では各群の罹患率(一定期間に新たに病気になった人の割合)を直接求めることができるため、リスク比(相対危険度)を算出できる。

リスク比の定義

リスク比(相対危険度、relative risk:RR)= 曝露群の罹患率 ÷ 非曝露群の罹患率 曝露がある人は、曝露がない人に比べて何倍病気になりやすいかを表す指標である。

計算過程

(1) 喫煙者(曝露群)の5年間の罹患率 408 ÷ 40,000 = 0.0102(1,000人あたり10.2人) (2) 非喫煙者(非曝露群)の5年間の罹患率 72 ÷ 60,000 = 0.0012(1,000人あたり1.2人) (3) リスク比 0.0102 ÷ 0.0012 = 8.5 分数のまま計算すると、(408/40,000) ÷ (72/60,000) = (408 × 60,000) ÷ (72 × 40,000) = (408 × 3) ÷ (72 × 2) = 1,224 ÷ 144 = 8.5 となり、割り切れる。小数第2位以下は生じないため、そのまま 8.5 が答えとなる。 したがって、喫煙者は非喫煙者に比べて5年間で肺癌に罹患するリスクが8.5倍高いと解釈できる。

注意点

・表の「計」の行(480/100,000)は集団全体の罹患率であり、リスク比の計算には用いない。 ・「罹患した人数 ÷ 罹患しなかった人数」で計算するとオッズになり、その比はオッズ比(本データでは約8.6)となってリスク比とわずかにずれる。問われているのはリスク比なので、分母は各群の調査開始時点の人数とする。

コホート研究で用いる主な指標

本問のデータを例に整理する(曝露群罹患率 10.2/1,000、非曝露群罹患率 1.2/1,000、全体の罹患率 4.8/1,000)。 ・相対危険度(リスク比):曝露群罹患率 ÷ 非曝露群罹患率 = 10.2 ÷ 1.2 = 8.5。曝露と疾病の関連の強さ(因果関係の強さ)を示す。 ・寄与危険度(リスク差):曝露群罹患率 − 非曝露群罹患率 = 10.2 − 1.2 = 9.0/1,000。曝露によって上乗せされた罹患の大きさを示し、曝露をなくせば曝露群でどれだけ罹患を減らせるかを表す。 ・寄与危険割合(曝露群寄与危険割合):寄与危険度 ÷ 曝露群罹患率 = 9.0 ÷ 10.2 ≒ 88%。曝露群の罹患のうち曝露に起因する割合。(RR − 1) ÷ RR でも求められる。 ・集団寄与危険度:全体の罹患率 − 非曝露群罹患率 = 4.8 − 1.2 = 3.6/1,000。 ・集団寄与危険割合:集団寄与危険度 ÷ 全体の罹患率 = 3.6 ÷ 4.8 = 75%。集団全体の罹患のうち曝露に起因する割合で、公衆衛生上の対策効果の見積もりに用いる。

研究デザインと指標の対応

・コホート研究(曝露から結果へ追跡):罹患率が得られるため、相対危険度・寄与危険度を直接計算できる。 ・症例対照研究(疾病の有無から過去の曝露を調べる):対象者数を研究者が決めるため罹患率が求められず、オッズ比を用いる。疾病がまれな場合、オッズ比は相対危険度の近似値となる。

POINT

・コホート研究のリスク比(相対危険度)= 曝露群の罹患率 ÷ 非曝露群の罹患率。 ・本問:(408/40,000) ÷ (72/60,000) = 10.2/1,000 ÷ 1.2/1,000 = 8.5。 ・分母は各群の調査開始時点の人数(罹患しなかった人数で割るとオッズになる)。 ・寄与危険度は「差」、相対危険度は「比」と区別して覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。